ドイツ生活




エジプトから帰国後、中国やイギリスへの短期出張はあったものの、
長期滞在型の赴任はごぶさたであった。

東京のオフィス。
毎日のデスクワークにうんざりしていた26歳の秋、
一本の電話がおいらを長い眠りから呼び覚ました。

「ろっくん?どうも、海外部のFです。」

それはエジプトの時お世話になった、海外部の部長さんであった。
「あ、ども。ごぶさたしてます」

何の用だろ。部長から直接電話なんて・・・・。

「あのさ、ろっくん、ドイツ行かない?」
「行きます!」
即答。迷いナシ。

「あ、いや、あの、今度は長いよ、3年以上になるから、一度良く考えて・・」
「いや、行きます!!」
やっと来た!待ちに待っていた海外赴任の話。え、どこだっけ?
まぁ、どこでもいい!いくのだ。

「あ、そう?じゃぁ改めてそちらの事業部に正式にオファーするから、
初めて聞いたみたいな顔しててね」

どうやらF部長、前もっておいらの意思を確認してくれたらしい。
くふふふふふふ。
喜びが込み上げてくるのを抑えられないおいら。

やがて同じビルの20階にある海外部のオフィスから、F部長がやってきた。
おいらの方をみて「じゃあ、今から言うね」という視線を送りつつ、
おいらが所属する事業部の事業部長の席に向かう。

ドキドキ。
一応、知らんぷりを決め込むおいら。でも、全神経は事業部長の席に向かっていた。
やがて、事業部長に、おいらの課の課長が呼ばれた。
課長は、「はて?」みたいな顔をして飛んでいった。

そうして15分程して、話は終わったらしい。
F部長は帰っていき、課長が戻ってきた。

くるぞ、くるぞ・・・・。
「あー・・・ろっくん、ちょっと!」
課長がわしを呼ぶ。
「はい?なんでしょう。まったく見当がつかないなぁ」という顔をしていく。

課長が言う。それももったいつけて言う。
「やー、あのー・・・・実はね。さっき海外部のF部長が来てね・・・・
ろっくんをだね・・・・・、んー、・・・ドイツに派遣させたいって言ってきたんだよ。」

「ええええええっ!!!マジっすか!」

そうしておいらは、ドイツへ旅立つ事になったのである。


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