雪月花

まるきり特別だった






もういちど 抱きついていいかなあ
追いかければまだ その背中に手が届くかなあ
正面から飛びつくのはいつも
照れくさくて目のやり場に困るから

いつだって少しだけ自分に自信がなくて
その自信のなさもなんだか後ろめたいから
一歩めまでに一瞬戸惑ってしまって
加速するスピードでやっと迷いが晴れていくんだ

それでもまだわずかに 残るゆらつきは
あなたの温度と湿度と確かな体の形とに
うなずくでもなくうなずかれて そして
消えるんじゃなく 混ざっておいしく染みていく

愛していることと触れることとが完全にイコールではないように
さよならという言葉は愛し終わった合図じゃないよ
「ごめんね さみしい思いをさせて」
あれは どっちの言葉だったっけね

いちばん近くにいた頃を思い出すと
笑顔になるんだけど涙も出てくる
恋愛はどれだって同じに温かくて痛いんだって
考えていたけど全然違うや まるきり特別だった

忘れられるとは思っていないし
忘れたいと思ったことも そもそもない
あの頃は君がそばにいて 今はいない
そういうことなんだって やっと判ってきてる

ごめんね さよならって言って。
今も 好きだよ きっと明日も。







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