雪月花

おままごと













 こどものおままごとは火を使わない。
 おとなのおままごとは心を使わない。

 あたしはもういい加減に大人で、そうしてこれは今考えればおままごとだったのに、火傷をしてしまった。使うはずもない火で。もしかしてこれは、いつのまにか心を使いはじめてしまった、ルールを破ってしまったあたしへの罰なのかもしれないね。あたしだけしか知り得ない罪への、あたしにしか見えない罰。そしてその火傷は、気管支を爛れさせて、今はろくに息さえできない。
 名実ともにひとつの恋愛が終わったという印がまだ届かずに、あたしは実のところ頭を抱えている。寝ても覚めてもとは正にこのことで、後悔先に立たずというのもこのことだ。後悔という言葉も嫌いだけれど、後悔している自分というのが嫌いだ。なんといってもつらいから。心身ともにね。アランの言うことにうなずけるのは、あたしに余裕がある時だけのこと。彼からしてみれば、幸福になる義務を疑うあたしは愚かな一市民なのだろう。それでも、やっぱりひとつは完全に賛同しているよ。悩みと体は繋がっている。悩む心はこの体の中にあるのだし。あなたの言葉は、段落ごとというよりも、要所要所で胸を突くよ。そういう言葉は、目に飛び込んでくるから。その言葉たちを囲む行間の白さが広さをわずかに増して、そこを浮かび上がらせるのだ。

 もう、おままごとはしないよ。
 おとなは、おままごとなんてできない。

 そんな気がしている。








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