風光る 脳腫瘍闘病記

歩行訓練



「コレをつけなければ立つ事も歩く事も出来ないの?ロボットみたい・・」
私は泣きながら「あたしって進歩してるのかな・・」と先生に聞いた。

先生はしばらく黙っていたが「うん、少しづつだけど進歩はしてるよ」と言ってくれた。さらに下半身不随の人が装具をつけて歩くという事がいかに大変で疲れるかという事を説明してくれた。

「どうする?装具、作る?」私は二つ返事で頼んだ。

翌日、装具屋さんが来て、足の長さとか太ももの太さとかメジャーでテキパキと測ってくれた。足に関しては石膏で固めて型を取っていた。その手際の良さに私は関心していた。

2週間ほどして装具の仮合わせの日が来た。PTは「ここはもうちょっと余裕があった方がいい」とか細かくチェックをして数箇所を改善するよう技師さんに頼んでいた。いつもはくだらない冗談いってるけどやっぱプロだなぁ・・とやはり関心する私であった。

数日後、技師さんがデッカイ風呂敷に装具を包んでリハ室にやってきた。

「お待たせしました~」その声を聞いてPTも奥の部屋から出てきた。さっそく装具をつけてみる事に。

「うん、大丈夫だね、ばっちり」PTの言葉に技師さんもうれしそうだった。

違うPTのT先生が「おっはよう~」と握りこぶしを前に突き出してきた。私もそれに合わせて握りこぶしでゴツンッと合わせてあいさつをする。それがT先生流のあいさつなのだ。

「装具出来たんだ、歩行訓練ガンバってね」
「うん、見てて、歩いたらきっと感動して泣くから」

「じゃあ、いきますか」担当のO先生が言った。私は平行棒を支えにして立ってまず両手を離して立とうとしたがバランスがまったくとれずすぐ前に倒れそうになった。

「何でこんなにバランスとれないの?」

「オシリに感覚ないからね・・」「腰を前に突き出してみて、そうしたらバランスとれやすいから」

言われた通りにしてみると確かにさっきより安定はしてるけど、それでも両手を離して立つ事は難しかった。

とりあえず歩く事にしてみた。平行棒の中をバーを支えにゆっくり歩く。

自分の意識で右足は多少動かせるが左足が動かせないので腰を使って足を持ち上げて勢いで前に振り出す感じで歩く。術後、初めての歩行だったが全然感動はしなかった。

「めちゃくちゃ疲れる・・・」5メートル歩いただけで病衣は汗でビッショリになっていた。感動どころじゃない。

「だからしんどいよって言ったでしょ」

「でもこれほどとは思わなかったよ」装具だけで片足1.5キロもある。歩く事がこれほど大変な事だとは夢にも思わなかった。普通に歩ける人を見て

「すごい、めちゃくちゃラクそうに歩いてる」それだけで関心してしまう私であった。





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