風光る 脳腫瘍闘病記

脳腫瘍告知



耳鼻科では何故か予約してるのに呼ばれるまで時間がかかった。やっとの事で私の名前が呼ばれ先生の元へ。

「どうですか?」と先生。

「やっぱり口から水がこぼれます」

「そうですか、ちょっと診させてもらいますね」と前回同様顔面チェックをした。結果は前回と変わらず。軽いものだった。

「とりあえずもう1回診させてもらいますね」と次の受診を予約しその日は帰路についた。

そんなある日、私は本屋さんに出かけるので外出をした。その時、更なる自覚症状を知る事になる。本屋さんは道路に面していて車の往来が激しい。

私は車の走る音がおかしく聞こえた。何となく左耳がふさがって不思議な感じがしたのだ。

「あーーーー」自分で声を出してみる。すると「あ」という言葉が半分自分の中で割れた様に聞こえるのだ。「あいうえお」何回も声に出して喋ってみる。何となくそれが面白かった。声が半分に割れて聞こえるなんて人生初めての事だ。

耳がふさがった感覚は翌日になっても治らなかった。治るところかあくびをすると耳鳴りまでする様になった。

耳鼻科受診の日に先生に難聴である事、耳鳴りがする事を報告、そこで先生は「MRI撮ったことある?」と聞いてきた。

「はい、頭は半年に1回撮ってます」というと先生はパソコンで過去のデータを引っ張り出してきた。

私の半年前のMRIを見ながら

「半年前の脳はキレイだね、異常はないけどもしかしたらできものが出来てるかもしれないから一回撮っておいた方がよさそうだね」とMRI検査の予約を取ってその日の受診は終わった。

MRI検査当日。私は脊髄腫瘍に侵されてから半年に一回はMRI検査をしなくてはならない体になったのであの検査特有のマシンガンみたいな音にも慣れていた。

今回は造影剤を使っての撮影。まずは普通に撮影。その後、造影剤を注射してから2回目の撮影をする。

そこで私はちょっとした事に気が付いてしまった。いつもなら造影剤注射した後の撮影も短い。短いのに今回だけはやたら長いのだ。

長いとろくな事がないのは過去の経験から実証済みだ。

(腫瘍か?)

その時、初めて私の脳裏に腫瘍の2文字が浮かんだ。

翌日、改めて検査結果を聞きに耳鼻科へ・・先生がフィルムを診る時間が長い。時折、何か手紙の様なものを読んでいた。

「やはりちょっとできものが出来てますね」

「聴神経腫瘍ですか?」私は事前に調べておいた病名を言ってみた。

「う~ん、、聴神経腫瘍なら造影剤を使った後の出方が違うんですよね、ここからは脳外科の分野になるので脳外科で受診してもらっていいですか?手紙書いとくんで」と、私は脳外科へ行く羽目になった。

(できものって?腫瘍なの?何で茶を濁した様な言い方するんだろ?)なんて事を考えながら脳外科へ。

脳外科の先生のところへ行くと「話しは耳鼻科から聞いてますか?」と聞かれたので「はい」と答えた。

「腫瘍ですね」そこで初めて私が確実に脳腫瘍に侵されてる事を知った。

不思議とそんなにショックって感じではなかった。脊髄に再発する恐れがある。再発しなくても脳にポーンっと行く場合があるとずっと聞かされていたからだ。

「聴神経腫瘍なら腫瘍が造影剤使った後に染まるんですけど染まらないから何腫瘍かは開けてみないと何とも言えませんが・・」

「手術ですか?」

「そうですね、今のところ手術です」「ベッドも空いてないから空き次第電話入れますね」

一通り話しをし終えた私は入院手続き書をもらい帰宅した。

聴力検査をするために後日改めて病院に行った私は脳外科の看護士さんから呼び止められた。

「ベッドが空いたんですか?」

「電話しようと思ってたの、よかった、この後どこ受診するの?その後、脳外科受診してもらいたいんだけど」

寝耳に水だった。

(何だろう?アレから何か分かったのかな?もしかして余命宣告?)

私は聴力検査中もその事で頭がいっぱいだった。顔面神経麻痺も進行してる様子はなく一旦、耳鼻科の診察もこれで打ち切りにする事になった。

私は麻酔科に行った後、脳外科へ。

「実は脊髄のMRIも撮ってもらいたくて」「頭の腫瘍は脊髄腫瘍からきてるものかもしれないし、再発してないか」

(なーんだ、そうゆう事か・・)

気になる事を先生にいくつか聞いてみた。

「手術する時、髪の毛は剃るんですか?」

「いや、そんなに剃らないよ」

「入院期間はどれぐらいですか?」

「手術するんなら一ヶ月かな?」「でも脊髄に腫瘍が再発してないか調べてから全部の治療方針が決まるから」

「分かりました。とにかく今度のMRI検査結果次第で治療方法が決まるんですね」

今まで神様に何回も裏切られてるのにこうゆう時、ついお願いしてしまう私がいる。

「神様、どうか脊髄に再発していませんように・・」




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