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「お隣の家の方からすぐ家に帰れという連絡が入っている」
と担当教官から言われたのは
精神科の実習中だった。
11時から閉鎖病棟を見学する予定だったので
ああ、あと10分でいよいよ管理の厳しい閉鎖病棟を
見に行くのだな、「カッコーの巣」みたいかしらと
思っていたら、先生から「ちょっと」とお呼び出し。
すぐ家に帰れと言われても、理由は何?
お隣のお宅に電話しても留守
もう一軒のお隣のケータイに電話入れたら外出先。
とりあえず、確認してもらおうと退職しいてる従兄弟に電話した。
すぐにコールバックがあって
おばちゃんが風よけ室で倒れている。鍵がなくて開かない
救急車を呼んでいいか?
弔問に来た方やお隣の方がガラス窓の向こうから
ババを励ましてくださっていたという。
救急車は呼んでくれていなかったので
従兄弟に電話してほんとうによかった。
山の精神科病院から下りて町に入って
我が家近くなったらピーポーピーポーの音。
私の車も追い越して行くその車。
我が家の前で停まった。
鍵を開けて家に入る。
土気色したババが白い吐物の横で倒れている。
意識はある。
こういうときどうするか。
動かすべきではないなんてこと忘れて、
ババ、ババ、大丈夫?
動かさないでと救急隊の人に注意され
思いだす始末。
一緒に救急車に乗って、まず、近くの病院に行こうと
したが、大きな脳外の手術がはいってしまっていてと断られた。
即座に私が来月手術予定の病院に行ってもらうことにした。
もし、ババの入院が長引けば私の入院する同じ病院がいい。
ババは救急車の中でもだいぶ吐いた。
ババが食べた量より多いのではないかと思われるほどの
白っぽい水様の吐瀉物。
救命救急室についてから、説明を受けるまでには
2時間ぐらいかかったか。
肺の機能だけが落ちているとのこと。
原因不明。
呼吸を抑制するような薬を飲んだか。まさか。
酸素飽和度が85%程度なので
呼吸を改善するために酸素マスクをつけて95%程度に。
原因がわからないので、調べるため入院ということになった。
先の従兄弟が救急車に乗ってしまった私を送るために
来てくれた。ちょうど、医師から2日目の最終説明が
あったので従兄弟にも聞いてもらった。
その後ババは病室に運ばれた。
いったん家に帰って、着替えとか、もろもろを持ってこないと。
それに車がないと動きが取れない。財布も忘れたので
何も買うこともできない。
いとこに自宅に送ってもらった後は、
実習先の病院へ行き、 担当の大学の先生に事情を説明。
先生が、その病院に入院したのなら、実習もそこの病院の
精神科でやったらどうかと提案してくださった。
先生が提案してくださった方の病院は、毎日通勤。
朝昼晩と、ババのところへ行ける。この精神科の実習、私がいる病院は泊まり込みの実習。
私は、一日目は帰していただいたが、この日は泊まるつもりでいた。
もし、弔問客がいらっしゃらなくて、私が泊まりだったら
ババは翌日夜まで発見されないままの可能性もあった。
ジジに線香を上げに来ていただいて助かった。
ジジのおかげだね。
夕方、友人のドクターがババの部屋を訪れてくれていて
電話があった。「入れ歯がなくて夕ご飯食べられないと言っている」と。
吐いた救急車の中で、入れ歯ははずされて私に渡されていたのだった。
すっかり、忘れていた。
大慌てで、入れ歯はもちろん、もろもろをそろえて病室へ。
友人はあれからずっとついてくれていた。
病院での激務の後なのに。ほんとうにありがとう!
歯磨きしてタッパーに入れた入れ歯を入れたのに、
ババは食べない。なんだ、そんなにスプーンで
ちょこっとしか食べないなら入れ歯なくてもよかったじゃん
と言うほど。
その晩、家で発見したものがある。
6錠入るオキシコンチン4錠飲んであって2錠は余っていたはず。
あ!
もしやもしや、ババが2錠飲んでしまったのか?