漫望のなんでもかんでも

漫望のなんでもかんでも

PR

Profile

まろ0301

まろ0301

Freepage List

2005.10.10
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 「これが正解」という展開にはならなかった。

 日曜の夜に放映されたNHKアーカイブス『男たちの旅路』「シルバーシート」。

 出ている俳優さんたちが凄い。志村喬、笠智衆、殿山泰司、加藤嘉、藤原鎌足、佐々木孝丸・・。


 いつもは自分より年の若い水谷豊や桃井かおりと向かい合い、煙たがられながらも自分の生き方の筋を通して、叱咤する鶴田演じる吉岡司令補は、今回初めて、自分より20歳ほど年上の老人たちと対峙することとなる。
 <電車ジャック>の「犯人」たちと。

 鶴田は、老人たちに自分の引きずっているものを伝え、「こんな事をしちゃもったいないじゃありませんか」と言う。

 「君には分からない。私たちの年にならないと分からないんだよ」という老人たちの言い分に対しては、「私は二十年後の覚悟はできています」と言い放ち、「押入れにこもっている子どもと一緒だ」「言いたいことがあったら堂々と言いませんか」「あなたたちは甘ったれていませんか」と返すのだが、この言葉は見事に空を切る。

 ずっと、一言のセリフもなかった、藤原鎌足が、鶴田の言に対して、興奮して突っかかっていく。かれは元は市電の運転手だった男だ。こんな事をしてはいけないと人一倍知っているはずの男が、鶴田の言に食ってかかる。

 老人たち、一人一人のセリフからは、底の知れない寂しさが垣間見える。



 鶴田は、「私に話させてもらえませんか」と言う。老人たちの「動機」「要求」を何よりも知りたかったのは彼だからだ。彼は、正しく「自分の問題」として捉えている。
 乗り込もうとするのは、水谷豊の上司だから・・という理由ではない。


 老人たちが最後に電車から出て行って警察に身柄を拘束されるのは、鶴田に説得されたからではない。彼らには彼らなりの「終わり方」があらかじめ予定されており、自分たちをいたわり、言葉に耳を傾けようとしてくれた鶴田への感謝が、そうさせたとは言えても、鶴田の言葉に納得しての行動ではない。

 このドラマ、再放送を含めて何度観た事か。観るたびごとに、怖ろしくなってくる。それは、28年前の放映以降、私の中で、提起された問題が、この国では放置されているという思いがあるからだ。

 「今」のみが重視されて、「過去」を語ることは軽蔑され、老人は正当な尊敬を払われない社会の姿は、まさに「今の日本」ではないのか?

 第一、以下のように問うてほしい。

 「このドラマのように練達の役者を集めて、いい脚本で、心に沁みるようなドラマを作れるか?」と。

 NHKのホームページに載っているこのドラマの配役は、常連を除けば、志村喬と、四人の老人、あとは、「その他」となっていて、老人ホームの責任者を演じていた佐々木孝丸を、「その他」と括ってしまっている。「一事が万事」というのはこのことだ。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005.10.10 15:44:57
コメント(6) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Favorite Blog

『韓国の行動原理』2 New! Mドングリさん

山手線100周年 高輪… New! MoMo太郎009さん

17日朝の日記 象さん123さん

LIVEやります! SEAL OF CAINさん

2025年「馬見丘陵公… リュウちゃん6796さん

Comments

まろ0301@ Re[1]:ファクトチェックはやめます(01/11) maki5417さんへ  ただ、不法移民が居な…
maki5417 @ Re:ファクトチェックはやめます(01/11) 米国は、古い移民が新しい移民を搾取して…
まろ0301@ Re[1]:ハンナ・アーレント(01/08) maki5417さんへ  「倫理」は、本来は、…
maki5417 @ Re:ハンナ・アーレント(01/08) 「受験の倫理」とはおさらばだ。 今は倫…
まろ0301@ Re[1]:1月20日(01/06) maki5417さんへ  上下両院で、トランプ…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: