波乗り舟の音のよきかな

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鳥カゴ@ Re:オリンピア・キュクロス(11/23) yamadasiさんのところでも柿、取れるんで…
yamadasi@ Re:オリンピア・キュクロス(11/23) 10/25「柿地獄」がわかりすぎて笑った。 …
鳥カゴ@ Re:蒼穹のアリアドネ(08/04) そんなことないですよ。案外普通の日でし…
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2025.11.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
7月31日(木)。読書。
8月1日(金)。休日勤務の準備で忙しかった。読書。
8月2日(土)。創作修正。漫画を読む。
8月3日(日)。1日出張。電車で読書。運命に導かれ、真田まこと展を覗き見た。
8月4日(月)。読書。
8月5日(火)。読書。午後は図書館で読書等。
8月6日(水)。読書。
8月7日(木)。合宿対応。説明会。
8月8日(金)。合宿対応2日目。地獄のBBQ。夜は疲労ピークで飲む。
8月9日(土)。寝ていた。車を取りに行く。回覧板を回す。
8月10日(日)。ごろごろ。最終更新。
8月12日(火)。忙しく仕事。読書。
8月13日(水)。読書。
8月14日(木)。読書。
8月15日(金)。読書。
8月16日(土)。家の草刈り。読書。
8月17日(日)。組合の草刈り。読書。桂文珍独演会。その後買い物。カツを食べに行く。ご飯をバカみたいにお代わりした。爆睡。
8月18日(月)。元気だった。米はエネルギーになるんですね。読書。
8月19日(火)。読書。
8月20日(水)。読書。
8月21日(木)。飲み会。食べ過ぎた。
8月22日(金)。読書。
8月23日(土)。草刈り。読書。健康福祉会館に涼みに行った。
8月24日(日)。草刈り。読書。地域の建物と図書館に行った。ネタだし。
8月25日(月)。ネタ出し。
8月26日(火)。ネタ出し。創作。
8月27日(水)。創作。
8月28日(木)。創作。
8月29日(金)。創作。
8月30日(土)。草刈り。創作。健康福祉センターで読書。買い物。
8月31日(日)。稲刈り。
9月1日(月)。創作。
9月2日(火)。創作。
9月3日(水)。創作。午後米を運ぶ。
9月4日(木)。創作。
9月5日(金)。創作。
9月6日(土)。創作。
9月7日(日)。稲刈り。
9月8日(月)。創作。
9月9日(火)。有給休暇。創作。
9月10日(水)。創作。
9月12日(金)。創作。
9月13日(土)。午後仕事。創作。
9月14日(日)。献血の予約。
9月15日(月)。創作。献血。読書。
9月16日(火)。創作。
9月17日(水)。創作。読書。
9月18日(木)。書類配布。会議。読書。
9月19日(金)。読書。
9月20日(土)。出張相談会。電車内で読書。ネタ出し。
9月21日(日)。草刈り。読書。ゲーム。買い物。会合。
9月22日(月)。読書。
9月23日(火)。読書。勧誘。
9月24日(水)。読書。
9月25日(木)。読書。
9月26日(金)。演歌を聴きながら読書。
9月27日(土)。実家の部屋を掃除、物探し。読書。ミニゲーム制作。
9月28日(日)。バイリンガルニュースを聴きながら、ミニゲーム制作。
9月29日(月)。読書。パズルゲーム作り。
9月30日(火)。読書。パズルゲーム作り。
10月1日(水)。読書。パズルゲーム作り。
10月2日(木)。読書。パズルゲーム作り。
10月3日(金)。読書。パズルゲーム作り。
10月4日(土)。読書。終日仕事。
10月5日(日)。早朝から駐車場整理。読書、ゲーム、漫画を読んで、ゲーム制作。
10月6日(月)。休暇。読書。
10月7日(火)。読書。
10月8日(水)。読書。
10月9日(木)。午後休暇。読書。
10月10日(金)。読書。
10月11日(土)。画像の編集。米をする。昼前から仕事。『メレンゲの怪 THE ANOTHER FiLE』の回答作成、送信。
10月12日(日)。眼鏡を壊し、修理に行く。買い物。読書。ゲーム。昼寝。
10月13日(月)。落語を聴きながらゲーム。読書。体調が悪くて寝ていた。
10月14日(火)。検定の払い込み。読書。
10月15日(水)。読書。
10月16日(木)。読書。
10月17日(金)。読書。
10月18日(土)。読書。
10月19日(日)。1日寝ていた。読書。
10月20日(月)。読書。
10月21日(火)。ゴミ出し。読書。
10月22日(水)。読書。
10月23日(木)。読書。
10月24日(金)。ラーメン。読書。ネタ出し。買い物。
10月25日(土)。読書。ほとんどボーっとしていた。お好み焼きで熱燗を飲む。
10月26日(日)。読書。ぐったりしていた。
10月27日(月)。読書。
10月28日(火)。読書。
10月29日(水)。読書。
10月30日(木)。資料印刷準備。読書。ゲーム。酒を飲む。


【最近読んだ漫画】
水木しげる『総員玉砕せよ!』。 長編戦記漫画。点描画で描かれる遠景が美しい。妖怪漫画は好きで楽しく描いていると思うけど、戦記物はもっと特別な思いで描いているのが伝わってくる。90%事実だとあとがきで書かれているように、自分や周りにあったことを描いていて、淡々としていて逆に真に迫る。解説にある「戦後二十年くらい他人に同情したことがなかった。戦争で死んだ人間が一番かわいそうだと思っていた」という作者の言葉が印象的。
原作:城平京・構成:左有秀・作画:彩崎廉『絶園のテンペスト』(全10巻)。 推理要素のあるSFファンタジー。1巻の途中まで全然入り込めなかったけど、気が付くと入り込めていた。序盤の推理展開、心理戦、その後の中盤のラブコメ要素、終盤の決戦とSF展開、それぞれ違った楽しみがある作品でした。中盤の、主人公の恋人を皆で推理する展開が斬新で面白いです。出てくる女性は皆怖い人ばかりです。読んでいてキャラクターたちに馴染んだということもあって、10巻特別編の日常短編が一番楽しく感じました。
久世番子『ひらばのひと』(全6巻)。 講談師を扱った漫画。何度読み直しても面白い。何度も何度も読んでいる。ここ数年で唯一追いかけて、発売後すぐに買って読んでいた漫画。終わってしまった。主人公が真打になるまで読みたかった。でも、いろいろなことに決着がついて、綺麗に終わっている。美しくて楽しい物語。滅びかけた伝統芸能に魅せられる若者たちの物語。『パレス・メイヂ』の作者なので、僕の好みのド真ん中の作品を描いてくれる安心感がある。ジャンルが違うけど、根底にある人の情熱や美学が好きです。ヒロイン初音や他の登場人物たちが魅力的なのはもちろんなんだけど、姉弟子の泉花の魅力って、あんまり漫画等で見かけない魅力。姉だけど姉ではない感じ。登場人物たちの気持ちや生き方に決着がついて、「ああ、物語に求めるのってこういう楽しさだよね」と思った。六代目神田伯山を含む複数の講談師が監修しているので、架空の寄席の物語だけど講談の扱い方に違和感がない。落語家にはない、芸人であって芸人でないような、武士のような魅力が講談師にはある。生の講談を観に行きたい。
安童夕馬 (原著)、朝基まさし (イラスト)『シバトラ』(全15巻)。 『サイコメトラーEIJI』のタッグ。童顔の、生活安全課少年係新米刑事の物語。弱い見た目のキャラクターが実は最強でしたというのは大昔からあるパターンだけど、やっぱり面白い。かなり残酷で社会派な内容。奇しくも、直前に斜線堂有紀『恋に至る病』を読んでいたので、かなりネタ被りだった。僕は前の職場で、少年犯罪に関わることもあったので、興味深く読んだ。そんな捜査しないだろという方法で捜査しているのは漫画的なんだけど、そこに描かれる事件や心情はリアル。潜入捜査回が一番面白い。原作は安童夕馬となっているが、実際は樹林伸。樹林作品らしい世界観。だいたいの事件は、薬物中毒者、性犯罪者、人を支配したい人が犯人。直近で読んだ小説と直近で読んだ漫画が、まさかのネタ被り。同じような事件を扱った作品。とても珍しいというようなトピックでもないけど。こんなこともあるんですね。
浅田弘幸『テガミバチ』(全20巻)。 ファンタジー。ダークファンタジー? 少年漫画だからか、真っすぐなイイ話、人情噺がいっぱい。だいたいの登場人物が、実は心根の良い人。いろいろな関係性を描いていて、どれも良いんですけど、仲間との友情が僕は一番好きだな。この作品の前にバスケ漫画を描いていたとは思えない。ハイ・ファンタジーな世界観。『進撃の巨人』や『CLAYMORE』を思い出しながら読んでいた。
主人公とその相棒が世界にとって特別な存在過ぎる。この現実の世界の、未来の物語と解釈できる。そんな絶望的な世界で、懸命に生きる人類の物語。
岡田康則、原作/藤子・F・不二雄『ミニドラにおまかせ!』(全1巻)。 原作っぽい雰囲気もありつつ、展開や会話が原作っぽくない。どたばたで楽しい。ミニドラとドラえもんの見分けがつきづらいシーンがある。道具の説明が、原作より丁寧。データブックっぽいシーンもある。

【最近読んだ本】
岡本太郎『芸術と青春』。 エッセイ。一遍小説が入っていた。文章上手いなぁ。1956年の本に修正を加えて発表した作品。性のモラルの話等、どれだけ時代を先取りした思想なんだと思う。家族の話等、パワフルな作風とは少し違った繊細な筆致で語っている。良い本でした。
折原一『行方不明者』。 者シリーズは良いですね。直球と変化球と魔球を1つの作品で全て投げている感じ。時系列シャッフル。奇抜なトリックばかり取り上げられるけど、そもそも様々な要素を伏せたまま、ドラマチックな物語を描ける小説家としての腕がすごいんです。
恩田陸『EPITAPH東京』。 東京に出張する用事があったので行きと帰りの電車で読んだ。主人公が考えたことをだらだらと喋っている小説。それが恩田陸作品のいいところだと思う。特にこの作品はその傾向が強くて、半分エッセイみたいな小説になっている。恩田陸好きな人には心地よい作品。そして、巻末のスピンオフ小説「悪い春」で気づいた。僕、この本、昔読んだことあったかもしれない。またやってしまった。
ニュー・サイエンティスト編集部編、金子浩[訳]『つかぬことをうかがいますが…』。 イギリスの科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』のQ&Aコーナーに掲載された質問とそれに対する複数の回答が本になったものの翻訳。質問も回答も両方読者投稿で、明らかに間違ったものもあり、ユーモアにふりきった回答もある。回答者同士で間違いを指摘したり補足したりしている。そもそもそんな疑問を持つのかと、勉強になった。目の付け所が良い人って、いるんだなぁと思う。そして、これ、20年くらい積んでいた本である。ようやく読めた。
歌野晶午『死体を買う男』。 双子トリックを突き詰めた感じの推理。面白かった。作中作とその後のつながりがドラマティック。やっぱりアナグラムは推理小説好きにとっては浪漫ですよ。作中作では萩原朔太郎と江戸川乱歩がホームズ役ワトソン役になっている。この2人って実際に仲良かったんですね。そして、この作品では乱歩がワトソン役なのかよと思って読んでいましたが……。作中作部分も推理モノとして面白いんだけど、それ以上に外側の2人の作家の物語が良いんです。結末も含めて。
恩田陸『消滅 VANISHING POINT』(文庫版上下巻)。 恩田陸はSFよりも、だらだらだべっている話の方が好きだったんだけど、これはとても面白いSF。しかも近未来。これ初出2015年か。AIが発達した今だからこそ、思うところがある。空港に閉じ込められ、誰がテロリストなのかを考えていく話。密室劇。コーディネイターはヒューマノイド。ちょうどこれを読む直前に、図書館でNewton2025年9月号の『言語の進化論』を読んでいたので、終盤驚いた。本作の内容にそのうち現実が追い付きそうな感じはある。
江戸川乱歩『三角館の恐怖』(江戸川乱歩全集)。 表題作の他、『青銅の魔人』『虎の牙』『断崖』が収録されている。2作は明智と怪人二十面相の話。二十面相は冷静になって考えると、「明智探偵を負かしたい」というだけの稚気の塊の怪人なんですよ。驚かせたい、怖がらせたいという動機が強く、究極の愉快犯。『三角館の恐怖』は翻案作品だったのですね。読んだことある作品かと思っていたら、違う作品と勘違いしていた。作者自身が好きな作品であるため、執筆意欲が明らかに低い『断崖』とは段違いの力作。
乙一『箱庭図書館』。 「オツイチ小説再生工場」発の短編集。こういう企画だと、作者のスゴさが顕著に分かる。どれも面白いんだけど、最終話「ホワイト・ステップ」が良い。少しずつ重なり合う短編同士を、これが上手く最後でまとめている感じもあり、この話自体とてもいい話。同じ町、同じ登場人物がちらほら出てくるという構成が、短編集として良いです。だいたい作者らしい話。特に「ホワイト・ステップ」が最も作者らしい。あまりにも「きみにしか聞こえない CALLING YOU」だったけど。あとがきでも書かれていたように「王国の旗」が一番作者の作風からかけ離れている。宗田理をもっと幻想的にした感じ。
道尾秀介『シャドウ』。 世の中にはこんなすごい小説がゴロゴロあるんですね。絶対に何か騙されていると感じながらエピローグまで一気に読んだ。そんなの抜きにしても、主人公の成長譚としても面白かった。意味深な描写が全て意外な展開に繋がる手がかり。道尾作品は初めて読んだのです。評判が良いのは聞いていましたが期待以上でした。お笑い好きで、河童のコスプレしているイメージしかなかったのですが……。
新津きよみ『スパイラル・エイジ』。 本当に久しぶりに読んだ新津きよみの作品。何にも期待せずに読んだけど、とんでもない掘り出し物だった。最後、それまでのあれが繋がった時に震えた。四十路女性の奇妙な関係。女性の情念の物語。登場人物に悪意はないんだけど、こういう嫌なこと言う人いるよねというシーンが上手い。それが終盤の方、あんなことになっていくとは思ってもみなかった。悪人なんだけど、結構みんな魅力的。それまでの背景が丁寧に書かれていて、それが読ませるんですよ。
島田荘司『幻肢』。 幻と分かっていながら、恋人の幻と一緒に過ごす女子大生の話。島田作品の女性は皆、メンヘラ度が高くて怖いんですよ。本当にこんなことが起こるのかという内容だけど、終盤「100%起こる」と断言している登場人物がいて「本当かよ?」と思った。あらすじからは想像もつかないけれど、後味は非常に良い。事故にあった主人公について、周りが親族に連絡するだろと思わなくもない。
恩田陸『灰の劇場』。 0の章がノンフィクション部分で、1の章がフィクション部分。0と1が交互に描かれる特殊な形式の小説。同居する2人の女性。その心中までの過程を描いた物語。0の方は明らかに作者自身が主人公。こんなに作者としての心情を描いている作品は初めてなんじゃないか。そして、あとがきが一番怖い。
森博嗣『カクレカラクリ』。 大学生や高校生が、村に隠された絡繰りを探すという、結構爽やかで楽しい小説。「人間って凄い」という感動を描いている。クライマックスはそういう感動。120年後に作動する絡繰りをどう作るかで、デイスカッションを重ねるシーンがいくつかあって、そこが結構面白い。本を閉じて考えを巡らせてみた。僕が考えた結論とは違っていて嬉しかった。楽しい夏の謎解き旅行を、手軽に楽しめる作品です。
正岡容『小説 圓朝』。 「落語の神様」と呼ばれる初代三遊亭圓朝の人生を少年時代から描いた小説。ポーズフィラーを克服するために碁石を投げつけられる有名な修行が出てきて驚いた。寄席で師匠に妨害されて新作落語を創造するエピソードもあり、成長譚として面白い。病床の師匠と和解するシーンが感動的。圓生と言う名前の人は性格悪い人しかいないのか。
原案:高見広春、著:杉江松恋『BATTLE ROYALE Ⅱ REQUIEM』。 書いている人は違うけど続編。家庭事情や過去のエピソードが回想されて、回想が終わるとその子が死ぬというシーンが繰り返される小説。それは前作と変わらないけれど、後半が違った。半分以上、BRのOBOGたちの物語だった。シオリの正体はワクワクしたけど、名字をカタカナ表記で通していたのは無理があるのではないか。
セリフに「!」が多く(つまり怒鳴りあいが多くて)、任侠映画を見ている気分。でも、そりゃそうだよね。よく考えたら、前作と本作の映画版の監督が深作欣二だもんね。殺し合っているのは子どもたちだけど、中身は任侠映画だよね。
あらゆる児童虐待とあらゆるいじめと、あらゆる少年犯罪を網羅しているんじゃないかという子どもたちの過去エピソード。作中で被りはないけど、前作と結構被っている内容があるのではないか、確認していないけど。
僕もデスゲームを昔描こうと思ったことがあるので知っているけれど、こういうの描くって難しいんですよ。下手だと薄っぺらくなってしまう。極限状態の人間を説得力を持たせて描くのはとても難しい。それをこのバリエーション描くのってすごいことですよ。
泡坂妻夫『砂のアラベスク』。 短編集。異国を旅した気分になれる小説たち。表題作が特に旅行気分で良い。2番目の『ソプラノの愛』の夫婦の関係性も面白い。
単行本であらすじが書いていない本だった。普段だいたい文庫本を読んでいるので、最近はあらすじなしで小説を読み始めることがあまりない。予備知識なしで、ジャンルすらも分からず小説を読み始めるのは、それはそれで新鮮。
篠田真由美『ルチフェロ 切り裂きジャックの告白』。 ミステリィかと思って読んだら、ホラーっぽかった。雰囲気が出ている。作品全体から血の匂いがしてくる。外国が舞台で、外国の風景と人物描写に説得力がある。外国人ってこういう会話しそうっていうセリフばかり。
有栖川有栖『虹果て村の秘密』。 ミステリーランドの作品。ミステリー好きの少年少女に向けた作品。とても面白かった。地味で単純な推理の積み重ね、実はそれが結局一番、ミステリーの醍醐味だと思う。推理作家の心構えや書き方をさりげなく描いている。足跡の話と、密室の理由が良かった。犯人との対峙も素晴らしい。林業の話は最近、仕事で関わりがあったので感心しながら読んでいた。
登場人物紹介で主人公の友達「ユウキ」が「将来の夢は刑事」と書かれていて、「おっ、これはユウキが実は女という叙述トリックだな」と思って読み始めたら、序盤いきなり「女の子のくせに刑事に憧れるなんて」というセリフがあり、笑った。僕の予想なんて当然超えてきますよねと思った。
この作品、何でタイトルを『虹果て村の密室』にしなかったんだろう。秘密と言うほどの秘密ではなかったし、密室の方がキャッチーだし、作品を表していると思うんだけど。
歌野晶午『そして名探偵は生まれた』。 4つの短編。どれもオチの後に捻りがある。特に表題作と2つ目の話『生存者、一名』が面白い。表題作は探偵小説のパロディ的側面がある。名探偵が自分の解いた事件を小説にして発表したら、被害者加害者双方の関係者から訴えられて負けるというエピソードが「確かに実際にはそうなりそう」と思って面白かった。
『生存者、一名』は手記と報道記事が交互に書かれている。それが絶妙。誰が生存者なのかは、きっと最後まで誰も当てられない作品だと思う。
『館という名の楽園で』は推理小説マニアの浪漫ですね。例え話の書き方が素晴らしい。
夏目房之介:編『トイレの穴』。 作家や漫画家が「排泄」「トイレ」をテーマに書いたエッセイアンソロジー。汚い話ばかり。水木しげるはさすが、目の付け所が違うというか、戦争の経験を語っていて勉強になる。夏目房之介のエッセイに図解されていた和式洋式を合わせた便器、便利そうだから作ってほしい。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』。 冴えない主人公が美人バリスタが働いている珈琲店に入り浸る話。日常の謎を解いていくんだけど、作品全体に数多の仕掛けがある。読書前の印象とは全く違う面白さがあった。
解説を読んで愕然とした。これが、「推理部分に難がある」という理由で受賞を逃しているのか。改稿はされているらしいけれど、信じられない。日常の謎なのでインパクトは弱いかもしれないが、大小様々、地味なものから派手なものまで騙しの要素が詰まっている。読み始めた時と読み終わった後だと、サブタイトルの意味合いが変わる仕掛けが良いですね。
中島みゆき『邯鄲 夜会1991』。 中島みゆきのライフワークとも言える歌劇「夜会」の1991年のシナリオや構成の日記やインタヴューが載っている本。忙しく生きる女性の孤独の物語。往年の名曲がいっぱい出てくる。せっかくなので『二隻の舟』を聴きながら読んだ。内容も面白かったんだけど、リハーサルや舞台裏を描いた日記が面白い。暗闇の中で生歌を歌いながら衣裳を着替えるって、大変過ぎでしょ。赤字覚悟でやる仕事で、魂のこもった創作。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る』。 やっぱりレベル高い推理。前作同様7つの短編。それぞれが単体の推理短編として面白いんだけど、最後の話に向けての伏線が随所に貼られていて、何度も驚く仕掛け。意外性のある展開、ミスリードも豊富。関係性や素性は必ず驚きをもって開示される展開、良いですね。深水は作者自身か?
中島みゆき『金環蝕 夜会1992』。 歌劇「夜会」の1992年のシナリオや構成の日記やインタヴュー。幻想的な神話と天文の物語。アルバムでいうと『EAST ASIA』が出典の歌が多い。中島みゆきは「EAST ASIA」の頃から、個人の恋愛ではなく、社会や人類や博愛等の、もっと壮大なものを歌うようになった。ただ、それは1975年の「時代」からそうではあったんだけど。1990以前くらいの、悪い言い方をすれば女々しい歌ではなく、パワフルで神秘的な方向性に舵を切ったアルバムだったと思う。
アルバム「EAST ASIA」、すごいんですよ。「糸」や「二隻の舟」も入っているし、「浅い眠り」「誕生」もこれに入っているんですよ。他にも良い歌ばかりで、昔、よく聴いていました。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿3 心を乱すブレンドは』。 前の2作と違って長編。前の2作も長編といえば長編だったんだけど。バリスタ大会が舞台で、珈琲関連の知識が多く物語に絡んでくる。バリスタって、熱い世界なんですね。クレセント錠のくだりが地味だけど、好きです。日常の謎だからこそ、警察沙汰になっていないからこそ使えるトリックがあって面白かった。
中島みゆき『花の色はうつりにけりな 夜会1993』。 歌劇「夜会」の1992年のシナリオや構成の日記やインタヴュー。カフェテラスで人を待つ女性たちを描く。悲しく切ない人間模様。劇なので、多くの人が関わっていて、裏で動いていて、そのために予期せぬトラブルも多発する。機材トラブル等、大変そう。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿4 ブレイクは五種類のフレーバーで』。 過去のスピンオフのような短編詰め合わせ。これは正真正銘の短編集。いくつか叙述トリックで変則的な話。僕は檸檬の話が好きでした。絵面を思い浮かべると微笑ましい。
中田永一『ダンデライオン』。 絶対面白いと思って読んだ。このあらすじで面白くないわけないよね。計算されつくしたタイムリープSF。「高畑京一郎作品を思い出すなぁ」と思いながら読んでいたら、解説でずばり高畑京一郎作品を目指して書かれた作品と書かれていた。名作。タイムリープ部分はもちろん面白いんだけど、リープの間の日常描写がかなり魅力的。こういうところが作者の腕ですよね。ヒロインとの出会いから交際、結婚までが丁寧に書かれていて、20年間の主人公の変化のグラデーションが素晴らしい作品。『暗黒童話』と同じネタが使われていて笑った。あと、1つ何点を挙げるのであれば、表紙の絵が「こんなシーンないだろ」という絵。抽象的なイメージイラスト過ぎる。作者が今まで描いていないタイプの作品ではあるんだけど、確かにこの作者らしくて、この作者にしか書けない作品。高畑京一郎好きなら必ず読んだ方が良い。才能のある作家が、時間をかけて練り上げて磨いた作品。中田永一作品では一番の傑作なのではないか。
森村誠一『エネミイ』。 森村作品は昔いくつか読んだくらいなんだけど、こんな作品書く人だったっけ? めちゃくちゃ読みやすい。全然古臭くない。調べてみたら晩年の作品だった。暗い始まりなんだけど、終わり方は後味が良い。大きな不幸に見舞われた人たちの人生が交差していく物語。楽しい読書時間を過ごせた。
恩田陸『蜜蜂と遠雷』(文庫版上下巻)。 「恩田陸ってこんな作品を書くんだ!」「どうしちゃったの?」と衝撃だった。いつもの、半分くらいの力で書いているような小説(それでもとても面白い)ではない。ベテラン作家の本気中の本気。これは直木賞受賞するの、納得だなぁ。デビュー作から結構いっぱい読んでいるけど、他作品と比べると作品のパワーが圧倒的に高い気がする。登場人物がゾーンに入るシーンの描き方が、読んでいて肌が粟立つ。ドラマティックで、情熱的で、それでいて、思索を巡らせるシーンの端々に作者らしさがある。
僕はおピアノ、嫌いなんです。子どものプロスポーツとか習い事とか、何だか親のエゴが透けて見えて大嫌いなんです。それでもそんなの関係なく「深くて広くて、魅力的な業界だなぁ」と思わされたし、感動しました。延々とピアノを弾いている小説なんだけど、心に残る。
昔から恩田陸作品はそうだけど、この作品は顕著に上流階級の人たちばかり出てくる。子どもの頃からピアノって金かかりそう。そういう登場人物ばかりだから、なおさら風間塵のキャラクターが魅力的に見える。
そういえば、実は僕も昔ピアノを短い期間習っていたことがありました。本当に嫌で嫌で嫌過ぎて、2度とやりたくないと思ったものです。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように』。 テーマは不倫。人間の業を丁寧に描いた作品。シリーズ中で一番重厚で好きかもしれない。人の心は矛盾したものだけれど、それが人間の魅力でもあるのです。それを描けるのが物語の良いところ。
推理部分は前作までと同様、細かい描写や台詞に仕込んでくるので、すっかり疑って読む癖がついた。それでも全体像は見えないし、意表をついてくるので、楽しい。
源氏物語が大きく物語に関わってくる。やっぱり、教養として読んでおくべきかな。古典苦手だけど、読めるかな。現代語訳なら読めるかな。いっそ漫画から入ろうか。
恩田陸『祝祭と予感』。 『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集とエッセイ。危なかった。スピンオフなのは一遍なのかと思っていたら全編スピンオフだった。『蜜蜂と遠雷』読んでいて良かった。その後の話だったり、その前の話だったり。菱沼の前日譚があって驚く。本編ではほとんど出てこなかったけど、そういう思いがあったのかと分かる仕掛け。他の短編も、より深く各々の人生が見えてくる。本編読後の記憶が鮮明なまま、続けて読めて良かった。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿6 コーヒーカップいっぱいの愛』。 シリーズ前作までの推理法とは違う、手がかりを捜査で探していくタイプの推理小説だった。既に亡くなった人物の行動の理由を探すという、一見何をしていけばいいのか分からない謎に対してアプローチしていく経過が面白い。伏線がいっぱいで精緻な推理だけど、ロマンティックな心の機微を描いている。
最後の論理の不十分な推理を披露する理由付けがテクニカルで好きです。コナンでも時々やっているけど「それは論理に無理があるのではないか」「そんなことするか?」という推理を別の方向から補強しているテクニック。
明らかにある登場人物が怪しすぎで、何かある。この人は本物かという疑いまでは持てたんだけど、見抜けなかったですね。この人が左利きなのはどこに向けた伏線になっていくのか、頭にあったけど気づかなかった。
今野敏『隠蔽捜査』。 刑事小説。主人公が父親失格でエリート意識が強い、一見嫌な奴なんだけど、味がある人物。普通の感覚では性格悪いんだけど、芯が通っていて誠実で、一切保身に走らないという不思議なキャラクター造形。推理小説ではなく、ほとんど推理はしないで、人の葛藤を描いている。読み終わって、不思議とこんな主人公の次の活躍が読みたくなった。そんな小説。とても面白かった。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿7 悲しみの底に角砂糖を沈めて』。 短編集。ほとんど、奇妙なことがあったという話を喫茶店でしていると横からバリスタが推理を披露し始めるという構成。必要な手がかりを自然に全て喋らせているのがすごい。とうとうシリーズ主人公がほとんど出てこない。主人公じゃなくてもいいような役割しか与えられていなくて笑った。
今村昌弘『屍人荘の殺人』。 特殊設定モノの本格推理小説。これはネタバレしちゃいけないのかな? 結構序盤から出てくるけど。ロジックが堅牢。明智恭介というミステリ愛好会会長が出てきて、目を白黒させてしまった。江戸川コナンみたいな名前だな。ライトミステリィではない古典や本格を愛すると、登場人物に言わせておきながら、本作はライトミステリィというギャグか。内容自体は漫画みたいな話なんだけど、「それを使うのかぁ!」という驚きはあるし、終盤の謎解きがテクニカルで楽しい。多分、ホラー要素なくても、何を書いても面白いと思う。
僕はあんまりパニックホラーやスプラッターみたいなの好きではなくて(嫌いではない)、ホラーはジャパンホラーやアジアンホラーのような湿度が高いものが好きです。
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿8 願いを叶えるマキアート』。 3巻の直接の続編のような長編。主人公とヒロインの関係性を揺るがせるような展開が衝撃的なのは1巻以来で面白かった。上手いなぁ。推理部分が面白いのはもちろんだけど、動機を独白する部分が腕だなぁと思った。箇条書きで説明されたら全く共感できないような動機なんだけど、その独白を読むと何故か感情移入できてしまう。小説ってスゴいなぁ。割と綺麗に終わっているので、もう続編は出ないのだろうか?
麻耶雄嵩『貴族探偵対女探偵』。 麻耶雄嵩にしては一般受けしている貴族探偵のシリーズ第2弾。女探偵というツッコミ役を得て、更に楽しくなっている。女探偵が推理を披露して、推理も捜査もしないという斬新な探偵(の部下)がその推理をひっくり返す。キャラクターは奇抜だけど、麻耶雄嵩の別のシリーズの銘探偵メルカトル鮎と比べれば奇抜なのは設定だけだし、推理の内容はいたってスタンダード。麻耶作品は奇抜な内容と複雑な論理が楽しい。
メルカトル鮎のシリーズは推理小説の概念そのものに対するアンチテーゼみたいなところがあるから。変わった推理小説を読みたいのであれば、無謬の銘探偵メルカトル鮎のシリーズをおススメする。解が無限に発散したり、解が存在しなかったり、それでいてロジカルで面白い。もちろん人を選ぶ作品ではあるんだけど。
西村寿行『残像』。 短編集。時々西村寿行の作品を読みたくなる。暗いサスペンス。もくじを見て気づいたんだけど、これ読んだことあった。文庫版は『鬼が哭く谷』で、短編集の中の別のタイトルを使っている。今回読んだのはその元になった単行本だった様子。読む前に気づいたけど、読みたかったからもう1度読みました。そういう本を売るための姑息なことはやめてほしい。『鬼が哭く谷』と『十四人の旅行者』が特に面白かった。
斎藤栄『女流将棋殺人事件』。 女流棋士の高校生が警察官の父と協力して事件を解決する連作短編。スタンダードな殺人事件や誘拐事件。将棋が強いだけで特に普通の高校生が事件に巻き込まれていく。将棋関連の話だけど、あんまり謎を理詰めで解いていくわけではない。短編なので、とんとん拍子に事件が解決していく。
鈴木光司『その日をつかめ』。 エッセイ。筏を自作する話が面白い。『ループ』は未読なんだけど、船舶の中で『ループ』を書き上げたエピソードが出てきて驚いた。鈴木光司はどの作品でも海のシーンが印象的。本作の中で「水というものに強く惹かれる」と言っていて、自覚的な様子。人間としてのパワーがある。「子どもたちは冒険をした方がいい」と再三言っているエッセイ。どちらかというと僕はこの作品で書かれているような、本を読んだりゲームをしたりしていた子どもだったけど、これを読むと筏を作って海に漕ぎ出したい気持ちにさせてくれる。
新津きよみ『二重証言』。 嘘をつく主婦たちのサスペンス。大人になって読むと、新津きよみってとても面白いですね。子どもの頃読んだ時は全然刺さらなかったけれど、心理描写が良いんです。登場人物たちは普通の人たちなんだけど、ふとしたセリフにハッとするシーンがあって魅力的。
清水義範『バールのようなもの』。 ユーモア小説。新作落語の原作をやっている人で、表題作や『みどりの窓口』は立川志の輔の落語で聴いたことがあったけど、内容が若干違ったような気がする。バールのようなものはバールではない。
柄刀一『マスグレイヴ館の島』。 シャーロック・ホームズ作品に詳しければもっと楽しめた作品。前半、熱心なシャーロキアンなら楽しめそうだけど、知らないとなかなかついていけないかも。あらすじに「独房で墜落死した男」とあり、「そんな不可能犯罪、死体を移動させたか、死体の上に独房を建てたか、前提情報が間違っているかのどれかでしょ」と思っていたら、そのどれでもなくて嬉しかった。外国が舞台で、外国名の人物ばかりなので若干読みづらかった。僕は外国人の名前が多いと頭に入ってこないので、少し苦手意識があります。
西村京太郎『猿が啼くとき人が死ぬ』。 普通の量産作品を読むと、ほっとする。子どもの頃は分からなかった感覚だけど、隙間時間に気軽に読める物があるというのは素晴らしいことです。殺人事件の現場で猿の啼き声が聞こえたという不思議な謎から事件を解決していくというあらずじ。「何の音が猿の啼き声に聞こえたんだろう?」とワクワクして読み出した。警察が違法スレスレというか、ほぼ違法みたいな方法で捜査していて楽しかった。
北方謙三『死がやさしく笑っても』。 うーん、そんなに入り込めなかった。この作者は初めて読んだので、リズムに乗れなかっただけか。ハードボイルドは楽しみ方が難しい。強いお爺ちゃんモノなのかな。
斜線堂有紀『キネマ探偵カレイドミステリー』。 探偵役が映画マニア。いろいろな映画の話題が出てきていて、知っている作品もあって楽しかった。『独裁者』の最後の演説は僕も好きで、練習して半分くらいは英語で言えるようになったことがあったので、違和感に気づきましたよ。作者のペンネームは島田荘司『斜め屋敷の犯罪』から取られているらしく、探偵役の口調が御手洗潔御大に似ていて嬉しかった。そんなに複雑な推理ではないけど、キャラクターと事件の描き方が工夫されていて面白い作品。
神田茜『フェロモン』。 女性の心情を綴った小説。連作短編。小説ってこういう楽しさでしたね。純文学の様相もある。4編は女性の恋愛や家庭を、最後の1編は夢を追いかけながら働く人を描いている。よく考えたら神田茜は、二代目神田山陽に指示した講釈師なんだから、厳しい修行に超えて夢を叶えた人なんだよね。
斜線堂有紀『恋に至る病』。 すごい、こんな小説を書けるのか。恋愛小説ではない、クライムノベル。ここ最近で小説を読んで一番怖かった。最後の方はミステリィ。こんなことが起こり得るのか? という内容なんだけど、小説に説得力があるので、物語に引き込まれる。胸が痛くなる作品。弱い男の子にとって、完璧な女の子は得体が知れない、底知れなく恐ろしいものということを上手く表現している。フラッシュフォワードで悲劇的な結末は分かっているのに、憑りつかれたように読んでしまった。
後味は悪いけど、この作品が広く評価されていないのならば、世の中に対して僕は怒りを感じる。それくらい良い作品だと思うし、心に残った。
西村京太郎『寝台特急「日本海」殺人事件』。 1つの殺人事件から捜査を進めて、その裏にあった何件もの殺人事件を見つけ、犯人を特定していく話。特にすごいトリックがあるわけでもないし、本当にスタンダードな刑事モノの推理小説だったけど面白かった。僕の苦手な時刻表トリックもなく、地道な調査と推測で犯人を追い詰めていく。こういうのは初めから最後までカッチリ決めて書きだしているのだろうか、結構アドリブで頭から書いているのだろうか。量産作家は要点だけ決めて頭から書いているイメージ。
荻野アンナ、布施英利、井上文雄、前田學、柏原孝夫、鳥居鎮夫、高橋良、上野正彦、辺見庸『BIGAKU鼻の文化考』。 鼻に関する歴史的、文化的、社会的な考察をするエッセイアンソロジー。作家や学者が多く、結構専門的な話もあって面白かった。特に、鼻濁音の話と、水質テイスターと、上野正彦。
上野正彦の本は以前にも読んだことあるんだけど、まさに実在の監察医探偵。遺体捜索の方法を新しく作り出す話がワクワクした。
貫井徳郎『慟哭』。 解説でも書かれているけど、こういう小説を書く人はそういう仕掛けをしないというのが、意図しているのかいないのかミスリードになっている。小説が上手くて、それ自体がミスリード。これは驚くよ。警察内部の派閥や、新興宗教に傾倒していく男の心情が克明に描かれている。いいね、ラストの会話が。こういうオチは嫌われるのかもしれないけど、不条理を描いていて好きだな、僕は。どこまでもリアルに描いている感じで、良い小説。
金原ひとみ『星へ落ちる』。 10代20代の頃は絶対に楽しく読めなかっただろうし、そもそも読もうと思わなかった気がする。年を取ったからか、結構楽しく読めた。恋愛小説なのだろうか。精神的に不安定な感じ。金原ひとみ作品って初めて読んだんだけど、地の文がみっちり書かれているんですね。もっとケータイ小説のような会話ばかりのものを想像していたんですけど、全然違った。
馳星周『暗手』。 失敗した。続編だったのか。解説を読んで知った。本作から読んでも問題ないらしいですけど。せっかくならやっぱり最初から読みたかった。初めて読んだ馳星周作品だった。読み始める前の印象と結構違う。苦手なハードボイルドだったけど、かなり楽しめた。裏社会に生きる主人公が娼婦と組んで、サッカー選手とその姉を騙すという話なんだけど、だんだんその姉弟と仲良くなってしまって、感情が揺らいでいく物語。読み応えがある。主人公の葛藤が克明に描かれていて、良い作品。そして、意外にも読み易い。海外が舞台で、外国名の人物がいっぱい出てくるので、僕は苦手なタイプの作品なのに、スイスイ読めた。今までハードボイルドにあまり触れていないので、乏しい知識の中から、主人公の姿を冴羽リョウに変換して読んでいた。あれはほとんどコメディだけど。
司馬遼太郎『言い触らし団右衛門』。 久しぶりに歴史小説を読んだ。武士は立身出世にいろいろな手段を使ったんですね。いつの時代もPRは大切。戦国末から江戸時代にかけての物語。短編集。
梓林太郎『一ノ俣殺人渓谷』。 山岳で起こった殺人事件。山登りをする人たちがいっぱい登場する。少しずつ明かされていく女性の過去。解説で、山で人を殺すのは簡単と書かれていて「確かにその通り」と思った。事故に見せかけて殺すのは簡単。わざわざ策を弄さずとも登山に誘えばいい。
西村京太郎『南九州殺人迷路』。 失踪事件と殺人事件が、政治家の暗殺に繋がっていく。中高生の時は西村作品のすごさが全然分からなかったけど、こんな説得力があって、それでいて誰が読んでも面白い作品を描けるってスゴいことですよ。
内田康夫『喪われた道』。 浅見光彦シリーズ。虚無僧姿の会社役員が山中で殺されるという事件。状況がキャッチー。このシリーズ久しぶりに読んだ。浅見光彦は変人型の名探偵ですねこれは。水乃サトルを思い出した。半年前に旅行に行った場所とか、子どもの頃に旅行に行った場所がいろいろ出てきて楽しかった。土肥金山は楽しいですよね。
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ』。 そんなにあからさまに続くのか。1巻毎完結じゃなかったのか。間を空けずにⅡ巻を読まないといけないと思って、すぐにⅡ巻を買ってきてしまった。面白いのは知っていたよ。『千里眼』のシリーズは高校生の時に結構読んだので。それ以来の松岡作品。物凄い数の作品を書いているのは知っていて、きっと面白いんだろうとも思っていたけれど。読む時間もないので、敢えて読まないでいた。ここにきて、無料でⅠ巻をもらってきて読んでしまった。ああ、もう読まなきゃ。やっぱり、こんなに面白いなら読まなきゃ。Ⅰ巻、赤毛のアンのような少女が、博覧強記の名探偵に成長する物語だった。続きが気になる終わり方でした。
木谷恭介『丹後浦島伝説殺人事件』。 読んでいる時はタイトルを忘れていたけれど、読み終わってみると、確かに浦島伝説が少し関わっていた。父の死を探っていくと、自らの出生の秘密が分かってくる物語。シリーズの探偵役である警部がかっこいい。全然知らない作者だったんだけど、かなり多くの作品を発表している人でした。面白い小説をいっぱい書いていた人でも、あまり後世に名前は残らないのですね。西村京太郎や内田康夫や山村美紗との違いは何なのだろう。探偵役も魅力的なのに。
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ』。 ハイパーインフレーションが起きた日本が舞台の推理小説。博覧強記の名探偵にしかできない推理法で、インフレを引き起こした犯人を追い詰めるクライマックスが読み応えあるんです。その切なさも。真犯人との最後の会話が泣かせるんです。ⅠとⅡで1つの話ですね。そして、ここまで読んでしまったら、続きを読まないわけにはいかないですね。
島田荘司『星籠の海』(文庫版上下巻)。 もったいなさ過ぎて、読み始めて何度かやめるということを繰り返していたんだけど、この度遂に無事読み終わった。読み終わって放心するくらい面白かったよ。4~5人分の人生、人間模様を丁寧に描きつつ、推理小説2~3冊分の見せ場と、キャラクターの楽しいシーンを描きつつ、歴史ロマンを描いているとんでもない作品。満を持して、作者の故郷を舞台にした傑作。『水晶のピラミッド』『眩暈』『アトポス』辺りの、作品にパワーが満ち満ちていた時の作品に近い感じ。本筋にほとんど関係ない挿話が時々書かれることがあるんだけど、本作は全ての物語が事件解決に向かって収束していく。今回は明確な組織のボスがいて、シリーズ最大の、世界的な犯罪者。その狡猾で組織力もある人物にどうやって到達するのかというところが、最大の見どころ。いろいろな好きなシーンはいっぱいあるけど、最序盤の海の模型で実験するシーンが結構好きです。
小説の面白さが満載の作品。島田荘司作品が自分に合っているというのはあるけど、名作だと思う。エピローグを見る限り、きっと作者にとっても特別な作品であることは間違いないと思う。
『万能鑑定士Qの事件簿』も相当面白かったんだけど、その直後に『星籠の海』を読み終わったので、頭がそっちになっていた。『星籠の海』を読んでいなかったら、結構ずっと万能鑑定士のことが頭に残っていたと思う。そのくらい万能鑑定士、面白かったんだけど。世の中、すごい小説ばかりです。
西村京太郎『私を殺しに来た男』。 10作入った短編。1作だけ十津川警部の話。解決編がある犯人当て作品が数作入っていて驚く。こういうのも書いてたんだ。イメージが変わった。野球関係の推理小説や、愛についてのショートショート。マリー・セレスト号の悲劇を描いたSFっぽい海洋サスペンスまである。トラベルミステリィばかりが有名だけど、本当に様々なものを書ける人だったのですね。
山口謠司『日本語の奇跡 <アイウエオ>と<いろは>の発明』。 新書。日本語の歴史。漢字、片仮名、平仮名の成り立ち。いろはから五十音への変化。今我々が使っている言語は、過去の多くの頭のいい人たちが築き上げてきたものなんですね。日本史の話も多くあって、楽しい読み物でした。
内田康夫『鳥取雛送り殺人事件』。 雛人形がテーマの殺人事件。浅見光彦が事件の第一発見者で事件に関わっていく。あくまでルポライターとして事件に関わる。家族の関わりもなく、警察官の死に涙するなど、シリーズの他の作品とは雰囲気が違う。
山本博文『「忠臣蔵」の決算書』。 赤穂事件を経済面から解説した本。かなり詳細に金銭の流れを記録につけていたため、そのやりくりについて後世に伝わっている。赤穂義士伝でお馴染みの義士たちの、金銭面の苦悩が見えてきて楽しかった。
講談の赤穂義士伝(忠臣蔵)は、『神崎の詫び証文』『赤垣源蔵、徳利の別れ』(銘々伝)、『忠僕元助』『荒川十太夫』(外伝)が好きです。『南部坂雪の別れ』(本伝)が良いという話は聞いているんですが、まだ観ていないので観たいです。
西村京太郎『謀殺の四国ルート』。 4つ話が入った短編集。表題作は「わざわざそんなことするか?」という話だった。最後の『十津川警部の休暇』という最も短い話が、殺人事件は起こっていないという変わった話で、哀愁漂う感じで面白かった。
綾辻行人『深泥丘奇談』。 ホラー、あるいは作家の奇妙な幻覚の世界。夢とも現とも知れない少し不気味な世界に迷い込む小説。主人公=作者として読めるので映像を想像しやすい。妄想っぽいけど、わりと癖のないホラーというか奇妙な話だと思う。
『悪霊憑き』という話の冒頭で、京極堂のセリフを引用している。ちょうど京極夏彦の作品を並行して読んでいるところだったので笑った。
時々出てくる『妻』。別に他の小説ならなんてことのない女性像なんだけど、主人公=作者なのであれば、妻=小野不由美なので、「この人が『十二国記』とか『ゴーストハント』とか『屍鬼』とか書いたのかぁ」と思いながら読むと面白い。
京極夏彦『塗仏の宴 宴の支度』。 長い。『宴の支度』だけで千頁近い。そして、いいところで終わって、『宴の始末』に続く。ほとんど最後の方まで事件らしい事件は起こらない。民俗学的な話や妖怪の蘊蓄をずっと喋っていて面白い。きっと作者は京極堂のような人だと言うことは分かる。馴染みのある地名がいくつも出てきていて、臨場感があった。
山本博文『「関ヶ原」の決算書』。 これが著者の遺作だったのですね。決算部分は最初と最後くらいで、あとは関ケ原と島津家の話。人間は燃費が悪く、戦争というのは莫大な費用がかかるのですね。歴史に残るくらいの大戦は、途方もない大事業。勝った方の総取りで、徳川は天下人になった。
京極夏彦『塗仏の宴 宴の始末』。 バトル漫画みたいな展開だな。京極堂の憑き物落とし、『宴の支度』からどれほど待ったことか。『支度』『始末』合わせて2千頁は長すぎる。「そんなことが可能なのか?」という方法でいろいろやっている真相。
この百鬼夜行シリーズくらいしか京極夏彦作品は読んでいないんだけど、文章を読んで思い描く映像が不思議と仄暗いと感じる。昼間のシーンでも、全てのシーンが薄暗い印象を受ける。そんな不思議なイメージがある作家。他の作家の作品にはない感覚。何なんだろう、僕の先入観の問題だろうか。
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿III』。 上手いなぁ。最後の雑学ネタは知っていたけど気づかなかった。雑学ネタを物語に落とし込むのが本当に上手い。言葉になっていない部分でのロジックが結構あるので、小説より映像作品や漫画に向いている推理小説。最後の犯人との対話と、犯人の思惑が小説として面白いし、そこに上手く雑学ネタを使っていて素敵な作品でした。そして、音楽プロデューサーの詐欺師の真犯人が、どう考えても小室哲也がモデルで笑ったよ。いーい話なんですよ。実在の商標や固有名詞がいっぱい登場するけど、そういう作品の世界観でないと、ホームズみたいにいろいろ言い当てることができないからそう書いているんですね、きっと。

【最近クリアしたゲーム】
Nara's Art ~ナラズアート~『​ メレンゲの怪 THE ANOTHER FiLE ​』。
他の人も怪しい人、いっぱいいましたよね(笑)
解答に懸賞つけて推理を募るという勇気ある試みに拍手。
僕なら恐ろしくてそんなことは絶対に出来ないけど、やってみたいですよね。
作者にはリスクしかない。推理モノを愛して、プレイヤーを楽しませたいという純粋なサービス精神がないとできないこと。ただただ尊敬します。
知人とディスカッションをしたのですが、「こいつら実は全員ロボットなんじゃないか」説が濃厚でした。
その推理はここでは書かないけど。
僕たちの推理によると、少なくとも主人公はロボットの可能性が高い。
推理「登場人物たちは貧乏人である」
友達たちとペンションに宿泊して、夕食に肉野菜炒めとポトフとパンが出てきて、「色鮮やかな料理がずらりと並んで」「豪華だ」と歓声を上げる人たち。きっと彼女たちが住んでいる所は、亜寒帯・寒帯のメレンゲウェハースでも寒い方で、野菜が採れなくて、野菜は高級品なのだと思いますが、それにしても……。
メタ推理「作者は貧乏人である」
僕は兼ねてから、フリーゲームが趣味の人は貧乏人であるという説を提唱していまして……。





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最終更新日  2025.11.05 21:44:05
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