秋の月

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Oct 12, 2008
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カテゴリ: 雑記
携帯に表示されたメールの、その短い文言。

私はそこに並んだ文字を見つめ、目を丸くした。




「あの、バカ・・・・」




次の瞬間、私の口からはそんな言葉が漏れ出ていた。


傍らのソファに横になっていた旦那が、
動揺する私の表情を怪訝そうな顔で見つめているのがわかった。











『火曜の夜、時間ある?』




そんなメールがたくみから来たのは、昼過ぎのこと。
それを見たとたん、私の胃は少々キリキリと痛んだ。


そんな状況に嫌気が差し、会社の飲み会に参加せず逃げるようにして退社したのは
ほんの数日前のこと。

会社では私の評価は相当悪いだろうな・・・・

たくみは採用担当の部長の直属の部下の立場にあり、
上司からの信頼も厚い。
仕事に関連することでなにか探りを入れられるのかな・・・・
もう煮るなり焼くなり勝手にしてくれ・・・・
クビになっても別に痛手はない。
せいぜい年末までゆっくり過ごしてやるさ・・・・


私は内心投げやりになりながら、
それでも言葉を選びきれず、

ようやく短文のメールを返信した。



『別に用事はないけど』



そうメールを送信し、携帯を机に置こうとした時、
まるで私のメールを待ち構えていたかのような早さで
たくみからの返事が送られてきた。



『飲みいかん?』



まぁ、そういう方向に話は流れそうだとは思ったけど・・・・

なんだ? この返信の異様な早さは。
気合入りすぎじゃないか??

しかも火曜日って・・・・急だな。
元から今週の木曜日の夜は旧友と会う約束をしてあるのだ。
忙しい旦那を夕食時に2日も一人にするのは、
さすがに気まずい。

来週にしてもらったほうがいいかな?
でも、たくみの話を先延ばしにすればするほど、
彼からどんな話が降ってくるか気になる私自身が
蛇の生殺し状態になるのは目に見えている。

さて、どうするか・・・・。


私は即答を避けた。



『旦那と相談するから、ちょっと待って』

『よろー』



たくみからは妙に気の抜けた返事が返ってきた・・・・。











さて、返答をどんどんと先延ばしにしている間に、
日はとっぷりと暮れてしまった。
夕食すら食べ終わり、ソファに横になってテレビを見ている旦那に
火曜日の件を切り出せたのはすでに夜の10時を回ったころだった。

急な話に旦那が眉をひそめたのは、
その誘いに私自身が気乗りをしてない様子だったから、
というところも大きいだろう。

私の態度も演技ではない。それなりに気の重くなるようなお誘いだったのだ。
大体、この時点でもなんでこんな急に私を酒の席に誘ったのかが
さっぱりわからない。
たくみと私が社内でほぼ会話を交わさず、冷戦状態に陥っているのは
すでに旦那も知っている。
(ちなみにたくみとその彼女、私と旦那はお互いに顔見知りである)

まぁ、たくみの事は永遠に終わったことにする気満々なので、
こんな話もちらほらとしていたわけだ。



「行くのはそっちの判断に任すけど、無理はないようにね。
  すぐ体調崩すんだから」




そうは言ってくれたものの、
さすがに快い返事をくれたというわけではなかった。

私の方も悶々とした表情のまま、しばらく携帯をもてあそんだ後、
旦那にやり取りを隠すつもりもないので、その場でメールを送った。



『あまり遅くならないなら。
  酒もあんまり飲めないけどね』




おいしいお酒は木曜日に取っておくんだから!

なんて、心の中で強がりを言いながら書いたメールだった。



数分後、たくみからの返信メールが着信。
私が設定していた携帯の着信音のおかげで、
旦那にもメールの送信者はだれだかわかっているはず。
だが、私も気が乗らないので、その場で携帯には手を伸ばさない。


が。


十数秒後、ふたたび携帯がメールの着信を告げた。

ちょっと不審に思った私は、そこで携帯を手に取った。



『りょーかいっす』



そして2通目。



『グチばかりになってしまったらすまん』




・・・・・・・ん?


予想外の内容に私は再び眉をひそめる。
愚痴、ということは、私の仕事が云々ということより、
たくみ自身になにかあって話がしたい、ということか?

一体何の話をしたいのかさっぱりわからないが、
どうやらここで私のほうから、

何かあったのか?

と突っ込んで欲しいという事は目に見えているが。
それでも警戒心の解けない私は、またもや短く返信する。



『わかった』



程なく返事が返ってきたが、それは・・・・。














『振られてしまいました。
  あはははは・・・・』















Σ(○ Д ○;)










って、それはまったく予想外の告白なんですが!!!!


たくみには10年来の付き合いの彼女がいる。
ただし、お互いにもうそこそこいい年なのにもかかわらず、
結婚のケの字も出ていなかったらしい。

おそらくたくみの方が、結婚によって束縛されるのを
 『なんとなく』 『明確な理由もなく』 良しとしていないのがその原因だろう、
というのは、たくみや彼の彼女を知ってる仲間内の間、
そして彼の会社の同僚の中でもっぱらの通説になっていた。

そろそろ微妙な年頃を迎える彼女の堪忍袋の緒がいつまで持つのやら・・・・

たくみ本人以外はほぼ全員がそれを気にしていたし、
本人も周囲の人たちからの忠告は耳が痛くなるほど聞いていたはずだった。




で。




ついにぶっちり切れられてしまいましたか・・・・・
あーあ・・・・





「あの、バカ・・・・」





必要以上に動揺してしまった私は、
うろたえまくった挙句にそうつぶやいてしまった。

横にいた旦那が、そんな私を見て怪訝そうに声をかけてくる。

ちょっとここまで動揺した姿を見られたら下手に誤魔化せないな。
そう判断した私は、旦那に自分の携帯を投げ渡した。



「一応人様のプライベートだから。
  他人にはしゃべらないでよ」




画面に表示されっぱなしのメールを見た旦那も、
数瞬の間の後、小さくつぶやいた。



「あーあ・・・・」



旦那は驚くというよりも、冷めた苦笑いを浮かべていた・・・・。


一応、そこで来たメールを放置するのは申し訳ないので、
すぐに返信を返す。



『 Σ(゚Д゚)

   やけ酒ですか。
   それじゃさっさと帰るとか言いづらいじゃないか』




やや硬い文面になってしまったのは、
やはり今までの警戒心が解けきれないからで。



『いやー、既婚の人を時間引っ張ることはさすがにせんよ~』



一応そこは配慮してくれるつもりではあるっぽいけど・・・・
現時点では。

果たしていざ酒が入って舌がまわりはじめたら一体どうなるのか。
たくみが落ち込んだり、愚痴る姿を見たことがない私には
まったく想像がつかない。

つか、無事に帰れるかな、私・・・・
(なんとしても無事に帰るつもりだが)



『明日の祝日、夕方まで時間あるんだよね。
  そっちのほうがゆっくり時間は取れるけど?

  夜のがいいっつーなら火曜の夜でもいいけど。』




ダメ元で、こんなメールを送ってみる。
これならば夜会うよりは危険を避けられる。



『飲んだくれるのは夜の方がいいな
  火曜で』




そ、そうか~~~~~~~~~~。

独り身の寂しさ滲む秋の夜長は確かにつらいもんね。
大酒飲んで爆睡したほうが楽は楽だろう。
って、納得してどうする<自分






orz







ああ、もうこんな時間か。

いい加減寝るかなー。





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Last updated  Oct 13, 2008 04:02:05 AM
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Re:急転直下(10/12)  
で・・・その後どうなりました??
なんて、、人の不幸を・・・w

急転・・って事は、冷戦状態から抜け出そう??

(Oct 27, 2008 10:26:31 PM)

Re:急転直下  
キリカ さん
コメントありがとうございます。
いやしかし、私も相当動揺したのか、
数行でまとめられる内容を、
よくぞここまで長々と書いたものだなぁ(笑)
とりあえずこの話しに出た火曜日の呑みは
無事に乗りきれました。
会社での冷戦状態は相変わらずですが、
水面下外交は開始された感じで…
で、成り行きで今日も呑みに。
はぁ (Oct 31, 2008 09:52:12 AM)

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