あーしゃ♪の部屋~雑貨マニアの部屋♪

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■海中電車■

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■海中電車■

 今は夏休みです。
 みっちゃんはきのうから家族で海に来ています。
 みっちゃんは海に来るのは今回が初めてです。
 なのでみっちゃんは楽しくてしょうがありません。
 けさも朝ごはんを食べると、お父さんやお母さんを待たずに外へ出ようとします。
「みっちゃん。まだお母さん達が行くまで海に入ってはいけませんよ」
「はーい!」
 お母さんの注意に元気よく返事をしてみっちゃんは飛び出して行きました。

 砂浜に行くとまだだれもいませんでした。
「いっちばーん!」
 みっちゃんがバンザイをしながらそうさけぶと、岩かげの方からきのう友だちになったばかりのたーくんがひょっこりと顔を出しました。
「あっ、たーくん。おはよう。今日は何して遊ぶ?」
「海中電車に乗って海の中に行こう」
 たーくんは答えました。
「カイチュウデンシャ?何それ。

 でも、お母さんが来るまで勝手に海に入ってはダメだって言われたよ」
「電車に乗って海の中に行くから大丈夫だよ。さぁ、行こう」
「うん」
 電車に乗って行くなら大丈夫かなと思って、みっちゃんはたーくんに付いて行きました。

 電車はたーくんがさっき出てきた岩の向こうに止まっていました。
 横には『すなはま駅』と書かれた看板が立っています。
 電車は青色で、一両しかありません。
 線路もないので、電車というよりはバスみたいだなとみっちゃんは思いました。
「お金、ないよ」
 みっちゃんは大切なことに気が付いてたーくんに言いました。
 お金を払わないと電車には乗れません。
「この電車、子どもはタダなんだ」
 そう言って電車の後ろのドアに近づくと、車しょうさんがいて、青色のアメを一つくれました。
「いらっしゃい。電車に乗るときはこのアメをなめててね。かんではだめだよ」
 みっちゃんは言われたとおりにアメを口の中に入れました。
 そのアメは口の中でシュワッとして、ソーダの味に似ていました。
 それからたーくんの後について電車に乗りました。

 電車の中は天井まで海水でいっぱいでした。
 でもちゃんと息が出来ます。
「さっきのアメをなめてたら平気なんだよ」
 たーくんは言いました。
 不思議な事にアメはいくらなめていても減りません。
 それに水の中でもちゃんと話すことが出来ました。
 いよいよ車しょうさんの合図で電車が出発しました。
 乗客はみっちゃんとたーくんの二人だけです。
 みっちゃんはちょっぴり不安でしたが、ワクワクしていました。
 電車はそのまま海の中へ入って行きます。

 海に入って最初の駅は『浅瀬駅』でした。
 電車の頭だけが海面から出ています。
 この駅ではカニさんとヒトデさんが乗ってきました。
 とても不思議な感じです。
 人間と海の生き物が同じ電車に乗っているのですから…。

 次の駅は『ちょっと深い駅』でした。
 ここではイソギンチャクさんとトビウオさんが乗ってきました。
 その次の『もっと深い駅』ではイカさんとタコさんと何種類かのお魚さんが乗ってきました。
 電車の中はけっこう混んできました。

 終着駅は『竜宮城駅』でした。
 みっちゃんはたーくんといっしょに降りました。
 そこは海の底でしたが、陸の上と同じように息が出来ました。
 アメはまだ口の中に残っています。
 みっちゃんはたーくんに手を引っぱられてスイスイと泳いで行きます。
 竜宮城の中ではいろんな海の生物たちの商店街があって、買い物をしていました。
 ウロコのはがれてしまった魚のために替えのウロコが売っているお店もありましたし、おいしそうな食べ物を売っているお店もありました。
 その商店街を通り抜けると、王様が住むお城がありました。
 お城の中の人はほとんどの人が人魚でした。
 色んな色の魚たちも泳いでいて、とてもきれいです。
 きれいな音楽も聞こえてきます。
 みっちゃんとたーくんは王様にあいさつに行きました。
「よく来たね。ゆっくりと遊んで行きなさい」
 王様はそう言いましたが、みっちゃんは竜宮城に行った人の昔話を思い出しました。
 その人が3日間竜宮城で遊んで帰ったら、地上では百年の時がたっていたという 『うらしまたろう』のお話です。
 みっちゃんは怖くなって、たーくんに帰りたいと言いました。
「ではおみやげをあげよう」
 王様は言いました。
 みっちゃんは箱をもらっても絶対にふたを開けないでおこう思いましたが、もらったのは七色に光るきれいな巻き貝でした。
 それからまた電車に乗りましたが、みっちゃんはつかれてすぐに眠ってしまいました。

 気が付くとそこはホテルのベッドの上でした。
「起きたの?みっちゃん、砂浜でお昼寝してたのよ」
 イスに座って本を読んでいたお母さんが言いました。
 じゃあさっきのは夢だったのかなぁ。
 みっちゃんはそう思いました。
「きれいな巻き貝ね。それ、浜辺で見つけたの?」
 みっちゃんがお母さんの指す枕元を見ると、王様にもらった巻き貝が置いてありました。
 やっぱりあれは夢じゃなかったんだ。
 みっちゃんがそっと巻き貝に耳を当てると、竜宮城で流れていた音楽が聞こえてきました。
☆おわり☆


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