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■雨の日のお友だち■

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■雨の日のお友だち■

 今は六月。『つゆ』といって、雨がたくさんふります。
 今日も朝から雨で、日よう日ですが、どこにもあそびに行けません。
「つまんないなぁ」
 ミィちゃんはまどの外をながめながらつぶやきました。
 ミィちゃんはひとりっ子なので、お家の中では一人であそばなくてはいけません。
 ときどきお友だちのお家にあそびに行ったり、お友だちがミィちゃんのお家にあそびに来たりしますが、そんなにいつもいつもは、いっしょにあそべません。
 だからみいちゃんは雨の日が大きらいです。

 今日は朝からお母さんもお出かけしているので、ミィちゃんは一人でお留守番です。
「わたしにも弟か妹がいればいいのになぁ」
 ミィちゃんはお人形で遊びながらつぶやきました。
 そう言えばもうすぐお母さんは、赤ちゃんが生まれるって言っていました。
 今日はその『ていきけんさ』で病院に行っています。
 そしたらミィちゃんはお姉さんになります。
 それを考えるとミィちゃんはちょっと楽しくなりました。
「早く赤ちゃん生まれないかなぁ」
 お母さんのおなかはとても大きくなっていますが、まだ1ヶ月以上しないと赤ちゃんは生まれてこないそうです。
「やっぱりつまんないなぁ」
 1ヶ月もすると、学校は夏休みです。
 夏休みはずっと後のことのように感じます。
 ミィちゃんは人形あそびをやめて、本をよむことにしました。
 ミィちゃんは小学校に行って、たくさん字をならっています。
 弟か妹ができたら絵本をたくさんよんであげれるように、ミィちゃんは本よみのれんしゅうすることにしました。
「ミィちゃん、なによんでるの?」
 とつぜん、後ろから声をかけられて、ミィちゃんがふりむくと、そこにはミィちゃんより小さい男の子が立っていました。
「あなた、だぁれ?」
「ボクはトモくん。」
 ミィちゃんが名前を聞くと、男の子はそうこたえました。
「何でここにいるの?」
「ミィちゃんが一人ぼっちでさみしがってるから、ボク、遊びに来たんだ」
「ほんとう?」
「うん。だからご本読んでくれる?」
「いいよ。読んであげるね」
 トモくんはミィちゃんの返事を聞いて、ニッコリ笑いました。
 いきなりあらわれた、ふしぎな男の子です。
 だれもいないはずのお家にどうやって入って来たのかわかりませんが、ミィちゃんは前から知っているお友だちのような気がしました。
 それからミィちゃんとトモくんは本を読んだり、オモチャで遊んだりしました。
 夕方になってお母さんが帰ってくるころに、トモくんは「もう帰る」と言いました。
「また、遊びに来る?」
「うん。ミィちゃんが一人ぼっちの時は来てあげるね。でも、ミィちゃんのお母さんにはナイショにしててね」
「なんで?」
「お母さんがビックリするから。そしたらボクはもう遊びに来れないんだ」
「わかった。だれにも言わないよ」
「うん。じゃあ、またね」
 ミィちゃんがやくそくをすると、トモくんはうれしそうに笑って帰っていきました。
 それからトモくんは雨の日の、ミィちゃんが一人の日には、かならず遊びにやって来ました。
 ミィちゃんは雨の日がきらいではなくなりました。
 でも『つゆ』が終わったとき、トモくんは「もう遊びに来れない」と言いました。
 ミィちゃんがわけを聞くと、トモくんは「またすぐに会えるよ」と笑って帰っていきました。
 でもミィちゃんはとてもさみしくなりました。

 明日から夏休みです。
 その日の夜、お母さんは病院に行きました。
 そして次の日の朝、男の子の赤ちゃんが生まれたので、ミィちゃんはお父さんと病院に、見に行きました。
 赤ちゃんはお母さんが抱っこしていました。
「ミィちゃん、弟ですよ」
 ミィちゃんは小さな赤ちゃんの顔をのぞきこんで、おどろきました。
「あっ、トモくんだ!」
 小さな赤ちゃんになっていましたが、たしかにトモくんでした。
「えっ、なに」
「なんでもない」
 不思議そうにミィちゃんの顔を見たお母さんに、ミィちゃんはニッコリ笑ってこたえました。
 すると赤ちゃんもミィちゃんの方を向いてニッコリしたような気がしました。
☆おわり☆

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