美術準備室

美術準備室

あゆみ(仮称)3

あゆみ(仮称)3


あゆみの登校で、学校サイドは急に慌てだした。
学年の教師達は、あゆみを見かけると、義務感丸出しで声をかけた。
「あゆみ、スカートが短すぎる。その靴は違反や。」
「サングラスなんかかけてくるな。」
「ちゃんと制服を着なさい。」

朝見かけたら、まず「おはよう。」が基本やろ?
なのに、おはようどころか、いきなりあゆみを正そうとする。
当然、あゆみの耳には入らないし、聞こうともしなかった。

また、一度トイレでタバコを吸っていたときがあった。
そのときは誰も気づかなかったので、
「今回だけは内緒にしとくから、二度と吸ったらあかんで。」
と言い聞かせた。

そのうち、あゆみは教室がいやだ、と言い出した。
それもそうだろう。
だれも、声をかける子なんていない。
強がっていても、寂しいに決まっている。
仕方がないので、あゆみを準備室に連れていった。

そのときから、準備室があゆみの居場所になった。

あゆみは準備室ではよくしゃべった。
教室や廊下で見せる、強がった、虚勢を張ったあゆみではなく、
にこにこして、どんなことでも話してくれた。
「おかんは気が狂とんねん。あんなんとおったら、そのうち、
ウチは殺されてしまうわ。」
と、相変わらず、おかしな行動をとる母親のことを他人のように話し、
現在は母親の家ではなく、母親の両親の家にいることもおしえてくれた。

あるとき、あゆみが準備室でタバコを吸った。
匂いが残っていたのだ。

「あゆみ、あんたタバコ吸ったやろ?
ここはセンセの部屋やで。この部屋はな、そんな場所やないねん。
今度吸ってみぃ、ほんまに承知せえへんからな。」

あゆみはその後、二度と準備室でタバコを吸うことはなかった。


毎日あゆみが準備室にいることで、学年の教師たちは私を批判した。
話を聞いていると、どうも教師たちは、あゆみを学校から排除したがっているように聞こえた。
厄介者扱いだった。
誰も、あゆみという一個人、一生徒を認めようとしていなかった。
だから、私があゆみを準備室で居させることに対して、
理解するどころか、「それはおかしい。」と言うばかりだった。
だからといって、ほかにあゆみの居場所を真剣に考えようとしなかったのだ。


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