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SAROMAN BLUE 鈴木健司
12チャレンジ富士五湖112キロ完走記第2章
時計は8時間40分を回ったところだった。すぐ先に70キロのチェックポイントが待っている。NEWTONに乗り換えたので、明らかに走りが変わる。
70キロ 8時間40分35秒 53分43秒
着替え・ポーチの補充・シューズの履き替え・スペシャルドリンク作成で18分掛かった計算となる。少し掛かり過ぎたが、トイレ休憩はしなかった。この70キロ8時間40分はまったくの予定通り。この先5キロを40分でクリアすれば80キロの通過は10時間となる。6月のサロマ湖での関門も通過できるのだ。ということは、貯金はすべて使い果たしたのだ。この後、100キロまで5キロ40分で走らないと12キロの1キロごとに9分ちょっとを掛けることはできない。どこまで貯金を再び増やすことができるのか?足元のNEWTONがそのキーポイントとなりそうだ。
70キロの先を進むランナーはやはり例年通りパラパラとした人数しか見えない。その中を1人キロ6分30秒くらいで進む。これは先の登り坂に向けての貯金だ。なかなか走って登れないので、ペースが落ちてもいいように今が貯金のタイミングだ。
本栖湖までと違って走りの中に変化が出てきた。それは走り続けられないことだ。これが単純に『練習量』の差なのだ。また80キロ10時間の関門に関しては実際にはない。サロマ湖ならば間に合わせなくてはいけないのだが、富士五湖は自分に甘えが出てしまっているせいで走り続けられない。今回も300メートル走っては歩き、20メートル歩いて走りだす。まだ70キロだというのに、このタイミングからラン&ウォークが続くのが毎年の富士五湖だ。アートスポーツ石橋くんと前後しながら走る本栖湖が定番となっていた。前後を走るランナーを抜いては追い付かれるところでまた走りだす。坂に入っても同じだ。
分岐点となる駐車場は、天気の影響もあり人影はない。いつも通りトイレに立ち寄り用を済ませる。建物中に入ると激しくなりだした雨を凌げるので一安心。だがあまり時間はないので、顔を洗ってすぐに表に出た。
すぐにある下り坂を良いペースのランナーが下っていく。しかしそれには着いていける余裕はない。自分のリズムを優先させて、走っては歩き、歩いては走る。この本栖湖の走りを皆さんが見たら、狙って制限時間ギリギリに帰ってくるなんて思わないと思います!抜いていく人は、消えてしまうろうそくの最後のともし火的な感じに見えるのではないでしょうか。
75キロはまだか?昨年までの記憶とポラール心拍計の距離表示を見ながら、あのコーナー曲がれば!と思っていたら、その通りに現れた。
75キロ 9時間19分46秒 39分11秒
このラップは意外だった。登り坂・トイレと時間を使ったが、40分を切っている。ということは、かなりスピードに乗れて走っているのだ。(大したスピードではないが)さすがNEWTON!無理している感じはなく、心拍数の平均も逆に下がっていた。このラップで次もクリアできれば、80キロはきっちり10時間だ。次の目標は2キロ先にあるエイド。遠くにそのテントが見える。あと2キロだが、あそこまで辿り着けば80キロまであと3キロだ。
平坦になった本栖湖は、ヒタヒタと脚を運ぶランナーの足音だけが聞こえる。雨は霧雨になり一番濡れる降り方をしていた。寒さは感じることはない。逆にクラフトの暖かさが際立って熱い位になる。ジャケットのファスナーを全開にしながら走り空気の入れ替えをする。ファイントラックも着ているし、お腹にはナンバーカードもあるので冷える感じにはまったくならなかった。
エイドの近くのキャンプ場までの看板を目印に、進んだ距離とエイドまでどのくらいか確認する。あと1キロで、75キロから7分を経過していた。これで良し!リズム!リズム!見えているテントは果てしなく遠くに感じる。集中してないせいでエイドまでは長かった。
ようやく到着すると、やはりお腹に溜まる系はなくポーチのグミとベスパハイパーを摂った。80キロまであと3キロ。10時間まではあと25分。間に合うか?ちょっと焦りが出てきた。エイドのものは取らず先を急いだ。
この先も平坦が続く。少し木が迫り出した湖畔を進む。雨が少しは凌げるかと思ったが、細かい雨は顔に降り掛かっている。コースの最短距離をとり、先を急ぐ。走るペースを上げるが、歩くスピードは落ちてきた。なんとか走り、見慣れた本栖湖のキャンプ場の景色が近づいてきた。もう少しかな。時計は予想よりも早く10時間を刻んだが、80キロの標識はまだない。『まだか~!』と声に出すと、季節道路の開閉口ゲートの先にある80キロが見えた!
80キロ 10時間00分21秒 40分35秒
これがサロマ湖ならばアウトだ。ギリギリの場合、コースを把握していないと間に合わなくなってしまう。今回は21秒はみ出したが、富士五湖では許容範囲だ。
しかしここでやってきたのは『ハンガーノック』いわゆるガス欠だ。本栖湖を出発してから、先程のエイドを含め、ショッツの消費がまったくなかった。タイムに追われて、補給していなかったのだ。80キロを過ぎてから、スーッと目の前が真っ白になる。『やばっ・・・』前を走るランナーに追い付きそうな形で背中が見えていたが、またその背中が小さくなっていく。エイドまではあと2キロ。そこまで歩いてしまってはキロ8分は刻めない。
とにかく『ショッツと心中しよう!効かなかったら終わりだ!』フラスクを取り出し、1本分流し込む。もちろん原液のままだ。大きなため息をついて下を向きながら歩く。そして15人くらいのハイカー達が歩道を進むので、道路に降りた。10メートルくらいに連なるハイカーの横を歩くのは恥ずかしいので、坂道だったが走って抜かす。そして50メートルくらい離れてから歩きだす。先程よりもシャキッとしてきた!また走りに力強さが戻ってくる。
そして本栖湖駐車場まであと少しの所で、前半からウルトラマンの可愛い着ぐるみ着たご夫婦が立って応援してくれている。2人は言葉少な目な応援だが、胸の前に掲げたメッセージボードからは熱いメッセージが刻み込まれていた。この地点での言葉はまだ頭は朦朧としていたので、思い出せないが心から『ありがとうございます!頑張ります!』と言いたい言葉だった。
本栖湖駐車場に到着。
10時間15分を経過し、72キロ・100キロ・112キロの本栖湖到着の制限時間は過ぎていた。エイドはまだたくさんのランナーがいるが、制限時間に間に合わずリタイアとなってしまった方達だった。その中に女性のお客様が僕を見つけて声を掛けてくれた。『間に合いませんでした~。あれ?まだ走っている?まだ間に合うんですか?』『なんとかギリギリですが。行きます!』ここでの補給はあまり出来なかった。固形物が受け入れられなかった。ポーチのグミを取り出し、出口に向かった。
ナンバーカードのチェックを確認してもらい、復路に向かう。すぐに100キロの70地点がある。あと30キロだ。このキロ標識は112キロ・100キロ・72キロの距離が書かれていて、112キロに関しては82.4キロだったかな?昨年までは112キロと100キロ・72キロは別だった。このまま100キロ基準でしか表示されないのかな?
本栖湖を離れてからは登って地下道へ。まだ折り返しに向かうランナーもいる。互いに声を掛けて、雨の中の頑張りを讃えた。地下道は歩いて進んだ。この先は約1キロ登って、からは精進湖入口の赤池交差点まで下りとなる。そこまではまず走っていかなくてはいけない。本栖湖のエイドでの約2分の休憩を最小限の借金に留めたい。次のエイドも樹海大橋の先までないので、この区間は集中して走っていかなくては。先程のハンガーノックには要注意だ。登りの間にショッツを摂って進む。
折り返しに向かうランナーもいなくなり、すべてゴールを目指すランナーだけになる。雨は相変わらずに降り続けている。実はグローブを忘れてしまったが、手先が冷える程の寒さはなかった。秘密兵器となるであろうビニール手袋も忘れた。
下りに入り自然とペースを戻していき、また走りを中心とした流れを引き戻した。それでも1キロくらいは我慢できるが、また歩いて体力を回復させる。しばらく行くと、距離表示が出てきた。やはり100キロを基準にしているので、72.5キロ。112キロでは84.6キロだったかな?5キロごとのラップを気にする自分にとってはなんと厄介な!また手元のポラールで距離を確認し、昨年までのイメージでラップを取った。
85キロ 10時間42分26秒 42分05秒
本栖湖の休憩を入れてなんとかギリギリに抑えた。次の90キロはうどんエイド。2分オーバーした分をどこで取り返すか?まずは樹海大橋までの下り。そして国道を離れてからうどんエイドまでの下りしかない。まずは樹海大橋手前まで走り続けた。
樹海大橋に差し掛かると、見えてくるのは長い長い登り坂。この斜度は大したことはないのだが、85キロを走ってきたカラダには堪える。しかしここを歩いてはキロ8分では進めない。基本走りでいかないとこの先の距離が厳しくなる。なんとかペースを落としながらも目線は落とさずに進む。走り、歩きなんとか前のランナーに追い付きながらクリアしていく。
坂の上のエイドはいつも物足りない感じだ。次のうどんまであと3キロ。ここで時間も使えないので、ショッツを到着前に流し、水で流した。さらにグミを噛みながら走りだす。
まだまだ緩やかな登りは続く。走れる登りなので、コーナーの先に西湖への入口が見えないかと、前を見据える。3つくらいコーナーをクリアするとようやく直線になり見えてきた。そこに見えてきたランナーは池袋店時代のクリニック参加してくれたお客様だった。今年も大会前に準備に来た時に話をしていた。フラフラと歩いている姿に『まだ間に合うよ!頑張れ!』と声を掛けて先を急ぐ。走っては後ろを振り返ると、ゆっくりながらも走りだした姿が見えた。また国道を渡ると歩道側を走っているランナーもお客様だった。『行けるところまで行きます!』と、頑張っていた。
分岐点から左折し西湖へ向かう。ここからは下り坂だ。1キロちょっとの下りを先程よりもペースを上げて行く。呼吸は上がりすぎないように、ブレーキを掛けない走り方だ。それでも下りは脚にくるので、時折歩いていく。うどんエイドまであと300メートルという所でまた走りだして到着した。
90キロ 11時間24分07秒 41分41秒
到着してすぐ手前にあった椅子に座り、肘を膝上に当て肩で息をしていた。
うどんを食べる気力はなく、すぐに100キロまでの計算を始めた。
予定よりも4分オーバー。次の関門は西湖公民館。この先3キロくらいだ。まず下りがあってから登りが続く。100キロの地点では少なくとも12時間45分ではクリアしたい。この西湖公民館までは、頑張ってなんとか貯金を確保したいところだ。1分で立ち上がり、アミノダイレクト5500を1本摂りスタートする。
周りのランナーよりも速く、ダッシュに近い感覚だ。
それでもキロ6分10秒くらいにしかならないのだが。
下り坂を駈け下りて右折すると西湖の周回道路になる。ここは曲がるとすぐに登りが始まり、この先のコウモリ穴まで約2キロを登る。ここに来ても、ペースは落とさないで走る。ラン&ウォークになるのはもちろんだが、走るスピードは保ち、歩く時間を減らしてインターバルのように進む。西湖周回のスタートラインから1キロのラップを確認すると、7分でカバーしていた。この1キロで1分リカバーした。西湖公民館まで維持したかったが、徐々にペースダウン。なんとか第3関門を突破した。
ここでは空腹感があったので、バナナを少しだけ戴いた。そしてまた走りだした。この先西湖は平坦になるが、幾重にも重なる入江をクリアするのに気持ちで滅入ってしまう。しかし、今年は往路で距離を確認していたので、スタートラインから5キロの距離表示で終わりになると分かっていた。あと3キロ!それがわかるだけでも気持ちにゆとりができる。
1キロごとになんとか8分ペースで行けば借金は増えない。できれば4分あった借金を返して、95キロでなんとか12時間03分以内でまとめたい。その気持ちだけで、走っていた。アートスポーツのキャンプ地・西の海キャンプ場を抜けて、まもなく95キロとなる。
95キロ 12時間02分35秒 38分28秒
やった!38分28秒でクリア!うどんから頑張ったからな。これでなんとか100キロは12時間43分くらいは見込めた。その後も安心感に揺らぐこともなく、ラン&ウォークで必死に進む。そしてコースは西湖を離れトンネルを抜けると、河口湖へ向けて峠の下り坂となった。西浜小学校へ向けての急な下り坂をゆっくりと下りる。路面は雨で濡れているが、滑ることもなく例年よりもスムーズに下る。
2回目の西浜小学校に到着すると、100キロに参加中のTさんがいた。前にも一緒になりましたね(苦笑)『鈴木さんに着いていけば大丈夫かな?』『いや~ギリギリですよ。ここまで頑張ったから脚が進まなくて。』エイドを離れ下りに入っても、ガツガツ下ることはできない。
『間に合いますかね?』Tさんの言葉を聞いて改めて計算する。西浜小学校は97キロくらいか?ということは残り15キロで、今12時間30分前・・・!
ん!?間に合わないんじゃない?
あと15キロを2時間ってことは1時間で7.5キロ。
おいおいなんでそんなことになるんだ?
またステラシアターで終わるわけにはいかない。河口湖の分岐点でTさんに言った。
『すいません、先に行ってもいいですか?間に合わなそうなんで、ここで頑張ります!』とペースを切り替えた。正確な距離が表示されていないので、少し距離をプラスして考えているが、98キロだったとしてもこのままキロ8分では間に合わないと思った。
急激なペースアップと言っても限界があり、平坦なこともありキロ6分までが良いところだ。当然1キロも続かずに歩き、10メートルで走りだす。その繰り返して苦手な河口湖の復路を進む。たくさんのヨットやモーターボートの貸し出しの看板を見ながら、目安となる道の駅を目指した。112キロの表示は中途半端だが、100キロ地点の通過くらいは計測してくれるだろう。と思っていたら実際にはなかった。昨年の記憶を頼りに100キロのラップを取った。
100キロ 12時間43分26秒 40分51秒
予定通り12時間43分でなんとか収まった。
しかしあれだけペースアップしてこのタイム。
なんとか昨年よりも100キロは早い通過となった。
道の駅抜ける際に、西湖の往路で私設エイドを出してくれていたキティさん夫婦と姫さんが応援してくれた。この先のエイドはもう少し距離がある。あと12キロと思えば少しだが、毎年のことながら余裕がない。休み過ぎはないのだが、やっぱり練習が足りないんだなあ。
苦手な河口湖を進み、エイドが近づいてきた。すると、今大会最大の尿意がやってきた!いつもは行きたくなる前に済ませるのだが、すぐにエイドがあるのでタイミングがあって良かった。昨年よりも1分ちょっと余裕があったので、立ち寄ることにした。
その手前に計測ポイントを発見!『100キロの部の90キロですか?』『そうです!あと10キロですよ!』時計を見ると13時間ちょうどを刻んだところだった。あと10キロに90分。なんとかここまでもってこれた!
併設されたエイドにあるトイレに向かうと空いていたので、スムーズに済ませた。
1分も掛からず出て、先を急いだ。
しかし、ここから80キロよりも激しいハンガーノックに襲われた!
目の前が真っ白になる。
西浜小学校を下りてから、キロ7分で走った。
100キロでの貯金を得る為に追い込んで走り、補給ができていなかった。
再びポーチからショッツを取り出し、
『ショッツと心中しよう!効かなかったら本当にアウトだ!』
フラスクの中身を2本分くらい流し込む。
普通は5分もあれば、歩くところまでは回復する。
しかし、時計を見て13時間07分を経過してもなかなか顔を上げることができない。深いため息を何度もついて、ガードレールにカラダを預けて回復を待つ。先程抜いたランナーに『大丈夫ですか?』と声を掛けて頂くくらいだ。そして大会の監察車が来るのが見えた。この時間にうずくまっていたら、絶対に声を掛けられてしまう。逃げないと!と思い、フラフラ歩きだす。
そして徐々にシャキッ!と意識がしっかりし始める。
時計を見るとすでに13時間10分を過ぎている・・・。
『ヤバイ!間に合うか?』少しずつ走る距離を伸ばして、リズムが出てきた。
そして湖畔添いにあるホテルの前を抜けて行くと、またウルトラマンご夫婦が立っていた。その胸に持ったボードには『大丈夫だって言ってみて!』とある。
そうだ!まだ行ける!間に合わせるぞ!『
大丈夫だ~!』と精一杯の声で拳を挙げて発した!ありがとうございます!
河口湖大橋に向けて更にペースを上げる。
大橋の道では信号待ちで4人の集団になった。
『キツいですね。ギリギリですね。頑張りましょう!』
初対面ではあったが、皆から自然と出てきた言葉だった。
急な坂道も電柱2本分のランと10メートルのウォークで進む。ある程度登り切れば、国道139号を越えてステラシアターまでは平坦となる。坂道でも先頭で進み、かなりハイペースだった。今回ばかりは自分のことで精一杯だった。なんとかステラシアターの関門18時25分をクリアしなくては。
距離表示はやはり100キロの分の92.5キロが表示されている。9分ペースでギリギリだったが、13時間25分を刻んでいる。『おいおい、相当回復しなかったんだな。』このペースでは50分掛かってしまう。そして約4キロの登りが待っている。国道の信号もスムーズにクリアできるように、前方を見据えて青になったばかりの信号を見て歩きだした。無理をしても仕方がない。止まらずに走れるようにしなくては。国道はイメージ通り越えられて、いよいよステラシアターの緑色の屋根が見える。
2年前関門時間に間に合わなかったミスが頭を過る。昨年までは最終関門は18時20分だったはず。しかし今回は18時25分だと、レース途中にお会いしたクリニック参加者の方が見せてくれた通過予定時刻と関門時間のリストを見て確認していた。
しかし昨年の通過はゴールの45分前の13時間45分だった。
今年はこのままだとそれよりも遅い。なんとか40分は残さないと。
見慣れた道をしっかりとした足取りと意識で走る。そして昨年関門だった場所が見えてきたが、係の人はいない。2年前と同じ信号を右折した先の場所に戻ったようだ。交差点手前で13時間49分を経過した。すると誘導員の学生が10メートル間隔で2人立っている。
1人は『あと5分で~す!頑張ってください!』
2人目は『あと1分です!』『!?なに!?』ちょっと耳を疑った!
どっちだよ?あと100メートルもなかったので、問題ないがここで引っ掛かっては元も子もないということでダッシュ!
関門の時計が見えてきても係の人が騒いでいる感じもなく、18時25分の表示も見えたので手前で歩きだした。すると時計は18時20分01秒を過ぎたところで、エイドに入った。
先程のハンガーノックから4キロちょっと走ってきた。
エイドで立ち止まるゆとりはないが、温かい飲み物を飲んでスタートを切る。
『あと5キロだよね。』『そうです!頑張ってください!』と学生ボランティアが答えてくれた。
まずは電柱2本走りインターバルを取り、また走りだす。毎年このパターンだ。それでも歩いているランナーよりは速く登ることができる。走るペースは先程よりも速くなり、呼吸も上がる。そうすると歩く距離は長くなる。
そうやって約1キロ弱進んでいると、『鈴木さん!やっと追い付いた!』と昨年もクリニックに参加していたKさんが走って追い付いてきた。スタートラインで声を掛けて頂いていた。途中お会いすることがなかったが、しっかりとした足取りで走っている。『間に合わないますよ!頑張ってください!』と背中を見送った。
僕は昨年よりも最終関門が5分遅かったことを冷静に考えた。このまま昨年の走り方では間に合わないのでは?坂はすでに真っ暗でランナーのシルエットを確認できるのがやっと。時折抜かしていく車のテールランプの明かりを見ながら、登りがそろそろ終わりを迎える、T字路を探していた。そこが見えたら右折し、カーブを左に曲がりながら登り切れば、あとは下りだ!
しかしなかなか見えない。テールランプの赤がブレーキを踏んで強く光りだすのは見えなかった。とりあえず切り替えよう!まだ登りは続くが、残り何キロと距離表示はあるはず。確実に距離が確認できる位置まで頑張ろうと思った。果たして貯金はあるのか?
歩かずに走りだすと、暗闇の先に白い看板が浮き上がる!『あと3キロ』の文字。そして時計を見ると14時間10分を暗闇の中、読み取ることができた。『あと3キロで20分・・・!?あ~やっぱり!キロ7分でも間に合わないじゃん!』と、さらにペースアップ!
先行していたKさんに追い付くと『あ~鈴木さんに抜かれちゃった!』の声。『もうすぐ登りは終わりです頑張ってください!』と、ちょうどT字路に掛かる手前だった。急な登りが最後の坂道を告げる。その先には下りが待っている。
今年は参加者がとても多い。あと3キロからもたくさんのランナーが走っていた。その横を猛烈なスピードで走っていった。最後の登りを走っていて、晴れていれば綺麗な富士山が見えるのになあ。など考えながら焦りはなく走る。絶対に間に合う!『またギリギリだ~!どっかで時間調整してるんでしょ!』と言われるのを考えると、『やっぱり速く走れないんだなあ。』と実感するばかり。紙一重のレース内容に反省するが、なかなか練習量が増えないのが言い訳だ。そんなことを考えながら下りになるとあと2キロの表示が。
110キロ 14時間17分35秒 44分11秒
あと12分しかない!ここからはダッシュしかない!下って左折すると平坦となり、最後のエイドが現れる。エイドの前に車が止まり、走路が狭くなっていたので、車が動かないのを確認し道に大きく膨らんで前に出た。
次にスバルラインとの交差点があり、前方は今青だ。このまま変わらずに抜けられるか?と思っていると、濡れた路面に見えない両側の暗闇から点滅するライトが映し出される。信号が赤に変わった。しかし車は2台のみ。登ってくる車はなく、安全を確認しスタートした。
着ていたモンベルのジャケットを脱いでTシャツ姿になり、ゴール写真に備える。ジャケットはウエストポーチの紐にくくりつけた。あと1キロはどこだ~!と思いながら、富士北麓公園左の看板が見えてきたところにあと1キロ!時計は14時間24分を刻む。あと6分!
左折して北麓公園の陸上競技場を目指す!もうここからは下りのみ。更に加速するだけ!真っ暗で何も見えないが、マンホールにだけ足を捕られないように気を付けて下る。闇の向こうにぼんやりと明るくなる空が見えてくる。野球場、体育館を過ぎれば入口だ。
戻ってきた!たくさんの声援の中に『おかえりなさい!ラスト~!』や『まだ間に合うぞ!諦めるな~!』真っ暗な中でもピンクのシャツは目立つのだろうか、知り合いの方がたくさん応援してくれていた。両側の人とハイタッチを交わし、僕の耳に届いたアナウンスは『制限時間まであと2分となりました!』だった。
50メートル先の競技場入口から、ゴールまでは更に50メートル。よし!間に合った!前後のランナーとの間隔を空けながらゴール写真をイメージする。今回は112キロの完走4回目となるのでダブルVサインと決めていた。
競技場に入り見えてきたゴールゲートの時計は、なんと14時間29分30秒を表示していた。ひぇ~!ギリギリだ~!さっき2分って言ってなかったけ?あと1キロで6分しかなくて、2分前ってことはないか。
良かった~!ゴ~~~~ル!
112キロ 14時間29分48秒 12分13秒
なんとなんとタイムは14時間29分48秒の制限時間12秒前となった。たくさんのお客様に迎えられた。地元富士吉田のコアスポーツの皆さんや千葉のNさん夫妻、そして残り3キロで置いていってしまったKさんが制限時間を過ぎてゴールされた。昨年100キロを完走しての112キロチャレンジ。時間内の完走はできなかったが、そのゴールした顔は晴れやかだった。またKさんのサポーターがウルトラマンご夫婦ということが判明!本当に力を頂きました!ありがとうございました!
僕のいつも制限時間5分前にならないと帰ってこないことを知っている方も多いので、寒い中待っていてくれた方もいた。本当にありがとうございました。
家族への一報は、ようやく体育館へ戻ってから。
長女ピヨちゃんは『パパまだ走ってるの~?』と。
次女ペコちゃんには『富士山の方で走ってるから、富士山に向かって応援してね!』とお願いをしていたが、小声で『ふじさんみえなかったから、こころのなかでがんばれ~っていったよ!』と、涙が出るくらいかわいい言葉を掛けてもらいました。
妻のHANAは『連絡がないから、大丈夫か心配だったよ。』
『なんとかなんとかゴールしたよ!』と報告し、帰路の車の運転を心配してくれました。これで家に入れてもらえるかな(笑)
体育館では精進湖で追い付いてきたNさんと会うことができた。パートナーの方と共に完走できたそうです。そこでも『NEWTONとCEPでバッチリですね!あと最後の坂は電柱2本走って1本歩いてのリズムで走れました!』とも言って頂きました。その後、僕は完全燃焼を象徴するように若干の『力石モード』になり、ご迷惑を掛けてしまいました。
Nさんとお別れしてからは汗を流してから帰ろうかと、コースを逆走してふじやま温泉へ向かった。20時に到着し23時までの営業を確認して駐車場に停めた。が、風呂に入って気持ち悪くなるのが心配だったので、駐車場で少し寝てからにしようと温かくして眠りに就いた。30分くらい寝たかなと起きてみると時刻は22時を過ぎていた!駐車場の車も閑散となり、時間的に温泉はパス。お腹が空いたので移動したが、外は大雨だった。レースと比べ物にならないくらい激しい降り!これだけ降り続けたらモンベルのジャケットじゃ駄目だなという雨だった。
夕飯に選んだのは、土曜日にも利用した幸楽園!さすがに往路のうどん以降固形物を受け付けなかったのでつけ麺にした。それでも口の中は荒れていたので、ゆっくりと食べた。外の気温はかなり下がったのにつけ麺だから、温まることはなく(苦笑)向かいのマックのドライブスルーでホットコーヒーを買ってから高速に乗り込んだ。途中、状態も良くなり談合坂SAに立ち寄り、やっぱり米が食べたくなりカレーライスを注文!帰宅したのは深夜1時となった。
そうそう、帰りのリカバリーウエアを最後に記しておきます。レース中のCEPは汗を掻いて臭いので脱いでから、ベネクスのカーフソックスに履き変えた。CEPは履きにくいので、今回はベネクス。冷えたカラダもベネクスならばポカポカ!翌日から仕事中はCEPを着用。寝る時はSKINSとリカバリーウエアを使い分けた。
またレース直後からzenリロードを摂取!お陰で1週間は元気に過ごせた。
富士五湖から1週間が経過しようとした頃、子供から風邪を貰い長引いてしまった。免疫力がやっぱり落ちていたのかな?
次は野辺山!2010年の1分38秒前を目安にハンガーノックのない走りで頑張ります!
過去の富士五湖ラップ表です!
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