アサハカな論考もしくは非生産的妄想

アサハカな論考もしくは非生産的妄想

August 31, 2004
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テーマ: 新撰組!(307)
カテゴリ: カテゴリ未分類
前回の「友の死」とは全く違う毛色ながら、これぞ三谷脚本の真骨頂ともいうべき群集劇で最高に楽しませてもらった。前回の悲劇を総括しつつ、三谷氏お得意のドタバタコメディでその余韻を断ち切り、かつ、物語が次の段階に進んでいく転換点まで用意されていた。こういう構成なら、気付いたことをひとつひとつ拾っていけばそれなりにレビューっぽく成立しそうだ。各登場人物の心情を丁寧に追っていきたくなりがちだったここ数回よりずいぶん気が楽である。久々にレビューを再開した前回は苦労した。もうこんなテンションで書くのはおしまい。もっと気楽にいこう。でないと到底書き切れない(といいつつまたもや前置きが長い・・・汗)。

***********

京に戻った平助が山南を回想。「ようやく自分の居場所を見つけたような気がしました」という山南の言葉が、歳三たちに重くのしかかる。歳三は西本願寺への屯所移転事業に没頭した。いみじくも総司が代弁したように、山南の思い出を振り払おうとしているのか。だが歳三の強引な手法を見るにつけ、伊東が新選組に覚える違和感はますます大きくなっていく。勇のダメージも大きい。彼は深雪太夫を身請けし、小常を呼び寄せた永倉も勇の心情に理解を示す。彼らは山南がそうしたように、心の傷を癒す場を女性に求めた。一方、竜馬は、山南が残した「託す」との言葉に心を動かされ、再び活動を開始した。みな、山南の死をそれぞれの想いで受け止めていた。

だが、つねさんとみつさんが江戸からやって来るというありえない設定(笑)で、ガラッと雰囲気が変わる。本妻と愛妾の鉢合わせを避けるべく周りの者が右往左往するという、およそ大河ドラマらしくないすっとぼけた展開に突入するのである。巧みなのは、冒頭の回想シーンが勇の婚礼の日の出来事であること。これは山南事件の余韻を漂わせるとともに、これから起こる本編のフリにもなっている。勇には江戸に奥さんがいるという前提を視聴者にインプットさせ(加えて、身請けに赴く勇に向かって総司が「江戸にはつねさんという可愛いご新造さんが云々」と繰り返し)、初回から見続けているファンにとっては第5話「婚礼の日に」を思い出させる。今回は婚礼ならぬ身請けの日なのである。今回の「寺田屋大騒動」には、第5話「婚礼の日に」のさまざまなエピソードのリンクがいわば身請けバージョンとして散りばめられているのだ。さらに言えば、それ以外の回にあった小ネタに関しても、随所にリンクが埋め込まれている。・・・楽しいだろうな、三谷さん(笑)。やはり前回の反動で思いっきり弾けたかったのかな。

まさか深雪太夫を身請けするとは露知らず、つねさんとみつさんを連れてきてしまった平助。相変わらずのトラブルメーカーぶり。「ど、ど、ど、どーしましょーっっ!!」と、芹沢を鶏小屋に案内したとき(第13話「芹沢鴨、爆発」)と同じくらい狼狽しまくってしまう。

永倉と左之助はつねさんとみつさんに再会できて嬉しそう。伏見寺田屋に行きたいという彼女たちをけしかける姿は、彼らが深雪太夫よりも、試衛館時代に世話になったつねさんの方にずっと愛着を持っていることのあらわれ。このあたり、当時の牧歌的な雰囲気を懐古させる。

騒動の発端はまたしても斎藤が引き起こした。婚礼の日、役人から匿ってくれた上に金まで貸してくれたつねさん。普段はクールで何事にも達観しているが、斎藤は借りていた金を差し出し、ようやく恩を返せたと相好を崩す。だがそのお金で籠に乗って伏見寺田屋へ行くと知り、義理堅い男はおおいに落ち込んでしまう。恩を仇で返すことになってしまった。「俺のせいだ・・・」といじけるさまは、まるで仮病の腹痛のために力士との乱闘のきっかけを作ったとき(第21回「どっこい事件」)のようだ。だが、今回は羽織紐をいじくり回すという非常に分かりやすい形で、より深く自己嫌悪に陥っているらしい。演出側も悪ノリしてきたぞ。

つね&みつの突然の出現に唖然として言葉もない勇。深雪太夫=お幸のために買ってきた大福を持つ手も覚束ない。だが、この夫婦の間における大福は、秘密が露見するトリガー的アイテムであった。山南からの浪士組募集を知らせる手紙をつねさんが大福の下に隠しておいたところ、何も知らない左之助が食ったために見つかってしまった(第9話「すべてはこの手紙」)。今回は源さんが自分のために買ってきてくれたと取り繕い無理矢理頬張ったものの、その不自然さがつねさんに不審の念を抱かせた。ただ、「婚礼の日に」にも、大福ではないが饅頭を食べるあの名場面があったではないか。欲を言えばあれを再現して欲しかった。源さんが「局長が大福を口に幾つ入れることができるのかを久々に見てみたくなりまして・・・。局長、お願いします!」なんて言ってくれたらもっと面白かったのに。

そろそろつねさんが疑念を強めていく。以前勇から送られてきた手紙に残っていた白粉の匂い(第26話「局長近藤勇」)が頭をよぎったかもしれない。



みつさんは桂小五郎の姿を見つけて嬉々とする。潜伏中の桂にとってはいい迷惑だ。婚礼の日は斎藤の窮地を桂の機転が救ったが、今回は桂の告げ口によって事態がさらに混乱する。勇に対して好意を持っていた当時と、敵対関係となった現在との違いのあらわれであるが、いささかやり口がせこい。ただし、何にでも自己の影響を及ぼしたがる小憎らしい性癖は変わっていない。

「この歳になって初めて恋をしました。それって罪でしょうか?」お登勢さんのとっさの嘘を受けて、源さんが一世一代の芝居を打つ。そしてさすが元太夫、お幸もこの芝居にすかさず合わせる。ところが、そこに歳三が駆け付け、フォローしようのない展開となる。「婚礼の日に」では嘘の芝居を重ねて見事急場をしのいだが、今回は次々と矛盾が生じていき、ついに破綻する。

「みんなそれなりにありがとーーっ!」と、これまた大河らしくない台詞で三文芝居は幕。女性問題ではいつも勇に尻拭いをしてもらっていた歳三が(第1話、第9話など)、初めて勇を庇ってやったと得意気にニヤリと笑顔を見せる。ところがその顔面には一筋の鼻血が(笑)。騒動のオチに鼻血は欠かせない。婚礼の日はみつさんが捨助にエルボーを食らわせて庭先の血痕は捨助の鼻血だと言い張った。また、寺田屋といえば、新選組の長州人探索をかわすため、お登勢さんも番頭に肘鉄をお見舞いしていた。これを見た勇は総司に「いたじゃないか、お前の姉さんがもうひとり」と笑ったが(第29話「長州を討て」)、まさかその姉さんが本当にやってくるとは(笑)。

そして、つねさんとお幸の対決。賞賛されるべきはつねさんの見事な対応ぶり。まず夫のことはすべて分かっているという本妻の強さを示してから、お幸が妾になることを認め、それどころか頭を下げて頼んだかと思ったら、一転して京にいる間だけと限定し、そしてとどめの大粒の涙。これをつねさんは決して計算ではなく気持ちのままに語っているという雰囲気が素晴らしい。田畑智子の演技力が光る。特に「京にいる間だけ」というのは名台詞だね。この言葉を復唱するお幸の切なさも。

一方、風呂場では勇と竜馬が遭遇する。幕府に望みを捨てていない勇と、幕府を見限った龍馬。立場の違いを二人はこの時点で鮮明に意識した。龍馬は山南を死に追いやった勇たちに内心憤慨しており、そのこともあってか、勇を敵だと言い放つ。勇も今は以前のように思想上の迷いはなく、龍馬の決別宣言を正面から受け止めた。ドタバタ騒ぎの直後に重要人物とかなりきわどい話をするというのは、「婚礼の日に」でいえば芹沢に斎藤の逃亡を依頼する場面にテイスト的には呼応する。

一般に「寺田屋騒動」とは竜馬が幕府の役人に襲撃された事件(あるいは薩摩の島津久光が自藩の過激派を襲撃させた事件)を指すが、つねさんとみつさんの「襲撃」は、勇たちにとってそれ以上の騒ぎであった。泣く子も黙る新選組も、時には等身大のトラブルこそが悩みの種になるのである。総司が本当に「目を丸く」し、鬼の副長が草履をすっ飛ばして慌てふためき、源さんがこれ以上ない驚愕の表情を見せた。一方で竜馬は桂に初めて薩長の同盟構想をぶち上げ、勇とはついに決裂した。こちらはまさしく歴史を動かす転換期である。笑いあり、涙あり、夫婦問題から歴史の大転換まであらゆることが数時間のうちに寺田屋というひとつ屋根の下で慌ただしく巻き起こった今回、これぞまさしく「寺田屋『大』騒動」であった。

#う~む、結局長々と書いてしまった。どうにかならんかな、この悪癖は。





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Last updated  April 13, 2012 10:18:08 PM
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