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屋上にて
金網を乗り越えて下を見下ろした僕は、あまりの高さに足がすくんでしまい、背にした金網にべったりと寄りかかった。
風が吹いていて、少しでも動けば落ちてしまいそうだ。
僕は、何を怖がっているのだろう。大丈夫だ。ここから飛び降りたなら、全ての苦しみから開放されるのだ。高さに怯んでいる場合ではない。
この人生にピリオドを打つために、僕は今から飛び降りようと思っている。聞こえるのは風の音だけで、屋上はとても静かだった。
よし、飛び降りよう。
気持ちを落ち着け、僕がそう決心した瞬間に、後方から錆びた金属製の扉を開ける音がした。
振り返ると、開いたドアから男が出てきた。
屋上に出てきた男は、僕がいることには気がついていないようで、ポケットからタバコを取り出しながら一歩一歩こちらの方に近づいてきた。そして、手にしたタバコを口にくわえた時に、僕がいることに気がついた。
男は驚いた顔で足を止めた。一瞬の沈黙が流れた後、男は言った。
「どうも。」
僕はそれに返事をせず、無言のままで男の様子を観察した。なぜこの男は、こんな時間にこんな屋上なんかにやってきたのだろう。見たところ、自分よりもいくつか年上の20歳前後くらいに見える。
僕が考えていることを察したように、男は口を開いた。
「景色見に来ただけだよ。」
男が軽く指差したので、僕も目の前に広がる景色を見た。確かに、言われてみれば夜景はきれいかもしれない。
「お前は?飛び降り?」
男は僕にそう聞いた。僕は、その男がまた数歩僕に近づいてきていて、思っていたよりも近い距離まで来ているのに気がついて、あわてて声をあげた。
「そ、それ以上近くに来るな!飛び降りるぞ!」
「あーそう。わかったよ。」
男はわかったと言いながらも、さらに僕がいる金網の方に歩いてきた。
「わかってないだろ!来るなって言ってるんだ。」
「別に、俺が近づいたら飛び降りればいいんだろ。」
そう言った男は、すでに金網の前まで来ていた。僕は男から離れるように横に移動しながら言った。
「飛び降りればいいって、止めないのか?」
「別に止めないよ。俺はあんたのこと知らないし。」
男は僕が背にしている金網から横に1メートルくらいのところで立ち止まった。金網で隔たれてはいるけれど、手を伸ばせば届きそうなほど近くに男が居るため、僕は警戒した。
しかし男は、僕には興味が無さそうな感じで、くわえたままだったタバコに火をつけて吸い始めた。
また少しの沈黙が流れた。僕は、この男が何を考えているのかがわからずに、ただ警戒していた。
「お前、何で死ぬの?」
目の前の夜景を眺めていた男が、ふーっと空に向かって煙を吐き出してからそう聞いた。
何で誰かもわからない男に自分が死ぬ理由を言わなければならないのだと思い、僕はテキトーに答えた。
「本当は、みんな死んじゃえばいいんだ。」
「・・・武田鉄也みたいなこと言うな。」
「いや、武田鉄也は言わないでしょ。ホリが物真似で言ってるだけだよ。」
男は、ははっと笑った。僕も、つられて笑ってしまった。
「みんな死んじゃえばいいと思うから、お前が死ぬのか?」
「どうせみんなは死なないから、僕が死ぬしか無いんだ。」
僕だって本当は死なずにすむなら死にたくは無いのだけれど。
「まあ俺も、人なんてみんな死んで滅亡しちゃえばいいと思うけどな。」
男はそう言った。僕の自殺を考え直させようと思ってそんなことを言っているのかと思ったが、そんな雰囲気ではなかった。男はまるで、本当に僕のことには興味が無いように見えた。
「まあ俺は、人類は滅亡していいと思うけど、自分の遺伝子は残したいと思ってるけどな。」
「なんだよそれ。・・つまり、他の人はどうでもいいってことか。」
「まあ、そういうこと。自分が良ければそれでいいのさ。」
やっぱり、僕のことなんてどうでもいいんだな。いつのまにか、僕はこの男に対する警戒心は薄れていた。不思議な男だ。こんな状況なのに、そこに居るのが当たり前のような自然さで、僕の隣に居る。
男はタバコを捨てて足で踏み消した。そして、「あっ」と何かに気がついたように呟いてから僕のほうを見た。少し何かを考えるように間を置き、注意深く言葉を選びながら言った。
「お前、その自殺、俺が止めたらやめるか?」
僕は答えた。
「・・いや、やめないけど。」
「・・そうか。じゃあ、まあしかたないよな。・・・いいよ。止めない。」
男は、少し困った顔をして、そう言った。
「・・なんなんだよ。」
「いや、ここって、俺のお気に入りの場所なんだよね。もし飛び降りとかあったら、鍵かけられたりして立ち入り禁止になんのかなあって思ってさ。」
男の言葉に、僕は呆れた。そして、ふっと笑って言った。
「なんだ、そんなことかよ・・」
「ま、そんなことだな。いいよ、他の場所探すから。」
男はそう言って、踏み消したタバコを拾ってポケットに入れた。
「こんな場面に出くわしたなんて、あんまり人に知られると面倒だからな。・・それじゃ、邪魔したな。」
男は出口に向かって歩き出した。
僕は、男に何か声をかけようかと思ったが、何も言うことが無いことに気がついてやめた。
ドアを閉める音がして、屋上にまた静寂がやってきた。
僕は、目の前の夜景を見た。きれいと言えばきれいだけれど、この灯りは全て人間が生活している証だと思うと、素直にきれいとは思えなかった。
さっきの男は何者なのだろう。何者だろうと関係無いし、きっと何者でも無いのだろうけど。ただ僕は、あの男はきっと自殺するほど悩むことも無いのだろうなあなんて思った。
一歩前に踏み出すと、僕はまっさかさまに地面へと落ちていった。
落ちていく瞬間、僕は、僕が自殺する原因となった嫌なことなんて一つも思い出さず、かといって家族のことを思い出すこともなかった。
自分の生に対する後悔も無く、ただ僕は、さっきの男がどのような人生を送っているのかを空想していた。
きっと、いい加減な人生なんだろうなと思って、それがとてもうらやましかった。
おわり
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