北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

2006.05.29
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中国において代金回収はとても頭の痛い問題です。 構造的な問題なのです。
コンシュマー製品を例に挙げますと、購入する消費者はニコニコ現金払いが通常ですが、小売店はその売上代金をなかなか問屋さん(中国ではメーカーが直接小売店と取引するケースが増えているので問屋さんが介在しないケースが多いのですが)に払いません。問屋さんはメーカーさんになかなか払いません。メーカーさんはパーツのサプライヤーさんに仕入れ代金をなかなか払いません。それで零細のサプライヤーさんの老板(社長)はその従業員になかなか給与を払いません。こんな感じです。こうした構造において、約束どおりきちんとお金を払いたいと思ったとしても、資金繰りがつかず払えないという状況に陥ってしまうわけです。ですから、どの段階でも約束どおり支払うことを躊躇わざるを得ないことになってしまうわけです。
中国における構造的な問題ですから、中国企業だけではなく、中国で企業活動をしている外資企業や日系企業も巻き込まれていきます。「代金が回収できない」と言う被害者としての話題は良く出てきますが、一部の日系企業など外資企業も「約束どおり代金を払ってくれない」と言う加害者になっている場合もあります。

そんな折、中国においてプレゼンスが高い欧米系広告会社オグルビー&メイザーが北京ベンツ・ダイムラー・クライスラー自動車有限公司を提訴したニュースが話題になっています( 新浪網ニュース ) / Do News )。

2004年、上海オグルビー&メイザーは北京ベンツが生産する3ブランドの自動車(三菱ブランドと北京ジープ・ブランドでメルセデス・ベンツは含まれていません)の広告サービスとメディア買付けに関する覚書を取り交わしました。ところがその費用のうち1,262万RMBが未払いのままになってしまったそうです。オグルビー&メイザーは遅延利息を含めた1,359万RMBの支払を北京ベンツに求め北京市第二中級人民法院に提訴したということです。

広告業界の場合も、同じような構造問題を抱えています。約束どおり広告費用を広告会社に支払わないクライアント(広告主)がたくさんいるのです。そして、広告会社が広告枠の買付け代金をメディア(テレビ局や新聞社など)に支払う場合も、約束の期日まで支払わない場合も多いのです。
これには当然のことながら"力関係"が影響します。"力"を持ったメディアは前払いしないと広告枠を売ってくれないこともありますし、"力"や"信用"を持った広告会社であれば、広告掲載の3ヵ月後とか半年後とか1年後の支払いであっても、"力"をあまり持たないメディアから"取引停止"にさせられるようなことは無いわけです。中国のメディア業界は過熱競争気味ですから、"力"のある広告会社やクライアント(広告主)が予定通り代金を支払わないとしても、"泣き寝入り"場合が多いようです。広告会社のほうも、クライアント(広告主)との取引が継続している限り、代金の支払が遅れたとしても、大きく騒ぎ立てず、じわりじわりと督促・回収する場合が多いようです(まぁ、日本においてもこうしたケースが無くは無いでしょうが....)。

オグルビー&メイザーがベンツを訴えるに至ったのは、既に取引関係を打ち切った、ということ、しかも将来的にも当面は取引を再開するつもりが無いからでしょう。両社ともグローバル展開をしている企業ですが、中国以外でも当面取引を行う意志が無いことの表れです(なお北京ベンツは、今でこそダイムラー・クライスラー傘下の外資企業ですが、もともとは北京ジープという国有自動車工場でした)。要するにオグルビー&メイザーにしてみれば、北京ベンツは喧嘩別れしても痛くも痒くも無い(少しは痛いでしょうが)クライアントであるということでしょう。


以前にも書きました が、第一に きちんと契約書を取り交わすこと 、取引を証明するエビデンスをきちんと保管しておくこと、が基本だと思います。こうしたエビデンスが用意できなければ、訴訟に持ち込むにも時間がかかりますし不利に展開するでしょう。第二に 余裕のある資金計画を心がけること でしょう。契約書どおり入金されるなんて考えないで、入金が少しくらい遅れても資金繰りに大きな影響を受けないくらいの手元資金を確保しておきたいところです。可能であればあらかじめ資金調達コスト分くらいは上乗せして値決めするのが理想的ではあります。最後に、ある程度の回収不能を見越して、 "心の中で"引当金を見積もっておくこと です。年間のPLでたくさんの利益を確保できた経営者であっても、あまり調子に乗らないほうが身のためかもしれません。翌年、翌々年にその利益を呑み込むくらいの不良債権を処理しなければならなくなるかも知れませんから....。日本の本社で中国現地法人を管理する側の皆さんも、回収の遅れと回収不能について、"心の準備"をしておいていただくのが良いと思います。 どんなに有能な経営者であっても、中国では避けられない問題だと思う からです。もちろん、すべてニコニコ現金前払いで取引が成り立つような"力"のある企業であれば別ですが。

私個人としては、中国の大企業との取引において、支払遅延はあったとしても、取引が継続している間は、"取りっぱぐれ"(回収不能)に陥るケースは非常に少ないと考えています。経営状態が危なくなってしまった取引先の売掛金が焦げ付くのは、何も中国に限った話ではありませんし....。





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Last updated  2006.05.29 13:59:35 コメント(2) | コメントを書く


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