蟻王のブログ
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薄暗い室内のなかではそれをはかり知ることはできなかった壁につけられたろうそくの灯りだけが、ゆらりゆらりとあたりの様子をうつしだし、薬品棚とそこに置かれたビンを妖しく照らししている。よくは見えないが奥の方に置いてあるビンの中身は、どうみても動物の体の一部ではないだろうか……。どこからともなく匂うツーンとした刺激臭は、この部屋にある何十という種類の薬草のためか、それともカビが侵食しているためかは、薄暗い室内のなかではそれをはかり知ることはできなかった。部屋の奥から、影がぬっと姿を現した。肩でそろえられた少女の黒髪がびくりとゆれる。少女の座っていた三脚のイスが大きく音をたてた。奥から出てきた影は、この部屋の住人。黒いローブをすっぽりとかぶったこの部屋の主は、少女のむかいのイスに腰を下ろした。ふうと大きくため息をつく。「まったく、あんたの主人も人の話をきかないね」「も、申し訳ありません。ですが、その、本人がここにいらっしゃるととても目立ちますので……」目の前にいるこの老婆の機嫌をそこねないよう、少女は言葉を選びながら答えた。老婆の手の内にある小瓶は、その部屋にはにつかわしくないほどに繊細なつくりで、わずかな灯りを受けてキラキラと光を反射している。これがあるのがこの部屋でなかったのなら、香水の瓶か化粧水かと見まごうほどだ。「それと、この薬は飲んでから効果がでるまでに時間がかかるからね。薬っていうのはね、飲んでから効果がでるまでに時間がかかるものなのさ。十分体にまわって、ここに到達するまでにね」ヒヒヒと笑いながら、ぬっと伸びた長い爪が少女の心臓部に押し当てられる。鋭い指先を服越しに感じ、少女の額から汗が一筋つたい落ちた。「どのくらい、かかるのでしょうか」カラカラに干上がった喉から、かすれた声で少女がたずねる。「効果が出る時間は個人差があるから、一概には言えないね。ほんの一瞬かもしれないし、かなりの時間を要する人間もいるだろう。その時間ずっと一緒にいれれば成功するんじゃないかい」数時間の間、ずっと……。ビグレックスそれはかなり厳しい条件なのではないだろうか。少女の思考を呼んだように、ローブから見える口元がにやりと笑ったようにゆがむ。「失敗を恐れて使わないのも一つの選択だよ」そのほうが、相手のためだしねと言葉を続ける。「だが、もし成功すれば……」少女から指を離し、小瓶を机の上におく。静まり返った部屋の中に、コトリという音がやけに大きく響いた五便宝
2013年05月21日
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