地球人スピリット・ジャーナル1.0

地球人スピリット・ジャーナル1.0

2007.10.28
XML

「生と権力の哲学」
桧垣立哉 筑摩書房 新書 252p 2006年05月
N0.846
★★★★★

マルチチュードつながりで手にとった本だが、その意味では、最終章、第六章 帝国とマルチチュード---ネグリの挑戦、はまさに 私が知りたいこと、解りたかったことが、的確に書いてあり、ネグリ&ハートの本を読むよりか、はるかに解りやすかったと言える。ほかの章は、この最終章へ到る過程として描かれており、かなり理解が深まった。しかし、それは必ずしも、ネグリ&ハートのいうマルチチュードと自分の思っている「主体」との距離が縮まった、ということを意味しない。

ある意味で、ネグリの立場は明確である。彼はもともとが、極左マルクス主義者なのだから。「帝国」が据えるのは、国民国家が崩壊し、あらゆるナショナリティーやそれを軸にうごめく情念が消滅し、すべての個的なアイディンティティーの主張が消え去っていく雑多な混合体としての社会の現勢化なのである。それは、民族や国民国家にもとづく伝統的なブルジョワ共同体がすでに維持できないことを肯定し、社会が機械的に技術に浸透されそのなかで新たなシステムが現出することを評価する。だからそれは、伝統的保守であることからもっとも離れた政治的スタンスであるだろう。 p230

 すでに、左右の政治的立場で議論することは不毛に近いものになっているので、別に「極左」という表現に驚くことはない。だが、今後、彼らが見通す、将来的により明確になってくるだろう、来るべきマルチチュード、という詩的表現は、マルクス主義の継承者としてのネグリの思想性を強く反映したものである。引用者たちに多用されることになったとしても、スピノザからそのネグリまでの背景、そしてマルクスを踏まえないことには、本来はそのマルチチュードの意味を十分に勘案したことにはならないだろう。

 いきなりで唐突ではあるが、私は、彼らのいうマルチチュードという人間像に、強く関心を引かれつつ、対置する形で、アガータという人間像を、やはり、いままでどおり据えつづけていきたいと思う。その違いは、今後、より明確になってくるだろうが、一言でいうと母音が「O」で終わるマルチチュードという名称に対して、アガータの語尾は「A」であり、より女性的な感じがする。つまり、私がこれからこのブログであぶり出していこうと思う「来るべき人々」は、もっともっと女性的な存在であるはずだと思えるのだ。もちろん、アガータという言葉は、いろいろな背景にそのイメージを借景しているが、今のところは、まったくの手付かずの新しい造語である、と考えていい。

情報産業(IT企業、金融取引)や、情動労働(介護、ケア、カウンセリング)が、現在時点においてマルチチュードを語るための「労働」を範型である。ネットワークや対人的関係そのものからなるこうした産業は、一面では何も生産していないように見えるかもしれない。だが、そうではない。それは、情報とコミュニケーションそのものを算出しているのである。そしてポスト・フォーディズムの労働する「身体」にとって、リアルに実在するものは、こうした関係性なのである。 p227

 いみじくもこのブログでは、 以前から、
プログラマー、ジャーナリスト、カウンセラー を、 シンギュラリタリアンの三面的要素 と仮定してみているが、ここでいう金融取引、つまりファイナンシャル・プランナー的職業も、互換 性のある形で、なんとか組み込みたいものだと思ってきた。情報労働、情動労働、と表現される労働は、あきらかにポスト・フォーディズム的労働に従事していると思われる。フォーディズムとは、自動車王フォードが発明したその自動車生産のラインで働く労働形態に端を発しているようだ。

マルチチュードは凶暴である。貧民であるマルチチュードは統制などできない。その発現は、右翼のような言説が、結局は声をもたない大衆の圧倒的な支持によって成立し、暴力的事態を生み出したのと一面では似通っている。 p231

「<帝国>」 の中では、 武器、貨幣、憲法 、などという 言葉とともに、戦争という単語が多用されている。その使われ方については、もうすこし本を熟読していかないと、よくわからないのだが、ネグリはマルチチュードなどの「群生的な運動が直接的に露呈される以外に、ありうべき倫理を提示することをすべて拒絶」p231している。この辺はなんともきな臭い感じがするのだが。

 なんにせよ、この本のような論説が、あちこちにすでに拡散していることにいまさらながらに気づいたのだけれども、さらにもっと読みやすく、したがって、より自分の原寸大の生活とダイレクトにつながってくるような解説なり議論なりと、また新たに遭遇できることを期待している。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.02.11 19:49:01
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

Bhavesh

Bhavesh

Archives

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07
2025.06
2025.05
2025.04
2025.03
2025.02

Comments

聖書預言@ Re:60日記037 アリバイ 生存証明(07/28) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
BHavesh@ Re[1]:アガルタの凱旋(12/15) subaru2012さんへ ああ、久しぶりにこの…
subaru2012@ Re:アガルタの凱旋(12/15) Miles Davis / Agharta 1 <small> <a hre…
Bhavesh @ Re:禅と戦争 禅仏教は戦争に協力したか(11/16) 現在、日曜早朝座禅会に参加している禅寺…
Bhavesh @ Re:セックスから超意識へ<1>(11/13) Oshoの記念碑的1968年のレクチャー。当時…
把不住y@ Re:編集雑記(07/25) 新ブログはここです。 <small> <a href="…
Bhavesh@ Re:グルジェフ・ワーク 生涯と思想(01/12) 武邑光裕、の名前を検索していて我が読書…
abhi@ Re:編集雑記(07/25) お疲れ様。 新ブログ立ち上げたら教えてく…
Bhavesh@ Re:極秘捜査 警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」(03/03) 私は、最近になって 、そう2015年頃になっ…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: