「クビライの挑戦」 モンゴル海上帝国への道 1995/04 朝日新聞社
「世界史を変貌させたモンゴル」 現代史のデッサン 2000/12 角川書店
そして、 その他、杉山正明もすこし読んでみた。
「遊牧民から見た世界史」 民族も国境もこえて 1997/10 日本経済新聞出版社
「逆説のユーラシア史」 モンゴルからのまなざし 2002/09 日本経済新聞出版社
「疾駆する草原の征服者」 中国の歴史(08)2005/10 講談社
「モンゴル帝国と長いその後」
興亡の世界史(第09巻) 2008/02 講談社
この中にあって、正木晃が唯一1996/05~06発行のこの「モンゴル帝国の興亡(上)(下)」を選出して、 「さらに深くチベットの歴史を知るための読書案内」
に加えた理由はどの辺にあったのだろうか。
縦横につづら折りのように連綿と続いていく杉山ワールドにおいて、正直言って、どの本を読んでみても、私のような門外漢には、一冊一冊の違いがよくわからない。もともと膨大な資料の中から、その資料を読みこんだ者にしか浮かびあがってこない歴史の「真相」。ただただモンゴル帝国の時間と空間を超えた興亡と、それを再現しようとする歴史家たちの活動に呆然とするだけである。
モンゴル帝国を考えると、一つ一つの出来事にも、まだまだわからないことが多い。事実の多くは今もなお、20数カ国語にわたる多言語の原点文献の大海の中に、その意味を見出されないままたゆたいつつ「発見」されるのを待っていると言ってもよい。しかし、それらすべての謎や未解決のことを突き抜けて、最もわからないのは、「時代」である。なぜ、人類の歴史はこの時、急速にある一つのまとまりをつくろうとしたのか。
あたかも、それまでの長い歳月は、こういう「時代」をつくるための前奏曲であるかのように。そして、モンゴル時代のあと、「時代」はしばらく停滞の中にみずから沈み込んだようにみえる。ティムール朝のもとで異様なほどに輝いた中央アジアだけを、ほとんど唯一の例外として。それは、さらに新たな「時代」である「大航海時代」を生み出すための、巨大な伏線であったかのようである。
(上)p25
チベットとモンゴルは、菩提寺と大旦那の関係のようなものとする見方がある。モンゴルはチベットを保護し、チベットはモンゴルに何事からの精神的示唆を与え続けた。孔子や老荘思想、キリスト教、イスラム教、インド仏教など、異教がうずまくユーラシア大陸にあって、チベット密教は、モンゴルが世界帝国を打ち立てる精神的バックボーンとなったのではないか。
などと早合点するのは、歴史というものをよく知らないからなのかもしれない。そもそも私は「ジンギスカン=源義経」説を今でも興味深くみているほうだ。ジンギスカンと源の義経の活躍時期やその活動スタイルなどを比較してみると、この「珍節」がかならずしも一笑に付されるだけでは済まないと感じる。
小説や民間伝承にのこるだけで、日本史とモンゴル史はいまのところ「正史」としてはつながらないが、いずれ 「700年前のチベット」
などを考えるとするならば、文献に埋もれた「真実」が発見されるのを待つだけ、というのも、ちょっと情けなく感じる。
足利政権が出現すると、尊氏(たかうじ)も直義(ただよし)も、日元貿易に熱心に動いた。日本は大元ウルスを中心とする「ユーラシア大交易圏」の一員に、名実ともになる。
ただし、「蒙古襲来時代」は日本側に奇妙な副産物を作りだした。北畠親房(きたばたけちかふさ)の「神皇正統記」に見える神国思想である。それはおそらく、天皇後醍醐が強烈な形でもっていた「王」による一元化された国家観とも、通底するものがあるだろう。面白いことに、後醍醐の場合、その身辺からは、クビライ王朝で流行したティベット密教の影響を思わせるタントリックな匂いさえ、濃密に漂う。後醍醐も親房もあきらかに、モンゴル時代の子であった。
(下)
p137
「さらに深く歴史を知るため」には、史実にさらに関心を深めて、多くの資料に触れながら、さらには自分のインスピレーションを高めていくことが必要になるだろうが、どこかで今ここにいる自分に引き寄せて「歴史」を見ていく必要性もつよく感じる。杉山は「真剣に大陸情勢について正面から見据えて把握したうえで、鎌倉末から南北朝にわたるさまざまな歴史事象を眺め直す必要があるのではないか」(下)p137と言っている。
手当たり次第に、さまざまな資料を図書館から借りてきて、殴りメモという形でほおり込み続けている当ブログではあるが、このガラガラ作業を続けていく中で、いずれはポン!と出てくる何かがあるかもしれない。ないかもしれないが、今のところは、まずはこのガラガラポン作業を楽しみながら進めていくしかない。
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