地球人スピリット・ジャーナル1.0

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2008.09.12
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カテゴリ: 環境心理学


「チベット大虐殺と朝日新聞」 朝日新聞はチベット問題をいかに報道してきたか
岩田温 2008/09 オークラ出版 単行本 293p
Vol.2 No.302 ★★ ★★★

この本を開いてまずおどろいたのは、著者が1983年生まれの25歳の青年であるということ。比べるべくもないが、我が家の凡児・愚息たちと同世代なのだ。どのような内容であろうと、もし我が家の子どもたちがこのような本を書いたら、★を20個も30個もあげたい。これだけの意見をもち、これだけの行動力があり、これだけの調査をして、短期間にこれだけの本を作ってしまうのだから、まずはそのことに敬服した。

 しかし、ひととおり目を通してみて、客観的に見た場合、私はこの本に★2つをあげることしかできない。意見としては、私とはかなり違う。視点も違うし、世界観がかなり違うと思った。

 まず 「アジアの試練 チベット解放は成るか」 を読んだときにも感じたのだが、「朝日新聞」ばかりが偏向した間違った報道を厚顔無恥にも続けているかのように評価していること。ここは私は基本的に最初から違和感を感じる。。「諸君」「正論!」「ボイス」「文芸春秋」といった、私から見ればやや右寄りを思える雑誌などにも、私は必要であれば、目を通す。普段は目を通さないので、これらを自分のオピニオン・リーダーとして認めているわけではない。しかし、自分と違った視点からはどのように見えているのだろう、という意味で無視は絶対しない。

 じゃぁ、かといってやや左寄りと思われる朝日新聞を盲信してきたかというと、それも違う。私は個人的には朝日新聞には心地よい記事が多いとは感じるが、所詮、マスコミはマスコミ、メディアの限界として、見切りをつけているところがある。

 ちなみに、この17か月ほど、宅配新聞はもう取っていない。たしかにそれまでは朝日新聞だった。だが、それは他の家族の要請もあったので、そうなっていたのであって、もし自由にできたら他の新聞にしていたし、予算があるなら、複数購読してみたいと、長いこと思っていた。

 私自身は、高校時代に新聞部に属していて、70年安保当時、自分の学校の校内でバリ封事件がおき、その取材過程で、いかにマス・メディアというものが「ウソ」を書いているのか、ということを痛感したので、その後は、ほとんどマス・メディアは簡単には信用しないことにしている。当時でも、全国紙5紙と地方紙2紙、それにNHKと地方テレビ局の報道をウォッチしたことがある。それをグラフで比較し、文化祭で発表もしたりした。

 だから、私は朝日新聞ばかりが偏向しているとは思わない。この本では一紙朝日新聞ばかりが取り上げられているようでもあるが、それなら、他の新聞とNHKや民放、その他のメディアがどのように対応してきたのかを、比較して語る必要があるのではないか、と思う。

 著者は、過去の朝日新聞を調査し、チベット問題関連の記事を6000件探し出し、そしてそれらを整理する資料ファイルは10箱に達したという。それらを1945~56、1956~59、1960~80、1980~2008、に分類して解説しコメントを加えている。非常に情熱的もであるし、圧倒的な行動力でもある。

 しかし、なぜ、こと朝日新聞にだけ固執するのかは、私にはわからない。もし、他の4紙なり、他の報道機関が朝日新聞と全く違って、完璧に「正しい」報道をしていたというなら、朝日新聞ばかりが可笑しいことになり、また、他のメディアが正しい報道してくれているわけだから、日本国民全体がミスリードされていた、などということはできない。

 過去に振り返って、記事を調べることはとても必要だと思う。しかし、その当時の他の新聞なり報道機関がどのような記事を配信したのかも、キチンと比較検討する必要があるのではないだろうか。ましてや、日本の報道機関ばかりか、外国メディアや、国際報道機関なども動向も織り込まれないと、ことターゲットを朝日新聞だけに絞りこむことの理由が、わたしにはいまいち分からない。

 それぞれの意見の違いはあるだろう。それは虹色の意見があるなかで、ある程度の「誤差」の範囲に収まることも多々あるのではないだろうか。他の報道機関が、全く誤報を出したことがなくて、こと朝日新聞だけが誤報しまくっていた、となれば、これは由々しき問題ではあるが、私にはそうとは思えない。

 今回のチベット問題でもそうだが、著者が自分で長野に行って、聖火リレーがどのように行われたのか、自分の足でその場に立ち、自分の目でみることは本当に必要だと思う。今回現場に立ってみて、それらが十分正確に報道されていないと著者は感じている。たぶん、そうであろうと、現場に行かなかった私も思う。

 最近はインターネットでマスメディア以外のニュースもいろいろ目にすることができるようになってきた。しかし、それらのことを含めたとしても、本当の事実なんていうものは、なかなかキチンと報道されないことのほうが多いと思う。

事実を知らずに、ただ「かわいそう!」と単純な動機から同情するだけでは、チベットを救うことはできない。私たちに何ができるのか? それを考えるためには、なににもまして、事実を知ることだ。そこからしか、真の意味では、なにごとも始まらない。 正木晃 裸形のチベット」  p9

 当ブログは、正木のこのアドバイスに従って、巻末についていた 「さらに深くチベットの歴史を知るための読書案内」 の空欄を埋めている最中だ。リストとしてはすでに90%埋めるまで来たが、それらの資料や情報の読み込みの密度でいえば、まったく何もできていない、と言ったほうが正しい。いまさら、楽天ブログの一つが、おっとり刀で走ったところで、何も本質的に解決することなどないだろう。

 しかし、同時代人として、同じこの時期におなじ地球上に生きている人間として、チベット問題は無視はできない。意見は違うが、著者の仕事を、私は好ましい仕事に思う。彼が正しいとか間違っている、などという判断はまだまだ早い。少なくとも、彼のように意見をはっきり持っているということは、好ましい人物に思える。実際に会って話したり、議論したり、生活したら、はて、どうなるかわからない。でも、圧倒的にチベット問題について何も知らないし、なんの関心もない、という人々が多いなか、なかなか緊張させてくれる一冊に出会えたことは、大変うれしかった。

 上では、意見としては星を2つしかつけられなかったが、その姿勢やエネルギーに感動して、最後に、やっぱり ★★★★★ としておく。






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Last updated  2008.11.11 08:21:22
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