世界で一番愛する人と国際結婚

私から初デートに誘う




翌日の土曜の朝、どうしてもまたあの彼に会いたいと思った。
でも今までの、数ばかり多い私の経験から、


『初デートを自分から誘うな』


と自制が働く。


今までだって、死にたい程辛い恋愛もしてきている。もう傷つくのは
嫌だった。


昨夜一緒にバーに行った友人は、積極的でうらやましいくらいだ。
バーやパーティで知り合った人男女問わず、いつも名刺を
差し出して交換していた。


昨夜もバーを出る前に、ブランに自分からさっさと名刺を渡し、
彼の名刺と交換している彼女を見て、引っ込み思案の私は
うらやましかった。


私はちょうど前の会社と次の会社の合間で、働いていおらず、
名刺は持っていなかった。
プライベートの名刺も持っていなかった。



私が2人の名刺交換を見ていると、ブランが私のほうを見た。


「E-mail me.」


私に名刺を渡しながら、彼がそう言った


「私、今働いていないから名刺がないの。」


内心《私の電話番号くらい聞いてきなさいよ。》と思いながら、
彼の名刺を受け取った。電話番号は聞かれなかった。


「E-mail me.」と言った彼の言葉が耳に残っている。
でもそんなの誰にだって言うだろうし、社交辞令に違いない。


そして、名刺のタイトルから、実は高い役職に就く人だと判り、
ますます怖気づいた。


一方で、私に向けられた彼の優しい笑顔を思い出す。
拒絶されていないというのは感じたし、むしろ私に興味を
持ってくれそうな気もした。


このあたくしと連絡が取りたいのなら、探偵を雇ってでも、
ありとあらゆる手段を使ってでも、連絡先を調べなさいよ。



それこそ、私の友人にメールして、連絡先を聞く事だって
できるんだから。


いやいや、彼は日本に来たばかりの外国人。


そうじゃなくても、元々かっこいい男ほど自分から声かけてきたり、
連絡先を聞いてきたり、自分からしつこく電話やメールを
したりはしないもの。
私と会っても、そこまでしたいとは思わなかったんだろうし。


と言う事は、これは私からメールするしかないのではないか。
もし返事が来なかったとしたら、数日間苦しむことになるかも。
でも、一生後悔するよりは、数日間の後悔と恥のほうがいい。


もう二度と会えないかもしれない。
私の手元には、彼からもらった名刺があるのみ。


私はメールした。


私は翌週から、次の会社に入る前日までの数日間、一人で
タイに旅行に行くことにしていた。


『昨夜はお会いできてよかったです。
私は明後日からタイに行くのでしばらく留守にしますが、
またお会いしたいです。
今度カリフォルニアの話も聞かせていただきたいです。
私、アメリカが好きだから。』


と短いメールを書いてみた。


返事はすぐに来た。


『僕も君と会えてよかった。君は黒のチャイナドレス
(私が着ていた服)が似合っていてとても素敵だった。
そういえば昨日、タイに行くと言っていたね。
一人で行くの?勇気があるね。アメリカの話なら喜んで。
是非また会いたい。よかったら電話して。』


そのように書かれたメールだった。メールの最後に彼の
電話番号が書かれていたが、私の電話番号を聞いてくる文章は
どこにも書かれていなかった。

タイから帰ってきたらxx日に会おう、
などと具体的なことも書かれていなかった。

通常、私を気にいってくれた男がするような、積極的な
リアクションがない。

美男子の余裕なのか、私にさほど興味がないのか、、、


つづく


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