1975年発表の『アトランティック・クロッシング』で、ロッド・スチュワート(Rod Stewart)は活動拠点を米国に移し、レコード会社もワーナーに移籍して新天地に立った。続けて翌1976年にリリースした移籍第二作がこの『ナイト・オン・ザ・タウン(A Night on the Town)』である。前作『アトランティック・~』では、アナログA面がロック曲、B面がスロー曲とう構成になっていたが、本作でもA面・B面で雰囲気を変えるというこのアイデアを踏襲している。ただし、順序をひっくり返し、今回はA面(CDでは1.~4.)が“スロウ・ハーフ(Slow Half)”、B面が“ファスト・ハーフ(Fast Half)”となっている。
冒頭の1.「今夜きめよう(Tonight’s The Night-Gonna Be Alright)」は、超有名曲にして、ロッド最大のヒット・シングル曲。シングルとして大ヒットし、UKチャートでは5位どまりだったものの、米ビルボードでは8週連続1位という記録を打ち立てた。同じくスロウ・ハーフでいい味を出している曲としては、4.「キリング・オブ・ジョージ―(The Killing Of Georgie -Part I and II)」。ニュージャージーのギャングによってNYで殺されたロッドの知り合いを歌にしたもので、全英ではシングルチャートで2位を記録した。余談ながら、この曲は、前半(Part I)がB・ディランの『血の轍』収録の「運命のひとひねり(Simple Twist of Fate)」、後半(Part II)がビートルズの「ドント・レット・ミー・ダウン」に似ているとよく言われる。他にはキャット・スティーヴンスのカバーである2.「さびしき丘(The First Cult Is The Deepest)」も、別の曲(『アトランティック・クロッシング』収録の「もう話したくない」)との両A面シングルとしてヒットした。