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「慰安婦」問題などを論じた研究グループの牟田和恵・大阪大教授(ジェンダー論)は、杉田議員のツイッターで「慰安婦問題は女性の人権問題ではありません」「税金を反日活動に使われることに納得いかない」などと批判された。
同グループは「規程に従い予算執行しており、不正使用や無駄遣いはない。幾人かは日本政府の『慰安婦』問題対応を批判する論文を執筆しているが、日本が国際的な人権を支持する国になってほしいからで『反日』とされるいわれはない」と反論。牟田教授は 「無知や誤解に基づく誹膀中傷(ひぼうちゅうしょう)だ。国会議員にあるまじき偏った言い方」 と憤る。
琉球独立論などを研究している松島泰勝・龍谷大教授(島嶼(とうしょ)経済学)は「八重山日報」に寄せた杉田議員の論稿で「沖縄県の振興開発と内発的発展に関する総合研究」という研究名で科研費を受け取ったとされ、税金を使って「『琉球独立』を主張するのはいかがなものか」と指摘された。
しかし、実際の内容は主に経済研究。松島教授は「科研費で琉球独立は研究していない。国会議員の影響力を使い、自らの意見に合わない研究を抑圧しようとしている。琉球ヘイトもここまで来たか」と驚く。
こうした動きで想起されるのは戦前の事例だ。1933年、京都帝国大(現京都大)の滝川幸辰教授(刑法)が、菊池武夫・貴族院議員らから講演内容などが共産主義的と攻撃され、大学を追われた「滝川事件」が発生。35年には、東京帝国大(現東京大)の美濃部達吉名誉教授の憲法学説「天皇機関説」をやはり菊池議員らが批判し、政府が同学説の流布を禁じた「天皇機関説事件」が起きた。
戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏は「いま国会議員が非難している構図は、まさに天皇機関説事件で菊池が『学匪』と批判したのと同じ。もともと美濃部を目の敵にしている右翼がいたが、口実が見つからず、そこに出てきたのが天皇機関説だった。 学問レベルでの反論ではなく、国体に反するといった一方的な言い掛かり だった」と説明する。
その後、日本では軍部批判も姿を消し、破滅的な戦争に突入していった。「現在も威圧や恫喝(どうかつ)が増え、空気の流れは当時と同じように段階的に進んでいる。『反日』の背景にある国防の概念を大義名分に振りかざすのは、戦前の日本でも繰り返されたパターンだ」
上智大の中野晃一教授(政治学)も「ここでの『反日』は『反安倍』のこと。政権に異を唱えるのは許さないということだ。そもそも学問は国のために奉仕するものではなく、すぐ役に立つものも、そうではないものもある」と話す。
そして、一連のキャンペーンの狙いを「改憲」とみる。「国民投票のときに自由な議論をされては困るので、学者を黙らせ、萎縮させようと仕掛けている。こんなことがまかり通れば、日本の大学の競争力や国力もますます弱まる」
田中総長は、科研費を口実にした学者への圧力について「看過してしまえばどんどん広がってしまい、学問の自由や大学での言論が萎縮してしまう。ひいては学問の自主性が失われ、学問が政権の道具になってしまいかねない」と危ぶむ。
「誰かの発言に対し、わけも分からず乗っかってしまうことは危険だ。 今回の件も科研費の仕組みを調べてみれば、国会議員の発言が誤りだとすぐに分かる。 賛同する前に踏みとどまり、自分で考えてほしい」
<デスクメモ>
「偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵(ののし)られた世の中を、私は経験してきた」。 こう記したのは昭和天皇の末弟で、歴史学者の故三笠宮崇仁親王だった。この感覚は一昔前までは「常識」だった。ここでいう常識は「正気」と言い換えてもよい。(牧)
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