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安倍氏が自身のツイッターに『産経新聞』の記事をリツイート(投稿・転載)したのは11月19日。「元朝日新聞記者の敗訴確定 最高裁、慰安婦記事巡り」の記事だ。植村氏が、1991年に『朝日新聞』に書いた元日本軍「慰安婦」の記事を桜井よしこ国家基本問題研究所理事長から「捏造」と批判されたため、札幌地裁に起こした名誉毀損訴訟の上告棄却の内容だ。翌20日、今度は自身のフェイスブックに同じ記事を投稿し、21日、「植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定したという事ですね」とコメント欄に書き込んだ。
植村氏の代理人、神原元(かんばらはじめ)・弁護士はこう批判する。「 『産経新聞』は、札幌地裁が櫻井氏の真実相当性を認め、札幌高裁もそれを支持したと書いた。 最高裁が捏造を確定したとは書いていないし、その事実もない。投稿は名誉棄損です」。「真実相当性」とは何か? 判例は、名誉毀損の表現でも、対象が公共の事実で、表現者に公益目的があり、かつ真実を表現したか、もしくは 真実でなくても、表現に真実と信じるに相当の理由があれば免責する。 もし、100%真実でなければ名誉毀損になるとしたら、嘘や不正を隠せる政治家や役人、大企業の批判が難しくなり、民主主義の活力が失われるからだ。たとえば札幌地裁は、元「慰安婦」が人身売買で「慰安婦」にさせられたという櫻井氏の主張を真実と認めるのは困難、と真実性を否定した。しかし、櫻井氏が取材などで植村記事に疑問を持ったのは相当の理由がある、と免責した。
◆他も危うい書き込み
勉強不足や誤読だけが安倍氏の問題ではない。フェイスブック上の批判派と支持派の次のコメントにそれは明瞭だ。「(書き込みは)櫻井よしこ氏らの日本軍性奴隷制に対する歴史否定論を間接的に支持するものであり、前首相という極めて社会的影響力のある立場からのレイシズム(人種主義)やセクシズム(性差別)の悪質な扇動にさえあたるでしょう」「こういう方々とは決して話が通じませんし分かり合える事など決してないと言うことです」
国際社会が戦時性暴力と見ている「慰安婦」問題を、日本の首相が偏ったイデオロギーで否定し、世論を分断させた責任だ。 その真実性は「桜」「モリカケ」の安倍氏の答弁なみに薄い。たとえば2007年、安倍氏は日米首脳会談でブッシュ大統領に「慰安婦」への謝罪を語ったと報道されたが、13年の国会で突如「首脳会談においては、この問題は全く出ておりません」と否定する。その挙句、当時の首相官邸のホームページなどで謝罪を公表していると指摘されると、引っ込めた。
安倍氏の書き込みは他も危うい。10月23日のフェイスブックなどでは 内閣府の産業遺産情報センター を紹介した。 戦争中の強制労働を展示する国際公約に違反していると問題になっている施設 なのに「いわれなき中傷」などと書き込んだ。
安倍氏のフォロワーはツイッター230万人、フェイスブック60万人。影響力は大きい。今回のフェイスブックのように 立法、行政、司法の一角の長だった安倍氏が最高裁の判断について一方的な情報を流すことは、司法の独立を脅かす。 すでに最高裁判事15人全員が安倍内閣による任命だ。こうしたネットと人事による権力掌握――。誰しも思うだろう。「似た者同士だ。トランプ大統領と」。そのトランプ氏の黒人差別抗議デモや大統領選挙への投稿は、ツイッター社から「暴力賛美」などの警告ラベルを受けている。安倍前首相の投稿に付けるべき讐告ラベルは何か。さしあたり「恥知らず」だろうか。
安倍氏に取材をお願いしているが11月27日、事務所が「内容証明は来た」と答えただけだ。
<とこすみ よしふみ・報道人>
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