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2021年01月27日
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テーマ: ニュース(96856)
カテゴリ: ニュース
新型コロナウイルスの感染拡大という大事件に遭遇した現代人は、社会の仕組みをどう変えていくべきか。法政大学教授の水野和夫氏は、10日の毎日新聞で次のように述べている;



<聞き手・岡大介>


◇「非正規」影響大

――新型コロナによって格差は広かっていますか。

 ◆どう考えても広がっている。人との接触を避けオンラインで業務ができる人々は、比較的打撃が小さい。それらの人々は元々正社員が多く、残業代などが多少減ってもそれほど影響はない。一方で、対面でサービスする飲食などの業種はもともと非正規社員が多く、新型コロナで職を失い収入がゼロになるケースもある。看護師も、最前線で頑張っているのにコロナで病院が経営難になりボーナスが減るという矛盾が起きている。格差自体は以前から存在していたが、コロナで拡大している。


――日本で格差が広がり始めたのはいつごろからでしょう。

 ◆1990年代以降だと考えている。 特定の業種に限定されていた派遣労働が99年に原則自由化された。 企業は、派遣労働者や非正規労働者を雇用の調整弁として使い、人件費を固定費から変動費に変えることに成功した。削減した人件費は株主への配当金の原資となった。同じ時期に「金融ビッグバン」と呼ばれる金融制度改革も行われ、国境を超えてお金が動くようになり株価が乱高下しやすくなった。普通の人々のほとんどは資産を預金という形で保有しており、低金利で増えない状況だ。だが、余裕のある富裕層は株の配当や株価上昇で資産を増やしている。

 世界的に経済成長は止まりつつある。 富を得るには誰かから奪わなければいけない。昔は南の途上国から石油や商品作物など資源を奪っていた が、途上国もそれを許さなくなり、先進国ではいわゆる 「中間層」がターゲットになった。 日本でそれを象徴するのが、派遣労働の解禁だ。


――懸念される影響は。

 ◆日本で格差拡大が顕著になり始めて、四半世紀たった。つまり1世代に相当する。それだけ格差拡大が続くと、教育格差も広がる。親の所得が子供世代に影響し、格差が再生産される。 現在、生じている格差は競争の結果ではなく生まれた家で決まっており、身分制の時代に近い状況だ。 アンケートをすれば、「中間層」と答える人々はまだ多いだろう。だが、物価上昇の影響を除いた実質賃金は長期的に下落傾向にあり、すでに中間層はかなり薄くなっている。


――コロナ禍が社会に与える影響は。

 ◆変革の機会になりうる。14世紀に西欧で黒死病(ペスト)が流行した際、当時権威を誇っていた教会は感染を収束させられず信頼が低下し、宗教改革の遠因になったとされる。代わって、 人々が信じる対象は「数字」へと変わった。来世の良い生活を信じていた時代から、数字に利益を信じ現世が大事な時代になった。 金をためれば生活が良くなると考えるようになり、資本家が利益を最優先する今につながる社会が出現した。

 数字は資本とも言い換えられるが、この資本は今、世界中で余っている。2020年のオックスファムリポートなどによると、世界の10億ドル長者2153人分の富は下位46億人の合計より多く、8・7兆ドル(約900兆円)に達する。日本企業も、貯金にあたる「内部留保金」の合計額が19年度は475兆円ある。

 企業の内部留保は人件費の抑制などでためてきたものだが、 今使わずにいつ使うのか。 今、日本全体が危機だ。個別企業に内部留保があるかないかを議論するのではなく、苦しむ企業と従業員に回すことを考えるべきだ。 企業はこれまで、「いざという時のために」と説明し、内部留保を積み上げてきた。今使わなければ説明はウソだったということになり、ただ資本で資本を集めていただけということになる。 ため込まれて使われない資本は、17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの「寓話(ぐうわ)」にある「財産を失った守銭奴」ではないが「石」と同じだ。ただの石であれば意味がないということになり、利益や資本、貨幣といった「数字」への信頼は、コロナ禍で変わる可能性がある。


◇ゆとりある社会に

――規模を追求する現代の資本主義を見直し、低成長を前提とした社会への転換を訴えていますね。

 ◆コロナが動物と人間の境界を越えて感染しグローバルに拡大したのは、人間の経済活動が影響している。我々はこれまで、「より速く、より遠く」を追求してきた。しかし、環境破壊などが問題になっているように膨張は限界で、このような考え方は人間を苦しめるだけだ。今後は、「よりゆっくり、より近く」に転換すべきだ。東京で暮らし、働いていると通勤に年600~700時間使っているという試算もある。所得は多いのかもしれないが、時間に余裕は全くない。生活にゆとりを求めると、地方の方が豊かだということになる。企業が都市に集中しているので、飲食店も都市に集中している。企業が分散すれば、地方の雇用も増えるだろう。

 生活も豊かになった現在、もうのんびりしてもよい段階に入った。企業も個人も「将来不安だから」と預金を増やし続けているが、ため込んでも使い道がないのだから取り崩してもよいはずだ。使われないなら、富裕層の相続税の税率を引き上げて、大学無償化の財源に充てるなど再分配に回せば格差縮小にもつながる。みんなで、余裕のある暮らしができる社会を目指すべきだ。


<みずの・かずお> 1953年生まれ。経済学者。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト、内閣官房内閣審議官、日本大学国際関係学部教授を経て、法政大学法学部教授。


2021年1月10日 毎日新聞朝刊 13版 6ページ 「コロナで変わる世界-内部留保今こそ還元」から引用

 この記事は経済学者の目から見た人類の歴史を語っていて、真実を表現している。中世の頃は人類は宗教を信じていたから、教会が世の中を支配してローマ教皇がヨーロッパ中の国王を任命する権威ある立場であったが、ある日疫病が流行して、いくら神様を拝んでも疫病が終息しない事実をしって教会は権威を失墜する。その代わりに人類が目を付けたのが「カネ」で、植民地から富を奪う資本主義経済が発達したが、その経済も限界に達すると巨大資本家の金庫には莫大な「内部留保」が溜まりこんで、行き場を失っている。その「内部留保」を今こそ人類の「救世済民」に活用しなければ、せっかくの労働で得られた人類の「利益」が只の「石ころ」に成り下がってしまう。なかなか示唆に富んだ主張である。資本主義経済の枠組みで見れは、「内部留保」は私企業の私有財産ということになるが、経済学の立場から見れば、「利益」というものは「労働」によって生み出されるものであって、資本家が投資した結果が100%ではないのだから、企業が私有財産として「内部留保」を独占するのは不当というものであり、社会の中の「利益の不当な偏在」をバランス良く調整するのが政治の仕事である。自民党政権にはいささか荷の重い仕事かもしれないが、歴史の変化に順応する政権は繁栄し、旧体制に固執する政権は廃れる運命にあると思います。





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最終更新日  2021年01月27日 01時00分05秒


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