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(石井紀代美、荒井六貴)
「住民投票条例に断固反対しています」。議会開会まであと30分に迫った19日午前9時半すぎ、住宅や小中学校に囲まれる武蔵野市役所の前に、マイクでがなり声を上げる街宣車が突然飛び込んだ。隣の人との会話が成り立たないほどの大音量。市が用意していた騒音測定機の針が激しく振れた。
街宣車は市役所前の車道脇に駐車。出てきた男性が車に上り、「このままでは、外国勢力に地方が乗っ取られてしまう」と持論を展開した。
いつもは川崎市で、ヘイトスピーチに対する抗議「カウンター」活動をしているという男性らが数人、すぐに駆け寄り、手持ちの小さな拡声器で「外国人の差別をやめろ」「レイシストは帰れ」と応酬した。
すぐそばにある「むさしの市民公園」の芝生では30~40人の園児が走り回っていた。「子どもたちが聞いているんだぞ。やめろ」とカウンターの声が響く。両者が接近してにらみ合い、警察が間に入って距離を取らせる場面もあった。市職員によると、こうした街宣活動は15日、17日にもあったという。
住民投票は通常、実施する場合はその都度、条例の制定が必要だ。自治体の首長や議会が発議できるが、地方自治法で、住民にも直接請求する権利が認められている。請求には有権者の50分の1の署名が必要で、議会が可決してはじめて実施される。
今回、武蔵野市が制定を目指す住民投票条例は「常設型」と呼ばれるもので、その都度条例を制定する必要がなく、投票資格者の4分の1の署名を集めれば議会を通さず実施できる。条例案では、市内に3ヵ月以上住む18歳以上なら日本人、外国人にかかわらず投票権を認める。結果は尊重されるが法的拘束力はない。
この住民投票条例が成立すると、なぜ「外国人に乗っ取られる」のか、その論理が分からなかったので、「こちら特報部」がマイクを握っていた男性に尋ねると、「その可能性かあるということ」「外国人の意見を尊重したいならアンケー卜で十分だ」という返答だった。
子どもの学童保育の申請に市役所を訪れた40代の女性会社員は「武蔵野市はリベラルの街。外国人も住民投票できるのは賛成」と語る。60代の男性は「うるさいよね。武蔵野市であんなヘイト発言するなんて、とんでもないことです」と一言。 「外国人も投票できるのは当然のこと。同じ場所に住んでいるんだから、協力し合って生きていかないといけない」
一方、街宣車の音がかすかに聞こえてくる議場では10月の市長選で再選を果たした松下玲子市長が「さらに市民参加を進めるために、常設型の住民投票制度の確立を目指します」と施政方針演説。終了後、記者団に「選挙権と混同し『市長や議会が外国人になってしまう』と勘違いしている人がいる」などと語った。市が今年3月に行った市民アンケートでは賛成が73%に上る。パブリックコメントなども行われている。
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