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◆原点は安倍内閣の政策転換
NSSには首相が語った通り、「平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」と書かれている。
しかし、「専守防衛」の中身は膨れあがっている。最大の要因は、日本が敵の領域内を攻撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有だ。
政府はこれまで敵がミサイル攻撃に「着手」した段階で発射拠点などを攻撃でき、憲法上は「自衛の範囲」との見解を示してきた。では、どのように運用するのか。
NSSは「武力行使の3要件」に基づくとしている。3要件には、2014年の憲法解釈変更で可能になった集団的自衛権の行使も含まれる。つまり、日本だけでなく密接な関係がある国に対する攻撃への対処でも敵基地攻撃ができるということになる。
さらにNSSでは、敵基地攻撃能力の保有によって「武力攻撃そのものを抑止する」としている。抑止とは敵に攻撃を思いとどまらせることを意味する。それだけの能力をもつということは、より強い兵器への依存を生む。政府は米国の巡航ミサイル「トマホーク」など長射程のミサイルの導入を進めようとしている。
これほど「専守防衛」が膨脹(ぼうちょう)したのはなぜなのか。 それは、歴代最長の安倍晋三内閣が憲法との関係をなし崩しにした安保政策転換の積み重ね と無縁ではないだろう。
集団的自衛権の行使を具体化するため15年に成立した安保法制の審議で、安倍氏は根拠として 1959年の砂川事件最高裁判決 を挙げた。 だが、日米安保条約の合憲性が問われ高度の政治性を有するとして司法判断を避けた判決をそう読むことに今も異論は根強い。 こうした流れの中に今回の安保3文書改定がある。
政府関係者らは「憲法論議は安保法制で決着済み」と語る。実際、政府は今年に入り、国家安保戦賂改定に向け有識者52人と非公開で意見交換したが、対象は元外務・防衛官僚、自衛隊の元将官、国際政治学者らで、憲法学者はいなかった。憲法は安保政策の規範ではないのか。その意識が政府内で緩んでいる。
◆憲法の理念見つめ直す論議を
戦後憲法には、近現代の世界中での惨禍を経て、国際協調により戦争をなくすという理念が流れ込んでいる。外交や軍縮に尽力し、防衛力は9条で保持を禁じた「戦力」とならないよう必要最小限で臨む。それが本来の専守防衛のはずだ。「専守防衛」をお題目にせず、憲法が何を目指しているのかという観点から見つめ直す。そんな論議を国会、特に野党に望みたい。
(編集委員・藤田直央)
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