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前の77年では、国がおかしくなった頃「昭和維新」が叫ばれた。次の77年でも「失われたン十年」が言われだすと、また「維新」が唱えられるようになった。
ただし、戦前の陰欝深刻なスローガンが、戦後は快活で前向きな庶民に好かれる言葉へ変わった。司馬遼太郎の影響だろう。
10月に出た福間良明著「司馬遼太郎の時代」で、文化勲章までもらった国民作家が、いかに学歴・職歴の「二流」「傍系」意識を肥やしに大成したかを興味深く読んだ。確かに幕末・維新から日露戦争が舞台の小説は「幸福で楽天的な英雄たちの物語」が多い。
思い出されるのは、高等小学校卒の劣等感をバネにベストセラーを量産した松本清張。こちらは専ら底辺での逆境や権力への反抗を書いた。歴史への視線が、上から見下ろす司馬とは逆だ。
作風は対照的でも、重なる視点はいくつもある。 司馬は「昭和維新」を掲げた2・26事件を嫌悪した。「庶民が迷惑を被った怨念(おんねん)がある」という。清張は「昭和史発掘」(文庫版全9巻)で、事件の暗部をとことん暴いた。
旧軍の暴走を難詰し、正論やイデオロギーを疑い、非合理な精神論を信じない。2人とも、日本人がいともたやすく全体で同じ考えに染まりやすいと危惧した。
司馬は高度成長期のビジネスマンに偶像視され、書かれた史実や史観に批判がある。清張は陰謀論と嫌われもする。限界はあるにせよ、司馬と清張という異質の国民作家が同時代に並び立つだのは、両雄と気構えを共にする分厚い国民意識があったからだろう。
43兆円の大軍拡決定に、他ならぬ自衛隊将官OBたちが各メディアで困惑と懸念を述べている。 例えば「身の丈を超えている。全部本当にできるのか、やっていいことなのか」(香田洋二元自衛艦隊司令官・朝日新聞デジタルより)。プロならではの危機感だ。
自衛隊は創設以来ずっと定員割れが続く。そもそも膨大な装備を扱う人が足りず、少子化は加速。それで誰が、誰を、どう守る。
ところが、世論は防衛費増に賛成多数。敵基地攻撃能力についても、定義・運用・効果が分からないのに、やはり賛成多数。
こうして戦後77年は暮れていく。その軌跡は、戦前の77年と不気味に重なる。私たちは司馬と清張を誤読した。
(専門編集委員)
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