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2023年01月11日
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テーマ: ニュース(96858)
カテゴリ: ニュース
明治維新が成功して天皇を担ぎ出して政府を構成した明治の体制は77年後に侵略戦争に敗北して滅亡し、平和国家として再出発した「戦後」も77年経つと「行き止まり」にぶち当たって停滞したため、これを打開する目的で岸田政権が打ち出した様々なスローガンは「新たな戦前」の始まりではないかと思わせるような傾向があるとする「批判」を、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏が12月24日の同紙に書いている;




 前の77年では、国がおかしくなった頃「昭和維新」が叫ばれた。次の77年でも「失われたン十年」が言われだすと、また「維新」が唱えられるようになった。

 ただし、戦前の陰欝深刻なスローガンが、戦後は快活で前向きな庶民に好かれる言葉へ変わった。司馬遼太郎の影響だろう。

 10月に出た福間良明著「司馬遼太郎の時代」で、文化勲章までもらった国民作家が、いかに学歴・職歴の「二流」「傍系」意識を肥やしに大成したかを興味深く読んだ。確かに幕末・維新から日露戦争が舞台の小説は「幸福で楽天的な英雄たちの物語」が多い。

 思い出されるのは、高等小学校卒の劣等感をバネにベストセラーを量産した松本清張。こちらは専ら底辺での逆境や権力への反抗を書いた。歴史への視線が、上から見下ろす司馬とは逆だ。

 作風は対照的でも、重なる視点はいくつもある。 司馬は「昭和維新」を掲げた2・26事件を嫌悪した。「庶民が迷惑を被った怨念(おんねん)がある」という。清張は「昭和史発掘」(文庫版全9巻)で、事件の暗部をとことん暴いた。

 旧軍の暴走を難詰し、正論やイデオロギーを疑い、非合理な精神論を信じない。2人とも、日本人がいともたやすく全体で同じ考えに染まりやすいと危惧した。

 司馬は高度成長期のビジネスマンに偶像視され、書かれた史実や史観に批判がある。清張は陰謀論と嫌われもする。限界はあるにせよ、司馬と清張という異質の国民作家が同時代に並び立つだのは、両雄と気構えを共にする分厚い国民意識があったからだろう。

 43兆円の大軍拡決定に、他ならぬ自衛隊将官OBたちが各メディアで困惑と懸念を述べている。 例えば「身の丈を超えている。全部本当にできるのか、やっていいことなのか」(香田洋二元自衛艦隊司令官・朝日新聞デジタルより)。プロならではの危機感だ。

 自衛隊は創設以来ずっと定員割れが続く。そもそも膨大な装備を扱う人が足りず、少子化は加速。それで誰が、誰を、どう守る。

ところが、世論は防衛費増に賛成多数。敵基地攻撃能力についても、定義・運用・効果が分からないのに、やはり賛成多数。

 こうして戦後77年は暮れていく。その軌跡は、戦前の77年と不気味に重なる。私たちは司馬と清張を誤読した。
(専門編集委員)


2022年12月24日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-戦後77年の暮れ方」から引用

 この記事によれば、司馬遼太郎も松本清張も「日本人はいともたやすく全体で同じ考えに染まりやすい」民族であると心配したそうであるが、もっともな話です。また、心配な点は「同じ考えに染まりやすい」だけではなく、「規範意識に乏しい」という点も大きな問題で、安倍政権が憲法を無視して自衛隊の活動範囲を勝手に変更したり、政治を私物化して国家予算を自分の選挙区の有権者接待に使ってもさして支持率が低下するわけでもなく、隣国がちょっとミサイル実験をするとすぐに支持率が上昇するという、妙な反応をするのが日本の世論です。今回も岸田政権が、具体的プランもなしにいきなり「防衛予算倍増」とぶち上げると、世論は何の議論もなしに「賛成多数」に染まってしまう。平和国家としての再出発から77年経って、2回目の「戦前」へ向かうということで良いのか、大いに議論するべきと思います。





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最終更新日  2023年01月11日 01時00分05秒


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