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2023年01月18日
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テーマ: ニュース(96858)
カテゴリ: ニュース
石橋湛山が36歳だった1921年に出版した「一切を棄つるの覚悟」について、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏が7日の同紙に、次のように書いている;




 「理路整然と間違ったことを言う始末の悪い男」

 戦前・戦中を通し頑固に自由主義の論陣を張った経済ジャーナリスト、石橋湛山(たんざん・戦後、首相)は、世間からそうあきれられた。

 1921(大正10)年の「一切を棄つるの覚悟」は、今読んでも驚かされる。時に36歳。経済雑誌「東洋経済新報」の社説欄に書いた匿名の独創的主張である。

 日清・日露・第一次大戦に勝った日本は、軍備も領土もさらなる拡張をめざした。シベリアに兵を出し、ロシアの次は米国を仮想敵国に見立て、艦隊増強に乗り出す。世論もこれを支持した。100年余り前の日本が、何やら現在の中国と重なって見える。

 同年度予算は、歳出総額の実に半分を軍事費が占めた。尾崎行雄が国会に出した縮減案は、賛成38票・反対285票で否決。政党は軍閥にびくついていた。

 すかさず米国が外交攻勢に出る。日英仏伊4力国に、軍縮と極東・太平洋問題を話し合うワシントン会議を呼びかけたのだ。

 うろたえ慌てる日本政府と国民に、湛山は「ざまを見ろ」と言い放ち、奇想天外な策を説く。

 先手を取られた日本は、列国を驚かす大覚悟で臨まなければ失敗する。植民地の朝鮮、台湾、樺太(サハリン)を棄てよ。中国、旧満州(現中国東北部)、シベリアから兵を引け。明治以来の日本が勝ち得た何もかも棄ててかかれば、奪われるものはない。

 世評はこれを空想的平和主義の空論と冷笑するか。されば、と翌週より3回「大日本主義の幻想」と題して、その普遍性と経済合理性を、得意の経済データをあげて詳しく論証した。

 わが軍備は脅威ではない、侵略しないというが、いつの世もそれで軍拡競争は起きる。植民地経営に実利はない。民族自立は歴史の流れ。世界に先んじて本土だけの国に戻り、世界中から信頼される貿易立国として繁栄しよう。

 それでもあざけり、ののしり、黙殺した政府と国民が20年後、太平洋戦争を始める。死者310万人、沖縄戦、本土空襲、原爆投下の末に「一切を棄つる」日本となって、湛山が予言した経済大国を実現したのは周知の通り。

 湛山なら今、何を書くか。

軍拡増税反対、ウクライナ即時停戦、日朝国交正常化、中国首脳訪日、天皇訪韓、日露平和条約締結。

八方から怒声を浴びること必定。

 今年、湛山没後50年。再読をお勧めします。
(専門編集委員)


2023年1月7日 毎日新聞朝刊 14版 2ページ 「土記-一切をすつるの覚悟」から引用

 「民族自立」という言葉は、戦後生まれの我々は小学校の頃(昭和30年代)にアジア・アフリカの国々が次々と独立を達成するのを見て、「なるほど、これが民族自立なのだ」と子供心に考えたものでした。それを石橋湛山は大正10年から本に書いて主張していたとは、その「先見の明」に驚きます。その石橋湛山は、鳩山一郎の後を継いで内閣総理大臣に選出されたものの、病気のために数ヶ月で退陣することになり、その後に組閣したのが岸信介で、岸内閣が平和主義のばずだった日本を大きく右旋回させて、統一協会につけ込まれることとなり、民主主義はまったく進まず、今日の閉塞状況に迷い込むこととなってしまったのは、返す返すも残念なことです。しかし、石橋湛山の時代に比べれば現在は多少とも民主主義を理解した人口は多いはずで、やみくもに軍備を増強して事足れリとする人々を批判し、近隣諸国との信頼関係の構築こそが安全保障と経済発展の要石なのだ、という声を上げていきたいものです。





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最終更新日  2023年01月18日 01時00分07秒


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