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最近出版された『線を越える韓国人 線を引く日本人』(飛鳥新社)という本の中に、こんな刺激的な見出しの文章があります。
著者のハン・ミンさんは韓国の文化心理学者。多様な視点で日本人と韓国人を比較しています。
ハンさんによれば、韓国人が持つ反日感情は、日本の植民地支配を直接経験した人がまだ生存しているからです。また、一度謝罪した内容も内閣が代わると一瞬でひっくり返ることがあるため、真実性に疑いを持つと言います。
一方で日本の嫌韓感情については、過去の歴史や領土の問題にダダをこね、感情的になる韓国を「子ども」「弟」と見ているからだ、と分析しています。
日本にとって、確かに韓国が弟に見えた時期がありました。その弟が「なまいきにも兄に逆らうのはもちろん、弱者が強者に向かって謝罪と補償を要求するなどということは到底受け入れることができないのです」(同書より)
ただ現実を見ると、韓国は、経済、軍事、さらに「韓流」と呼ばれる文化面で著しい成長を続けています。日本にとって、もう弟などとは言えないでしょう。
◆解決策の勇気ある決断
その韓国から、先日、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が日本を訪問しました。長く両国間の懸案だった元徴用工問題について、韓国側がまとめた解決策を説明するためでした。
この問題は2018年に韓国最高裁が、日本企業に賠償を命じる判決を出したことが発端です。
日本政府は 1965年の日韓請求権協定で決着済み、との立場 ですから、韓国が新たに「謝罪と補償」を求めたことで日韓関係は急激に冷え込みました。
解決策は、賠償金を韓国政府傘下の財団に肩代わりさせることで最高裁判決と日韓協定の折り合いをつける勇気ある決断でした。
韓国側か注目したのは、この解決策に、岸田文雄首相がどんな言葉で応じるかでした。
報道によれば韓国側は、98年10月の日韓共同宣言を読み上げ、韓国民を納得させてほしいと求めたそうです。
この宣言は、日韓両国間で最高の外交文書とされ「両国が過去を直視し、相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことが重要」との文言や、日本の過去の植民地支配に対する「痛切な反省と心からのおわび」が盛り込まれています。
しかし、 岸田首相は宣言の内容には直接言及せず、 「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認いたしました」と述べました。
日本政府の原則的立場から出ない発言は、国内の保守派への配慮と解説されますが、ハンさんが指摘する「兄としてのプライド」が影響したのかもしれません。
さらに、岸田首相は尹大統領に竹島や慰安婦問題などを提起し、日本政府の立場を説明した、とも伝えられました。
韓国政府は「議題にはなっていない」と否定していますが、韓国のメディアや野党は「得るものは大してなかったのに、日本側の話を一方的に聞いてきたのではないか」と一斉に批判しました。
日韓首脳会談後、岸田首相の支持率は上がる一方、尹大統領は一時急落しました。韓国では解決策の撤回を求める集会が開かれるなど、反発は収まる気配がありません。
◆若者世代の未来のため
大統領はなぜ政治的危険を冒してまで日本との関係改善を急いだのでしょう。それは大統領自身が訪日中に明らかにしています。
尹大統領は慶応大学での講演で学生に 「韓国の責任ある政治家として、両国の若者世代の素晴らしい未来のため、勇気を持って最善を尽くす」 と語りかけました。
私的な席では、韓国の国益にかなうことは、たとえ自分の支持率が1%になろうが取り組む、との決意を語っていたそうです。
韓国内での摩擦を覚悟して解決策をまとめた尹大統領には「弟の国」から脱し、成長した自分の国への自信も感じられます。
今回の日韓首脳会談では首脳が頻繁に相互訪問する「シャトル外交」再開も決まりました。岸田首相は今夏にも訪韓の見通しです。
尹大統領の政治決断に日本側が応える番です。「反日」「嫌韓」を乗り越え、長年冷え込んでいた日韓関係を改善し、安定させる好機を逃してはなりません。岸田首相には尹大統領同様、未来のための勇気を、両国の若者に誓ってほしいと切に願います。
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