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(山田雄之)
「横浜市営バスでは、乗務員不足により運行の確保が困難になったため、平日の日中から夜間を中心に減便します」――。同市は12日、保土ヶ谷営業所が運行する平日のバスの本数を22日から減らすと発表した。12路線で計77本。1日には290本の大幅な減便に踏み切ったばかりで、月内で2度目となる異例の措置だ。
「利用者には大変申し訳ない」と担当者。 今年に入り同営業所の20~50代の運転手9人が転職を希望するなどして相次ぎ離職。 他の営業所から応援をもらって対応したがまかないきれず、苦渋の決断となったという。「今後も離職者が出る可能性はあり、運行本数を回復させるのは難しいだろう」と見通す。
茨城県のバス会社大手、茨城交通も1日から水戸市など12市町村を走る路線の一部を減らした。利用が少ない路線を中心とし朝夕のピーク時はできる限り維持したが、残業規制に伴い「運転手の拘束時間を減らすため、減便せざるを得なかった」(同社)という。
運送業の働き方改革や労働環境改善を目的とした「改善基準告示」が1日施行された。具体的にはトラックやバス、タクシーの運転手を対象に「年960時間以下」などとする残業上限が導入された。
これに伴い、バス運転手の不足は広がっている。「コロナ禍で運行本数が減った際、運転者が別業種に出ていったまま戻らなかったのが大きい」と日本バス協会(東京)の担当者。協会は昨年9月、24年度は2万1千人、30年度には3万6千人の運転手が不足すると試算した。
同協会は問題解消のため、外国人運転手の活用制度や、運賃支払いのキャッシュレス化の環境整備などの支援を国に要望。政府も3月、外国人労働者の在留資格の「特定技能」の対象にバスなどの運転手を追加することを閣議決定した。
関西大の宇都宮浄人教授(交通経済学)は「目先の対策でしかない。 低賃金と長時間労働を是正しなければ根本的な解決にはならない 」と批判する。運転手不足の背景には処遇の問題があるという。23年版交通政策白書によると、 バス運転手は全産業平均と比べて労働時間は約1割長いのに、年間所得額は約2割低い399万円。 女性の割合は1%台にとどまる。「早朝や深夜勤務もあり、人命を預かる重要な仕事だ」とも話す。
東洋大の岡村敏之教授(交通計画学)は、バス運転手の不足は以前から続く構造的な問題とする。残業規制で顕在化した問題も「運転者の労働条件を改善するために必要な一歩。解決策は運転に必要な大型2種免許の取得者を増やすしかない」と唱える。
利用者にとって厳しいバスの減便。運転手不足などを解消する策はあるのか。宇都宮氏は「欧州のように自治体がバス事業者と契約を結んで路線バスをしっかりと運行してもらう仕組みを導入し、賃金アップを図るべきだ」と主張する。岡村氏も運転手の処遇改善が前提としつつ、「われわれ利用者もバスの減便や運賃値上げをある程度は受け入れながら、バスを活用していくべきだ」と社会の意識や行動の変容を促した。
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