フリーページ
(加藤遼也)
◆試験的に0・9グラム
東電は昨年11月、福島第一原発2号機で、計画よりも3年遅れて初めての試験的な取り出しを行った。今年4月の2回目と合わせて、回収した小石状のデブリは計0・9グラム。デブリの成分や性状を分析した結果を、今後の本格的な取り出しに向けた工具の選定などに役立てる方針だ。
本格的な取り出しは、使用済み核燃料の搬出が完了している3号機から始める。デブリを回収しやすくするため、高圧で水を噴射する特殊な装置で原子炉内のデブリを削って小さくし、原子炉格納容器の下部に落とす。そのうえで格納容器の横から装置で回収する。
デブリは核燃料と炉内構造物などが混ざり合っており、その形状は様々だ。必要に応じて充填剤を使い、デブリを固めて扱いやすくする。東電は、今後1~2年をかけて詳細な検証を進めていく。
東電は当初、30年代初頭に本格的な取り出しに着手する予定だった。しかし、3号機の横にある高線量の放射性廃棄物が残る建物が、作業の妨げになることが判明し、その撤去が必要になった。原子炉の上からデブリを取り出すための機器を設置する「構台」の建設なども、当初想定より時間を要することが分かった。
東電は7月の定例記者会見で、本格的な取り出しの着手について、計画よりも7年ほど遅れて37年以降になるとの見通しを発表した。51年を期限とする廃炉完了時期への影響は、避けられないとみられるが、東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は「(廃炉完了目標を達成する)旗を降ろす必要はない」と述べ、完了時期の見直しを否定した。理由については「(本格的取り出しの)後の工程が見えない。見直しについて判断するための材料がそろっていない」とした。
回収したデブリは、福島第で原発敷地内で一時的に保管するが、最終的な処分先は決まっていない。東電は、廃炉完了に生じる遅れがれがどの程度になるかを明確にできないなかで、完了時間の見直しを進めるのは「不誠実」という考えだ。長崎大の鈴木達治郎・客員教授(原子力政策)は「廃炉完了目標の達成が困難なのは明らかなのに、見直しをしないことのほうが不誠実ではないか」と話す。
◆目標根拠乏しく
東電の廃炉作業の遅れを見るまでもなく、廃炉完了目標について、当初から懐疑的だった専門家は少なくない。その理由は、日標の設定が科学的な根拠に乏しいものだったからだ。
国の専門機関「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」廃炉総括監で、原子力規制委員会前委員長の引田豊志氏は「(51年の廃炉完了は)もともと困難だと思っていた」と語る。
福島第一原発の廃炉工程が策定されたのは11年12月。当時は原子炉内の状況がほとんど分かっておらず、1979年に炉心溶融(メルトダウン)を起こした米スリーマイル島(TMI)原発2号機の事故を、参考にするしかなかった。
だが、その後の調査で、二つの事故の状況には、大きな違いがあることが判明した。TMIのデブリが原子炉圧力容器内にとどまったのに対し、福島第一原発のデブリは圧力容器を突き破り、格納容器にまで溶け落ちていた。福島第一原発のデブリの総量は、TMIの7倍近くと推計された。
早稲田大の松岡俊二教授(環境経済学)は「現実性のない目標が維持されることは、住民の不信感につながってしまう。東電には、福島県民や原発事故で避難した住民が納得できる説明が求められる」と話している。
◆◆汚染水日々発生◆◆
福島第一原発事故から来年で15年になる。東電は毎日、原子炉などに注水を続け、デブリを冷やし続けている。主な目的は、放射性物質の飛散防止にある。
東電によると、デブリの冷却を止めれば、デブリの熱によって原子炉建屋内部が乾燥し、放射性物質がほこりのように舞い上がる恐れがある。そのため注水は欠かせないが、デブリに触れた水は高濃度の汚染水となる。建屋の損傷部分から流れ込む雨水や地下水も加わり、大量の汚染水が日々発生している。
東電は2023年8月、処理水の海洋放出を始めた。冷却に伴って発生する汚染水を浄化した処理水や処理の過程にある水をためるタンクの用地の確保が、限界に近づいたためだ。これまで計12万5488トンの処理水が海に流されている。
東電によると、現在のデブリが再び臨界に達する可能性は極めて低い。それでも注水を続けているのは、放射性物質の飛散を防ぐ手立てがほかにないためだ。
デブリはこうして、放射性物質の飛散や汚染水の発生の大本となっている。デブリの取り出しが、廃炉工程の本丸とされる理由でもある。
「貴族」生む養子策 憲法違反(7日の日… 2026年08月07日
[大弦小弦]金子文子と天皇(6日の日記) 2026年08月06日
「女系天皇誕生封じる」 海外、日本社会… 2026年08月05日
PR
キーワードサーチ
コメント新着