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2001年の「9・11攻撃」後、当時のブッシュ米政権は国際過激組織アルカイダの攻撃と断定、アルカイダをかくまったとしてアフガニスタンのタリバン政権を打倒した。03年にはアルカイダとは関係ないイラクのフセイン政権も崩壊させ、米国は両国で新たな「国づくり」を主導。背景には唯一の超大国となった米国の強いおごりがあった。だがこのおごりが、今に続く世界の混迷の要因となった。
アフガンやイラクでの米国による国家再建は失敗し、米国の手に負えない状況になった。私は08年に戦火が続くアフガンで現地調査を行い、約260人のアンケートも集め圧倒的多数のアフガン人が「タリバンとの和解しか平和への道はない」と考えていることを知った。
翌年、国連アフガン支援団「和解・再統合チームリーダー」としてタリバンと交渉を始める枠組みづくりを支援し、その後、アフガン政府とタリバンの和平交渉が始まった。20年に米国とタリバンは米軍撤退で合意し翌年、米軍が退き、タリバンがアフガン全土を掌握した。
18年と19年にはイラクを訪問し3人の副大統領と懇談したが、イラクではイスラム教シーア派主導のイランに近い政権ができ、米国の当初の目的と全く異なる道を歩んでいた。二つの軍事介入の失敗はオバマ大統領やトランプ大統領にも共有され、多くの米国人も認識している。米国が大規模な軍事介入をしばらく控えてきたのは、この失敗の卜ラウマがある。
今年2月、トランプ大統領はイランへの空爆を開始した。だが地上軍を出せないのは、アフガンやイラクの失敗で米国人の拒否感が強いためだ。空爆だけで政権転覆は難しく混乱が続く。ロシアのウクライナへの侵攻、イスラエルによるガザでの戦闘、米国のイラン攻撃と「ルールなき世界」に私たちは突入している。
日本はどう進むべきか。日本政治外交史が専門で元防衛大学校長の故五百旗頭真氏は「日米同盟」と「日中協商」が日本の基軸と主張した。混迷を深める今、米国に対し「国際的ルール」の大切さを言い続け、中国との関係改善を模索しつつ、この二つに加え「新興・途上国との連携強化」が日本の第三の指針になると、私は考える。
中東やアフリカに行くと、平和国家として「自立や安定」を支援してきた日本への信頼や尊敬を強く感じる。そうした信頼を生かし、人道支援や開発支援、その後は貿易や投資を通じて、東南アジアや中東、アフリカ、南アメリカなど「新興・途上国」との連携を拡大させることは、日本企業の利益と日本人の富にもつながる。しかし、そのためには地域が平和であることが肝要だ。
日本が和平調停や平和構築を通じ、人々が安心して暮らせる地域が広がるよう努力することは崇高な意味があるし、日本の「仲間」を増やし日本を守ることにもつながる。 「新興・途上国」との連携強化こそが、世界秩序が壊れつつある今、日本の3番目の国家指針になるはずだ。
<ひがし・だいさく> 1969年東京都生まれ。日本の国連代表部公使参事官などを経て上智大教授。専門は平和構築。著書に「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」「内戦と和平」など。
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