2015/05/05
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≪【 虎子/ココの誇顧/ココ ; 彷徨癖者・如水が愛犬のココ(ボクサー犬)の悲嘆・感嘆】= 05月05 =≫


核兵器を振りかざす、頭のおかしい大統領


 世界各国の首脳と大衆よ、常に私のことを気に掛けよ──。そんな願望を抱いたリビアの独裁者、故ムアマル・カダフィは賢い戦略を展開した。頭がおかしいふりをして敵陣営を攪乱し、不安に陥れたのだ。
 同様の戦略を実行していると見受けられるのが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近頃のプーチンは鬱状態が噂されたり、現実を見失っているようだったり、公の場から姿を消してしまうこともある。

「予測不可能な人間に見せ掛けるのは合理的な行動だ」と、最近までモスクワ駐在大使を務めていた人物は指摘する。「プーチンを『予測不能な男』に仕 立てて欧米に恐怖を与えるのが、ロシアの戦略だ。トップの座に頭のおかしい人物がいるとなれば、その国が持つ核の脅威は別次元のものになる」

 実際、プーチンは2年ほど前から、ロシアの軍事力行使を世界に意識させることに成功している。米スタンフォード大学の名誉教授で核リスクが専門のマーティン・ヘルマンによれば、欧米はいまだにプーチンのゲームに振り回されている状況だ。「プーチンは核兵器を切り札にしている。その気になれば1時間以内にアメリカを消滅させられる、と。ロシアは単なる地域大国ではなく、世界の超大国だと認めさせるためだ」

 こうした作戦は過去にも功を奏している。カダフィは核開発計画を国際社会との交渉材料に使った。北朝鮮も、同じ邪悪なトリックを駆使している。狂気を演出して不安をあおるのは、実は核戦略の重要な要素だ。ベトナム戦争当時、リチャード・ニクソン米大統領は側近に「狂人理論」を語った。「戦争を終わらせるためなら、ニクソンは何をするか分からないと北ベトナム側に思わせたい」と。

 95年には、米戦略軍が機密文書でこう勧告している。「冷静で理性的な相手だと思われれば不利になる......重大な国益に対する攻撃を受けたら、アメリカは理性をかなぐり捨てて復讐する。そんな国家像を、あらゆる敵国にアピールするべきだ」

プーチン-3
「鉄の男」で社会病質者
 理性を捨てて復讐する──まるで今のプーチンだ。当然ながら各国の政府や情報機関は、この謎めいた指導者を理解しようと躍起になっている。2月には、プーチンを分析した米国防総省内のシンクタンクの報告書が公開された。08年に行われたこの研究は、プーチンにはアスペルガー症候群があると結論付けている。

 アメリカでこの分野の権威は、言わずと知れたCIA(米中央情報局)だ。同局の「性格・政治行動分析センター」は、現地の外交官の観察報告や演説内容などの情報を収集・分析して、各国指導者の性格プロファイルを作成した経験がある。CIAは指導者の性格診断を今でも続けている。「ただしCIA情報部の活動の一環として、政治・経済・軍事面の分析と並行して実施している」と、トッド・エビッツ報道官は言う。

 今のプーチンの心理状態をCIAはどうみるか。回答は得られなかった。しかし性格・政治行動分析センターを創設し、長らく所長を務めたジョージ・ワシントン大学のジェロルド・ポスト教授(政治心理学)の見立てはこうだ。
「プーチンは自身を現代版ロシア皇帝と見なし、ロシア語圏の全人民に対して責任を持つと考えている。だがプーチンにとって最も大切なのは、人民ではなく自分自身だ」

 ポストに言わせれば、プーチンの「鉄の男」のイメージは、いじめられっ子だった体験の産物だ。「武道を始めたのは、いじめに対抗するためだった。 指導者になった今も、彼は同じ行動をしている」。つまり大国の指導者になった今は、武術の代わりに核兵器で身を守ろうとしているということだ。
 ロシアの投資ファンド、エルミタージュ・キャピタル・マネジメントを率いていたウィリアム・ブラウダーは、プーチン政権下の05年に国外追放処分を受け、顧問弁護士がロシア国内の刑務所で不審死した経緯もあり、プーチンを見る目は冷たい。

 権力を握り始めた頃からプーチンを知るブラウダーによれば、プーチンは「極めて理性的なソシオパス(社会病質者)」だ。ロシアは自分の手中にあると信じていたが、昨年2月にウクライナで親ロシア派のヤヌコビッチ政権が民衆に倒されたことで、考えを変えた。「プーチンはヤヌコビッチのようになりたくなかった。ただそれだけの理由で、ロシア国民の目を国内からそらすためにクリミアに侵攻した」

大物政治家になれば、国民の現実から乖離しがちだ。「そんな立場になれば誰でも変わる」と、プーチンの元友人は語る。

プーチン-2
信じるのは元KGBだけ
 だがプーチンは「KGB(国家保安委員会)出身である点が違う」という。「ほかの国家指導者はお決まりの方向に変化するが、プーチンはKGB的に変化している。周りは敵だらけ、頼れるのは同じKGB出身者だけだと疑心暗鬼になっている」

 この疑心暗鬼が「狂人ゲーム」の火に油を注ぐ。「プーチンは頭がおかしいと言うのは簡単だ」と、元友人は話す。「彼のせいで、今や核戦争の危機が取り沙汰されている。だがその一方で、プーチンの行動はどこも異常ではない。権力の座にとどまるためなら何でもする気で、だからこそ、核兵器を脅しに使う発言をしている」

 プーチンのような独裁的指導者は、性格診断の対象として分析材料が豊富だ。彼らが支配する国が危機を迎えるとき、診断の結果は重大な意味を持つ。

 ただしどれほど正確な心理分析も、プーチンが核ボタンに手を伸ばしたら、もう何の役にも立たない。アメリカが報復としてロシアの都市を核攻撃する可能性があろうとも、彼のような男は歯牙にもかけないはずだ。
 ブラウダーいわく、プーチンは批判や侮辱に耐えられず、自分から引き下がることもできない。ならば、欧米はカップルカウンセリングの教えに倣うべきだと、ヘルマンは言う。自分から折れて、相手が折れやすい環境をつくってあげよう、と。

 あるいは、いっそのこと引退させてしまう手もある。ブラウダーの推定によると、プーチンは2000億ドル相当の資産の持ち主。悠々自適の引退生活が送れることは間違いなしだ。 失脚した指導者が、ほかの国に迎え入れられた例はいくつもある。ウガンダの独裁者イディ・アミンはサウジアラビアへ亡命し、人民革命で打倒されたフィリピンのフェルディナンド・マルコス元大統領は、ハワイで余生を過ごした。

 だがプーチンを歓迎してくれるリーダーはいるのか? 権力にしがみつく行動は破滅的だが、「頭がおかしいふり」は理性的だ......と言って、彼を引き取る国があるとは思えないが。 [2015年4月14日号掲載]

プーチン-1
古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2015/05/05 06:23:37 AM
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