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習主席のダボス参加、表向きの顔と裏の意図
=By ANDREW BROWNE 2017 年 1 月 17 日 11:44 JST ――筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト

 【上海】世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に参加する世界のエリートに、今年は中国の習近平国家主席が加わる。英国が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決定したり、米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利したりと、エリートたちが推進してきたグローバル化に疑念が生じていることを踏まえれば、習氏の参加は妙に時宜を得ているように思える。

 毎年スイスのこの山岳リゾートに集結するコスモポリタン(国際人)の中で、習氏は場違いな存在になるだろう。ハーバード大学の政治学者サミュエル・ハンティントン氏は「ダボスメン」という呼び方をはやらせた人物だが、この言葉は同じ国の同胞よりも互いの企業の中で居心地の良さを感じ、地元の地域社会より人類全般に思いをはせるような人々のことを皮肉たっぷりに表現したものだ。

 ダボス会議に中国のリーダーとして初めて参加する習氏はダボスメンとは正反対の人物だ。筋金入りのナショナリストである。

 しかも、世界の富の配分が裕福な先進諸国から新興諸国へと劇的に変化した結果、中国は他のどの国よりもその恩恵を受けた――数億人の中国人が貧困から脱却した――にもかかわらず、習政権のグローバル化に対する姿勢には相反する二つの側面がある。

 それでもダボスでの習氏は、グローバル化の偉大なる擁護者としての自分を演出してみせるだろう。


習氏が嫌うエリートの説教

 だが、いったい何からグローバル化を守るのか。習氏のダボス参加の最たる皮肉は、同氏がグローバル化への懐疑心を欧米の一部有権者と共有していることだ。彼らは文化・経済の両面で最も大事にしてきた理想を捨て去ろうとしている。

 習氏は説教じみたエリートとそのリベラルな価値観を特に不快に思っている。告発サイト「ウィキリークス」で暴露された外交公電によると、習氏は政権の座に就く前、メキシコで珍しく無防備に、これらの「肥えた外国人はわれわれの問題を批判すること以外、何もすることがない」と表現した。 昼食会議の席で、「中国は第一に、革命を輸出していない。 第二に、貧困や飢餓を輸出していない。 第三に、あなた方に迷惑をかけていない」と話した。

 中国政府の公式な見解を映し出す大勢の中国人アナリストがトランプ次期政権に対して驚くほど楽観的な見通しを持っているように見えるのは、こうした欧米エリートへの敵意があるためだ。 彼らはトランプ氏を気の合う人物として見ているのだ。

 確かに、トランプ氏が最近示した台湾支持の姿勢は中国人アナリストらを警戒させはした。中国を相手に貿易戦争を起こしかねないような発言も同様だ。 しかし彼らの慎重ながらも楽観的な見方は変わらず、トランプ氏は実利的なビジネスマンとして統治にあたると考えている。  国民の大きな一角を置き去りにしてきたエリート主導のグローバル化への邁進は国の結束に危険であることを、同氏は自分たちと同様に理解すると彼らは考えている。

 習氏は昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、グローバル化を最初から作り直さなければならないと述べた。「その回復力や包括力、持続力を向上させ、人々がその恩恵から公平な分け前を得られるように、また自分たちもそこに関わっているという認識を持てるように」するためにだ。


トランプ氏とそっくりな政策

 習氏が人前で見せる慎重さとトランプ氏の情熱は対照的だが、両者の政策は驚くほど似ている。 2人とも自国を最優先に置く。トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大に」は、習氏の大きな野心「チャイナドリーム」とそっくりだ。

 このため中国の影響力ある識者の中からは、同国をおびえさせている米国主導のグローバリズムをトランプ氏が弱めるだろうとの見方も出ている。  こうしたグローバリズムは、中東や中・東欧の旧共産圏諸国で起こった一連の政権交代やいわゆる「色の革命」をあおってきた。

 習氏はグローバル化を全く別の方向に持って行きたいと望んでいる。 中国は国境をまたいだサプライチェーンにつながることと、外資を受け入れることで今の繁栄の大部分を築いてきた。 にもかかわらず習氏は国境のない世界という経済ビジョンを快く思っていない。 この開放性と中国式の国家資本主義は容易に交わらない。 中国は国有企業を肥大化しつつある一方で、IT(情報技術)セクターの多国籍企業を閉め出している。

 多文化主義についてはどうか。 習政権は人種を基にした国家アイデンティティーを恥じらいもなく強調する。 チベット族や大半がイスラム教徒のウィグル族など少数民族は、これを漢民族の優越主義だと批判している。

 何よりも習氏は絶対的な国家主権を主張している。 中国政府は社会主義制度の転覆を謀っているとする欧米諸国の「敵対勢力」を激しく非難。 そして、ネット上の「国境」を確保し、破壊活動につながりかねない情報の流れを管理する「インターネット主権」の世界的な推進者となった。

 習氏は昨年、グローバル化の旗手の中でも外国NGO(非政府組織)に照準を合わせ、すべてを警察の管理下に置いた。

 習氏は当然ながら、グローバル化の動きが丸ごと反転することを望んでいるわけではない。 経済成長が失速し、資本が国外に流出している中国は今、安定した輸出と外資の流入をかつてないほど必要としている。 ダボス会議で同氏は目玉政策の「一帯一路」構想を売り込むだろう。 港湾や鉄道、通信網といった貿易インフラを陸路と海路に沿って整備し、アジアから中央アジア、中東、アフリカを経由して欧州まで続く交易ルートを形成するという構想だ。

 しかし、この野心的な計画にも重要な注意点がある。 中国の意図は国境を崩壊させることよりも、周辺諸国を地政学的に影響が及ぶ範囲に引っ張り込み、自国が抱える余剰生産力の受け皿として新たな市場を創出することにあるのだ。

 習氏の世界観の中心にあるのは結局、中国だ。ダボスメンと呼ばれる聴衆を前に、同氏は矛盾しているが大胆不敵な技の披露を試みるだろう。 グローバル化の救世主というポーズをとりながら、グローバル化の死を祝うのだ。


古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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