2017/02/11
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マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の威力
=NewsWeek_ 2017年2月3日 遠藤誉、1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。

マティス国防長官の日韓訪問に衝撃が走った。 中国では連日のように特集番組を組み、アメリカこそが地域の平和を乱していると攻撃。 しまいにはCCTVにキッシンジャーを登場させて、アメリカを批判させる始末だ。

東北アジア安全保障を重視したトランプ政権
マティス国防長官が最初の訪問国として韓国と日本を選んだ。トランプ政権の閣僚という観点から見ても、初めての外国訪問である。 おまけに国務長官ではなく国防長官が、最初に外国を訪問し、かつヨーロッパではなく韓国と日本を選んだという意義は非常に大きい。 トランプ政権のアジア太平洋地域に対する安全保障問題への関心の高さをうかがわせるからだ。

大統領選期間中、「世界の警察にならない」と何度も宣言することによって中国を喜ばせていたトランプ氏が、当選するや、矢継ぎ早にレックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官、あるいは新設した国家通商会議のピーター・ナバロ委員長など、錚々たる対中強硬派で布陣を揃えたことだけでも、中国にとっては十分に衝撃的だった。

かてて加えて、政権誕生から2週間も経たないで国防長官が韓国日本を訪問するとは何ごとか。 その戸惑いようも、想像がつくだろう。 マティス国防長官は、2月2日に訪韓するなり、龍山(ヨンサン)駐韓米軍司令部を視察し、午後には政府ソウル庁舎と大統領府を訪問して、黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行首相や金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長と会談した。 3日には尹炳世(ユン・ビョンセ)外相や韓民求(ハン・ミング)国防相とも会談。

会談ではいずれも、アメリカが米韓同盟を重視していることを強調し、北朝鮮の脅威に対抗する固い意志に変わりはないことを確認。 また終末高高度防衛ミサイル(最新鋭迎撃ミサイル)THAADの年内配備も確認しあっている。 3日の午後には訪日し、安倍首相と対談した。 国防長官なので「表敬訪問」と位置付けながらも、事実上の日米(首脳級)対談で、10日からの日米首脳会談の準備段階の感がある。

安倍首相との会談では、韓国同様、日米同盟強化の重要性を強調し、尖閣諸島が日米安保第5条の防衛対象であることを明言した。 また、北朝鮮への対応とともに、中国の東シナ海や南シナ海における「力による」膨張に対する警戒感とさらなる協力を確認し合った。


中国の猛烈な抗議報道 ―― キッシンジャーまで駆り出して
これに対して中国は尋常ではない抗議を表明し、中央テレビ局CCTVは連日マティス国防長官の訪韓訪日に関する特集番組を組み、1時間ごとに報道して、くりかえしアメリカとともに日本と韓国を批判した。 韓国に関しては韓国へのTHAAD配備を批判し、日本に関しては釣魚島(尖閣諸島)は「中国古来の領土」と、荒々しい語気で繰り返し主張した。

またマティス国防長官が在日米軍基地の経費負担増に関して持ち出さなかったことは、結局のところ「安倍に日本自身が別の形で軍備を増強することを促し、自衛隊の軍事化を正当化する理由を与えた」と、ほぼ八つ当たりだ。

北朝鮮の報道を引用しながら、「朝鮮半島の不安定化をもたらしているのはアメリカであり、アメリカが半島から手を引きさえすれば、北朝鮮が核やミサイルの開発をする必要もない。 原因は全てアメリカにある」「アメリカの武器商人のはけ口として、結局のところアメリカは世界のどこかに緊張を生んでいなければ、武器を使用する理由がなくなるので、韓国にTHAADを配備したり、大量の武器を売りつける」などともしている。

一方では、日本(の安倍首相)がトランプ政権においては「日米同盟は軽視されているのではないか」と心配しているために、それを安心させるためにマティス国防長官がこんなに慌てて訪韓訪日をしたのだという分析も数多く見られる。 だからこの訪問は「安倍にとっての"定心丸"だ」というのもある(「定心丸」とは「心臓(精神)を安定させる丸薬」の意味)。

日本では韓国を最初に訪問したのは日本の国会日程の都合上という情報もあるが、中国では「いまアメリカの同盟国にとって最も心配なのが韓国。 政権も不安定な上に、前政権を打倒するため日韓合意を覆し中国寄りになる可能性がある」などと分析している。

ともかく、春節も明けやらぬうちに隣国に現れた「狂犬マティス」の威風堂々とした雄姿に中国は圧倒され、狼狽していることがうかがわれる。


動画で見られる報道のうち、安定的にネットで見られるものは多くないが、一例を挙げると以下のようになる(それでも画面が出て来なかったときはお許し願いたい。 しばらく待っていると出てくるものもあり、また▲印をクリックしないと始めないのもある。 タイトルが異なり内容が同じというものもあるかもしれないが、ネットでも見られそうな番組をいくつか拾ってみた)。

● 「米新任国防長官本日訪韓:THAAD、軍事費、北朝鮮核問題などに関心」 : http://tv.cntv.cn/video/C10318/51f45584189e47b3a62ea20efc8be635
● 「米新任国防長官本日訪韓 マティスは朝鮮半島情勢の実態を理解するため」 : http://tv.cctv.com/2017/02/02/VIDEMV20CoZeWYJOrCGdR6LP170202.shtml
● 「米新任国防長官訪日:マティス日本を落ち着かせるため アメリカのアジア太平洋戦略の利益を強固にすることが意図」 : http://tv.cctv.com/2017/02/04/VIDEOdYDot3jKLmaPPzS3Ycp170204.shtml
などがある。 動画ではない情報は多すぎるが、いくつかの例を挙げると: ●「駐在米軍費用の分担がマティス訪日の焦点:韓日を引き寄せて中国に対抗」(新華網) / ●「マティス訪日は釣魚島"共同防衛"のため」(全文)(中国政府の参考消息) / ●「米国防長官マティスは、なぜ韓国を先に日本を後に訪問したのか」(日本の報道を紹介しつつ) / ●「米国防長官訪日 安倍が"定心丸"を呑みたいため」 / ●「米国防長官マティス訪日は"定心丸"のため:100%日本と肩を並べて」、等々。

アメリカこそが地域の平和を乱していると批判を強める中、CCTVは最終手段として、キッシンジャー元国務長官を取材して「"一つの中国"原則は米中関係の基礎であり、不変のものだ”: http://news.cctv.com/2017/02/03/ARTIBor5s8p7tynRiNxnJxE0170203.shtml 」という主旨のことを言わせている。

特に今年はキッシンジャー氏自身が手掛けた上海コミュニケ(1972年)発表から45周年記念の年。 中国としてはワラをもつかむ気持ちだろう。 キッシンジャーが長生きで良かったと中国は思っているにちがいない。 特集番組では、たとえば韓国にいる「米軍駐留反対派」や「THAAD配備反対派」などの抗議デモをクローズアップするなど、選定的に報道している。

これらはいずれも、如何に中国が大きな衝撃を受けて動転しているかを示すもので、その意味ではトランプ政権の東アジア戦略は、今のところ功を奏していると言えよう。 「狂犬」の威力は大きい。


古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2017/02/11 05:56:59 AM
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