2019/05/07
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劇場型政治と“カリスマ”――00年代、小泉「ワンフレーズ・ポリティクス」の影響力
= Harbor Business Online_HBO取材班 2019年03月12日 By Web_Ronza / 西田亮介


「移行と試行錯誤の時代」だった2000年代 , ワンフレーズポリティクスで変質する日本社会
●2001年 (年間大賞) 「米百俵/聖域なき改革/恐れず怯まず捉われず/骨太の方針/ワイドショー内閣/改革の『痛み』」 小泉純一郎(内閣総理大臣) ”所信表明演説で使われた「米百俵」「恐れず怯まず捉われず」、首相のスローガンである「聖域なき改革」、それにともなう「改革の『痛み』」、首相を議長とする経済財政諮問会議の「骨太の方針」、小泉政権に名付けられた「ワイドショー内閣」。2001年4月、第87代(56人目)の総理大臣となった小泉純一郎首相は、空前の国民支持を背景に、説得力あるキャッチフレーズを駆使することで01年最多の「流行語生みの親」でもあった。”

拙著『メディアと自民党』(角川新書、2015年)などでも言及したように、小泉内閣は類まれな個人的な資質と自民党の組織能力をハイブリッドに活用しながら「作られた政治の言葉」を駆使して新しい時代の「言葉の政治」を展開した。  個人の印象が弱いとされた歴代の日本の総理大臣とは対照的なその姿をメディアは連日大きく取り上げた。小泉の言葉は連日ワイドショーを賑わせ、彼が口にした一連のフレーズが新語流行語大賞の年間大賞を受賞した。

『メディアと自民党』でも論じたが、この時期を期に与野党ともに、増大する無党派層に訴求する戦略、戦術の開拓、ビジネスで用いられているようなマーケティング手法の活用等の組織能力の向上に強い関心を向け始める。  政党単位では広報部門の拡充、インターネットなど新たなメディアの利活用が模索された。こうした動きは90年代の政治制度改革の一環として取り入れられ、96年の第41回衆議院議員総選挙で初めて実施された小選挙区制の世界でいかにして生き残りを図るのかという問題とも関係する。



「自民党をぶっ壊す」を公言し、96年の総選挙で与党の地位を自民党に取り戻した立役者橋本龍太郎に競り勝ち、3度めの挑戦で自民党総裁、総理の地位を手にした小泉は「言葉の政治」を駆使しながら確かに一時代を築くことになった。だが、「作られた政治の言葉」は瞬間瞬間に、ワイドショーやのちにはインターネットから拍手喝采で迎えられるが、着実に日本社会と政治を変質させていった。

(トップテン) 「e‐ポリティックス」 天野外支子(市民団体代表) ”インターネットを利用した政治。2001年6月創刊の小泉内閣メールマガジンには、創刊時に計100万件以上の申し込みが殺到した。電子投票、電子政府などの構想もあるように、政治の世界でもインターネットは大変重要なツールとなりつつある。選挙候補者のインターネットによる選挙運動は現在認められていないが、01年の千葉県知事選では、応援する候補者への支持、擁立のよびかけなどでインターネットを活用した市民グループが注目を集め、堂本暁子新知事誕生のきっかけとなった。”

この言葉を耳にする機会もめっきり少なくなった。それは何も政治行政分野の情報化が進んだからではあるまい。住民基本台帳時代の紆余曲折を経て、行政の利便性向上の鳴り物入りで導入されたはずのマイナンバーカードの普及も10%前後で低迷したままで、源泉徴収票や領収書をはじめ、確定申告では未だに多くの紙と戦わなければならない。

インターネットの透明性、双方向性といった技術的特性はその初期から政治改革との相性の良さが期待された。だが新技術を使った情報公開や寄付を可能にするための法律、条例の制定には、定義上新技術を十分には活用できないというもどかしさも残った。

メディア研究の世界では大別すると、新技術(メディア)が政治を変えるという変化仮説と、新技術も資金力や組織力など従来型の権力関係と独立ではない要因によって規定されるので大きくは変化しない(従来どおり、すなわち通常状態が継続する)という通常化仮説という2つの学説が競合しているが、もっぱら後者のほうが有力視されている。ちなみにここで言及される「小泉内閣メールマガジン」は内閣広報の一環として取り入れられたもの。なお初代編集長は当時の安倍晋三官房副長官。



(トップテン)抵抗勢力 受賞候補者が全員辞退のため、受賞者なし ”小泉内閣が推進する「聖域なき改革」に抵抗する勢力のこと。道路族や郵政族、医療族といった「族議員」は、自己の関係する省庁の影響力が低下する恐れのある改革には、強く抵抗する傾向があるので、種々の改革や規制緩和の障害となる場合が多い。これまでの族議員型、利益誘導型の政治は限界にきているといわれるが、従来の自民党内閣とは正反対の方向を向いた「小泉改革」に抵抗する勢力、「既得権益派」はまだまだ多い。”

小泉改革に反対する勢力、とくに昭和の自民党政治では問題視されなかったどころか、ごく一般的な存在だった業界との繋がりの深い族議員や、小泉内閣に反駁する自民党内の派閥などは「抵抗勢力」というレッテルを貼られることになった。  清和会出身で自民党内基盤が必ずしも盤石ではなかった小泉は、小選挙区制やメディアと相性がよく、普段政治に関心の乏しい無党派層に訴えかける非伝統的な手法を活用せざるをえなかった。抜群のセンスといわざるをえない。

小泉が総理になったこの年、アメリカの同時多発テロ、いわゆる「9.11」が生じ、世界の、そして日本の政治、安全保障を取り巻く環境が激変していく予兆に見舞われたからか、この年の新語流行語大賞にはここで取り上げた言葉の他にも政治と関連した言葉が「トップテン」のなかに取り上げられていることは注目に値する。

小泉内閣の財務大臣だった塩川正十郎の愛称「塩爺」、日本の金銭面のみの貢献がしかも後手にまわって国際的に不評を買ったとされる湾岸戦争への関与の反省を踏まえて対テロ戦争への貢献をいち早く表明するきっかけとなったアメリカ由来の「ショー・ザ・フラッグ」、イラク攻撃の口実とされたが実在は真偽不明のままとなり、のちにイギリスではアメリカ追従を選択したときの首相トニー・ブレアは強い社会的非難を浴びることになった「生物兵器(BC兵器)」(日本では政治的責任の所在は十分に追求されず曖昧なままに現在に至っている)である。確かに新語・流行語大賞を政治の言葉が賑わせた年となった。 ・・・・・・・つづく



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2019/05/13 01:15:39 PM
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