2020/01/31
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「空白の8時間」は何を意味するのか?──習近平の保身が招くパンデミック
= NewsWeek_Column_2020年01月27日 遠藤誉 東京福祉大学国際交流センター長、中国問題グローバル研究所所長/筑波大学名誉教授、理学博士。


武漢市の封鎖は1月23日10時から始まったが、通告時刻は同日午前2時5分。その間数十万の武漢市民が脱出した。なぜこの時間的ゆとりを与えたのか?解答を追いかけていくうちに、とんでもないことが判明した。

武漢市の封鎖通告時刻と実行とのずれ
「武漢市新型コロナウイルス感染による肺炎流行予防制御指揮部」は、1月23日午前2時5分に武漢人民政府の名において、「市新型コロナウイルス感染による肺炎流行予防制御指揮部(第1号)」を発布した。「長江日報」は中国共産党武漢市委員会の機関紙なので、そのウェイボー(weibo)は権威ある発表となる。
但しweiboはこの情報を見た場所の時差を調整して表示するので、1時間の時差がある日本時間「03:05」と表示されている。

念のため、以下に現地時間のweibo情報を貼り付けておこう。=fig-1=
また、「武漢市人民政府」のHPの通告もご紹介しておく。何れの場合も、通告内容は以下の通りである。

新型コロナウイルス感染による肺炎の流行を防御することを全面的に遂行し、効果的にウイルスの伝染経路を遮断し、疫病の蔓延を断固阻止し、人民群衆の生命安全と健康を確保するために、ここに以下のことを通告する:
2020年1月23日10時を以て、全市のバス、地下鉄、フェリーボート、長距離旅客輸送を含む公共交通を全て、暫定的に停止する。特殊な原因がない限り、市民は武漢を離れてはならない。武漢から外部に移動する飛行場や列車の駅は暫時封鎖する。いつごろ回復するかは追って通知する。広大なる市民と旅客の理解と協力を求める!

この通知は22日の夜中、正確には23日の午前2時5分に発布されているので、「封鎖実行」と「封鎖予告」の間には約「8時間」のゆとりがあることになる。



それを証明するかのように、中国政府の通信社である新華社通信の電子版「新華網」も23日の午前「03:15:55」に通告を発布している。こちらには「街の掲示板」による通告も載っている。また、これはweiboではないので、現地で発表された時間(転載された時間)がそのまま表示されている。
「通告」と「実行」の時間差「8時間」は何を意味するのか?

こんな通告を知って、武漢市を逃げ出さない方がおかしいくらいだ。逃げ出せる財力と脱出先のある者は、封鎖される前に逃げ出すに決まっているだろう。ましていわんや春節を控えている。30億人の大移動が始まると中国政府は早くから言っていた。
事実、この間に数十万人の武漢市民が武漢市を脱出したと、中国のネットは一時燃え上がった。次々に削除されているが、中国大陸外の中文メディアには「8時間の間に数十万の武漢市民が脱出した」という情報が数多く残っている。

空白の「8時間」を追え!
なぜ武漢市はわざわざ「さあ、脱出するなら今だよ!」というような通告の仕方をしたのか。伝染が拡大するのを本気で防ぎたいと思うのなら、こんなことはしないはずだ。

私は1947年から48年にかけて、長春において中国共産党軍(八路軍)による食糧封鎖を受けている。封鎖を事前に知らせるどころか、封鎖は気づかれないようにジワジワと迫ってきた。気が付いたら長春市全体が鉄条網で包囲され、市民は長春市から出られないようになっていたことを知った。
長春市内にいる国民党の一派(正規軍から差別待遇を受けていた雲南60軍)が共産党軍側に寝返って長春は48年10月に陥落したが、その間に餓死した中国人一般庶民は数十万に及ぶ。

長春食糧封鎖という経験と中国政府の事実隠蔽に関して生涯をかけて闘っている私にとって、この「空白の8時間」は「あり得ない措置」なのである。



「なぜだ?」「何があったのか?」を、ここのところほとんど寝ずに追跡した。
おまけに1月24日付のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>に書いたように、武漢市レベルの封鎖となったら、中央政府・国務院の決定がある。だからこそ、武漢市政府の通告とほぼ同時に新華網の通知がネットで公開されている。それも真夜中に!

国務院が封鎖の決定を出す際の法律的根拠を、さまざまなケースに分けて明記した情報もある。
1月24日付のコラムで書いた武漢市政府の、あの救いがたいほどの「愚かしさ」のせいかとも思ったが、なぜ武漢市政府がそこまで愚かしいのかを追跡しても「これだ!」と合点するような因果関係には遭遇せず、むしろ今度は「なぜ新華網が真夜中に封鎖通告を発布したのか」という事実に考えが集中した。

そこでハッとしたのがWHO(World Health Organization=世界保健機関)との関係だった。

WHOの緊急委員会開催に時間を合わせていた!
今般の新型コロナウイルス肺炎の発生と流行が「緊急事態に当たるか否か」を協議するため、WHOの緊急委員会が、日本時間の1月22日午後8時頃からスイスのジュネーブで開催されることになっていた。

そのため習近平は1月22日にフランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相などと電話会談し、今般の新型肺炎の対策について、「中国は感染発生以来、予防制御の措置を周到に行い、WHOなどにも速やかに情報を提供している」したがって中国は「国際社会と協力して対策を取る考えである」ことなどを強調している。

これは、「したがって、どうか今般の新型コロナウイルス肺炎の発生と流行に対して"緊急事態宣言"をしないでくれ」と、発言力のある関係国に頼んだことを意味する。
スイスにおける会議の開始時間は日本時間午後8時頃。

武漢と東京の時差は「1時間」。 ・・・・・・明日に続く・・・・・



古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2020/01/31 05:50:05 AM
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