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余りにも更新をサボり過ぎて、自分のブログへのログイン方法を忘れてしまった程だ。この数ヶ月間、あまり音楽を聴いていなかったのかもしれない。CDよりもyoutubeの動画の方が面白かった、ということもある。音楽も聴かずにサルのように楽器を触っていた、というのも事実。だけど、たまにはキチンと音楽を聴かないと芸が荒れるというか、音楽が蛸壺化するような気がする今日この頃。楽器を触っている人は要注意ですよ。さて、久々の1枚は最近再発されたハンニバル・マービン・ピーターソンのライブ盤紙ジャケである。はっきり言ってジャケ買いだった。整然としたビル街の昼下がりに突如登場したラッパ男のオレンジ色のシャツがまぶしい。「社長、四半期決算の見通しが・・・」なんて四角い話をしているオフィスビルの真下では、青空フリージャズでビッヒャ~ッ!だなんて。ヨーロッパとは文化に対する懐が随分と広いんだな・・・と勝手な想像をしながら聴くのが面白いのだ。ハンニバルというと、どうしても「トランペット版コルトレーン」という目で見てしまう。この作品でも最初の曲が"My Favorite Things"だし、リズムセクションはどことなくマッコイ・タイナーやエルビン・ジョーンズっぽく聴こえたりして、コルトレーン教団っぽい雰囲気はある。だけど、この作品はジャケット写真の通り「青空フリージャズ」であり、健康的なのだ。青い空に白い雲、そしてどこまでの突き抜けていくハンニバルのトランペットなのだ。2曲目でコルトレーンの呪縛から逃れ、ノコギリ系チェロに聞き惚れる。やがて夕暮れとなり(これは想像ですが)、アジアン・テイストなチェロの長いソロに続いてトランペットの音色に悲哀の陰が見え隠れする3曲目がこの作品の最大の聴きどころ。色んな風景が現われては消える大感動絵巻だ。フリージャズってこれだから止められない。4曲目はグランドフィナーレでガツンと決めて、今日もお腹いっぱい。幸せな気分に浸りながら良い夢が見られそうな作品だ。猫麻呂的には、この作品にロマンチックなジャズを感じてしまうのであった。あ~、幸せ!猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Hannibal and the Sunrise Orchestra / Live in Lausanne (Baystate)1. My Favorite Things2. Grandma Suzie3. Episode Zero4. The LightHannibal Marvin Peterson (trumpet)Michael Cochrane (piano)Diedre Murray (cello)Stafford James (base)Thabo Michael Carvin (drums)February 1976 in Lausanne
2009年11月08日
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ジョー・マグナレリのリーダー作を聴いてみたくなった。初マグナレリは初リーダー作から始めようと買ってみたのがこの作品。1994年録音というから、今から15年も前の作品である。15年前って猫麻呂は何してたっけ・・・?思い出してみると、ジャズCD聴いたり楽器の練習したり・・・と今とほとんど変わらない生活だったりする。大きな違いは、当時はインターネットなんて考えたこともなかった点かな。うーん、この変化は大きいかも。それではジャズはこの15年間で変化したかというと、そんなに変わっていないかな。少なくとも1920年代から1980年代までのジャズの歴史的変遷と比べれば、大きな変化とは言えない。マグナレリ初リーダー作は、15年前の録音をまったく感じさせない演奏で、今でもNYのライブハウスのどこかで演奏されていそうな音楽だ。これを不変のNYサウンドとでも言うべきか・・・。いかにもNYサウンドな感じは、ピーター・ワシントンとケニー・ワシントンの両ワシントンが作り出すリズムに特徴があるのかもしれない。ヨーロッパのジャズとは違う躍動感と粘り気とすばしっこさがある。そこに加わるのがリニー・ロスネスのピアノ。この人のピアノを聴くと、やっぱり15年前だったんだなーという感じがする。ピアノはともかく、両ワシントンのリズムの上で自由自在に動き回るのがエリック・アレキサンダー。この人は昔も今も変わらず巧いんですね。この作品のオイシイところをかっさらっているとは、さすが大王様。いつまでも色褪せない演奏なのが凄い。さて、リーダーのマグナレリだが、おいしいところを大王様にかっさらわれながらも、地味に自己主張をしているのが偉い。いや、猫麻呂的にはかなり評価の高いトランペッターと言える。モンク・コンペティションでライアン・カイザーに負けて2位に甘んじたというエピソードもマグナレリらしくて良いではないか。こうなったら徹底的にマグナレリをヨイショしてやろう。マグナレリの素晴らしい点は、中低音域でのメロディの歌い上げ方だ。もちろん、ニコラス・ペイトンのようにメロディの歌い上げ方の巧いヤツは他にもいるだろう。しかし、マグナレリの歌い方にはケニー・ドーハム風の「泣き」が入っている。ニコちゃんは巧いけど泣かないんだな。ライアン・カイザーなんてマグナレリと比べれば単なるマシンみたいなもの(って言いすぎかな?)。トランペットという楽器、はサックスのように細かいフレーズやブルージーな音が出せない分、表現力に限界がある。しかし、男の背中に漂う哀愁を表現するなら、サックスよりもトランペットに分がある。そう考えて聴くと、"How Deep is the Ocean"や"When Your Lover Has Gone"のような曲でのマグナレリの「泣き」には注目なのだ。その他、選曲ではトム・マッキントシュの"Cupbearers"とマグナレリ自作"Y-Not"が良かった。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Joe Magnarelli / Why Not (CrissCross)
2009年07月25日
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今回もランディ・ウェストンのCDの話である。しかも、最近は在庫僅少で入手がやや難という状態の作品。そうは言ってもランディ・ウェストンの作品は廃盤でない状態の方が珍しいくらいなので仕方がないか・・・。このCDの特徴は、何と言っても"Produced by Duke & Ruth Ellington"なところだろう。デューク・エリントンがどこまで直接関与したかは分からないが、この作品でのウェストンのピアノはいつも以上にエリントンしている。7曲のうち3曲がピアノ・トリオ演奏で、残り4曲はウェストン自作自演のソロ・ピアノとなっている。どちらも「濃い」演奏だが、トリオ演奏の方がヤリ放題な感じがして楽しい。ピアノを打楽器として使っているというか、子供がデタラメに弾いたような演奏というか、さすがはエリントン直系のピアニストと驚嘆させられる。1曲目の"Three Blind Mice"はとにかく強烈でイイ!2曲目の"Perdido"は有名な曲だが3曲目"Purple Gazelle"は一見馴染みのないようで実は聴いたことがありそうな曲。コルトレーンとエリントンの競演盤で"Angelica"として演奏されている曲である。後半の4曲はソロピアノでウェストン・ワールドが堪能できる。おすすめは"Sweat Meat"という美しい曲。ウェストンは体格に似合わずメローな曲を書く人だが、この曲も泣ける1曲だ。"Ifran"はウェストンが住んでいたモロッコの地名らしいが、この曲もいい。子供たちに聞かせたい程のお茶目な曲だが、不協和音の連続は子供たちには辛いだろうな。(オトナにだって辛いと思うが・・・。)このCD、国内のショップでは滅多に見かけないが、米国アマゾンであればまだ入手できるようだ。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Randy Weston / Berkshire Blues (Black Lion)
2009年04月05日
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ランディ・ウェストンのピアノトリオ作品。普段はホーン入りのセッションが多いランディ・ウェストンだが、50年代はピアノ・トリオが多かった。幻のレーベル「ドーン」と「ジュビリー」に作品を残しているというのがランディ・ウェストンの渋いところ。特に「ジュビリー」のこの作品は、ほとんど再発されていなかったはず。猫麻呂の持っているのは日本製の非売品LPだ。そんな幻の作品がUAの"Little Nile"とのカップリングでCDとして再発されている。これは快挙だ。本作では、ホーンが入っていないためか、ランディ・ウェストンの本音のような音楽が聴ける。モンク派のピアニストと思われているが、モンクよりも優しいというか、モンクのような諧謔性はウェストンにはない。しかし、モンクとの共通点は多い。ハードバップ以降のピアニストはパウエル派一色となっている感があるが、ウェストンのピアノはモンクと同じく伝統的なピアノ・スタイルを踏襲している。音と音の隙間の作り方はカウント・ベイシーのピアノと大本は同じなのだろう。モンクとの共通点は曲調や奏法ついても挙げられるが、今回は逆に相違点について書いてみたい。最大の相違点は、モンクが「醒めた」感覚であるのに対して、ウェストンは「音楽に耽溺」する点だろう。スタンダードの"Nobody Knows The Trouble I've Seen"を聴いてみると、ウェストンはまるで歌詞を口ずさむようにメロディーにずぶずぶと深入りしていく。モンクがこの曲を演奏した場合どうなるかを有名な"ソロ・モンク"から想像すると、本気かウソか分からないような異次元(=モンク・ワールド)に持ち込むであろう。そして、最後には決めの「キョッ!キョッ!キョッ!キョッ!キョッ!」。表情には出ないが、心のどこかで「してやったり」という感じがするのがモンクの演奏だと思う。しかし、ウェストンの演奏は、音使いはモンクと変わらないのに自然体で歌っているのである。自然体なのに、いつの間にかランディ・ワールドが出来上がっているのが不思議。ウェストン自作の"Earth Birth"は"Little Nile"のセッションでも演奏しているが、ウェストンがメロディに耽溺する"Piano A-la-mode"セッションの方が断然面白い。猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Randy Weston / Piano A-la-mode (Jubiliee)
2009年03月21日
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久しぶりのブログ更新となってしまった。遂に猫麻呂ブログも逝ってしまったか・・・と思われたかもしれないが、まだ生きているのでご安心を。言い訳がてらに近況報告すると、最近は音楽を聴く時間やブログ更新の時間を削って楽器の練習をしているのだ。そもそも円高がいけなかった。ちょっと前まで異常な円高が続いていたため、eBayでヴィンテージのトランペットを2本も(激安で)買ってしまったのだ。ラッパ好きの方しか興味がないかもしれないが、ちょっとだけ戦利品についての説明をば。1本は有名なコーンのコンステレーション。おすず姐さんの大好きなトム・ハレルも使っている楽器。(猫麻呂の楽器は36Bだと全く同じモデルかな?)当然ながら、トム・ハレルにあやかって購入したものだ。ハレル大社のお札とかお守りみたいなもの(ご利益がありますように)。もう1本もコーンで1953年製の22B Victor。この時代のトランペットは何とも言えない「ジャズ臭い音」がするのが魅力。本来はリードTp用の楽器らしいが、中音域が何故かマーティン・コミッティに似たダーク・サウンド系なので、バップを吹くには面白い楽器(気分はコンテ・カンドリ※)。ただし、たまにピストンが戻ってこないことがあるのがタマにキズ。(こういう事故も音楽の一部という割り切りも必要。)ラッパ好きの方のためにCONN Loyalistへのリンクを貼っておきます。 Conn 36B Lightweight Connstellation Conn 22B Victor (1953 Model)※当時のコンテ・カンドリの使用楽器はマーティン・コミッティのはずでCONN 22Bではありませんが、コンテ・カンドリの音色のイメージがCONN 22Bに近いというものです。近況報告が長くなってしまったが、ここからが本題。最近のピアノ・トリオものに食傷気味になっていた矢先に出会ったのが、このウォルター・ビショップJr.の1988年の作品。録音は新しいが40年代のビバップの香りがするのが嬉しい。ウォルター・ビショップには申し訳ないが、この人のピアノ・トリオ作品を聴いていると、ホーン奏者が脇に控えているような気がするのだ。パーカーが横にいてスタンバイしていたり、マクリーンとドナルド・バードがホーン・アレンジの譜面を確認し合っているような、そんな気配がするのである。そんなジャズ・ピアニストは昨今珍しいだろう。だからこそ、最近のピアノ・トリオに食傷気味の人にはピッタリだと思うのだ。「ホーンの存在を感じさせるジャズ・ピアニスト」というジャンルを確立させたくなるほど、この作品はバップ・マニアの心をコチョコチョしてくれるのである。アレンジもファンの心を掴むようなことをしてくれる。例えば、"Just in Time"のエンディングでは"Milestones"で終わるとか、"Yesterdays"が"A Night in Tunisia"になっているとか。他にも有名曲がソロ中にたくさん引用されている。だから何だ、と言われると困るが、何となくちょっと嬉しくなってしまうのがジャズ・ファンというものだろう。ウォルター・ビショップのピアノトリオと言えば、"Speak Low"というのが定番となっているが、録音の良さと演奏の柔軟性という観点から猫麻呂は本作品の方が面白いと思っている。製作者の妙中さんの趣味の良さも感じられ、猫麻呂的には高感度満点だった。allmusicでは★★★という辛口評価だが、米国では手に入りにくい作品に対しては評価が厳しくなるという特性がallmusicにはあるのかもしれない。(ひょっとして音源を一度も聴かずに評価しているのでは?)話が最初に戻りますが、猫麻呂ブログは当面の間、更新頻度が極端に悪くなると思います。それでもブログを止めるつもりはありません。ジャズの神様の思し召しがある限りは・・・。猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Walter Bishop Jr. / Just in Time (interplay)
2009年03月15日
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盆と正月が一緒に来たようなオメデタイ作品だ。ジーン・アモンズとデクスター・ゴードンという、猫麻呂の大好物の二人が「夢の競演」なのである。この二人の競演作はこの作品以外にないだろう。1970年に実現した「夢の競演」まで、この二人の競演はなかった。1940年代のビリー・エクスタイン楽団でのテナーバトル以来の競演となる。デックス=グレイ組とアモンズ=スティット組に別れ、仁義なき抗争・・・ではなく永遠のライバル関係にあった二人が夢のタッグを結成したのだ。全日本プロレス世界最強タッグ決定リーグ戦で実現した馬場=ハンセン組(懐かしいなー)に匹敵するサプライズなのである。1970年といえば、ジャグ親分は長いムショ暮らしからシャバに出たばかり。デックスはアメリカを捨てて渡欧中であり、ニューポート・ジャズフェスに出演するために一時帰国していたらしい。まさに「夢の競演」は奇跡的に実現したといえる。こんな凄い競演だから、さぞや素晴らしい演奏だろう・・・と期待すると「大ハズレ」な気分になってしまうだろう。テナーバトル・チームというのは、チームワークが大切ということなのだろうか?お互いに「吹きっぱなし」という感じがするし、アレンジ等はまったくない。それぞれの得意技を披露するものの、チームプレーとしては今ひとつだった馬場=ハンセン組とイメージがかぶるのはこのせいだろうか?ジャグ親分とデックスは、1940年代には同じような吹き方をしていたはずなのだが、1970年時点では目指す音楽の方向性が離れてしまったというのがこの作品から良く分かる。洗練されたヨーロピアン・バップに生きるデックスは、以前よりも流暢なフレーズを吹くようになっていた。長尺のソロをブローしても、どことなく優雅だし、フレーズは以前よりも細かく作っている。一方でジャグ親分は正反対の方向に向かっているようだ。1940年代には流暢に吹いていたが、フレーズの音数は年々減り続け、シンプルさを追い求めていく。ムショ暮らし後のジャグ親分は指が回らなくなった・・・という説もあるが、ソウルシンガーのように吹きたかったのではないか、というのが猫麻呂説なのである。この奇跡のライブは、映像で見ることができたら最高だろう。もちろん、生で見たらモノ凄かったに違いない。しかし、音だけ聴いても今ひとつ「萌え」にならない。見たいのは、デックスのソロを見ているジャグの姿やジャグのソロを見ているデックスの姿だ。お互いにどのように感じていたのだろう。そう考えて聴くと、この作品の微妙な味わいが楽しめるかもしれない。しかし、テナーバトルは何も考えずに聴いて楽しむべきものであり、余計なことを考えてしまうこの作品は理想的なテナーバトルとは言い難いのかもしれない。それでも「夢の競演」なのである。テナーバトル・ファンは一度は聴かねばならない作品と言えるだろう。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Gene Ammons & Dexter Gordon / The Chase! (Prestige)
2009年02月15日
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ジャズ界の「ニコちゃん大王」ことニコラス・ペイトンは、現役ジャズ・トランペッターの最高峰に君臨しているはずだった。しかし、故郷ニューオリンズに引っ込んで以来、胸がすっとする面白い作品にお目にかからない。"From This Moment"や"Gumbo Nouveau"のように目の覚めるような作品を期待しているのだが、トランペット界の世界チャンプ「ニコちゃん大王」はどこへ行ってしまったのだろうか?まさかジャズ界を引退し、ニューオリンズでチャンコ料理屋を開業した、なんてことはないでしょうね?しかし、世界最高のトランペッターが駄作を作り続けるはずはない。猫麻呂の耳が悪いのだろう、と信じている(信じたい)。ニコちゃん大王は、甘い音色から鋭い音色までのあらゆる音を出すことができる(生で見たときに驚いた!)のだが、この作品では、あえて「丸い音色」だけを出しているのだろう。残念ながら意図が理解できないのだが、これはきっと何かの意味があるはずだ。決して「リップの調子がイマイチ」というものではない。だけど、ミストーンも録音されているし、何なんだろう、この作品・・・。最近のニコラス・ペイトン作品は電子楽器を入れたクール路線が多いが、どうもこの路線は大王さまのキャラクターに合わない気がする。"Gumbo Nouveau"で見せたニューオリンズ・ミュージックとディスコサウンドの融合とか、何か個性的なことをやって欲しい。大王さまは「南部のトランペット大王」でいて欲しいのだ。クール路線はジェレミー・ペルトに任せて、天空に突き抜けるようなラッパを吹いてこそ「ニコちゃん大王」なのだ。21世紀のトランペット・キングの次の作品に期待したい。猫麻呂ポイント:★★★☆(3.5)Nicholas Payton / Into The Blue (Nonesuch)
2009年02月08日
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この年末年始にパワーアンプを変えた。オーディオ機器を入れ替えると、録音の良いソースを聴くのが楽しくなる。特にいろんな楽器の音が入っているディスクが楽しい。コンテンポラリーのライトハウス・オールスターズがそんなディスクだろう。ウェストコーストの凄腕ミュージシャンによる鉄壁のアンサンプルがキリリと引き締まったリズムセクションの上を淀みなく流れていく。ホーンのソロはちょっと薄味だが聴き疲れしないし、難しいフレーズも軽々と吹きこなすテクニックを楽しむのも悪くない。ワンホーンや2管となるとフレーズの単調さに飽きてしまうが、3管以上の編成でアンサンプル・パートがきちんと書かれていると、それだけで十分楽しめるのだ。今回のCDは、コンテ・カンドリ、フランク・ロソリーノ、ボブ・クーパーの3管編成。オーボエやフルートというゲテモノが入っていないので、正統派ジャズファンには安心の1枚(ゲテモノ好きには喰い足りないかも)なのである。3管とは思えないゴージャズなアンサンブルは正に鉄壁。更に、それぞれがワンホーンでも聴かせられる実力者だけに、ソロパートも充実している。恥ずかしながら、ボブ・クーパーがこんなに魅力的な音の出せるテナーマンだとは今まで気が付かなかったが、"Octavia"でのバラード演奏での色気と集中力でクーパーに対する評価がすっかり変わってしまった。この曲がこのCDでの最大の聴きどころだろう。このCDのポイントとしては、ソニー・クラークが全曲で参加していることも上げなければならない。もちろん、ライトハウス・オールスターズの一員として参加しているので、ソニー・クラーク独特の粘性はあまり感じないが、ハンプトン・ホーズの参加している他のライトハウス・オールスターズ作品とは明らかにリズムの粘度が違う。どちらが良いかというと、猫麻呂はドラムとの相性が良い分だけハンプトン・ホーズの入った作品の方がバンドカラーに合っていると思うが、ソニー・クラークの入っている違和感を楽しむという聴き方もあるだろう。最近、ライトハウス・オールスターズのCDが店頭から消えつつある。ライトハウス・オールスターズだけでなく、レニー・ニーハウスやバディ・コレットなどのOJCのCDも絶滅危惧種だ。コンコードがOJCの版権を手に入れて以来、ハードバップ作品のリマスター&再発には熱心だが、ウェストものは一部の売れ筋以外は手付かずの状態。音の歪んだRVGなんか作ってないで、ファンタジー時代のOJC(音が良い)を継続販売して欲しいなー。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Howard Rumsey / Music For Lighthousekeeping (Contemporary)
2009年02月01日
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ナンとも魅力的なジャケットである。真っ赤な背景に、サックスを持ちながらスキップするおじさん。その左にはタイトル"Clap Hands Here Comes Charlie"がある。このおじさんがチャーリーなのか・・・。このレコード、DJ筋で人気があるそうだ。ジャズオタとDJでは思考も嗜好も違うので想像ができないが、おそらくは、クラーク=ボラン楽団がDJ筋で人気が高いため、派生作品として売れているのだろう。ラテンやモードの好きなDJがこのレコードを好んでかけるとは思えないのだが・・・。まずは主役のカール・ドレヴォとは何者か、という疑問があるだろう。ネットで調べたところでは、オーストリアはウィーン出身のテナーサックス奏者ということらしい。ウィーン出身者がジャズをたしなむなんていうのはバチカンの人がメッカに向かって礼拝しているようなもんだ、なんて不穏当な比喩も出そうなものだが(そんな人はいないか?)、当たらずしも遠からじというところだろう。このレコード、タイトル曲でグっと来る人は相当年季の入ったジャズファンだろう。"Clap Hands! Here Comes Charlie"というタイトルで「萌え~!」モードに入った人は戦前ジャズ派か相当のジャズ狂のいずれかに違いない。そもそもこの曲は戦前のカウント・ベイシーやチック・ウェッブ等のスイング全盛期に流行った曲であり、1950年代以降に取り上げる人は少ない。しかし、このシンプルな構成の曲は一時代のダンサー達を狂気乱舞させたのは間違いない。そんな曲であることをドレヴォおじさんが知らなかったはずはない。2曲目の"I'm Getting Sentimental Over You"はトミー・ドーシー楽団のエンディング・テーマ曲だ。ドレヴォおじさんが米国のスイング時代に憧れていた疑いは濃厚である。更に、B面1曲目の"Limehouse Blues"だ。この曲、キャノンボールとコルトレーンの競演で有名だが、スイング期にはポピュラーだったこの曲もモダン期には取り上げられる機会は少ない。これらの状況証拠から考えると、ドレヴォおじさんはアメリカのスイング時代に憧れるヨーロッパのテナーマンというプロファイルができるだろう。そうなると、B面の2曲目"Foot Pattin'"を見逃すわけにはいかない。この曲を取り上げているのは、テナー・バトルの聖典といえる"Very Saxy"に他ならないのである。ドレヴォのようなテナー・サックス・マニアがその点を見逃すはずはない。ホーキンスを始めとするテナー・バトルの競演を知らずにこの曲を演奏するなんてことはありえないのだ。この曲が出た時点で猫麻呂は「萌え~!」なのである。それはともかく、1930年代末から1940年代にかけてのテナー・バトルの歴史をドレヴォが意識した可能性は高いと言えるだろう。結論としては、DJ筋で人気のあるこの作品は、正統派ジャズオタ的にも実は見逃せない作品と言えるのかもしれない。クラシック音楽の聖地にありながらスイングジャズに憧れ、テナー・バトルにも造詣が深いウィーンっ子というだけで面白いのだが、その作品自体が古き良き時代のジャズを彷彿とさせるというのが面白いではないか。しかも、録音された時代がモードやフリージャズ全盛期なのに、1930年代のスイングジャズをやっているというのが最高に面白い。DJ筋はこの辺りの事情を分かって聴いているのかどうか疑問ではあるが、ジャズがダンサブルだった時代の音楽を再現したのだから、「当たらずとも遠からじ」と言えなくもない。だけど、DJさん達には興味のないジャズの歴史を知ってこそ分かる面白さがこのレコードにはあるのかもしれない。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Karl Drewo / Clap Hands Here Comes Charlie (Rearward)
2009年01月25日
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昨年の11月頃からディナを聴き始めて、今や猫麻呂イチオシのヘヴィー・ローテーションとなったCDがこの作品。ピアノ・トリオだけだから、ディナ率100%でかぶりつきで楽しめる。以前にも書いたが、ディナ作品はピアノ・トリオとしてまず楽しみ、次にナチュラルな歌声を楽しむのである。ディナの歌は自身のピアノ伴奏と一体となってこそディナ・ワールドが完成する。ディナ・ワールドだなんて言葉を勝手に作ってしまったが、都会的な洗練された音楽にもかかわらず、どことなくカントリーな感じがするのが特徴だと思っている。クールなのに落ち着くというか、冷んやりした中にもほのかな暖かみがあるというか、暗がりの中のロウソクというか・・・。かっこいいのに癒されるんですね。選曲はブルージーなものから小粋なスタンダード、更にはジョン・レノンの"Imagine"まで取り上げている。スピーカーと対峙しながら聴くような曲ではなく、自然と耳に入ってくるような曲が多い。"Imagine"はディナのオリジナルだっけ?というほど自然に聴こえる。とくにコレがイチバンという曲はないが、猫麻呂が好きなのは1曲目の"Meditation"。ディナの歌が終わったところで出てくるクレシェンドにゾクゾクしてしまう。2曲目の"All My Life"のベースのアルコ・ソロもいい。9曲目の"A Walk in The Park"はディナのオリジナルだが、この曲だけインストのみの演奏となっている。しかし、歌が入っていないことに気が付かないで聴いてしまう。この作品、録音も良いしジャケットデザインも良い。一家に1枚常備しても損のない作品なのである。猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Dena DeRose / A Walk in The Park (MaxJazz)
2009年01月17日
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気が付いたら新年に入って10日も経過してしまった。今さら新年の挨拶というわけにもいかず、ここは何事もなかったかの如く済ましてしまおうかな・・・、やっぱり「今年も宜しくお願いします」くらいの挨拶は必要かな・・・、と悩ましい日々が続く今日この頃。ブログ更新もサボって猫麻呂は何をしていたかといえば、インフルエンザで寝込んでいたのだ。一家全員発病するという悲劇的な年末年始ではあったものの、寝込んでいる間は音楽を聴くくらいしか楽しみがない、という願ったり叶ったりの環境でもあった。ハードな音楽は体に障るということで、女性ヴォーカルを少々とウェストコーストジャズをたっぷりと聴いていたのである。ハワード・ラムゼイやホーティー・ロジャースにはホント世話になったなー。それで女性ヴォーカルの話だが、そもそも猫麻呂のウチには女性ヴォーカルのディスクがほとんどない。前々回のブログに登場したディナ・デローズとペギー・リーの古いアルバム(これが実は愛聴盤だったりする)以外はアニタ姐とダイナ・ワシントンしかないのだ。これではいけない、と一念発起して買ってみたのがロベルタ・ガンバリーニのCD。なぜガンバリーニのCDなのかって?そりゃ、ジャケ買いですよ。この魅力的な・・・(モゴモゴ)。そんな下心いっぱいの動機はあったものの、一応の大義名分はある。ジャズのお仲間に聴かせてもらったガンバリーニの"You Are There"でのハンク・ジョーンズとのデュオが素晴らしく、それ以来すっかりファンになってしまったのだ。このお仲間の方は猫麻呂にディナを教えてくれた人だが、実は密かに女性ヴォーカル地獄への道案内をしているのだろう。まんまと策略にハマりつつある猫麻呂であった。今年は女性ヴォーカルを聴いて、立派な"エロ・ジャズオヤジ"になるべく精進するのだ・・・。(できるかな?)とは言え、単なる女性ヴォーカル作品は猫麻呂にはちと辛い。その点、この作品にはちょっとした秘密がある。ここで猫麻呂アドバイス。「まずは4曲目"On the Sunny Side of the Steet"から聴くべし。」これでコアなジャズファンもガンバリーニの魅力にアリの巣コロリとなること間違いなし。その秘密とは何か・・・。それは聴いてのお楽しみ。ガレスピー・ファンやロリンズ・ファンは思わずニンマリするだろう。(これだけで分かる人には分かるんだろうなぁ。)4曲目でコロっといったら1曲目から素直に聴いてみる。1曲目の"Easy to Love"を聴くと、技巧的な"On the Sunny Side of the Steet"とはまったく違ったガンバリーニの本当の歌声が聴ける。カーメン・マクレエなんて強面の名前を出したくはないが、音域や声の伸び方が似ているのかな。そんなことはどうでも良い。このアルト・ヴォイスの伸びと艶が、しっとりとした曲をよりしっとりと聴かせてくれる。深夜のバーでこの歌を聴きながらしんみり独り酒なんていいだろうな。静かな曲だけでなく"No More Blues"でラテン気分というのも良い。パンチは効いているけど怖くないのが嬉しい。最近の女性ヴォーカルは随分聴きやすくなったものだ。怖くもないし、妙なかわいらしさもない。女性ヴォーカルも等身大にジャズしている時代になったのかもしれない。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Roberta Gambarini / Easy to Love (Groovin' High)
2009年01月10日
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フレディー・ハバードが帰らぬ人となってしまった。ハバードはジャズシーンの第一線からしばらく離れていた。唇の手術をしたとか、いろんな噂があったが、いつかは第一線に復帰するものだと信じていた。マイルスのように・・・。ラッパに関しては渋好みの猫麻呂ではあるが、フレディー・ハバードに憧れた日々もあったし、今でも実は大好きなのである。今だってカリキオのトランペットを吹いて見たいと思うし、ヴィレッジ・ヴァンガードの80年代のライブ映像を見てはひとり興奮したりもする。そもそも、80年代にジャズ・トランペッターを志した若者でハバードの影響を受けなかった人はいないんじゃないだろうか?VSOPでの颯爽としたカッコよさ。Mt.フジでの圧倒的な存在感。当時はまだ普通の優等生だったウィントン・マルサリスと比べると、当時のハバードのトランペットには男の魅力がムンムンだった。「オトナ」ではなく「オトコ」の魅力なのである。デカくて歯切れのよい音色や強調されるハイノートもカッコよかったけど、トランペットをやや上方に向けて構える持ち方といい、脇を締めて体を横に傾ける姿勢といい、モハメッド・アリのような容貌といい、まさにヘビー級ボクサーなのだ。なんだか思い出しちゃったなぁ・・・。当時の憧れのフレディー・ハバードがそのまま録音されたのが、このCDだろう。今回の追悼で真っ先に取り出したのがこのCDだった。ジョー・ヘンもボビ・ハチも入ったバリバリのライブ盤。以前にこのブログでVOL.1を取り上げたことがあるので内容についてはあまり書かないけど、とにかく「あの頃の音」がするので懐かしい気分に浸れる。「あの頃の音」というのは、ジャズに死亡宣告が下され、ジャズ喫茶で流れていたフュージョンの合間に聴いたジャズ復興の足音なのかもしれない。今思えば、昨今のジャズの平和を築いたのはハバードを始めとする60年代ジャズの生き残りの貢献度が高いんですねぇ。(一時フュージョンに走ったハバードについては功罪両方があるかもしれませんが・・・。)こうやって考えると、猫麻呂世代にとってのハバードは「リアルタイム」を感じることができた最後の巨星だったのかもしれない。ウィントンからはいまだに感じられない「ジャズのジャズ臭さ」を、ハバードから「リアルタイム」で感じることができたのは、猫麻呂世代にとっては最大の幸せだったと思う。天国では、モーガンvsハバードのクッカーズ再戦なんて企画もあるのかもしれない。今はまだ見に行けないけど、そのうち必ず見に行くからね!猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)←ただし追悼割り増し分込みFreddie Hubbard / Keystone Bop Vol.2 (Prestige)
2008年12月31日
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女性ボーカルにはほとんど興味のない猫麻呂なのに、ディナ・デローズにはすっかりハマってしまった。個人的には今年一番の大ヒットだったりする。ディナ・デローズは知人(業界の人)から薦められて聴いてみたのがきっかけだった。まだ日本では知名度は高くないらしいが、新宿ピットインに出演したこともあるらしく、一部の人は既にハマっているのらしい・・・。どうしてこんなにハマるのか・・・。それはジャズ・ボーカルっぽくないからだと思う。猫麻呂にとって女性ボーカルのイメージとは「怖い系」か「不自然にかわいい系」かのどちらかだったが、ディナはどちらでもない。とにかく「自然体」なのだ。「鼻歌」なんて書くと失礼だが、それくらい自然にメロディーが歌として出てきたような感じ。器楽演奏と一緒にあっても違和感がなく、器楽演奏と歌との距離感がない。ボーカル作品のはずなのに、ボーカルものを聴いた後のこっ恥かしさがないのだ。そう感じる理由は、ディナがそもそもピアニストであるからだろう。ディナはダイアナ・クラールと同じで「弾き語り」のお姉さんなのである。ボーカリストとして出発したエピソードがallmusicのバイオグラフィー欄に記載されていたが、試しに歌ってみたら案外良かったからボーカルも続けているタイプなのだろう。本職はジャズピアニストだから、器楽奏者との距離感のない歌ができるんだろうな・・・と勝手に想像している。このCDでは出てこないが、ディナのスキャットの音程の正確さは驚くべきものがある。最初にボーカルの話から始めてしまったが、本来はディナのピアノを聴くべきだと思う。ディナのピアノには小粋なドライブ感があり、聴いていて心地よい。ボーカルと同じく、とにかくセンスがいい感じのプレーヤーなのだろう。目新しさよりも目先の心地よさを求める人には堪らないタイプだと思う。こういう演奏は何度聴いても飽きないなー。この作品、初期のリーダー作だが、参加しているホーン陣が豪華で面白い。スティーブ・デイビスの甘いトロンボーン、飄々としたスティーブ・ウィルソンのサックス、どんよりしたイングリッド・ジェンセンのトランペットといった三者三様の短いソロがおいしいところで入ってくる。ジャズの福袋のような作品といえるだろう。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Dena DeRose / Another World (Sharp Nine)
2008年12月21日
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なぜこのCDを買ったのか記憶が定かでないが、恐らくテレル・スタッフォードの名前を見つけて米尼損のマーケットプレースでポチッたのだろう。ポール・カーとはどんな人?と思ってネットで検索してもほとんど情報は得られず、手がかりとなるのはCDのライナーとVento Azulさんのネットショップでの紹介記事くらいだった。(Vento Azulさんの記事はこちらです。)CDのライナーによると、ポール・カーはテキサス州ヒューストンの出身。アーネット・コブ平やドン・ウィルカーソンという正統派テキサス・テナーの洗礼を受けて育ったと自身がライナーで書いているが、音を聴く限りはコブ平やドン・ウィルカーソンのような下品さは(残念ながら)かけらもない。それでも音が太いのは、テキサスの血なんだろうか?(写真を見ると、マウスピースはラバーを使っているようです。)自身のライナーにはこんなことも書いてあった。80年代後半のある日、ポールが学生か駆け出しのテナーマンだった頃、憧れのジョー・ヘンダーソンがワシントンに来た(ポールはワシントンに居た)時にジョー・ヘンの追っかけをやったらしい。初日のライブではジョー・ヘンに話かけるきっかけがつかめなかったが、2日目には意を決してジョー・ヘンと話すチャンスを得た。ジャズ・ミュージシャンとしての生き方についての薫陶を受け、その時にジョー・ヘンから貰ったサインに"To Paul, Musically Yours, Joe"と書いてあったのだそうだ。このCDの名前の由来には、こんな心暖まるエピソードがあったらしい。エエ話やなぁ・・・。こうやって、文献だけでブログを書いていると、どこぞの大学職員で自称ジャズ評論家の先生のようになってしまうので、ちゃんと聴いたことも書いておこう。第一印象としては、「手堅い演奏」というイメージだ。ポール・カーは破綻も脱線もせず、ひたすらジョー・ヘンが憑依したかの如く吹きまくる。あまりにもマジメにジョー・ヘンをやるので、逆にジョー・ヘンの飄々としたところが消えてしまい、「ジョー・ヘン聴くなら本家で聴くワイ」という気がしなくもない。こうして危うくお蔵入りしそうになったところで、ポールがジョー・ヘンの追っかけをしていた話を思い出しながらもう一度聴いてみた。すると、ポールのジャズへの想いやジョー・ヘンへの思い入れが伝わってくるのだ。ポールをひとりのジャズマンとして見ると、この作品のアプローチは残念ながら月並みであり、内容は悪くはないが取り立てて大騒ぎするほどのものではない。しかし、ジョー・ヘンの追っかけをしていたポール少年が二十年程後になって、ジョー・ヘンから貰ったサインをタイトルにしたトリビュート作品を作るなんて、ジャズオタとしては最高の花道ではないだろうか。そう、ポール・カーとは一種のジャズオタなのだ。そう思って聴くと、ひとつひとつの音に想いが詰まっているようで、感動的ではないか?特に最後の"If you could see me now"の無伴奏演奏はジーンと来ますよ。いやー、メルヘンですねェ・・・。そう言えば、テレル・スタッフォードのことに何も触れていなかった。この作品では、所詮はジャズオタ・テナーのアシスト役なので、自分のカラーが出せていない感がある。テレル君じゃなくても他の誰でも良かったのだろうし、そもそもこの作品にトランペットは不要だったのでは?と思ってしまう。それでもイイ仕事するなー、テレル君。イイ仕事といえば、この作品はルイス・ナッシュの職人芸が支えているともいえるだろう。手堅いながらもエキサイティングなドラミングには、いつ聴いても惚れ惚れする。手堅いジャズマンを集めて作ったこのオタク作品、どう考えても採算面では大赤字なんだろうけど、道楽なんだから仕方ないか・・・。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Paul Carr / Musically yours (PCJ)
2008年12月14日
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オルガン入りテナーサックスのワンホーン・アルバムというだけで猫麻呂的にはポイントが高い作品だが、何故かJoe Van Enkhuizenというテナーマンのことは経歴どころか名前の読み方すら知らないのである。(とりあえずは「エンキューゼン」と表記していますが、読み方をご存知の方は教えてください。)テナーサックスとオルガンが好きだと言っても、さすがに名前も読めないヨーロッパ人の作品に手を出すのは腰が引けるというもの。購入時の記憶は定かではないが、恐らくはドラムにハン・ベニンクの名前があったから購入したのだろう。バップ系の曲が並んでいるとなると、ベニンク得意の「明るく楽しいフリージャズ」ではないか、と期待していたとも言える。しかし、実際にCDを聴いてみると、至極真っ当なオルガン・テナー・トリオだった。これはこれで猫麻呂的にはOKなのだが、期待していた音を聴いてみたかったなー。エンキューゼンは太い音色でブイブイ言わせる猫麻呂好みのタイプ。ジーン・アモンズの系列と言えるだろうが、全体的にマジメかつ小ぶりであり「コンパクト・テキサステナー」といったところ。オルガンのCarlo Dewysも小ぶりながらテキパキとスイングするタイプであり、本場USAのようにバーベキューにかぶりつくようなバカさ加減はない。この2人が組んでも優等生的なプチ・コテコテに終わってしまいそうだが、そこにハン・ベニンクが入ることにこの作品の面白さがある。ハン・ベニンクとしてはメインストリーム風の「普通のドラマー」に徹したつもりなのだろうが、いわゆる本場USAのテナー&オルガンの文脈ではありえない突っ込みが満載なのが面白い。時にはオルガンのCarlo Dewysを巻き込んで、バップやコテコテのような狭い世界からより広い世界へと音楽の幅を広げようとする。ベニンクのファンとしてはやや物足りないかもしれないが、ベニンクの参加が他のメンバーに影響を与えることを実感できる面白い作品だと思う。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Joe Van Enkhuizen / Blues Ahead (Timeless)
2008年12月07日
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吉祥寺ウニヨンのゴミ箱(=Outlet)あさりで偶然見つけてしまった。「トーマス・フライランド」という手書き文字が目に飛び込んできたのだ。この名前を見つけたら。たとえタンゴであろうと演歌であろうと、問答無用で買うことに決めたのだ。しかし、何故にゴミ箱で500円程度の値段がつけられていたのだろうか。これもジャズの神様の思し召しなのだろう。こうして、出会いは突然やってくるものである。フライランドの名前がある限りは絶対安心だと思っているのだが、オリジナル曲ばかりが並ぶとさすがに怖い。本当にジャズをやっているのだろうか?ひょっとして同姓同名のロック歌手ではないか?(ジャケ裏のパーソネル欄に書いてあっても不安になってしまう。)まさかフリージャズや現代音楽だなんて嬉しい間違いはないだろうか・・・?(やや期待している。)恐る恐る聴いてみると、1曲目に出てきたのはやっぱり知らない曲だが、どうやら循環コードのジャズらしい。tpとasのフツーに2管なのだが、どこか宙ぶらりんな感じがする。うーんと考えて気が付いたのは、ピアノレスでギター入りのクインテットだったということ。しかも、フライランドもアルトサックスのOrazio Maugeriも素直に吹いていない。モーダルでアウト気味というポストバップなジャズをホットにやりましょう、というのが、どうやらこのCDのテーマであるらしい。こんな感じでややトンがった作品だから、甘く切ないバラードはないし、スタンダードは最後に"What is thing called love"があるだけ。しかし、驚くのはライブ音源が使われていることだ。オランダでは、こんな渋い演奏でも客が入るんですね。いい国だなー。こんな演奏ばかりだから、最初に聴いたときはちょっと辛い。しかし、2回3回と繰り返して聴くうちに、ポストバップの冷たさの内側から滲みでてくるバップの熱い魂が輻射熱のようにジンワリと伝わってくるのだ。しかも、Francesco Cingeの甘ったるいギターが全体的に渋めなサウンドの中でちょっとしたアクセントになっている。5曲目の"Mediterraneen"なんて堪らなくカッコいい。何度も聴いているうちに、このマニアックというかオトナの趣味的な音楽にどっぷりとハマっていくのだ。allmusicのレーティングでは3.5になっているが、この世界はアメリカ人には絶対に分からないだろうナ。それにしても、このRebop Unionというグループ、日本でもライブをやってくれないかなー。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Rebop Union / Blue Notes (Calibrated)
2008年11月30日
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ズビグニエフ・ナミスウォフスキ・・・。発音どころか覚えることもできそうにない名前なので、ここでは世間にならって「ナミさん」と呼ばせていただこう。このナミさんは、つい先日初めて名前を知ったばかり。ヨアヒム・キューンと共演した1965年のベルリンでのライブ盤(2枚組)をキューン目当てで買ったところ、目の覚めるようなナミさんのアルトサックスにすっかり魅了されてしまったのだ。このCDの話はまた後日ということで、今日は国内盤で発売されたナミさんのCD(これは快挙では?)について書いてみる。残念ながら、ナミさんのこのCDは既に廃盤で、入手するには気合が必要かもしれないが、猫麻呂は先日ヤフーショッピングのネット注文で新品をゲットした。(残念ながら楽天ショップではヒット0件でした。)さりげなくカッコいいジャケットデザインは紙ジャケ甲斐がある。しかも、右肩に掲げられた"DECCA"のロゴ。オーディオ好きにとっては、この英国"DECCA"の紋所は絶対的な権威である。ポーランド人のナミさんが英国DECCAに録音を残すことになったいきさつは、日本語ライナーによると「欧州ツアーのついで」らしい。しかし、名門デッカが録音するのだから、ナミさんは英国でも既に評価が高かったということなのだろう。とにかく、この機会を逃したら一生ゲットできなさそうな匂いがプンプンする魅力的なCDである。さて、中身はどうかというと、1965年のベルリンでのライブ盤と比較すると、やや四面四角というか、よそ行き風な感じがする。曲は"All Man River"を除いてすべてオリジナルという意欲作なのだが、「ボクタチはこんな音楽ヤってマス!」という「形が先行した音楽」という感じを受けた。変拍子があったり、コルトレーン風があったりと、それぞれ面白く聴けるのは間違いないのだが、どことなく固さが残る。名門デッカへの録音なのだから固くなるのも仕方ないのかもしれないが、良くも悪くもきっちりまとめた感じが強い。時代の流行もあったのだろうが、ナミさんの演奏もアジアを意識しているように感じた。ただし、コルトレーンが見たアジアがアフリカからの視点とすれば、ナミさんの見たインドはユーラシア視点。欧州とアジアは陸続きで近くて遠い国の関係なんだなァ・・・という欧州人の世界観が出ているのかな、などと考えてしまう。1曲だけ選ばれたスタンダードが"All Man River"というのが不思議だ。美しい曲は山のようにあるというのに、よりによって煮ても焼いても喰えないこの曲を選んできたというのが面白い。難物のこの曲をちょいと苦味の効いた粋な演奏に仕上げたところにナミさんの腕前を感じるのである。フリージャズをやっているわけではないのに、どことなくフリーっぽく聴こえるのも不思議だ。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Zbigniew Namyslowski / Lola (Decca)
2008年11月09日
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テレル・スタッフォードもすっかりメジャーなトランペッターの仲間入りとなり、風貌にも貫禄がでてきた。体型も由緒正しいトランペッター体型(=デブ)で、いろんな意味で脂が乗ってきた感じだ。この作品は、そんなマイウ~なテレルの旨さがよく出た作品だと思う。猫麻呂がテレル君を応援している理由は、個性的な音色にある。個性的な音色といっても、実は使っている楽器(恐らくSelmer Chorus 80Jだと思う)の音自体が個性的な音だったりする。トランペットでありながらどこか木管的な暖かみのある太くて丸い音色が面白いのだが、高音域は倍音の鳴りがいまいちだったりする。気分的にはアート・ファーマーのフランペットを吹いているような感じ(吹いたことないけど)で、あまりにも個性的な音過ぎてジャズ・コンボでしか使えないという変な楽器なのだ。だから、この楽器を選択した段階で、「オイラは中音域勝負でオトナのジャズをやるのダ!」という強い意志が見て取れる(と勝手に信じている)のである。そんな訳で、猫麻呂もChorus 80Jを取り出し、CDに合わせて吹いてみた。すっかり気分はテレル・スタッフォード!こうやって一緒に吹いてみると、「テレル君ってホントに巧いんだネ!」と感じる。さすがはNYの第一線で活躍する人だ。プロだから巧くて当たり前なのだが、テクニック的には実はそれ程難しいことをしていないことが分かる。音色の選択、間の取り方、ソロの構成での起承転結の付け方、観客のひきつけ方等々・・・に注意しながら聞くとテレル君の美味しさが見えてくるのではないだろうか。選曲的には「何でもアリ」なところがライブ盤らしい。テレル君オリジナルのラテン調"A Nick Off The Mark"やイケイケの"Blues For J.T."がある一方で、ブルース・バースの超ジャズ寄りなオリジナル"Pegasus"があったりする。しかし、やっぱり落ち着くのはスタンダード。チャーミングなアレンジで聞く"Taking A Chance On Love"や文句なしにかっこいい"Old Folks"は最高だ。それでもいろんなタイプの曲がまんべんなく並んでいるのがいいのだろう。曲の並べ方もライブでの選曲のようによく考えられている。最後まで飽きさせない77分。猫麻呂ポイント:★★★★★☆(4.5)Terell Stafford / Taking Chances (MaxJazz)
2008年11月01日
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猫麻呂ブログには珍しい女性ヴォーカルものが登場だ。こんな猫麻呂も、アニタとダイナ・ワシントンが実は好きだったりする。アニタ姐を最初に聴いたのは映画「真夏の夜のジャズ」でのワンシーンだった。アニタ姐は、黒服に白い手袋&帽子のお姿で、オトナの色気ムンムン。ここまでなら阿川泰子と大差ないかもしれないが、スウィート・ジョージア・ブラウンのスキャットトが鳥肌モノの凄さ・・・。この人、歌姫というよりは根っからのジャズ屋なんだなあ。という訳で、アニタ作品はストリングス入りよりも管楽器だけのオーケストラの方がジャズっぽくて好きだ。この作品、ゲイリー・マクファーランドのアレンジもジャズっぽいし、参加しているメンバーがおいしい。フィル・ウッズにズート・シムズですよ。渋いところではハーブ・ポメロイ、ジェローム・リチャードソン、ボブ・ブルックマイヤーというのも泣けるなァ。支えるリズムセクションはハンク・ジョーンズにメル・ルイスとデュビビエというのもいいな。バリー・ガルブレイスのギターなんて渋いのも聴ける。メンツを見ただけでも聴きたくなるでしょ?アニタ姐は、この作品でもいつも通りにハスキーで辛口なオトナのジャズヴォーカルといったところ。CDの日本語ライナーに岩波洋三が面白いことを書いていた。「アニタは宵越しの金は持たないといった江戸っ子風の生き方を好み、いまや女傑という存在の歌手」で「常に背水の陣の緊張感を保ち続けて歌って来た」というのだ。ナルホド!確かにアニタの歌い方は「江戸っ子」を感じる。猫麻呂が女性ジャズ・ヴォーカルを敬遠しているのは、ネチャーっとした歌い方やその逆のオトメチックな歌い方が苦手だからだ。その点、アニタの江戸前風ヴォーカルなら安心して聴ける。しかも、アニタのジャズっぽい歌いっぷりを「背水の陣の緊張感」というのは巧く言ったものだ。アニタの歌にはパーカーやアート・ペッパーに感じる危なっかしい匂いがするような感じがしていたのだ。今回も作品のことにはあまり触れていないが、猫麻呂的には"Boogie Blues"が好きだ。ジーン・クルーパ楽団で歌っていたレパートリーの再現だが、嫌が上でも盛り上がる。フィル・ウッズの情熱的なアルトにも萌えぇーだ。その他で面白いのはマクファーランドのオリジナルも"One More Mile"、"Up State"とアル・コーンの"Night Bird"だろう。アニタが器楽奏者と対等に勝負できるヴォーカル奏者だったことが良く分かる。こういう歌い方ができて、しかもキレイな姐さんというのが、最高にかっこいいと思う。猫麻呂:★★★★☆(4.5)Anita O'Day /All The Sad Young Men (Verve)
2008年10月19日
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マジメに作ったユゼフ・ラティーフには申し訳ないが、この作品、何とも「怪しげ」で面白い。中途半端に東洋崇拝的なところの胡散臭さがたまらないのだ。東洋と言えば、偽装大国の大陸系某大帝国、「将軍さま」の率いる半島系某インチキ帝国、経済発展を遂げてジャズの大消費地として名を馳せつつ、ジャズでは食って行けないのが当たり前となっている某列島国家・・・このように列挙してみるだけで、東洋には如何に不思議に満ち溢れているかが良く分かる・・・?えっ、「へび使い」のような音階のどこが東アジア的だって?うーん、確かに「へび使い」といえばハクション大魔王のような西南アジア系の怪しい男のイメージが強いが、「中国ハ広島のウマレアルヨ!」でお馴染みの日本の誇るへび使い「ゼンジー北京」師匠を忘れてもらっては困るアルヨ・・・。そうだ!このラティーフの作品はゼンジー北京のマジックショーに通じる怪しさだったのだ。ゼンジー師匠はインチキトークと怪しげな小手品で観客の心にスキを作った上で、最後に本物のマジックでアッ!と驚かせる。ラティーフのこの作品も同じで、アジアン・テイストで散々かき回しておいて、渋めの4ビートで聴かせてくれるという作戦か。そう言えば、銅鑼が入っているのもゼンジー師匠とラティーフ作品の共通点かもしれないな・・・。1曲目の"All Alone"はアーヴィング・バーリン作のスタンダード。エスニック・テイストなアレンジが施され、このアルバムの1曲目にふさわしい仕上がりとなっている。こういう曲を吹いているときのラティーフが実はかっこいいと思うのだが・・・。2曲目はインチキ・フレーバー満載の"Anastasia"。へび出没に注意。3曲目はラティーフ作曲のハードバップ風マイナー曲"Minor Mood"。サビは「へび使いモード」となっているものの、ウィルバー・ハーデンは普通に吹いちゃってます。(ダメじゃん!)4曲目は"Taboo"。日本では「8時だョ!全員集合」のおかげでストリップ・ソングとして有名となった曲だが、この演奏も怪しさ満点。サックスではなくフルートを使っているのが逆に怪しを増している。ラティーフに触発されたハーデンがアの手コの手で攻めているのがおかしい。(努力の跡は分かるんだけどネ。)5曲目"Lambet's Point"はハーデン作のハードバップ調の曲。この作品をここまで聴き進むと、このような普通のハードバップ調が退屈になってくるから摩訶不思議。こうして、聞き手はラティーフの術中にはまって行くのだろう。それにしても、ハーデンの柔らかい音色(フリューゲルと書いてあるが、フリューゲルのマウスピースでトランペットを吹いたような音色)は心地よいなー。6曲目はラティーフの作った曲だか語りだか分からないもの。どの地域の音楽なのか、何語で歌っているのか、サッパリ分からない。何だか分からないが、ここまで来たら何でもアリになっている自分に気が付く。こうして聴いてくると、ゼンジー師匠の最後のびっくりマジックにあたるのは6曲目だったのかもしれない。ジャズの方が実はインチキトークだったのだろうか・・・。猫麻呂ポイント:★★★☆(3.5)←ジャズと思って聴くとこんな感じYusef Lateef / Other Sounds (NewJazz)
2008年10月12日
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今週の「おやすみ用BGM」として、ゴルソンのこの作品を流していた。音量を絞って流していると、ゴルソン・ハーモニーが心地よく眠りに誘ってくれる。1曲目の"Staccato Swing"は曲がカッコいいのとゴルソンがゴリゴリ吹いていることで、ついつい聞き入ってしまうが、いつも途中でいつの間にか眠ってしまうようだ。それでも、お目当ての"Autumn Leaves"レイ・ブライアントのソロまでは頑張って起きていたい。何せ、この部分がこのCDの一番美味しいところだからだ。猫麻呂にとってのレイ・ブライアントのツボは、プレスティッジのトリオ盤の1曲目"Golden Earings"の、何とも言えない「奥ゆかしさ」。本当は今にも泣き出しそうな気分なのに、昂る感情を押し殺して何事もなかったように努めている姿をみるような、そんな日本的な情緒がグッとくるのだ。恐らくアメリカ人のレイ・ブライアント本人はそんな日本的な情緒を意識したつもりはないのだろうが、にじみ出るような四畳半的なウェット感が胸キュンものなのである。四畳半的といえば、テナーサックスとトロンボーンの2管でのハーモニーは四畳半に似合うコタツみたいなものかもしれない。ドン臭いけど和んでしまうのだ。これにトランペットが入ると、「和み度」が低くなる。例えば、アート・ファーマーが入ると(ジャズテットですね)「石油ストーブ」。お餅をや焼き芋なんか焼いたりして、まだ「和み度」が感じられる。リー・モーガンが入ると(ジャズ・メッセンジャーズでありそうでなさそうな取り合わせ)焼肉屋のロースターだろう。和みというよりは、ビールとカルビのメタボリックなハーモニーとなる。さっきから余計な戯言ばかりで大切な演奏についてほとんど何も書いていないが、1曲目と2曲目以外は何故か印象が薄いのだ。良いとか悪いという話ではなく、どうやら意識が3曲目以降で眠ってしまうようなのだ。ゴルソンのオリジナルが中心だが、"Whisper Not"や"I Remember Clifford"クラスの耳に残る曲はなく、気が付くと終わっているのである。こんなのでは、ディスクレビューでも何でもないなー、と反省しつつ、何度聴いても不思議と印象が残らない。ひょっとすると、ゴルソンが「おやすみ用BGM」として意識的に作ったのだろうか・・・?猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Benny Golson / Gone with Golson (NewJazz)
2008年10月04日
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今までどうも好きになれなかったブッカー・アーヴィンが気持ち良くてしょうがない。人間、コレ程までに趣味が変わるものか・・・と、我ながら呆れるやら嬉しいやらで複雑な心境。急にアーヴィン好きになったのは、恐らくスティットとのバトルものを聴いたのがきっかけだろう。それまでは、あの容貌と投げやり風な吹き方から「鼻持ちならねぇヤツ」というイメージを持っていた。しかも、ドルフィとの競演盤なんかを聴くと、どうしてもアーヴィンがショボく聴こえてしまう。または、デクスター・ゴードンとの競演盤では、大好きなデックスを台無しにするような下品さを発揮。これではアーヴィン・アレルギーにもなるわナ。そうは言っても、実はアーヴィンの「ブック・シリーズ」と呼ばれる作品の一部は以前から聴いていた。月並みながら、"The Song Book"(トミ・フラの好サポート)なんから入って"The Blues Book"(ギルド・マホネスというのが渋い)までは何とか購入できた。それが"The Freedom Book"あたりになるといきなり敷居が高くなる(と聴かず嫌いに思ってしまった)。何故か?理由はジャキ・バイアードだ。ジャキは好きだが、コワモテのオジさん2人が並ぶ姿が想像できなかった・・・というよりは想像すると薄気味悪くて購買意欲が沸かなかったのである。しかも、タイトルが「フリーダム」やら「スペース」となると、かなりオッカナイ世界だと思うし、そんな世界に連れて行かれたら拉致されたまま帰ってこれないのではないか・・・などと思ったワケなのだ。スティット君の一件以来、猫麻呂の中ではアーヴィン株が高騰し、ついに"The Space Book"を買うに至った。しかも、OJC盤のLPだ。ジャケ写真に広がる無限の宇宙空間。『宇宙、そこは最後のフロンティア・・・』というスタートレックのナレーションを思い出し、"live long and porosper"しながらLPを取り出して(そんな器用なことはできません!)ターンテーブルに載せてみた。すると、やはり想像通りの宇宙的音楽が流れてきたのだ。言葉にするのは難しいが、宇宙空間で物質が粒子上に砕け散って、四方八方に飛び散るようなイメージだ。音楽に重力や求心力がまったくない。アーヴィンはひたすら自分のフレーズを垂れ流し、ジャキのピアノは異次元空間に吸い込まれるように消えて行く。アラン・ドーソンだけがアーヴィンの傍にぴったりとついているが、リチャード・デービスもジャキもアーヴィンとは全然違う方向に進んで行く。こんな音楽のどこが面白いのだろう・・・と思うかもしれないが、何故か不思議と心地よい。まさに「無重力ジャズ」なのだ。"The Space Book"とは何と巧いネーミングなのか、と感心してしまった。この作品、CDでは聴いていないのでわかならいが、OJC盤のLPは音が素晴らしいかった。とくに外周部分(つまり1曲目)では、音がはじけ飛んでくるようだ。猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Booker Ervin / The Space Book (Prestige)
2008年09月27日
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シェリーマンの作品は、基本的には芸術作品ではなく娯楽作品だと思っている。そもそもシェリーマン自身が趣味が高じてバンドを始めたりライブハウスを経営したりしてしまう人だからこそ、「ジャズが楽しくてしょーがない」という雰囲気に溢れているのだろう。まさに「ジャズオタ」の鏡のようなオヤッサンである。そんなジャズ親父を支えるのが「西海岸の燃える闘魂」コンテ・カンドリと「天才的何でも屋」のラス・フリーマンといった、イタリアン・バップも真っ青の「カリフォルニアのバップ職人」の面々なのである。何とも美味しい企画というか、贅沢な道楽なのである。しかし、この作品を只の娯楽作品とするには惜しい。フランク・ストロージャーの参加により、いきなり音楽がシリアスになっている。毎度おなじみのリッチー・カミューカと違い、ストロージャーのフレーズはこのバンドに新しい風を吹き込んでいる。簡単に言うと、50年代な雰囲気のバンドにストロージャーが60年代のジャズを持ち込んだ、というところだろう。ストロージャーの参加は、演奏だけでなく曲の提供でも影響を与えている。A面2曲"Idle One"とB面4曲目"Frank's Tune"がストロージャーの曲だが、なかなかの佳曲である。娯楽面で言えば、A面1曲目"Margie"とA面3曲目の"The Breeze and I"が楽しい。"Margie"はジミー・ロウルズ原曲のメロディーが分からないように巧妙なアレンジを施しているのが聴きどころ。"The Breeze and I"はラテン風にアレンジされたゴキゲンなテーマとカンドリのハイノート盛り上げ作戦でニンマリする。allmusicでは★★★な評価しか与えられていない作品だが、猫麻呂はシェリーマン作品の中ではイチオシの面白さだと思っている。今まで気がつかなかったストロージャーの魅力に気づくきっかけになっただけでも嬉しい。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Shelly Mann / Boss Sounds! (Atlantic)
2008年09月14日
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「あの優等生ソニー・スティット君が体育館の裏でタバコを吸っているというのは本当なのか?」職員室に衝撃が走った。スティット君といえば、品行方正で成績も良く、生徒会長も勤めるような、絵に描いたような「優等生」なのだ。ビバップ高校は、何の因果か「不良高校」として有名になっていたのだが、実はパーカー先生の教えを受け継ぐ由緒正しい学校なのである。しかし、転校生のオーネット君やアイラー君を筆頭に自由を求める学生が増え、伝統を受け継ぐはずの優等生ロリンズ君までが影響を受け、とうとう退学してしまった。そんな中で、唯一人伝統を守り続けるスティット君には学園復興の期待が集まっていたのだ。「先生、これが証拠写真です!」「他には誰が一緒にいたんだ?」「ブッカー・アーヴィン君とドン・パターソン君が一緒でした。」「エズモンド先生に任せたばっかりに・・・。」吐き捨てるようにつぶやくと、カデナ教諭は体育館に向かって走り去っていった。(続く)本作品、アーヴィンとスティットとのバトルものなのだが、スティットの四角四面さが目立つ。スティットにはハンク・ジョーンズのような正統派リズムとは相性が良いが、60年代プレスティッジの何でもありセッションでは、どうしても一人浮いてしまったように感じてしまう。一方、アーヴィンはというと、いつもの暴れっぷりと比較すると大御所を前だからか「腹八分」であり、アーヴィン目当てで聴くと物足りない。しかし、スティットの空振りとの比較でアーヴィンに大きな拍手を送ってしまうのだ。この作品でのMVPはドン・パターソンだろう。とにかくバッキングが心地よい。特に、アーヴィンのバックでハマった時のパターソンは最高だ。サックスとオルガン&ドラムで登りつめていくCジャム・ブルースは圧巻である。しかし、ベビー・フェイスのスティットvsヒールのアーヴィンという図式は、昔のプロレスみたいで楽しいなァ。Sonny Stitt / Soul People (Prestige) 1. Soul People 2. Sonny's Book 3. C Jam Blues 4. Medley I Can't Get Started The Masquerade Is OverSonny Stitt (ts,as), Booker Ervin (ts) Don Patterson (org), Billy James (ds)1964年8月25日録音
2008年09月07日
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自分で言うのも何だが、猫麻呂はジャズ・トランペットに対する評価は概して厳しい。まず第一にテクニシャンは嫌い(ブラウニーやウィントンを聴くと、部屋中のトランペットを処分したくなる)だし、ハイノート・ヒッターも嫌い。逆に、評価が高いのが、丸い音色で中音域を中心に渋く唄うタイプ。初期のマイルスやアート・ファーマー、ケニー・ドーハムがその典型だ。このタイプのトランペッターは、どんな音楽を演奏していても聴いてしまう。ジョン・マーシャルは、ビッグバンド暦が長いにもかかわらず、このジャンルに属する稀有なトランペッターのようである。さらに、どことなくドーハムを意識したようなバップ魂が全開なところが「萌え~っ!」でもあり、猫麻呂的には大プッシュしたいトランペッターなのだ。フレーズに目新しさはなく、アウトもおイタもないが、バッパーへの憧れがストレートに出ていて爽快なのである。前回のMarmadukeのトランペッターのような「リバイバル感」ではなく、マーシャルには「バッパーの生き残り」のような雰囲気があると言っても良い。しかも、ブラウニー系のフレーズは一切吹かず、ガレスピー/ナヴァロ/ドーハム路線なのが素晴らしい。マーシャルの作品には選曲の良いものが多いが、この作品でもジャズファンを喜ばせるようなセンスの良さがある。まずは、1曲目の"The Most Beautiful Girl in The World"を名刺代わりに渋く聴かせる。マーシャルの一番おいしいところをぶつけてきたのだろう。バックを務めるRob Agerbeel Trioとの相性もバッチリだ。続いて"I'm Old Fashioned"を軽快なテンポで小気味よくまとめる。まるで、晩年のアート・ファーマーのようだ。渋めの2曲の後は、ドーハムも演奏した"Mamacita"だ。ドーハム程の爆発感はないが、ドーハム・トリビュートのハートは伝わってくる。次がエルヴィス・コステロの渋~い"Almost Blue"だ。マーシャルの本領発揮といったところか。6曲目の"Russian Lullaby"ではマーシャルのバップスイッチがオンになる。ドーハムというよりもハワード・マギー風のフレーズがビシバシと入り、バップオタクはにんまりしてしまう。8曲目の"Speak Low"でもマギー風の垂れ流しフレーズを多用しているが、どちらかはドナルド・バード風のやっつけフレーズを使ってくれると、バップ・オタク的には嬉しいんだけどな・・・。7曲目の"My Old Flame"はドーハムも演奏していた渋い曲。ここでもドーハムを意識したのかもしれない。9曲目の"Tin Tin Dio"がドーハム風で堪らなくカッコいい。10曲目の"Raincheck"は、選曲としては良いのだが、演奏は垂れ流し過ぎでやや雑っぽい(またそれがカッコ良かったりするのだが)。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)John Marshall & The Rob Agerbeek Trio / Almost Blue (Blue Jack) 1. Almost Blue 2. I'm Old Fashioned 3. Mamacita 4. The Most Beautiful Girl In The World 5. Bitter Sweet 6. Russian Lullaby 7. My Old Flame 8. Speak Low 9. Tin Tin Deo 10. Raincheck John Marshall(tp,flh), Rob Agerbeek(p), Harry Emmery(b), Ben Schroder(ds)2006年2月オランダ録音
2008年08月31日
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メイド・イン・スウェーデンの21世紀ハードバップ・リバイバルな作品。ノリとしては、ナイロビ・トリオ(=Donavan Muradian Quintet)のような元気ハツラツ系のスポーツ・ドリンクのようなハードバップだ。どこの国にもいるんですねぇ、ハードバップって・・・。ハードバップが好きで、好きで、堪らなくて、とうとう自分たちで演奏してしまいました、という気持ちが伝わってくる作品だと思う。最初に断っておくが、この作品は気持ちよく聴けるし、聴いていて楽しい。「名盤」とは言えないかもしれないが、当面はヘヴィー・ローテーションに入るかもしれないと思っている。演奏者の熱いハートと選曲の良さ(ここにもこだわりがあるんでしょうね)で聴かされてしまうのだ。それに、テナーサックスのFredrik Lindborgが素晴らしい。ロリンズやデクスター・ゴードンのようなゴリゴリの音なのだ。この音色一発でこのCDは聴く価値があると言っても過言ではないだろう。それ程素晴らしいこのCDに対して、猫麻呂は何が不満だというのだろう?しかし、このCDを聴いてから本物のハードバップを聴くと、このCDの位置づけが見えてくるのである。例えばリー・モーガンのキャンディとかコルトレーンのブルー・トレインあたりを聴いてしまうと、本物のハードバップとそれのリバイバルとの差が歴然なのである。何だろう、この違いは・・・。時代の匂いというと漠然としているが、色気や気迫の違いは明白である。とにかく、本物が濃厚なのに対して、リバイバルは熱狂しながらもどこか覚めた意識があるように思える。もちろん、リー・モーガンやコルトレーンのような超一流と比較されては仕方がない部分もあるだろうが、ビル・ハードマンやジミー・ヒースと比べても、やっぱり本物と比較すると何かが足りない気がする。そうは言っても、この手の音楽はライブで見ると「萌え~っ!」なのは間違いない。そうだ、ハードバップ・リバイバルはライブで楽しむための音楽なのだ。本物のハードバップを見たくても、当時のNYに行けるわけではない。当時の録音を聴くか、「真似事」だろうと何だろうとライブを見るしかないのだ。そうなると、このMarmadukeというグループにとって、このCDはライブに客を集めるためのサンプラーなのかもしれない。そう思って聴くと、このCDがより楽しくなってきたではないか。キラキラしたトランペットの音とドスの効いたテナーサックスの音がスピーカーから飛び出してくるようなライブな録音も良い。それに、このCDを聴きながら自分でも楽器を取り出して一緒に吹いちゃったりして、これがまた「萌え~っ!」だったりする。CDのこんな使い方も、たまにはいいんじゃないですかねー。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Marmaduke / Conflictions (Imogena) 1.Old Devil Moon 2.Springy (Matti Ollikainen) 3.Conflictions (Matti Ollikainen) 4.Do Nothing Til You Hear From Me 5.And Then She Stopped 6.Hope (Fredrik Lindborg) 7.Reflections 8.Milestones 9.Parisian Thoroughfare 10.Springtime (Matti Ollikainen)※オリジナル曲だけ作曲者を( )に記載しました。Samuel Olsson(tp), Fredrik Lindborg(ts)Matti Ollikainen(p), Victor Furbacken(b), Goran Kroon(ds)
2008年08月23日
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「クラブジャズ」系な人は、ラテンビートやフルートの入ったジャズが好きなんでしょうねぇ・・・。この作品、クラブ活動な人にとっては名盤なのだそうだ。「クラブジャズ」系ではなく「ジャズクラブ」系(しかも何故か体育会系音楽集団?)な猫麻呂ではあるが、確かにこの作品は心地よく聴くことができると思う。話は脱線するが、「クラブジャズ」系な人は、ジャズオタと違って、ジャズを素直に聴いているのではないかと思うことがある。ジャズの「汗」というか「臭い」とというか、バックボーン(=「ジャズの歴史」)を踏まえてジャズと向き合うことは、ジャズの理解には必要だと思うが、音楽それ自体を楽しむには、逆にそれが足かせになっている点があるのではないだろうか。考えてみれば、猫麻呂にとってのクラシックがそんな感じである。所詮は隣の芝生のようなクラシックだからこそおいしそうに見えるが、そこの住人になる気は更々ない。猫麻呂にとっての「クラシック」とは、所詮は「ジャズ」というフィルターを通して見た虚像なのだと思っているが、それでも音楽としては十分楽しめる。音楽に垣根はないが、住民票くらいはあるのだろう。猫麻呂はあくまでも「字ジャズ」なのだ。話を戻すと、この作品はサウンド的に面白いと思う。バリトンサックスとヴィブラフォン&マリンバという組み合わせは、かなり新鮮だ。曲もラテン調からワルツ風といった、典型的な4ビートではないものが多い。しかも、サヒブ・シハブとケニー・クラークといった「バップの権化」が演奏しているにもかかわらず、バップの臭いをまったく感じさせないところが凄い(特にA面)。ユーロ・ジャズの懐の深さを感じると同時に、バップオタにはやや物足りなさを感じるところでもある。しかし、バップの権化たちがヨーロッパで進化させたジャズを楽しむのもジャズオタ冥利に尽きるというものだろう。「文句なしの名盤!」と言われる程の作品とは思わないが、それなりに楽しめる作品ではある。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Sahib Shihab / Seeds (Rearward) 1. Seeds 2. Peter's Waltz 3. Set Up 4. Who'll Buy My Dream 5. Jay - Jay 6. Another Samba 7. My Kind's A World 8. Uma Fita De Tres Cores 9. Mauve 10. The Wild Man Sahib Shihab (bs, fl), Sadi(vib, marimba, bongos)Francy Boland (p), Jimmy Woode (b [4-5以外])Jean Warland (b [4-5のみ]), Kenny Clarke (ds)1969年録音
2008年08月20日
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この作品、猫麻呂的にはどうやっても燃えないのだ。「幻の名盤」のCD化やLP再発としてジャズディスク専門店では大々的に取り上げられていたのだが、そんなに大騒ぎするほどの「ありがたい」作品なのかなー、と疑問に思う。この作品、店頭でBGMとして流れていると、ものすごくカッコよく聞こえる。よく考えられたアレンジに高度な演奏技術なのだから、50年代アメリカの黒人ハードバップ作品とは比較にならないほど「よくできている」はずだ。しかも、ジャズの本場アメリカからはるか遠くの地イタリアで「ジャズ」に憧れながら「オタク」をしていた人たちの作った音楽なのだ。同じような境遇の日本人「ジャズオタク」としは、どこか共感を覚えるのかもしれない。このCDの日本語ライナーを読むと、当時のバッソとヴァルダンブリーニは、アメリカのウェストコースト・ジャズを意識したような音作りなんだそうだ。バッソがスタン・ゲッツでヴァルダンブリーニがチェット・ベイカーなんだとか・・・。こんな「そっくりさん」大会のようなライナーを読んでしまったものだから、とたんに気分が萎えてしまった。それまでは「オタク」の同志と思っていたのに、実は「そっくりさん」だったなんて・・・。しかし、「オタク」の同志と「そっくりさん」との違いって何なんでしょう?バッソのテナー・サックスは、確かにスイングとバップの中間的なゲッツの50年代に近いと思うが、ゲッツ特有の「閃き」はどこにもない。どちらかと言えば、リッチー・カミューカなんじゃないか、と思う。ヴァルダンブリーニのトランペットは、チェットよりも数段巧いが、チェット特有の「いかがわしさ」や「綱渡り」がない。音色は別として、雰囲気としてコンテ・カンドリのに近いのではないか、と思う。聴きどころは、世間で言うとおり、アフロ・キューバン風の"Lotar"だろう。その他の曲については、アレンジのかっこ良さはあるものの、各人のソロが古臭い感じがして、今ひとつ楽しめなかった。爺さんになってからのIdea6の味わいは、この時代のバッソ=ヴァルダンブリーニには期待してはいけないのかもしれない。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Basso Valdambrini Quintet (Music) 1. Come Out Wherever You Are 2. Fan-Tan 3. I Wanna Be Kissed 4. Parlami D'amore Mariu 5. Everything Happens To Me 6. Lo Struzzo Oscar 7. Lotar 8. Like Someone in Love 9. C'est Si Bon 10. Gone With The Wind 11. I Can't Get Started 12. Lover Man 13. Chet To Chet Gianni Basso (ts), Oscar Valdanbrini (tp) Renato Sellani (p), Gianni Azzolini (b) Lionello Bionda (ds)
2008年08月10日
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毎日暑い日々が続いて大変だが、北極や南極の気候変動に至っては「大変だ」では済まされない話なのである。特に、北極に至っては、北極海の氷が溶けて居場所のなくなったシロクマ(ホッキョクグマ)たちが、大量の難民となって南極に押し寄せる可能性があり、南極条約加盟国の中でも議論が紛糾しているらしい。どうやら、ペンギンの先住権擁護派とシロクマの生存権擁護派に意見が分裂しているらしいのだ・・・。なんてヨタ話を書いている場合ではないのだが、今日のCDの話はシロクマから始まるのである。何がシロクマかと言うと、CDのジャケット・デザインに出てくるシロクマが何ともいい味わいというか、このCDの中身をそのまま表しているのだ。場所は南国のリゾートだろうか。シロクマが南国のリゾートというのもおかしな話だが、ビーチパラソルの下で昼間からカクテル楽しむシロクマくんなのである。普段は陸上最大の肉食獣として北極海に君臨している立場も忘れ、今日は南の国ですっかりリラックス状態。目を閉じて恍惚状態で音楽に浸っている。そんなシチュエーションで、シロクマくんが聴くべきジャズとは何でしょう?今日のCDは、ドラムのアルヴィン・クイーン名義として1982年から1983年にかけて録音されたピアノ・トリオ作品。当然ながら、南国でのシロクマの休日をテーマとした作品ではないのだが、フュージョン全盛期の80年代に録音されたためか、全体的に爽やかな感じの音作りとなっている。ジュニア・マンスといえば、伝統的なピアノスタイルを継承する保守本流ピアニストのイメージが強く、どことなく重くて暗いイメージがあるのだが、この作品では保守本流ピアニストのおいしさはそのままで、重さ・暗さ・糖質は50%カットしたような感じだ。だから、最初に聴いたときは、とてもジュニア・マンスとは思えなかったのである。しかし、よくよく聴いてみると、せっつくような独特のリズム感の「マンス節」が楽しめるではないか・・・。しかし、南国のリゾートで「マンス節」云々なんていうのは、チョットねぇ。「マンス節」は、まずは"Snapp Crackle And Pop"のようなアップッテンポの曲で楽みたい。まるで、グリフィンとロックジョーが出てきそうな雰囲気だ。"Wave"や"I Don't Care"では、最初はおとなしく始まるものの、中盤からの盛り上げ方が「マンス節」なんですねー。でも、「マンス節」が出始めると、せっかくのリゾート気分が台無しなので、そんなあなたには"Funky Carnival"。ノリはほとんどフュージョン。夏はやっぱりコレですよ。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Junior Mance / The Shadow of Your Smile (Nilva→PonyCanion) 1. Funky Carnival 2. Here And There 3. Wave 4. Glidin And Stridin 5. The Shadow Of Your Smile 6. Snapp Crackle And Pop 7. I Don't Care 8. Watch What Happens 9. Emily Junior Mance (p) Martin Rivera (b) Alvin Queen (ds) 1982年7月29日, 1983年4月1日 ニューヨーク録音 ,
2008年08月02日
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このCD、サム・リヴァースの作品のはずなのに、リヴァースの印象が薄いように感じた。ハンコック~ハバードの新主流派連合を前に、前衛音楽家リヴァースが今ひとつ本領発揮できていない感がある。トニー・ウィリアムスの"Life Time"で大暴れする大魔神サム・リヴァースを期待していたのに・・・。フレディー・ハバードがいけないのだ。いや、いけないのではなく、イケ過ぎなのだ。この作品のおいしいところを、ハバードが得意のハッタリ・フレーズで全部持って行ってしまっている。いやー、それにしても、この作品でのハバードはお見事だ。ウディ・ショウと比べてしまうと、前衛フレーズとしてはかなりナンチャッテ風ではあるが、それまでのハードバップとは違う世界に果敢に挑戦しようという気合が見える(聴こえる)のである。まさに、前衛音楽に対する突撃ラッパと言えるだろう。ハバードが凄いのは、前衛っぽい中にもハードバップの色気が残っているところだと思う。前衛に走ると、どうしてもジャズから離れようとしてしまう中、ハバードの音には独特の重みというか匂いがあり、すべてが「ジャズ」臭いんですねー。さっきから、「前衛」という言葉を使いまくっているが、この作品は前衛的作品(アヴァン・ギャルド)ではない。新主流派作品の前衛寄りという程度だろう。フリー・ジャズの「熱さ」はどこにもなく、ハンコックとロン・カーターはひたすらクールに徹している。リヴァースですら、まるで地面を這うかの如くひっそりと暴れるしかないようだ。この不気味さが何とも言えない味わいなのかもしれないが、猫麻呂的にはリヴァース大魔神にはもっと大暴れして欲しかった。真夏にはこのクールさが心地よいかもしれないが・・・。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Sam Rivers / Contours (BlueNote)
2008年07月20日
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このところの猛暑で、ついに我が家のPCが夏バテで壊れた。壊れたというのは正確ではない。CPUがオーバーヒートしたのだ。我が家のPCはPEN-Dなので、熱には弱いのだ。CPUを取り替えるか、PC内部を冷やすか・・・そんなことばかり考えた一日だった。結論はPCケースを取り替えてPC内部を冷やす作戦。これでしばらく様子を見て、ダメなら次はCPUを直接冷やす作戦に出る。それでもダメなら、大手を振ってCPUを取り替えることができるのだ。ジャズとはまったく関係のない話ばかり書いているが、そんなこんなでディスク・レビューを書く時間がなくなってしまったのだ。PCケース取替えは案外時間がかかるんですよ。そんな理由で、当初予定していたCDの話は次回以降に延期して、とにかく今一番聴きたかったレコードの話でも書いておこう。猫麻呂ブログといえばドーハム萌え~!なのだが、辛いことがあるとドーハムを聴きたくなるのだ。諸般の事情により今月から仕事で死にたくなるほど辛い日々が続いているだけに、ドーハムは必需品なのである。辛いときにはタイム盤のドーハムが一番癒されるのだが、UA盤の本作品も癒し系なのだ。ただし、癒し効果があるのはB面だけ。だから、この作品はLPで聴くべきなのである。B面1曲目はチャップリンの"Smile"。ドーハムの微笑みに満ちたテーマ演奏にまずは癒されてみる。この曲はドーハムのために書かれたような曲に思えてくる。人懐っこいテーマだが、どこか陰影に富んでいて、人生の陰の部分がさりげなくにじみ出ている。こういう曲を吹かせたら、ドーハムの右に出るものはいまい。次の曲は"Beautiful Love"。お涙頂戴系のマイナー曲なのだが、今度はマクリーンがテーマを演奏する。マクリーンの凄いところは、お涙頂戴曲の臭みをかき消すだけのカッコよさだろう。独特の節回しで、演歌だって何だって立派なハードバップに早変わりなのだ。猫麻呂もこの曲はレパートリーとして取り上げることが多いが、実はこのマクリーンのカッコよさに憧れるからなのである。3曲目の"Prelude"はドーハムの泣きのトランペット全開の曲。曲というよりも、ドーハムの独白に近い。流石はジャズ界の藤田誠だけあって、渋いトランペットが堪能できる。こういうところで泣かせるから、ドーハムは偉大なのだ。ドーハム節で目頭が熱くなったところで、最後は"There Goes My Heart"を聴きながら、気持ちよくエンディングを迎える。うーん、よくできたB面だ・・・!猫麻呂:★★★★☆(4.5)
2008年07月13日
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こんな蒸し暑い日に、よりによってジーン・アモンズなのである。暑い中、野外でバーベキューを食べながら、半ばやけくそ気分でビールを大量摂取するのが実はマイウ~だったりする。これをジャズに応用すると、コテコテ派テナーwithオルガンなのである。しかし、コテコテ派テナーサックスは、アーネット・コブ平師匠やロックジョウ親分のように、案外ドライに吼えるタイプが多い。言わば「炎天下のスーパー・ドライ一気飲み」である。しかし、業界の「ボス」ことジーン・アモンズの鉛色の音がねっとり吼えると「炎天下のウォトカ一気飲み」のような状態になるだろう。うーん、これは危険だぁ・・・。(よい子は真似してはいけません。)さてこのCD、そんなに危険なモノかと言うと、そうでもない。どちらかと言えば「夜の音楽」だろう。6曲のうち、オルガン(ジョニー・ハモンド・スミス)の入ったセッションは4曲で、残り2曲はピアノ(マル・ウォルドロン)による渋いバラード演奏だ。オルガン4曲のうち、"Gettin' Around"と"Blue Room"はミディアムテンポを速めにした程度のマイルドなテンポだし、最大の「萌え」曲"Water Jug"もテンポを若干緩めてマッタリとやっている。一気飲みではなく、バー・カウンターでゆっくりと舐めるように味わいたいものである。オルガン4曲にはフランク・ウェエスが参加しているが、テナー・サックスを吹いているのは"Water Jug"の1曲のみ。残りはフルート演奏に徹しているが、これがまた「夜の音楽」しているのだ。本当はユゼフ・ラティ-フの怪しげなフルートが入るともっと面白くなりそうだが、とりあえずはウェスの無難なフルート(今回もいい仕事してます)で良しとしよう。「夜の音楽」としての真骨頂はやっぱりバラード。最初の2曲(これも悪くはないですよ)はウォーミング・アップとして聞き流して、勝負は"You Go To My Head"からである。マル・ウォルドロンのどんよりした音とアモンズの鉛色のサックスとの相性がバッチリなのだ。これで耳が慣れたところで、本日のメインディッシュの"Angel Eyes"となる。オルガンの音が静かに流れる中、ソウルミュージックの歌手のように出てくるアモンズ。ひとつひとつの音に感情を込めて歌い上げるように吹くのだ。さすが「ボス」はやることが違う。メインの"Angel Eyes"を聴き終わった人には、ウェスvsアモンズのテナー・バトル"Water Jug"がご褒美として与えられる。ウェスがアモンズそっくりに吹いているのが可笑しい。ここでのウェスはすっかり「ボス」の子分と化しているので、実は猫麻呂も判別に自信がないのだが、先行で出てくる(左チャンネル)がウェスだろう。でも、他の曲では右チャンネルに「ボス」がいるから、やっぱり自信がないなー。最後はバラード"It's Talk of The Town"で締めくくりとなる。バラードで締めくくる点も、この作品が「夜の音楽」を意識して作られた証拠だろう。何ともコクのあるバラードで、琴線に触れるというか、心を鷲掴みするような演奏なのである。アモンズを聴くと、楽器のテクニック、音楽のジャンル分け、ジャズで使われる音楽理論云々・・・なんて、ホントにどうでも良くなってしまう。音楽とは魂の叫び!なんですね、ボス・・・。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Gene Ammons / Angel Eyes (Prestige)
2008年07月06日
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購入した記憶のないCDを我が家で見つけた時は不思議な気分だ。最初は得した気分になるものの、所詮は自分で(無意識に)買ったCDであり、よく考えれば得なことなど何もないのである。むしろ、何をどう考えて購入したのか自分でも分からないというのが気持ち悪くなるのだ。ひょっとして、もうボケが始まったのだろうか・・・?このCDを購入した理由を推測してみると、思いつく点が2つある。ひとつはライリー・マリンズ(ムリンズ?)というトランペッターを聴いてみたかったという理由。普段は懐メロばかり聴いている猫麻呂でも、若手の元気なトランペットは、とりあえずは聴いてみようと思っているのだ。もうひとつはホレス・シルバーの珍しい曲を取り上げている点。一時期はホレス・シルバー・クインテットのメンバーだったルイス・ヘイズがこの曲を取り上げたところが面白いではないか。なるほど、これなら猫麻呂氏が無意識に買っても不思議ではない。まずは、ライリー・マリンズについての感想から。最初に聴いたときは、派手な演奏スタイルに大喜びしてしまった。とにかくハイノートでキュイーンと吹かれると「参りましたー!」な気分になってしまうのがトランペット吹きの哀しい性なのである。しかし、しばらくすると、マリンズが細かいパッセージを吹き切れていなかったり、何箇所かで音程を外していることが分かってきた。まぁ、そんな細かいことは別に気にしないし、F.ハバードみたいなもんだと思えば許容範囲だろう。それ以上に気になったのは、このCDでのマリンズには大人の色気が感じられない点だ。色気を知性と読み替えても良いだろう。リー・モーガンにしろハバードにしろ、ガムシャラかつ下品に吹いていながらもどこかクールな感覚があって、そこにオトナの音楽を感じるのである。マリンズの場合、ギラギラした音色やハイノートといった技術面での魅力は感じるものの、猫麻呂的には音楽的な共感が得られなかった。このCDだけでマリンズを論じることはできないが、少なくとも、このCDでは「ややガッカリ」だったのである。でも、マリンズの音は凄いですよ!次はホレス・シルバー関連の話だが、よく聴いてみると、このCDにはシルバーの"Further Explorations"から3曲も取り上げているではないか。"Pyramid"と"Safari"はシルバーのオリジナル曲なので理由は明白だが、スタンダードの"Ill Wind"を取り上げたところが"Further Explorations"へのオマージュとしてのこだわりなのかもしれない。シルバーの"Further Explorations"は、以前に猫麻呂ブログで書いたように、アート・ファーマー的世界をシルバーが描いた作品だと思うのだが、その"Further Explorations"をシルバー的世界として再演したのが、ルイス・ヘイズのこの作品なのではないだろうか?特に、"Pyramid"のテーマ部でのリズムセクションの動きは、オリジナルの"Further Explorations"よりも効果的で、いかにもホレス・シルバー・クインテットらしいサウンドなのである。(本家よりもそれっぽい。)ルイス・ヘイズは、本作品の後にキャノンボール・レガシーバンドでの作品"Maximum Firepower (Savant)"を世に出すことになるのだが、ホレス・シルバーやキャノンボール・アダレイのバンドを支えてきたヘイズの功績を改めて実感した。できるものならば、ヘイズが元気にドラムを叩いている姿をライブで見てみたいものだ。(今でも現役で活躍されているのかなぁ・・・?)猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Louis Hayes Quintet / The Candy Man (TCB)
2008年06月28日
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何の予備知識もなく、ジャケット・デザインとアルバム・タイトルに惹かれて買ってしまった。イタリアものは相変わらず不勉強で、ジョルジョ・アッツォリーニがどんな楽器を演奏するのか全く知らなかった程である。そんな猫麻呂でも、他のメンバー(エンリコ・ラヴァ、フランコ・ダンドレア、アルド・ロマーノ)はさすがに知っていたので、豪華な顔ぶれにかなり期待して聴いてみることとした。聴いてみるまでは、この作品がバップなのかフリーなのか、何も知らないだけに興味深々なのである。A面1曲目(LPで購入したので、このような表現をします)からいきなりフリー・ジャズが飛び出してきてニンマリ。タイトルとジャケットから期待通りの音が出てきて安心した。フリーといっても、アメリカのドロドロビギャー系やドイツの観念的なフリーではなく、かなり控えめ目で上品なフリー・ジャズ。これなら、朝一番にこの作品を聴いても家族やご近所から苦情を受けることもない。特筆すべきは、ラヴァのフリーへのアプローチだろう。音域が狭く、音の跳躍が苦手なトランペットでのフリー・ジャズ演奏は難しいはずなのだが、ラヴァのテクニックは難なくこなしている。ただし、トランペットは音色が淡白なのでフリー・ジャズとしては喰い足りなさが残るのは仕方が無いだろう。そこは、ドラムとベースの絡み合いを中心に聴き、トランペットはきっきかけ作り役程度と考えると楽しく聴くことができる。この作品、半分はフリー(特にA-1とB-1)で残り半分はモーダルな作りとなっている。A-2の"Giorvi"は美しいバラードで、1曲目のフリーの後に聴くとホッとするのである。A-3は一聴するとオーネット・コールマン風のいかしたテーマなのだが、アドリブになるとモードで演奏しているようだ。全編フリーは聴くほうも演奏者も辛いということか・・・?猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Giorgio Azzolini / Crucial Moment (Rearward)
2008年06月14日
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タイトルを見たときは「未発表音源発見か?」と喜んで直ぐにオーダーを入れたのだが、どうやら内容はXanaduの"Bebop Revisited Vol.5"にSteepleChase音源が2曲プラスされたものらしい。聴いてみると、どこかで聴き覚えのある音源だった。すっかりダマされたのだが、それでもドーハムを聴くと嬉しくなってしまうのだから困ったもんだ。ダマす阿呆に買う阿呆、同じ阿呆なら聴かなきゃ損々・・・。猫麻呂にとってのドーハムは「萌え」でもあり「燃え」でもある。ビバップは、とかくパーカーやディジー、バド、モンクなどという超弩級の天才の話が中心になってしまうけど、天才じゃない普通のバッパーがいい感じなのだ。代表格はデクスター・ゴードンとケニー・ドーハム。普段ジャズを聴くときは「このフレーズ使えそう・・」といったお勉強モードが入ってしまうのだが、ドーハムやデックスの場合はなぜか溺愛モードで音楽に浸れるのだ。ハートウォーミングなバラードもいいけど、アップテンポのバップ曲での燃え上がり方が好きだ。音楽の構成はともかく一発ガツンかましてやる・・・的なアプローチをされると、問答無用でアドレナリンが放出されてしまうのだ。このときの気持ち良さときたら・・・。さて、今回のCDの話に戻すと、バリー・ハリス&アル・ヒースとのセッション6曲とテテ・モントリウ、ペデルセン、アレックス・リールのセッションでは随分雰囲気が違う。前者はまさにバップ・セッション。40年代の放送用録音のような録音の悪さが40年代のガチャピンな雰囲気を醸し出している。バップ・チューンが多いこともあって、ドーハムも40年代のパーカー・クインテットのような暴れっぷりなのが嬉しい。"Ma, He's Makin' Eyes at Me"でマッタリするもよし、バラードのようで実はブローしまくりの"Around Midnight"で燃えるもよし、"Tin Tin Deo"でノリノリになるもよし・・・。40年代からジャズメッセンジャーズ加入直後あたりのむき出しなバッパーぶりが復活したかのような熱い演奏なのだ。これがドーハムの本質なんじゃないかな。最後の2曲は枯山水のようなドーハムが聴ける。体調があまり良くなかったのだろう。音はか弱く、音程もどことなく不安げで、今にも消えてしまいそうである。こんなドーハムを聴くと、ついつい応援したくなってしまうのだ。頑張れ!ドーハム!しかし、こんなドーハムだからこそドーハム節のメランコリーが増幅されるのだろう。聴き終わるころには、すっかり目頭が熱くなってしまうのである。ウルウル・・・。この1枚を好きになれるかどうかでドーハム好き度がチェックできる作品といえるだろう。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Kenny Dorham - Barry Harris Quintet / New York 1964 (RLR) 1. Introduction 2. Confirmation 3. Ma, He's Making Eyes at Me 4. 'Round Midnight (07:40) 5. Theme 6. Tin Tin DeoKenny Dorham(tp), Barry Harris(p), Julian Ewll(b), Albert "Tootie" Heath(ds)Recorded live in New York, August 21, 1964 7. Scandia Skies 8. Manha Da CarnavalKenny Dorham(tp), Tete Montoliu(p), Niels-Henning Orsted Pedersen(b), Alex Riel(d)Recorded live in Copenhagen, Denmark, December, 1963
2008年06月07日
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久しぶりの猫麻呂ポイント5つ星なのである。この作品、ピアノ・トリオとしても楽しめるが、一応はフリー・ジャズなのだ。スタンダードを演奏しているものの、全く手垢のついた感じがしない。それに、不思議なことに、音を聴いていると演奏している様子が何となくイメージされるのだ。しかも、底抜けに明るい演奏でもある。3人のうち、猫麻呂が知っているのはハン・ベニンクだけだった。(あぁ、情けない。)エルンスト・グレルムはバス・ジャケの作品しかしらないし、ミケル・ボルストラップは本当に初めて知ることになった。しかし、このボルストラップが何とも猫麻呂好みのピアノだったりするのだ。ジャズ以外の引き出しからいろんなおもちゃを出してきてくれる。それに、何よりもヨーロパ人ピアニストなのに明るいのが嬉しい。同じオランダ人ピアニストのカーステン・ダールにも同じ雰囲気を感じたが、明るくマニアックにやってくれるタイプが好きなのだ。オランダ系明るいジャズといえば、ハン・ベニンク大先生だろう。このオジサン、生で見たときは、頭にハチマキして、床から壁からありとあらゆるものを叩いていた。(さすがに客の頭は叩いていなかったが。)極めつけは、スティックを口にくわえて、そのスティックを叩きながら口の形で音を変えるというスゴいテクニックだ。この時は、観客からの驚きと笑いで大変なことになっていた。フリー系なのに強烈なスイング感があって、このオジサンがいるだけで場が和み、何故か音楽の深みが増してしまうのである。何とも不思議なオジサンなのだ。この作品でも、ハン・ベニンクが参加しているだけでボルストラップは相当影響を受けていることだろう。とにかく、全員が面白くなってしまうのだ。あのエリック・ドルフィーも影響を受けただろうか?猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Han Bennink - Michiel Borstlap - Ernst Glerum / 3 1. Round Midnight 2. Huub 3. Erroll 4. Take The A-Train 5. Masquelero 6. I Love You So Much It Hurts 7. Blues on the Corner 8. BBGHan Bennink(ds), Michiel Borstlap(p), Ernst Glerum(b)1-6:1997年5月1日、7:2003年5月31日、8:1997年10月17日
2008年05月31日
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アイドリース・シュリーマンにリーダー作があったこと自体、実は猫麻呂も最近まで知らなかった。「いつでも・どこでも・誰とでも」のポリシーでセッションからセッションへと渡り歩く「セッション系渡り鳥」のシュリーマンが、自らリーダーとなって、選曲にメンバー選定にギャラの配分まで考えるなんて、とても想像できないのである。シュリーマンといえば、セッションでリーダーから「ハイ、ここの2コーラスで景気良く頼んますネ」と言われて、与えられたスペースでバップフレーズをブチまけるための専門職だったはず。しかも、いつでも全力投球のハイテンションでブリブリ吹きまくるから、良くも悪くも大味で単調な感じとなる。この大味さがツボにはまった時の感じが猫麻呂は大好きだったのだが、ワン・ホーン作品となるとそうは行かない。あのテこのテで聴かせどころを作らなきゃならないし、微妙な陰影やら色気やらも出さなきゃいけない。そうだ、シュリーマンの演奏でこれまで感じなかったのは「色気」なのだ。さて、そんな「色気」とは対極にあるようなシュリーマンにワン・ホーン作品ができるのだろうか、という点が本作品の聴きどころである。毎度の話となるが、トランペットでワン・ホーンというのはとにかく大変なのだ。ブリブリ吹けばうるさいし、マッタリ吹けば退屈となる。だから、ラッパのワン・ホーンは選曲の良さで勝負するのだ。その点、この作品ではよく考えられている1曲目にアップテンポのブルースを持ってくるが、リハモされて小洒落た感じに仕上げてあるので、オープニングとしては心地よい。2曲目はデューク・ジョーダンの美しいバラードだ。でだしがストレイホーンの"Chelsea Bridge"に似た曲だが、こういった手垢のついていない曲を持ってきたところが巧い。3曲目はレコードのB面の名曲と呼びたくなるようなミディアムテンポの美味しいオリジナル曲だ。4曲目はホレス・パーランの"A Theme for Ahmad"という曲。ラテン・フレーヴァーでとにかく美しい曲だ。これもB面の名曲系だろう。本物のB面の1曲目はアルバムタイトルの"Now's The Time"となる。B面2曲目がシュリーマンの作曲したスタンダード風のバラード。ラストもシュリーマン作曲でミディアム・テンポ。絵に描いたようなB面ラスト曲だ。選曲面で言えば、B面系の渋かっこいい曲で固めたマニア好みの作りとなっている。こんな考え抜いた選曲をシュリーマンがしたとは到底思えないくらいの出来過ぎぶりなのである。しかい、よく考えると、レコーディングの選曲はプロデューサーが決めたりするわけで、シュリーマンが考えたとは限らない。そもそも、この作品を作りたかったのはシュリーマン自身ではなく、スティープルチェイスのオーナーであるニルス・ウィンターがシュリーマンンでワン・ホーン作品を作ろうと考えたのがことの発端らしい。サイドマンの選定も、たまたま欧州ツアーをしていたジョージ・コールマン・カルテットのリズムセクションをニルス・ウィンターが借り受けたもので、シュリーマンが自ら集めたものではない。そうなると、選曲もニルス・ウィンターによるものと考えたほうが自然かもしれない。やっぱりシュリーマンには選曲やメンバー集めは無理だったのかな・・・。(こうして決め付けてはいけませんね。)選曲は良いとして、演奏はどうかというと、これが普通すぎて驚いてしまう。シュリーマンにしては随分とおとなしい演奏で、猫麻呂的にはやや期待ハズレではあるが、ダスコ・ゴイコビッチが吹いているのと大差ないのだ。ということは、一般的は良くできているということになるのか・・・。一応、トランペットとフリューゲルの両方を吹き分けているらしいのだが、猫麻呂には全部トランペットに聞こえる。シュリーマンがフリューゲルを吹くような軟弱なジャズはいけない、という過激な思想を持つ猫麻呂としては、ちょっと安心だったりする。全体を通して評価すると、この作品はかなり出来が良い部類だと思う。シュリーマンの作品と知らずに聴けば、通好みの渋かっこいい作品と言っているだろう。録音も良いしサイドのシダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、ビリー・ヒギンスのサポートも素晴らしい。しかし、何かが足りないような気がするのだ。それは、50年代のシュリーマンの持っていた大胆さや勢いなのだろう。何か、型にはまってしまった感じがするのだ。どっちが良いとか悪いという話ではないが、シュリーマンは50年代の方がシュリーマンらしかったのかもしれない。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Idrees Sulieman / Now Is The Time (SteepleChase)
2008年05月25日
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今回の主役であるフィン・サヴェリーというデンマークのピアニストについては、実は何も知らなかった。何も知らないのにCDを買ってみる自分には呆れるが、一応は購入をするにそれなりの合理的(?)理由があったのだ。Fontanaのデンマーク・シリーズCD化の際に、Jazz Quintet 60やペドロ・バイカーと共に買っていたのである。こんなメチャクチャな買い方ができたのも、このCDの値段が手頃で「ついで買い」しやすかったためだろう。ジャズ評論家の某氏は安価なCDの価格設定は音楽家への敬意をないがしろにし、音楽産業の崩壊につながると主張しているが、価格設定のおかげで今まで出会うことの無かった音楽に出会うことがあることを無視してここまで言い切るのはいかがなものであろうか。少なくとも、Fontanaデンマーク・シリーズ復刻は、音源を広く安価に提供することにより、貴重な音楽資産を全世界に知らしめることに貢献したのである。音楽産業のグローバルなM&Aは音楽のアメリカナイズが全世界的に進め、ローカル&マイナーな音楽資産が消えていくのではないかという懸念があるが、ユニバーサルが行った今回のデンマーク・シリーズ復刻のような活動は企業の社会的責任の一環として是非続けて欲しい。経済合理性に基づき音楽産業が世界的に統合して行くのはやむを得ないが、それにより誕生した寡占企業には世界の音楽資産の保護を行う義務があるのだと思う。それができなければ、各国の競争政策当局と文化保護当局は何らかの規制を行うべきではないか?前置きばかりが長くなってしまったが、購入時のインフォメーション(HMV)では、この作品は1963年に録音のピアノ・トリオ作品であること、普段は自作や前衛作品の多いらしいフィン・サヴェリーには珍しいスタンダード・ナンバー集であること、ペデルセン(ベース)とアレックス・リール(ドラム)といったデンマークを代表するミュージシャンが参加していることだけが分かっていた。これだけ分かればハズレではなさそうだと推測できるから、まんざらメチャクチャな買い物というものでもないのだ。(と自己弁護する。)さて、実際に音を聴いてみた感想だが、「さすがは前衛もやるだけの人だな」という印象。お馴染みのスタンダードのはずなのに、一聴すると「この曲なんだっけ?」という感じになるから、アラ不思議!手垢まみれの節回しを避けるためにワザと曲の重心を外し、曲に浮遊感が漂う不思議な感覚だ。ペデルセンとアレックス・リールという大看板との競演にもかかわらず、徹頭徹尾フィン・サヴェリー節満開で、聴きなれたスタンダードを新鮮に聴かせてくれるのが気持ちよい。音質に定評のあるFontana録音だけあって録音は悪くないが、マスターテープが劣化していたためだろうか、一部音程に不安定な箇所があるのが残念だ。評論家某氏に喧嘩を売るわけではないが、こんな素晴らしいCDが1,500円以下で買える時代になったことを素直に喜ぶべきであると思う。フィン・サヴェリーを聴いたことがないあなた、この作品を買ってみて、気に入ったら最新作を買ってみましょうよ!猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Finn Savery / Presenting Finn Savery (Fontana) 1. But Not For Me 2. Woodyn' You 3. Queen's Fancy 4. Sweet Georgia Brown 5. Willow Weep For Me 6. Satin DollFinn Savery(p), Niels-Henning Orsted Pedersen(b), Alex Riel(ds)
2008年05月11日
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困ったときのラウズ頼みで今回のディスクは「ラウズ対クィニシェット春の大ブロー大会(?)」となった。ブログ・ネタは山のようにあるが、ブログに書きたいこと/書かねばならぬこと(なんてあるのか?)が尽きてきたのかもしれない。ちなみに、ブログに書こうとして挫折したは"Eretik / Sacha Perry Trio (Smalls Records)"と"Clarke-Boland Big Band (Atlantic)"だった。ちょっとだけ書いてみて、あまりに普通なことしか書けなくて断念した。普通なことを書くのはジャズ評論家に任せておかないとねぇ・・・。ちなみに、その次に考えたのが"Kelly Blue / Wynton Kelly (Riverside)"のB面の佳曲"Keep It Moving"だけで書いてみる・・・ということだったのだが、これは気が向いたらそのうち挑戦してみたい。さて、今回のラウズ作品だが、最初に結論を言うと「期待ハズレ」で購入後3年くらいは棚に眠っていたCDである。しかし、この作品、何故か巷では評判がいいようだ。東芝盤の日本語ライナーを書いている児山紀芳氏もやや興奮気味でライナーを書いているようだ。「テナー・バトル」なのだから、興奮するのは当たり前なのである。しかも、タイトルが"The Chase Is On"なのだ。テナー・バトル・マニアがこのタイトルから想像するのはデクスター・ゴードンvsワーデル・グレイのプロレスのような白熱のライブ・バトルなのである。グレイがテリー・ファンク、デクスター・ゴードンがスタン・ハンセン、お互いに見せ場を作った後は、恒例の場外乱闘でもつれ合う・・・。こんなテキサス風のテナー・バトルにラウズが登場するとなれば、日本ラウズ協会は黙っちゃいられない。しかも相手はレスター・ヤング風の小粋なフレーズが売りのベビー・フェイスなテナーマンではないか。ラウズ先生、あんな野郎はラリアット一発で病院送りにしてやってくださいな・・・。てな訳で、ビール(もしくはバーボン)を片手にリングサイドから観戦するような気分でCDをかけてみたのである。1曲目の"The Chase Is On"のテーマは期待通りだ。最初に出てきたのは青コーナー(右チャンネル)のラウズ。しかし、何故か音に元気がない。赤コーナー(左チャンネル)のクィニシェットとピアノのソロに続いて場外乱闘(4バース)だが、これがあっけなく両者リングアウトで終了してしまい、消化不良の観客からはブーイングや「延長!」のコールが上がる。2曲目"When The Blues Come On"は演歌みたいな腑抜けた曲で、ラウズとクィニシェットが仲良くコーラスを分け合っているではないか。しかも、いつの間にか、赤コーナーと青コーナーが入れ替わっているぞ!(そんなことはどうでもいいのだが・・・。)3曲目以降も何となくテナー2人が仲良しムードでじゃれ合っているではないか。こっ、これはアル&ズートなのか-っ!!こうして、この作品は猫麻呂の期待を大きく裏切ることになったのだが、この作品の特徴について、もう一度おさらい&補足をすると、以下のようになる。 -激しいテナーバトル作品ではない -曲目もアップテンポやブルースは少ない -アル&ズートが好きな人には十分楽しめる -録音は良くない(特にラウズの音がショボい)以上、悪い作品とは言わないまでも、ラウズファンにはウケの良くない作品なのである。猫麻呂ポイント:★★★☆(3.5)Charlie Rouse & Paul Quinichette / The Chase Is On (Bethlehem)
2008年05月05日
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コンテ・カンドリの作品にはアタリとハズレがある。この人、楽器はめちゃくちゃ巧いのだが、やっつけ仕事風になってしまったり、楽器のテクニックだけが目立ったりして、歌心がおざなりになるときがある。(特に兄ピートと競演した作品に多い。)しかし、この作品は、大アタリだった。大アタリの勝因はピアノのルー・レヴィにあるのではないか、と思っている。ルー・レヴィは猫麻呂の大好きなピアニストだということもあるが、この人が参加しただけで場が華やぐのだ。軽さとしなやかさを兼ね備えたピアニストというのはなかなかいない。プレヴィンやピート・ジョリーでは軽さが勝ってしまう。うーん、メルローとカベルネ・ソーヴィニョンのバランスが難しいボルドーのワインのようなものか・・・。そんなわけで、ルー・レヴィが参加したことで、華やいだ雰囲気の中でもしっとりとオトナのジャズを聴かせるというか、コンテをして吹かせしむ、ということになったのだろう。こうなったらベースも褒めねばならない。ルロイ・ヴィネガーの図太くてストレートなベースがカンドリのトランペットに似合うのだ。カンドリはアイドリース・シュリーマンやトミー・タレンタインと同様に、大雑把で大胆な吹き方が魅力である。こんなところが日本での人気がイマイチな理由かもしれないが、ツボにはまった時の気持ちよさがあるのだ。クリフォード・ブラウンのような細かいニュアンスを表現する人にはできない味わいなのである。そんな突撃ラッパと共に進軍してくれるのが、ルロイ・ヴィネガーの重戦車部隊というわけだ。この突撃隊のモノクロームな世界にルー・レヴィが複雑な色合いをつける、というのが、この作品の面白いところ。突撃ラッパのカンドリもバラードとして"Flamingo"を演奏している。ここでもやっぱり突撃ラッパ気質は変わらないが、何せ楽器の扱いがメチャうまな人だけに、テクニックを駆使した演奏で勝負する。ここはひとつ名人劇場を堪能する時間だと思って腹を据えて聞いて見ると、これがまた楽しいのである。ハイノートあり、ハーフバルブあり、「コンテ・カンドリここにあり」と感じさせるパフォーマンスである。そういえば、この作品にはビル・ホルマンのテナーが参加していたのだが、全く影が薄く、すっかり忘れていたことも記しておこう。これも、この作品の特徴だと思うから・・・。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.0)Conte Candoli /West Coast Wailers (Atlantic)
2008年04月26日
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色男チェット・ベイカーにはイタリアがよく似合う。イタリアの国旗を背景にチェットの横顔を配したジャケット・デザインは映画のポスターのようでもある。どことなく物憂げで甘そうな雰囲気のジャケットだが、内容はそんな予想とは裏腹にブリブリのハードバップだったりするのが面白い。この作品の最大の魅力は、チェットが図に乗っているところだ。大好きなおクスリが手に入ってゴキゲンだったのか、アメリカから来たスーパー・スターとしてチヤホヤされていい気になったのか、チェットの演奏はいつになくアグレッシブに聞こえる。そりゃーそうでしょう。日本に初めてジャズ・メッセンジャーズが来たときにJMご一行様がそれまで経験したことのない歓待を受けた話を考えれば、同じようなオイシイ状況をイタリアでのチェットも満喫したに違いない。更に、レコーディングに参加しているメンバーはチェット以外はイタリア人であり、本場アメリカからやって来たチェットにとっては横綱相撲のように感じても不思議ではない。この作品でのチェットは、マイルス・デイビスとコンテ・カンドリを足して2で割ったような絶好調ぶりで迫力満点。この人がこんなに楽器が上手だったとは知らなかった。それに比べて、リズム隊には厚みがないし、サックス陣(ジャンニ・バッソも参加している)は巧いんだけどイマイチ冴えがない。これが1959年当時のアメリカ・ジャズ界とその他地域との実力差と言えばそれまでだが、チェットの絶好調ぶりも他に例がない程だろう。やっぱり大好きなおクスリが効いたんでしょうか・・・。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)
2008年04月19日
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この作品、ハービー・ニコルスとセロニアス・モンクの曲を取り上げたというだけで猫麻呂的には評価が高い。モンク作品集ならまだしも、ハービー・ニコルス作品集ともなると、何やらただならぬ雰囲気が漂ってくるものである。ハービー・ニコルス作品で、CDのセールが伸びたとかコンサートが満員御礼となった・・・という話はあるはずがない。言ってみれば、現代音楽(通称"ゲソオソ")のCDやコンサートのようなもので、「一部のマニアのための音楽」と揶揄される悲惨な結果となるものだ。しかし、演奏者としては、そんな「一部のマニア」のためにやっているのではく、「やらねばならならぬ」という大義名分があったに違いない。猫麻呂的に言えば「ジャズの神様の思し召し」となるのだが・・・。マイク・メリロというピアニストについては、実はあまり知らない。フィル・ウッズがヨーロピアン・リズム・マシーンとの過激演奏を卒業した後にヌルいスタンダードに復帰した際のピアニストというイメージが強く、痒いところに手が届く「手堅い」ピアニストというイメージしかなかった。そんなメリロがなぜモンク&ニコルス作品集というキワモノに挑戦しているのかが、この作品を聴くまでは分からなかった。この作品を聴いてみた印象は、「こんなに普通っぽくていいのかな?」だった。"Bopsentric"というタイトルから想像されるエキセントリックさはどこにもない。ちょっとテイスティーな曲を取り上げたピアノ・トリオ作品として、ジャズ喫茶でも安心して聴けるような作品なのである。期待していた「一部マニア」の猫麻呂としては、いきなり梯子を外されたような気分だ。メリロとしては、モンクとニコルスというエキセントリックでとっつきにくい「アングラ・ミュージシャン」を取り上げることで、ジャズ文化の継承に一役買おうという意図があったのだろう。ただし、モンクやニコルスのような「たどたどしい」演奏方法ではなく、自分のスタイルで弾きこなしてみようという試みだったのではないか、と推測する。このような趣旨はご立派であり、バド・パウエルやタッド・ダメロンをこのように取り上げるのであれば大変結構なことである。しかし、モンクとニコルスは、曲を取り上げるだけではなく、「毒」と「諧謔」という要素も前面に出して欲しかった。これも「一部マニア」の声なのだろうが・・・。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Mike Mellilo / Bopcentric (RED)
2008年04月13日
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まずはジャケットをご覧あれ。マッハGoGoGo!に出てきそうなレーシングカーに乗ったゴキゲンなおじさんが、主役のピー・ウィー・ラッセルである。このおじさん、アル中(アルコール依存症)だったはずなので、普段はクルマに乗ってはいけない人じゃないか・・・と思うのだが、1960年代当時では今のようにうるさく言われることもなかっただろう。とにかく、このジャケット写真があまりにもカッコ良かったというのが、購入の最大の理由。ピー・ウィー・ラッセル(以下、PW)は、一応ディキシーランド・ジャズ(細かく言えば「シカゴジャズ」)の重鎮としてそれなりの評価を受けているクラリネット奏者だが、「小鳥のさえずり」のような変な吹き方をするために、ディキシーでは異端扱いされている感がある。しかし、異端が実はジャズの正しい姿なのかもしれない。有名な"The Sound of Jazz"という映像は、そんな異端者が山のように登場する"万国びっくりショー"のようなセッションだが、ここでの演奏は異端ではなく正にジャズそのものだったりするのだ。ヘンリー・レッド・アレンというトランペッターがまさにPWと同じような強烈な異端者だろう。コールマン・ホーキンスは保守本流のはずだったが、50年代以降はある意味で異端だったのかもしれない。エリントン楽団から独立して以来不遇の身となったレックス・スチュアートも、エリントン楽団参加以前はルイ・アームストロング直系の正統派だったが、エリントン時代にすっかりヘンな人になっている。こういう人達の中でもPWの個性がひときわ目立つほど、PWというのはヘンなオッサンなのである。(ジミー・ジュフリーとのセッションが最大の原因かもしれない。)PWは、ディキシーからフリージャズの世界に進んでいったと言われているが、吹いているフレーズが基本的に両者とも同じというのが凄いと思う。ディキシーからフリージャズへの転進といえばスティーブ・レイシーやラズウェル・ラッドが有名だが、彼らのディキシー演奏はどうなるのだろうか?恐らくは、全く異なるアプローチとならざるを得ない。スタイルの異なる音楽を同じスタンスで演奏できることが偉いということでもないだろうが、ディキシーとフリーを同じフィールドで捉えることができたPWの個性は賞賛に値する。うがった見方をすれば、単に「天然」だっただけとも言えるのだが・・・。前置きばかりが長くなってしまったが、PW作品も愛情を持って聴かないとその面白さが見えてこないのだ。PWについて何も知らない状態で本作品を聴いて感動することなどありえない、と猫麻呂は思っている。セロニアス・モンクと共演したニューポート・ジャズ・フェスティバルの録音は、予備知識なしでも十分に楽しめるが、所詮はモンク・カルテットの作った音楽の一部として機能しているに過ぎない。しかし、本作品ではマーシャル・ブラウンとのピアノレス2管編成で新たなサウンドを作ろうとしていることが分かる。コルトレーンの"Red Planet"やタッド・ダメロンの"Good Bait"を取り上げて、今までになかった世界を創造しようとした意欲的作品とも言える。しかし、天然のPWはここでも「いつものPW」でしかない。マーシャル・ブラウンのアレンジだけが新しく、ソロになれば見慣れた光景というのが、本作品の限界なのだろう。それでも、PWがレパートリーを増やしているということだけでも感激できる人には嬉しい作品と言える。万人におすすめできる作品とは言いがたいが、演奏内容は嫌みのない素直なものなので、ピアノレス・カルテット・コレクションの1枚として持っていても悪くはないだろう。(ただし、感動はないと思う。)猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Pee Wee Russell Quartet / New Groove (Columbia)
2008年04月05日
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ティム・アマコストのCDを初めて買ってみた。トム・ハレルが参加しているものはとりあえず買ってみるのだ。"アマコスト"というと、どうしても父親のマイケル・アマコスト元駐日大使のイメージがいまだに強いのだが(もちろん外交官としてのイメージですよ)、このCDを聴いてようやく"アマコスト"とジャズが結びつくようになった。ネットで調べてみると、ティムは頻繁に来日し、各地でセッションしているらしい。ひょっとすると日本語も読み書きできるかもしれないので、このブログでもヘタなことは書けないなー(と言いつつも、あまり気にしていない)。ティムのCDはこの1枚しか聴いていないので正直まだよく分かっていないが、「この人はホントにジャズが好きなんだろうなー」という感じがして、猫麻呂的には好感度高い。圧倒的な迫力やテクニックで聴かせるタイプではなく、さりげなくジャズっぽいのが良いのだ。こういう人の演奏はライブでかぶりつき席で聴きたい。演奏者のハートが伝わるからだ。ティムについての感想はこんなところ。このCDで一番燃えたのが、オーネット・コールマンの"Invisible"だった。イマイチのれないトム・ハレルを除くと、全員が観客と一体となってノリまくっている。オーネットの曲がこんなに楽しいものだったとは・・・。"Invisible"で盛り上がったあとは、渋い"Whistling Away The Dark"が始まる。マンシーニの書いたテーマがずーっと頭から離れなくなるようだ。(ウチの子どもが鼻歌で歌っていましたよ。)しっとり&淡々と歌うティムに続いて抑制しつつも熱くなるトム・ハレルのミュート・プレイが最大の聴きどころだろう。この作品でのティムのサイドマンがいい仕事をしている。ただし、猫麻呂のお目当てだったトム・ハレルは全体的に不調気味。リズムセクションとの相性が良くなかったのかも・・・。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Tim Armacost / Live at Smalls (Double-Time Records)
2008年03月29日
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出会いは突然やってくる。しかも勘違いという偶然の結果だったりする。これもジャズの神様の思し召しなのであろう。別人の作品と勘違いして、ブルース・バースの作品を2枚も買ってしまったのである。帰宅する前には勘違いに気が付き、気分が真っ暗になったのだが、所詮は中古のエサ箱から拾ってきたCDと諦めて聴いてみたのである。すると、あらビックリ・・・。恥ずかしながら、猫麻呂はブルース・バースというピアニストについては一切何も知らなかった。ネットで調べてみると、バークリー音楽院で教えていたとか、ジョージ・ラッセルやジャッキ・バイアードに師事したとか、結構すごい人らしいことが判った。こういう音を作る人らしいな、と思った。つまり、ブルース・バースとはジャズピアニスト&作曲・アレンジャーという保守本流の人なのだ。スタンダードよりもオリジナル志向だし、ピアノトリオよりもホーン入りの編成で音を作る人・・・現代のソニー・クラークかハービー・ハンコックという感じだろうか。ナット・アダレー、テレンス・ブランチャード、テレル・スタッフォードというトランペッターとの共演が多いという点も、ブルース・バースの音楽性の特徴かもしれない。ただし、オリジナルだけで全曲通しているのではなく、スタンダードやウェイン・ショーターの曲もバランス良く混ぜている。まず驚かされるのが1曲目の"I Hear Music"だ。手垢のついたスタンダードに現代風のアレンジを加えて「タダものではないぞ!」という雰囲気が伝わってくる。この作品、ブルース・バースにとっては初リーダー作なのだ。その一曲目にこの曲を持ってきたということは、自分の存在を単なるピアニストとして売り出そうとしていないことを表しているのではないだろうか。エリントンの"I Got It Bad"はリハーモナイズで原曲をいじくりまわすという芸当を見せる。よりによってエリントンの曲というのも何か意味あり気だ。ショーターの曲は"Pinocchio"と"Wildflower"。前者ではピアノ・トリオでの演奏というのが面白い。また、これら2曲の間に置かれた"Louise"と""Persistence"が、どことなく同じような雰囲気というか、ショーターがふと現れそうな感じがするのが不思議である。そんなことを考えて作ったかどうかは知らないが・・・。勘違いが原因で面白いCDと出会うとは・・・。ジャズの神様に感謝。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Bruce Barth / In Focus (enja)
2008年03月22日
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この作品を国内盤10インチLPでゲットした。"Free Jazz"というタイトルにもひかれたが、1967年のルーマニア録音というのが何とも魅力的なのだ。1967年のルーマニアといえば、チャウセスクが大統領に就任した年でもあるらしい。東欧にありながらソ連とは一線を画し西欧とのパイプを重視したチャウセスク大統領の政策の一環で、このようなジャズ作品がルーマニアで作成されたかどうか知らないが、何だか意味あり気ではある。それに、この貧乏臭いジャケットデザインが泣かせるではありませんか。オリジナル盤はペラジャケだったそうだが、貧相なデザインが東欧っぽくて、何かを感じてしまうのだ。そう、このレコードは聴く前から十分おいしいのである。恥ずかしながら、猫麻呂にとってはこれがマヌサルディ作品初購入だったりする。初対面でいきなりこのLPというのは随分と劇的な出会いではあるが、これもジャズの神様の思し召しなのだろう。マヌサルディがフリージャズ?という気もしたが、珍盤奇盤の類もまた一興。10インチ盤は、音はイマイチだが、盤やジャケットを眺めているだけで嬉しくなってしまうものだが、"Free Jazz"のタイトルに期待し、久々にワクワクしながらレコードに針を落としてみた。さて、出てきた音はどんなものかというと、1曲目の出だしは「キターッ!」という感じなのだが、ソロに入ると「ただのモードじゃん・・・」というもの。他の曲も含めてフリージャズっぽいのはA面1曲目のテーマ部とB面1曲目(結構いい感じのフリージャズですよ)くらいなものか。確かにマヌサルディのピアノにもフリーっぽいアプローチが出て来るものの、フリージャズを期待して聴くと肩透かしを食らうのである。エバンス派のピアニストがフリーな味付けもできますよ、という感じなのだろうか。その割には、すべてが嫌味なく自然に聴こえるのがマヌサルディの凄いところなのかもしれない。この作品、フリーもスパイスのひとつとして使われているが、基本は1960年代のジャズシーンを反映したものと言えるだろう。ある時はモード、ある時はフリーっぽく、ある時はジャズワルツで華麗に、ある時はバラードをしっとりと・・・という、非常に栄養バランスの取れた作品なのである。(しかもカロリー低めなのがジャズ・メタボにはありがたいかも?)だから、「どうしてもこの作品じゃなきゃダメ」という要素は作品の音源の中にはないのかもしれない。それでも「持っていることが嬉しい」作品であるのは、10インチLPのジャケットに負うところが大きいのだ。CDだったら、こんなには興奮しなかったのではないかな?猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Guido Mamusardi / Free Jazz (Electrecord) 1.SUITA NO.1 2.TIME IN BUCHAREST 3.BLUES FOR AGO 4.VALERIANA 5.BLUES FOR VALLYGUIDO MANUSARDI(p), JOHNNY RADUCANU(b), VASILE GANEA(ds)DAN MINDRILA(ts), NICOLAE FARCAS(tb)
2008年03月08日
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イリノイ・ジャケー!(思わず叫んでみました)と言えば、元祖コテコテ・テナーであり、サックスに「吼える」という機能があることを大衆に知らしめた偉大なる男である。また、JATPを下品なブロー大会に落としいれた下手人1号としても悪名が高く、ジャケーと言えばブローというイメージもある。この作品のジャケ写真だって「これでもか!」とばかりのブローによる波状攻撃なのである。(猫麻呂はジャケ写真にひかれて買ってしまったのだが・・・。)イリノイ・ジャケーは、名前からイリノイ州か広島県出身と思われがちだが(そんな人はいない?)、テキサス州ヒューストンの生まれ。だから、本場モノの「テキサス・テナー」なのだが、実は折り目正しい正統派スイング派テナーマンでもある。下品なブローを期待して買ったのだが、この作品は「ホンカー」ものではなく正統派スイングジャズ作品としてじっくり聴き込むべき作品だったのだ。この作品を有名にしているのは2曲目の"Harlem Nocturne"だろう。スケベ度No.1の曲なのだが、ジャケーの演奏は意外なことに端正そのもの。変なスケベ心は一切なく、心を込めてメロディーを歌い上げている。実はジャケーはジェントルマンだったのだ。ベン・ウェブスターは、いい意味でエロさを目指していたと思うが、コールマン・ホーキンスにはエロさはなく、常に音楽に対して直球勝負だった。そんなホーキンスの潔さが猫麻呂は好きなのだが、この作品のジャケーにホーキンス流の潔さを感じるのだ。レスターのように粋を求めるでもなく、ベン・ウェブスターのように甘さを求めるでもなく、観客を意識してブローで盛り上げる必要もなく、ただひたすら「ジャズの神様の思し召しのままに」スイングするジャケーの姿がそこにある。うーん、今までジャケーに対して抱いていたイメージとは随分違うなぁ。ジャケーのジェントルマンぶりは、ミディアムテンポの曲に強く現れている。"Can't We Be Friends"や"Have You Met Miss Jones"での節回しは、飾りの少ないフレーズだが素直にスイングしている。これがジャケーのスインガーとしての真の実力なのだろう。これほどまでにジャケーをありがたがって聴きてしまっていいのだろうか・・・。(ちょっと褒めすぎかも。)この作品、ジャケーは比較的オトナ風の演奏を聴かせるが、その代わりにロイ・エルドリッジが炸裂している。さすがに30年代の火の玉プレーとはいかないが、当時を彷彿とさせるようなお得意フレーズてんこ盛りで頑張っているのだ。そんなロイをジョー・ジョーンズがうれしそうに煽り立てているのも微笑ましい。猫麻呂は国内盤の紙ジャケで購入したが、最近はLONEHILLがこのCDを再発しているらしい。LONEHILL盤はワイルド・ビル・デイヴィスとのセッションがカップリングされているらしい。(ちょっと気になっている。)猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Illnois Jaquet / Swing's The Thing (Verve)
2008年02月23日
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ハリー・スイーツ・エディソンもライブで見たかったトランペッターのひとりだった。燻し銀のバック・クレイトン vs 華やかなスイーツというオールド・ベイシーの時代から、スイーツは「粋」で「華やか」な演奏が最大の魅力だ。しかし、スイーツのような演奏はマネしようにも簡単ではない。音を採譜しても、シンプルなフレーズが並んでいるだけなのだ。この個性を真似るには、自分がスイーツになりきるしかない。かつて、猫麻呂はそんなスイーツが好きではなかった。若気の至りでお恥ずかしい限りだが、当時はコピーを前提に「音符」を追っていたため、シンプル過ぎるスイーツのフレーズは研究の対象外だったのだ。それが、ある日突然スイーツに目覚めた。きっかけは、ノーマン・グランツのジャムセッションの映像を集めた"Norman Granz Presents Improvisation"というDVD(当時はLDで高かったなー)だった。レスター・ヤングのセッションに飛び入りするスイーツの立ち姿のカッコイイこと。そして、あの艶っぽい音色にすっかり参ってしまったのである。スイーツのオープン・ホーンの音は、ジャズ・トランペットの歴史に残るカッコイイ音だと思う。おかげで、猫麻呂もスイーツの愛機セルマーの同じモデルを中古で買ってしまった。脱線ついでに楽器の話をひとつ。セルマーといえばサックスが有名だが、オールド・ジャズ界ではセルマーのトランペットは一大ブランドなのである。あのルイ・アームストロングやハリー・ジェームズもセルマーを使っていた。当時のセルマーのトランペットの音色の特長は色気と明るさと粘り気。ルイやハリー・ジェームズの音はその典型だと思うが、かなりエロい音が出る。そんなセルマーのトランペットの中で、エロ&ダークな音が出るのが"K-MODIFIED"というモデルだ。この楽器は中音域の音の深さでメロディーを歌い上げるのに適している。ただし、音色は演歌風のドスの効いたものなので、クールでモダンな演奏には向かない。つまり、スイング派御用達の楽器なのである。そして、"K-MODIFIED"使いの代表がスイーツなのだ。晩年のスイーツをテレビ番組で見たが、やっぱり"K-MODIFIED"を使っていた。ボロボロの楽器でベルがお辞儀をするような状態だったが、それでもこの楽器にこだわり続けたのはよく分かる。トム・ハレルがコーンのコンステレーションにこだわっている(最近は楽器を変えたんでしたっけ?)のと同じだ。話をスイーツに戻すと、スイーツの個性は音色(50%)、雰囲気(40%)、間の取り方(10%)だと猫麻呂は分析する。音色については"K-MODIFIED"を吹けば貴方も今日からスイーツ気分(気分だけね)だが、このオシャレ感はなかなか真似できるものではない。決してド根性で吹いてはいけないし、マイルスのような斜に構えてもいけない。常に飄々かつ堂々と(なんか矛盾してるような?)吹くのは難しい。この世界、ジャズというよりも古典落語に近いのかもしれない・・・と思って聴くと、格別の味わいなのだ。そろそろ今日の作品の話に入ろう。この作品、これまでCD化されなかったが、ようやくCD化されたようである。(猫麻呂は吉祥寺ウニヨンで目撃しましたが、他店ではあまり見かけませんね。)しかも、同じルーレットでの1958年のセッションをカップリングした徳用盤。ただし、猫麻呂は随分と昔に買ったLPで聴いているのでCDは購入していない。この作品を購入したきっかけは、サイドで参加しているジミー・フォレストが目当てだった(当時はスイーツは好きではなかったから)が、フォレストのソロが1曲もないので相当がっかりした記憶がある。だから、フォレスト目当ての人は要注意。トミー・フラナガンとエルビン・ジョーンズが参加しているが、この2人も個性が活かし切れていない感がある。つまり、スイーツだけにスポットライトが当たった作品であり、スイーツだけを楽しむ作品としては良いが、それ以外の目的には適さないというのが留意点である。なお、この作品のジャケ写真には分解されたトランペットが写っているが、これが何と本物の"K-MODIFIED"である。スイーツ本人の楽器かどうかは不明であるが、ジャケット写真を眺めながらスイーツの音色を聴けば、スイーツの音が一層楽しめるだろう。願わくば、ミュートを多用しないでオープンで吹いて欲しかったなー。猫麻呂ポイント:★★★☆(3.5)Patented by Edison (Roulette) 1. WITCHCRAFT 2. BLUE SKIES 3. CONFESSIN' THAT I LOVE YOU 4. MISBEHAVIN' 5. CANDIED SWEETS 6. THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME 7. TEA FOR TWO 8. THERE IS NO GREATER LOVE 9. TWENTY-FORTY 10. IT'S EASY TO REMEMBER 11. SWEETCAKES 12. ANGEL EYESHARRY EDISON(tp), JIMMY FORREST(ts), TOMMY FLANAGAN(p), TOMMY POTTER(b), ELVIN JONES(ds)Feb 12, 1960
2008年02月16日
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こんなに気持ち良く聴けるピアノ・トリオは久しぶりだ。ピアノの鳴りっぷりが凄い。猫麻呂はこれまでロシアものは避けて来たが、これがロシアン・ピアニズムなのだろうか?とにかく、ピアノの音が明るく突き抜けた感じがする。音には好みがあるので、レイ・ブライアントやマル・ウォルドロンのような個性的な音の方がジャズっぽくていいや、と思う反面、やっぱり楽器の上手い人は違うなァ、とも思う。概して猫麻呂ブログでは楽器の上手い人は褒める対象になりにくいのだが、今回は素直に認めてしまった。久々の★★★★★で大盤振る舞いなのだ!何が凄いかって、演奏が熱いのだ。ピアノが超上手いのに、透明感よりも熱気を感じさせるというのが素晴らしい。少なくとも、キース・ジャレットのスタンダーズよりも熱い(例えが悪いって?)と思う。これでバップ臭さをほのめかすようであれば、これからずっと追いかけていく「永代供養」決定であるが、残念ながらそうではない。それに、この人が今後もジャズをやっているとは思えない。猫麻呂がこう言っても説得力ないかもしれないが、「別にジャズじゃなくてもいいんじゃない」と思う。うーん、何だか遠慮がちな書き方になっちゃったなー。率直に言いましょう。この人のやっている音楽は本質的にはジャズではありません・・・と言うと語弊があるので言わないが(でも言っている)、いわゆるジャズとは違うと思う。でも素晴らしい。こんな話を書いていると、「ジャズの定義は何だ?」という不毛な議論になりかねないので、あまり深入りしたくないのだが、ジャズがジャズであるための一番重要な「臭み」がないのだと思う。しかし、矛盾するようだが、この作品は立派な「ジャズ作品」なのだ。Misha Piatigorskyの他の作品を聴いた事が無いのでよく分からないが、勝手な想像をすれば、Misha Piatigorskyとは共演する相手次第でどんな風にでもバケられる天才肌のミュージシャンで、今回はベースと特にドラムのEric Harlandの熱く激しい演奏により立派な熱血ジャズ作品となったのではないだろうか・・・。よく知らない人のCDをディスクレヴューだけを頼りに購入すると、概してトホホな気分になるのだが、たまには今回のような大当たりもあるという例である。しかしこのCD、Mishaの自主制作盤なのか、プレス枚数が異常に少ないようである。だから、こんな楽しいディスクなのに知っている人が少ないという「むふふ」なところがマニア心をくすぐるのだが、こういう作品こそ大手が自信持って売り出して欲しい。ジャズファンじゃない人の方が、案外素直に楽しめるかもしれないし・・・。猫麻呂ポイント:★★★★★(5.0)Misha Piatigorsky / Pure Imagination (MishaMusic)
2008年02月09日
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「ヨーロピアンなピアノ・トリオ」というのは、どうも好きになれない。ヨーロッパ的なものが嫌いなのではなくて、「美しい音楽」が苦手なのかもしれない。もしくは、ジャズに「ほろ苦さ」や「エグさ」のようなものを求めているのかも・・・。だから、そんな猫麻呂がこの作品を聴いた第一印象は「オーディオ的には悪くないけど・・・」というものだった。それが、繰り返し聴いているうちに、だんだん美味しさが解ってきたような気がする。最初は耳がベースに行ってしまい、ベースとピアノのインタープレイとして聴いてしまったのがイケなかったようだ。ドラムがピアノにどうけしかけ、ピアノがどう反応するか・・・という聴き方をすると、これが面白い。特に素晴らしいのがタイトル曲の"Whirlpool"。エキセントリックさはないが、やっていること自体はフリー・ジャズとあまり変わらないのかもしれない。こんなあたりが、さすがジョン・テイラーなのだと思う。とは言え、大半は美しい曲と名人芸の調和の世界で聴かせるヨーロピアンなピアノ・トリオだ。猫麻呂には副作用としての「眠気」が強くでているが、そこは録音の良さによるオーディオ的な楽しさがカバーしてくれる。ベースがズズーっと前に出てくるのが気持ち良い。それに、いい曲が入っているのだ。4曲目のKenny Wheelerの曲"Nicolette"は、どこかで聴いたようないい感じの曲だが、どうやら猫麻呂の聴いたことのあるディスクには入っていないらしい。とにかく、一度聴いたら耳に残る良い曲だと思う。それからもう1曲、おなじみのガーシュインの"I Love You Porgy"が唐突に出てくるのが嬉しいビックリ箱となっている。スタンダードが並んでいるCDの中でこの曲が出てきても何も驚かないが、この作品では唯一のスタンダードとして"隠し球"のように効果的に出てくるのだ。しかも、テイラーの抽象的なオリジナル曲の後にさりげなく置いてある演出が憎い!この作品、巷での評判の良さに相当期待して聴いたのだが、猫麻呂はそれ程は楽しめなかった。それでも、ヨーロピアン風に見えて実は骨太なジャズ作品だというのはよく分かった。しかし、やっぱりどこかモノ足りないというか、おあずけを食らったような感じが猫麻呂にはするんですなー。次作では、全編骨太でゴリゴリな作品を期待したいと思うのは、猫麻呂だけだろうか?(そうだろうな。)猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)John Taylor / Whirlpool (CAM)
2008年02月02日
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