書評日記  パペッティア通信

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Apr 28, 2005
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カテゴリ: 歴史



不可触民解放のために戦った、熱い魂と氷の頭脳の持ち主、
ビームラーオ・ラムジー・アンベードカル。
南インドの不可触民。1891年生まれ。1956年死去。

内容を簡単に紹介しましょう。

「不浄をもたらすもの」として抑圧されてきた不可触民。
ヴェーダ聖典を聴くことすら、シュードラや不可触民にはゆるされてはいない。アンベードガルは、父や開明的な藩王国君主の知遇をうける幸運もあって、コロンビア・ロンドン大学などで学び、経済学博士、上級法廷弁護士をおさめ、歴史学、社会学などに通暁しています。しかし、かれの部下や使用人ですら、彼を人並みに扱おうとしないのです。

かの有名な、インド国民会議派でさえ、正統派ヒンズーを刺激する政策をとろうとはしません。回教徒、キリスト教徒は水を与えられるのに、不可触民は同胞のはずのヒンズー教徒から水さえもらえない。ガンジーでさえ、「不可触民を第五のカーストに」(四姓制度)しただけで、カーストを廃止しようとしない。

インドを破滅させたのは、

イギリスも、ヒンズー多数派も、信じてはならない!!
不可触民に別の国を!!

水の使用をもとめ、寺院の開放をもとめ、公共道路の解放をもとめ、アンベードガルと不可触民運動団体は、サチャーグラハ(非暴力不服従)を全インドでおこないます。集団改宗の脅しをヒンズー多数派にちらつかせながら。国民会議派の独立運動には背をむけて、不可触民解放、カーストの廃止に奔走。彼は、政治権力獲得の必要性を強調しつつも、不可触民の向上こそ真の解放になる、と信じていました。イギリスには、不可触民の分離選挙さえもとめます。しかし、かのガンジーは、回教徒との妥協をかさねインド分裂さえ促進しながら、不可触民のもとめを拒否し続けました。あまつさえ、ガンジーは、不可触民のもとめをこばみ、断食という脅しをかけるのです。国民会議派の圧倒的強さをまえに、後退する不可触民の運動。選挙で敗北をつづける不可触民。アンベードカルは、その見識を買われ、戦時中、労働大臣になります。近世以降、不可触民が執政者となったのは、これがはじめてでした。第二次大戦のインドの参戦に対し、かれは反英運動をおこなった国民会議派を批判します。

労働者の敵は、ブラーミ二ズムとキャピタリズムだとして、インド共産党も国民会議派も批判し、「新生インド」をとなえたアンベードカル。そんな中でガンジーは、1947年4月29日、制憲議会の「不可触民廃止宣言」の功績までよこどりしてしまうのでした。

しかし、「新生インド」は、アンベードガルの識見を必要としていました。新生インドの初代法務大臣。憲法起草者として「現代のマヌ」になった、不可触民アンベードガル。各自の宗教的信条を国の利害に優越させようとするコミュナルから、この国を守らなければならない。憲法の起草の後、理性・慈悲・平等があることを理由に仏教に帰依。『ブッダとそのダンマ』を執筆。1956年10月14日、30万人の聴衆とともに集団改宗。タゴールが待ち望んだ、インド仏教の復活。その直後、12月逝去。

あまりにも壮絶、かつ超人的な仕事とその生き様には、まことに感嘆を禁じえません。平等をもとめるいとおしいまでの熱い戦い。しかも、不可触民の差別的境遇は、いまだにおわっていないのです。そのため、現在では1億人もの仏教徒がインドにいるといわれます。一般的に、植民地時期のインドは、「ガンジー、キング、池田大作(笑)」にみられるように、ガンジーやネール、それにパール判事(笑)ぐらいしか、日本人にはしられていません。むしろ、ガンジーについて流布されている、聖者などの礼賛イメージを解毒する最良のテキスト、といえるかもしれません。

難点をいえば、あまりにもアンベードガルの概論になりすぎていて、アンベードガルを内在的に描ききれたとはいえない感じがします。書簡とか、日記とかを使いながら話をすすめれば、迫真さが増したかもしれません。その点について物足りなさを感じてしまいます。また、インドの基礎知識を欠いた人間にとっては、理解しづらい部分も多い。たとえば、インドの略地図がないこと。物足りなさと理解しづらさが、同居しています。これは、伝記の翻訳、という作業に残りがちな欠点といえるかもしれませんが。

とはいえ、近現代インド社会を理解するために、
格好の書になっていることに、疑い余地はありません。
ぜひ、ご一読ください。

評価 ★★★☆


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Last updated  Jan 21, 2006 05:49:23 PM
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