文豪のつぶやき

2014.06.22
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カテゴリ: 新撰組
下駄君について引き続き書く。
下駄君は女に弱い。
下駄君は酒が好きなのに、
「俺は酒が嫌いだ」
「酒は呑みたくない」
と言いながら毎晩呑む。
その彼がいくつか行く店がある。
そのうちの一軒のスナックは怪しげだ。
ぼったくるのである。

ある日、閑散としてだれもいないそのスナックで呑んでいた。
スナックにはマスターとその愛人らしい若い女の子。
いつものようにウーロン杯を作ってもらって半分呑んだところで気を失った。
そんな少ない酒の量で酔う下駄君ではない。
うすれゆく記憶の中でマスターと女の子が下駄君のポケットから財布を抜き出した。
「あれ三千円しか入ってないよ」
と女の子の声。
「ちぇ敷けた野郎だな」
その日たまたま小銭入れしか持ってきていなかったのである。
というのも、その店は付けが聞いたので。
翌朝早朝、スナックの駐車場の自分の車の中で気が付いた。

下駄君は急いで仕事に向かった。
疲労感と倦怠感がようやく抜けた夕方、その女の子からメールが入ってきた。
「昨日はごめんね。お詫びのしるしに二人でモーテルで呑みまsでょう」
下駄君は昨夜のことは忘れたちまち元気になった。
指定された三日後、下駄君は仕事を終えると、いそいそとモーテルに行った。

「とりあえずお風呂に入ってきて」
そのモーテルは露店風呂式になっている。
下駄君は急いで裸になると露店風呂にいった。
そこにはあのマスターがいた。
マスターは
「どうも」
と頭を下げた。
下駄君も、頭を下げ、一緒に入った。
やがて下駄君とマスターは風呂を出た。
「下駄君はウーロン杯でいいわね」
うなずくと下駄君は女の子が作ったウーロン杯を一口呑んだ。
途端にこの前と同じように記憶が薄れていった。
女の子の声とマスターの声が聞こえる。
「財布をとれ」
「ありゃ中身は五千円しかないよ」
「あいかわらず敷けた野郎だな」
「クレジットカードはあるよ」
「それもぬいちゃえ」
下駄君の頭の中はデジャブーのように二人の声が駆け巡った。
翌朝、下駄君はモーテルのソファーで目覚めた。
体が思うように動かないままモーテルをはうように出て、車に乗り自宅に帰った。

これは実話である。
下駄君は面白い。






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最終更新日  2014.06.22 19:11:29
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