文の文

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sarisari2060

sarisari2060

2011.06.18
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カテゴリ: エッセイ


と、先日、いわきの友人に電話をした。

家業で忙しく立ち働くご主人を
家庭でささえる毎日だと聞いた。
そばで愛犬の吠え声も聞こえた。

その暮らしぶりをよかったな、とは思うが
現実に、原発の不安は消えていない。

彼女はそこで働くひとたちの
疲れきった肉声を聞く機会があるという。

「いいことを聞かないよ」


徐々にあきらかになっていく真実は
いのちの不安を増殖させる。

「ただちに」という言葉の向こう側を思う。

福島の少女たちのおんなとしての憂いを聞いた。
未来のいのちのかたちを案じているのだ、と。

福島に生まれ、そこに住んだことで
降りかかってきた災い。

そんなことがあってたまるか、と思うが
あり得ないことではない、
と原発事故の歴史は教える。

年若いひとたちにそんな重たいものを
背負わせてしまった罪。


いや、ここに住んでいたからといって
その不安がないわけではなく
大地から、水から、食物から、
今、脅威はやってきていて
日本人はみな、その不安を抱え続けることとなる。

だから、福島のひとだから、
なんて誰にも言えないのに
現実にはそういう居心地の悪さがあるらしい。

そういう境界線をひくことで
安心感を得たいひとがいるということか。

「福島の人間は我慢強いんだね」

笑いながら彼女は言った。

そんなこと言わせる世の中は間違っとる!と
にわかに心が煮える。

その煮えた心を
どこに向ければいいのかがわからない。

それを冷ます
お行儀のいい答えは見つけられるのに。


「いわきにいけたらいいんだけど
足腰がいうことをきかなくて」

いいわけにもきこえて心苦しいのだが
それが今の自分の現状。

「いま、来てほしくない。
おすすめできない」

きっぱりした答えだった。

「落ち着いたら東京でゆっくりお茶したいんだけど…」

それに続く言葉は衝撃だった。
福島という言葉が持つ暗黒面。
彼女もまた境界線を強く意識していた。


そんなこと!と今度は心が冷えた。
百日足らずで、そんなふうになってしまうのかと。

時間はこんなふうにも
ねじれて流れるのだ。


共通の年若い友人のことも話した。
案じながらも、なにもできない、と。

「話したくなったら
向こうから連絡がくるよ」

彼の時間がどんなふうに流れて
どこへ向かっていくかはわからないけど
待っていればいいのだ、と。

「でも、彼はてがみがすきよ」

そんな言葉を聞いて
筆無精が苦笑した。









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Last updated  2011.06.18 22:52:58 コメントを書く


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