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Apr 3, 2006
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子供の頃からよく使っていた 『命をかけるよ!!』 『一生のお願い』 という言葉。

なんでもないときになんでもないように使っていた。

でも 本当に たった一つの賭けに命をかける ことがわたしならできるだろうか。

この4月11日、一人の男性が 骨髄移植 をする。
彼は4年半前、悪性リンパ腫で治療を始めた。

今度は抗がん剤+自家移植( PBSCT このページ、難しいですが医療関係者じゃなくても解る書きかたです 。)を行い再び寛解に入った。
その後、順調に骨髄は生着したが、今回 再々発。
しかも白血病化したさらに悪性のものとなって現れた。

彼はPBSCT以前からず~っとドナーを待っていたが
今回の再発では抗がん剤では抑えきれないものとなり、 再移植 を余儀なくされたのだ。

しかし、残念ながらバンクからのドナーは見つからなかった。
…というか6座あるうちの1座不一致のドナーは見つかったのだが
最終確認でドナーから断られたのだ。


バンク登録者はいろんな条件をクリアーした人だけがなれるのだ。
しかし その善意の塊の人にも都合というものがある。
どうしても休めない仕事があったり、家族の反対があったりして
なかなか骨髄提供に至らない例も珍しくはない。
断ってきた提供者にも何らかの都合があったのだろう…。

そのことを考えたら安易にCMを見てバンク登録などしてはならない。

最終確認で断られたことはもちろん患者である彼に言えるはずもなく
『遺伝子レベルまで検索したら適合しなかった』と話すしかなかった。

残された治療の手段は2座不一致という危険な骨髄移植しかなかった。
2座不一致の移植はあまりにもリスクが高く、成功例は少ない。

…が、彼の救いとなるのはその骨髄提供者が弟であるということだ。
弟には母親由来の遺伝子がつながっており、例え2座不一致であろうと
血縁関係という強い絆がある。
NIMA-BMTという移植法になるのだが、これはあくまでも 確立された治療法ではない 。 あまりの症例数の少なさでまだ 研究段階 である。

『研究段階』という治療を受ける勇気を出すことは わたしが生きてきた中では一度もないことだ。
おそらくわたしなら 『完全に確立された治療をしてくれ!!』 と駄々をこねるだろう。
しかしそれが選べないとしたなら…
たった一つの選択肢に命をかけるしかない。

彼の仕事は医療関係者である。
しかも長い入退院の間に 同じ病気の人や、骨髄移植をした人たちが
どのようにして最期の道を辿ったかあまりにもたくさん見てきている。

『断るっていう選択肢もあるんだよ。今なら退けるんだよ』
今日まで何度となくわたしたちは彼に言った。

ところが彼はいつもこう言うのだ。
『退かないよ。生きるためだから』
たしかに移植をしなければ彼は白血病細胞に身体の隅々まで占拠されてしまい最期を迎えることになるだろう。
しかしまだ最期までの時間はある。今はまだ元気なのだ。
歩き、笑い、食べ、友達ともメールしたり会ったりできる。
恋人と旅行もできるだろう。

だが、骨髄移植がうまくいかなかったら 彼は悪くすれば数日後にはいなくなってしまうかもしれない。
逆にうまくいけばもっと長く生きられるかもしれないし、もしかしたら三度目の再発をするかもしれない。


症例研究によると生着例は15%…。 急性のGVHD で亡くなる例も多い。
彼はそのこともよく理解した上で移植を決断している。

彼の友人たちは彼がこの病気になってから続々とバンク登録をした。
彼を助けるためだった。
だが、運命はそう良い方向には向かわず、誰一人として彼とタイプの合う人が見つからず友人たちは別のどこかの患者さんのドナーに選ばれた。
何人かはうちの病院で骨髄採取を行い、その善意の骨髄液は遠くの病院に凍結保存して運ばれていった。
彼はその友人たちが採取入院するたびにお見舞いにやってきては
『ありがとう』と声をかけた。
自分のためにバンク登録してくれたからだ。

明日から彼の骨髄移植の前処置が始まる。
彼も、骨髄提供者の弟も、もう引き返すことはできないのだ。

彼に『頑張れ』とはもう言わない。
精一杯のことを今までしてきたのだ。

この後は わたしたち医療者が出来る限りのことをするしかない。

主治医はわたしたちに最終カンファレンスでこう言った。

『ただ、祈ってくれ!!』

人ノ命ハ人ガ左右デキルモノデハナイ。 どこかの本で読んだ言葉を思い出した。

冗談じゃない。
人が左右しなかったら医療は諦めるしかないんだ。

命をかける人がいる限り やるしかないでしょ。

4月11日決行日まであと 8日









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最終更新日  Apr 3, 2006 03:27:56 PM コメント(9) | コメントを書く


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