イヌやネコの検査や治療に関する最新情報(社長の独り言)

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2010.03.10
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カテゴリ: 感染症
 昨日、東京は真冬に逆戻り、積雪数センチ、夜仕事が終わって外に出てみたら一面真っ白でした。今日は高知では桜が開花した、と言うニュースがあり、改めて日本列島の大きさを感じました。

 先日の日曜日、学会で仙台に行ってきました。
 ある大きな学会の地方大会でしたので、東北地方の先生方を対象としていましたが、若い先生が大変多く、皆さん熱心に聴講していました。
 大都市で開催される大きな学会は、地方の先生方はなかなか参加し難く、まして休日開催となると参加したくても出来ないことも多いようです。そういう意味では、このような小さな地方大会は、とても有用なのではないでしょうか。

 仙台と言えば余談ですが、15年ほど前私も住んでいたことがあります。城下町らしく落ち着いた町並みと大都市としての機能がうまく調和した街で、大変生活しやすいところでした。機会があれば、また住んでみたい街です。食べ物も美味しいですしね。新鮮な海産物、牛タン、ずんだ餅、長なす漬け、・・・。

 本題に入りますが、今回の講演の中で興味ある話がありましたので紹介します。
 「イヌのバベシア感染症」に関する講演です。

 「バベシア感染症」というのは、あまり耳慣れない皆さんも多いかもしれませんが、バベシアという原虫が赤血球に感染すると溶血性貧血を発症し、重い場合は死亡します。
 バベシア感染症は、これまで沖縄県や九州、西日本に多く見られていました。


 バベシア原虫には2種類(カニス、ギブソニ)存在しますが、それぞれマダニが媒介します。
バベシア原虫を媒介するマダニは数種類ありますが、これらは全国的に分布しています。このことは、バベシアに感染したイヌが移送することによって、そこに住むマダニがイヌの血液を吸い、他のイヌに着いて吸血することで感染する、可能性があることを意味しています。
 その他、闘犬など噛み傷からの感染、輸血による感染、も直接感染の原因と考えられています。

 講演で示されたデータによると、バベシアの抗体検査(ELISA法)と抗原検査(PCR法)で東から北日本のイヌについて検査したところ、数県で感染が確認されたました。その大きな要因は、交通網の発達や高速料金の減額などによって、イヌを連れた移動範囲が拡大したことのようです。

 たとえば、関東地方に住む飼い主さんが、西日本への旅行の後、突然元気が無くなったので来院。診察すると、発熱と貧血があるが、そこからバベシア感染症をすぐ連想できるケースは少く、問診の際に旅行歴や発症前の行動などを聞いて、西日本に旅行歴のある場合はバベシア感染症を疑ってかかることになる、そうです。

 また、ある関東の症例では、関東圏から出たことが無いのに貧血となり診察を受けたところ、血液検査で赤血球にバベシアの存在が確認され、PCR法でも感染が確認されたそうです。 このイヌは、ある関東圏内のキャンプ場のドッグランで遊ばせてきた、ということで、その時にダニ刺されて感染した可能性が高い、ということです。

 このように、居住地域がバベシア感染症の流行地域ではなくても、イヌを連れた旅行などで感染してしまうことはもちろんのこと、今までいないと思っていた地域でもバベシアが存在しているという認識をしておく必要がある、と強調されていました。

 そこで、皆さんがたとえばイヌを連れてキャンプ場などに行って散歩やドッグランで遊ばせて来た2~3日後に、どうも元気が無くなった、と言うことで動物病院にいった場合、必ず「旅行歴(どこへ行ったか)」「野山の散歩やドッグランで遊ばせたか」を必ず獣医さんに伝えてください。また、獣医さんが考え込んだら、バベシア感染症の可能性についても聞いてみてください。普段めったに見ない病気ですので、症状や血液検査、飼い主さんからの情報からでも、先生方はバベシア感染症を連想することは少ない、ということも飼い主さんは覚えておくと良いかもしれませんね。

 また、輸血の場合、血液を提供してくれるイヌが感染したいた場合には、輸血によって感染が成立します。これは、獣医さんも含めて必ず頭において、事前に検査しておく必要があります。

 バベシア感染症の検査は、ごく一般的には血液の塗末標本を作って顕微鏡で調べて、赤血球にバベシア原虫がいるかどうか、調べます。ただし、この標本の作り方が難しいようで、熟練の技(といって良いのでしょうか?)が必要なようです。
 抗体検査もあります。生体内では、他の感染症と同様、バベシアが感染すると抗体が出来ます。その抗体を測ることで確認します。ただし、これも抗体検査の欠点ですが、感染の履歴はわかりますが、現在赤血球へ感染しているかどうか、はわかりません。


 バベシア感染症を疑ったら、まずはPCR法による検査で感染の有無を確かめる、これが現時点で最良の検査ではないでしょうか。
 ただ、どの検査でもそうですが、検査には「検出限界」があり、陰性でも「感染していない」ではなく「検出限界以下」ということです。つまり、検出できない程度の感染は成立している可能性は否定できない、ということは理解してください。とはいっても、遺伝子検査が一番感度は優れていると思います。

 また、このPCR法は現在の感染の有無を判定しますので、たとえば治療によってバベシア原虫が駆逐された場合は、PCR法での検査では検出されなくなることもあります。つまり、治療効果の判定にも使える、ということです。

 一つ付け加えると、貧血には「免疫介在性溶血性貧血」と言う病気があり、症状は良く似ています。ただし、治療方法は全く異なるので、貧血の場合のバベシア感染の検査は、他の病気との鑑別、と言う意味で大変重要です。(少し、遺伝子検査の宣伝をしてしまいました・・・)

 最後に、バベシア感染の予防については、「ダニがいる(と思われる)場所へ行ったら、すぐに駆虫する、遅くとも2,3日以内。」「駆虫は、マダニに有効な薬剤を選択すること」と言っていました。


 交通網が発達し、人間と犬の移動範囲が拡大し、今まで狭い地域に限定されていた病気も拡大することが当然考えられます。一方、マダニの分布の拡大で、バベシアが全国的に広がる可能性もあります。
 飼い主としては、まずはマダニの感染予防を心がけ、診断、治療する獣医さんは、バベシア感染症はもう西日本の病気ではなく、全国的に広がっている、と考える必要があるようです。

 まずは予防、これはどんな病気でも共通ですね。
 飼い主の皆さん、思い当たる症状があれば、ぜひ気をつけてください。

 我が家のメタボナナちゃん、そういう意味では「クッシング症候群」という病気は、予防できるのか(出来たのか)、考えてしまいます。
 この病気は、気が付かない内に進行して発症してしまうのかな、と自分を納得させていますが・・・。

 *最近の私の文章、遅い時間に書くことが多いので、アップした後で読み返してみると、言い回しが変だったり字が間違っていたり、が気になります。お恥ずかしい限りですが、ご容赦ください。笑って見過ごして頂ければ、うれしいです・・・。















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Last updated  2010.03.11 10:59:12
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