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皆さん、諸事情によりしばらく中断していましたが、再開します。改めてよろしくお願いします。再開早々、沈んだ話で申し訳ないのですが・・・。本日夕方、我が家のななちゃんが急逝しました。クッシング症候群で約3年間トリロスタンにお世話になってきましたが、最後は及びませんでした。昨晩から容体が急変し、そのまま回復することなく、横たわったまま私の腕の中で息を引き取りました。苦しむことなく逝ったのが、せめてもの救いです。わかっていたこととは言え、さすがに悲しいものです。でも、現実に帰って、葬儀屋さんを手配したり、氷や花を買ってきたりと、いまやっと一段落。これからジワリと悲しみがこみ上げてくるんでしょうね。ここでも何回か紹介してきましたが、ななちゃんのはなはこれで最後ですね。ありがとうございました。さてさて、このブログでは、さらにいろいろな情報を紹介していきます。皆さん、改めてよろしくお願いします。
2012.09.03
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GW後半、皆さん良い休みを過ごしていますか?今日は、東京は最高の天気です。ただ、遠出して今日帰宅される皆さんは、十分に気をつけてくださいね。さて、いつもの話題とはガラッと変わって。佐渡のトキ、野生で初めて雛が孵った、というニュースは聞いたかと思います。何と、環境省のサイトで、子育て中のときの様子を定点カメラのライブ映像で流しています。私も今朝からPCで流しっぱなしにしていますが、親がえさをやる様子がとてもよく分かります。ライブですから、グッドタイミングではないと見れませんが・・・。本当に愛らしいですね。無事に育って、大空を羽ばたいてくれることを願っています。見ていて飽きません。こんな映像を見ながらのんびり過ごすのも、良いのではないでしょうか。ぜひ覗いてみてください。http://www.ustream.tv/channel/toki002悲しいかな、かく言う私は仕事中ですが・・・。では皆さん、GW後半も最後、いい休みをお過ごしください。
2012.05.05
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早いもので、もう5月に入ってしまいました。GWも後半に入ろうかというところ、皆さんは良い休みを過ごされていますか?さて、いつものごとく一月半ぶりの書き込みとなりましたが、いろいろあってサボっていたわけではありませんので・・・(言い訳です)。なにやら、日記の書き込みのサイトにログインできなくなり、いろいろやってもダメで、半ば諦めていました。最近、外でネットをいじる事が多くなりWi-Fiにしたとこ繋がりました!まったく原因は分かりませんが、結局はプロバイダーか接続の問題だったのでしょうか(分かる方、教えてください)。さて、前回に引き続き、ネココロナウィルス遺伝子検査いついてお話したいと思います。とは言っても、私からの話ではなく、あるネコの飼い主様から遺伝子検査に関する質問をいただきましたので、質問と私の回答を紹介します。読んで頂いている皆さんには、同じ疑問をもたれている飼い主様もたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひ参考にして頂ければ、と思います。なお、文面は抜粋とし、個人情報に関わる箇所は、伏字とさせて頂きます。では、ご紹介します。質問のメールです。「はじめてメールさせていただきます。猫を飼っている一般の者です。リアルタイムPCRによるネココロナウィルス遺伝子検査について教えていただきたいことがございまして、メールをお送りさせていただきます。飼い猫がFIPの診断を受けました。その後、さまざまな闘病ブログなどを拝見しておりますと、現在、日本では、貴社とA動物病院様だけが、この検査を実施できる機関とのことでしたが、検査の方法(検出するコロナウイルス遺伝子)は同様と考えてよろしいのでしょうか。FIP発症の原因となる猫の体内での変異後の遺伝子は特定されていないとのことでしたが、変異前のコロナウイルス遺伝子については特定されていて、貴社もA動物病院様も同一の検索を行っているというふうに理解してよろしいのでしょうか。ぶしつけな質問になり、申し訳ございません。お差し支えのない範囲で結構ですので、ご教示いただけますと幸いです。」という内容です。愛猫がFIPと診断されたとの事、飼い主としては今後どのようにして良いか、悩むところだと思います。一点、どのような検査でFIPと診断されたのか、知りたいところですが・・・。私からは、下記のように回答しました。「飼い主様へ。リアルタイムPCR法についてはご存知とお見受けいたしますので、方法については省略させていただきます。PCR法では、特定の遺伝子を検出するためのプライマーやプローブを設計します。どの遺伝子を検出するかによって、プライマーなどの配列も違ってきますし、その違いで、同じようにネココロナウィルスを検出できるかどうかは違ってきます。このあたりは検出のノウハウになってきますので、公開されていない場合も多々あります。ネココロナウィルス遺伝子の検出は、確かにA動物病院でも実施されていますが、上記の理由で弊社とA動物病院とで、まったく同じようにネココロナウィルスを検出しているかどうかはわかりません。ただし、基本的な検査の方法は同じだと思います。FIP発症の原因は、確かに腸コロナウィルスが何かの原因で変異して血中に入りことによる、といわれています。変異ウィルスの報告は現在までいくつかありますが、学術的に確定はされていません。一方、健常のネコの場合、腸コロナウィルスが血液中に存在することはない、といわれています。この理論を元に、弊社では、FIPの検査に血液中(または胸水、腹水中)のコロナウィルスを検出します。ご質問にある「変異前のコロナウィルス遺伝子は特定されていて・・・」については、「腸コロナウィルス遺伝子は特定されています」という回答になります。また、A動物病院様では、先の理由で、弊社と同一かどうかは分かりかねます。このあたりは、A動物病院様に直接お問い合わせいただいたほうが良いかと思います。FIPは、仰るように「変異したネココロナウィルス感染が発症の原因」といわれています。つまり、ウィルス感染症ですから、原因となるウィルスを特定することが診断の重要な点です。FIPを疑う症状があって、血液中(または胸水、腹水中)からネココロナウィルスが検出されれば、FIPと確定して良いと考えています。一方、FIPを疑う症状があっても、コロナウィルスが検出されない場合があります。この場合は、FIPを完全に否定はできませんが(検査には検出限界があり、感度以下の場合は検出されません。どの検査でも同様です)、他の疾患を疑って検査や治療を進めるべきかと考えます。 参考まで、弊社の研究データをご紹介いたしますので、ご参照ください。1)FIPを疑う症状があってコロナウィルス遺伝子検査をした症例を「陽性」と「陰性」にわけ、1年後の予後調査を実施した結果です。結論から言うと、ウィルス陽性例は、1年後全て亡くなっていますいます。一方、陰性例では、1年後約半数が死亡していますが、死因はさまざまです。この結果を見ても、FIPの診断にコロナウィルス検出は有用だと思います。http://www.canine-lab.jp/nwes/news1.pdfhttp://www.canine-lab.jp/nwes/news2.pdf 2)2005年に発表された論文を、分かりやすくまとめたものです。簡単に言うと、術後FIPと確定した症例とFIP以外の症例でコロナウィルス遺伝子検査を実施したところ、前者では93%が陽性、後者では全く検出されなかった、ということです。この結果から、この研究者たちも、「偽陽性の確率が非常に低いことから、RT-PCR法はFIP診断には有用な方法であると思われる。」と言っています。http://www.canine-lab.jp/pdf/cat-hyouka.pdf 愛猫さんの回復をお祈りいたします。」FIP診断におけるネココロナウィルス遺伝子検査の有用性は、少しずつ認知されてきているように思いますが、一方で「腸コロナウィルスが変異した」とされるFIP発症の起因となるウィルスが未だ特定されていない現状では、なかなかここ検査を理解して頂くのも難しいところもあるかと思います。ただ、飼い主様の率直な疑問点ですので、たぶんネコを飼っている皆さんの中にも、同じような疑問を持たれている方々も多いのではないでしょうか。本検査検査を実施してみたい飼い主様は、掛かりつけの先生にご相談下さい。参考になれば幸いです。我が家のななちゃん、クッシングは思った以上に進行し、薬も利きにくくなってきています。飲水量が何と毎日2000mlを超えて、そのため排尿量も異常に多くなってきました。これまで一日2回だった散歩を3回に増やしました。我慢の末、膀胱炎や腎疾患に繋がるのを避けたいと思ったためです。それよりも、オシッコを我慢するのはわれわれでも辛いですからね。腹もパンパンに張ってきて、上から見るとちょうど洋ナシのような体型です。可愛そうですが、どうしてあげることも出来ない、飼い主としては辛いですね。では、皆さん良いGW後半をお過ごしください。
2012.05.01
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何となく少しずつ暖かくなってきているように感じます。皆さん、少しずつ春の虫が疼きだしているんじゃないでしょうか?そうなると、今度は花粉、厄介です。今年はトータルの飛散量は少ないと言われますが、短期間で一気に飛ぶらしく、花粉症の人には辛いかもしれません。ところで、久しぶりにFIPについて書きます。FIP診断のためのコロナウィルス遺伝子検査も、少しずつ認知されてきています。リピートしてくださる先生方が増えてきています。実は、先日一般の飼い主様から、以下の様な問い合わせを頂きました。「購入したばかりの5か月の子猫、軽い下痢があったので獣医さんで検査してもらったら、検査値が1600倍と言われた。私も忙しくて、数字だけを聞いて帰ってきたが、いろいろ調べると、400倍から陽性だとか、検査会社によって値が違うから、というよな情報があった。1600倍とは、FIPなのでしょうか?」まずこの飼主さん、検査について詳しく説明を受けていないようでした。「1600倍」と言う値、これはコロナウィルス抗体検査の数値ですね。まず、抗体検査について説明しましたが、「抗体」を理解できていないようでした。さらに、ネコやFIPのブログを見ると「PCR検査」と言う検査が出てくるが・・・、ということでしたので、根本的に抗体検査とは違う事、これを当社で実施していること、主治医を通して依頼した欲しいこと、を説明しました。でも、やはり主治医がもっとよく説明すべきです。何やら数値だけが独り歩きして、FIPの恐怖感だけが膨らんできてしまうようなことは避けなければなりません。多分理解して頂けたと思いますが・・・。一方、獣医さんからも、抗体検査との違い、抗体価が高いが遺伝子検査をやるべきか、どんな時に調べたらいいか、陽性だったらFIPと確定していいのか、等々、未だに多くの質問を頂きます。そんな時には、こう答えます。まず、FIPとコロナウィルスの関係。腸コロナウィルスは、ネコの60-80%に感染しているといわれています。ただ、症状は軽い下痢や一過性の発熱などで終わることが多いといわれています。このウィルスが、何んらかの原因で変異して血中に移行し、マクロファージと言う細胞で爆発的に増えてFIPという症状を起こす、と言われています。つまり、FIP(臨床症状の名称)は変異したコロナウィルスが起因で起こるウィルス感染症で、という事が言えます。健常な状態では、この腸コロナウィルスは血液中には存在しないと言われています。残念ながら、「FIPウィルス」が現時点で特定されていませんので、この理論に基づいて血液中のコロナウィルスを検査しています。抗体検査との違い、です。抗体は、感染したウィルスに対して免疫の防御反応で作られるタンパクです。したがって、単純には「抗体は感染の履歴」を表しており、腸コロナウィルス感染でも抗体は産生されます。抗体を測定しても、現在血液中にコロナウィルスが居るかどうかはわかりません。遺伝子検査は、いわゆるウィルス抗原を直接検出する検査ですので、現時点で血液や腹水・胸水等の検体中にウィルスが居るか否かがわかります。つまり、抗体価が高いからと言って、現時点でウィルスが存在するかどうかは不明です。実際、私どもの研究では、抗体価とPCR検査によるウィルスの値は全く相関しない、というデータが出ています。一方、経験の豊富な先生の中には、FIPを臨床症状で診断する先生もいます。ただ、FIPと言うのは臨床症状の名称ですので、同じような症状を示す病気はたくさんあります。例えば、風邪の症状があった時に、通常言われる「風邪症候群」なのか「インフルエンザ感染症」なのか、どう区別しますか?そう、インフルエンザウィルス検査をして陽性なら「インフルエンザ感染症」、陰性なら「風邪ですね。」と言われますよね。考え方は同じ。FIPを疑う臨床症状を「FIP」と確定するには、原因となるコロナウィルスが感染しているか否かをはっきりさせれば良い、という事です。つまり、FIPを疑う臨床症状があった時、FIPと確定したい場合にPCR検査を利用して頂ければよいと思います。では、臨床症状が無くても血液中のコロナウィルスが陽性ならFIPと診断していいか、と言う点です。難しいですが、「FIPを疑う臨床症状がある場合、血液(または腹水・胸水)中からコロナウィルスが検出されれば、確定」しても良いと思います。一方、症状が無くウィルスが検出された場合、病気としてはFIPは発症していませんが、原因ウィルスであるコロナウィルスが血液中から検出されたという事はウィルス感染は成立している訳ですので、この後FIP発症のリスクは高い、という事になります。ただ、これまで「同居猫がFIPで亡くなった」「多頭飼育なので健康診断で」と言うケースで、まれに少数のウィルスが検出される場合があります。これらの例では、以降無症状で定期的に検査をして陰転を確認した例、一方数週間でFIPの症状が出て、ウィルス量も一気に高くなり、亡くなった例、とあります。したがって、無症状で血液中からウィルスが検出された場合はFIP発症のリスクは高い、と考えて、以降定期的に検査をする、また予防策としての治療を早めに開始する、など対策をとるべきと考えます。根本的な治療方法が無いのが残念ですが、早めに確定することで対症療法で何とか進行を遅らせることもできるのではないでしょうか。リピートして検査をご依頼いただく先生や病院も増えてきていますが、その中には抗体検査は実施せずPCR検査で、と言う先生も増えてきています。「遺伝子検査」と言うと、とかく難しく考える方々もまだまだ多くいらっしゃいますが(かく言う私も、苦手です)、単純にウィルスを高感度で検出できる検査、FIPを確定するために有用な検査、とお考え頂ければよいのではないでしょうか。最後に、もう一度言います。「FIPは変異したネココロナウィルス感染が原因となるウィルス感染症です!」つまり、FIPを疑う場合には、ウィルス感染の有無を確定することが重要です!我が家のナナちゃん、薬を増量しましたが、飲水量が一向に落ちません。最近、体力もだいぶ落ちてきたように思います。これ以上薬を増やして良いものかどうか、主治医と相談です・・・。
2012.02.26
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またまた日にちが空いてしまいました。いつものことと笑ってお許しください。もう2月も後半、いっこうに暖かくなりませんね。寒がりの私にとっては、なかなか穴から抜け出せない毎日です。でも、暖かくなってくると今度は花粉、考えただけで憂鬱です。さて、今横浜で「獣医内科学アカデミー」という学術集会が開催されています。横道にそれますが、昨年の開催初日は3月11日、そうあの東日本大震災の日でした。当日、私は川崎駅で被災し、幸運にも宿をとっていたので宿泊できましたが、あの日のことは鮮明に甦ってきます。あれから一年、被災地では未だ復興には程遠い状態にあるところもあります。我々も、絶対に風化させてはいけない出来事ですね。話しを元に戻します。今回、私どもと一緒に仕事をしている動物病院の先生が、「ネコの活性化リンパ球療法」について、症例報告を行いました。現在、リンパ球を効率的に活性化するには抗体とサイトカインの組み合わせて培養しますが、ネコについては、良い「抗体」が存在しないので、未だ研究の途上です。今回の発表は、もう一方の「サイトカイン」だけで活性化したリンパ球を治療に使ったものです。2症例の発表で、ネコは18歳と20歳、ともに高齢で腫瘍の治療を一通り実施しています。サイトカインだけでの培養では、抗体を組み合わせた時に比べて細胞の増えがあまり良くなく、さらに高齢であることや腫瘍患者であることで、実際に活性化リンパ球の増えは悪かったようです。それでも、2症例とも3から4回の活性化リンパ球投与を実施、腫瘍を小さくする効果は認められませんでしたが、少なくともQOL(生活の質)は良好に保たれたようです。今後の課題は、第一にはネコの「抗体」を何とか作って、イヌと同じレベルで活性化リンパ球療法を提供すること、です。この先生に伺うと、活性化リンパ球療法を希望される飼主さんは割と多く、ネコについても相談を受けることが多いそうです。この療法は、QOL改善効果は報告されており、かつ副作用もないことから、手術、抗がん剤、放射線療法との組み合わせでの効果が期待されている一方で、末期患者のQOL改善効果も期待されています。飼主さんにとっては、最後まで元気で過ごしてほしい、これが最大の願いだと思います。(私も一飼主としてそう願っています)インターネットで調べると、ペットの活性化リンパ球療法を実施している動物病院は沢山あります。その中で、どこの病院を選んだらいいか、難しいですね。私の考えですが・・・、1)この療法のことを詳しく、かつ分かりやすく説明してくれること。「免疫」というのは、我々にとっても難しい学問ですが、それを分かりやすく平易に説明してくれる、という事は、先生ご自身が十分に理解しているという事です。良い事だけではなく、治療の限界等々もきちんと説明してくれるかどうか、大事です。2)この療法のポイントは、投与するリンパ球の細胞数です。病気の進行度や体調、実施中の治療、等によって、活性化リンパ球の増え具合は大きく異なりますが、少なくとも、投与するときに具体的に細胞数を説明してくれるかどうか、重要です。話してくれないなら、飼い主さんの方から必ず聞いてみてください。3)飼い主さんとして気になるのは、治療費ですね。これは、今まで何回か話していますが、活性化リンパ球を培養するための抗体やサイトカイン、検査等の手間を考えた時には、原価は決して安くはありません。これが治療の費用に跳ね返ります。1投与で数万円はかかると思います。(抗がん剤なども、案外高いですよ)免疫療法は、「体の免疫機能を高める」と言う効果を考えると、癌を治療する他にも、QOLを改善する効果は大いに期待できます。ご興味のある飼主さんは、実施している動物病院に、一度相談してみてください。丁寧に説明してくれるはずです。我が家のナナちゃん、またまた薬の量が増えました。薬の効く期間がだんだん短くなっています。我々飼い主にできることは何か、時々考えてしまいます・・・。昨日、テレビで「盲導犬協会の老犬ホーム」の紹介をみました。我々人間に役に立ってくれた動物たちには、最後まで面倒を見てあげる義務が我々にはあるのでしょう。つくづく考えさせられました。
2012.02.19
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新年おめでとうございます。皆さん、良い新年をお迎えになったことと思います。私は今日から仕事始めです。年末年始の休みなんて、あっという間ですね。元日は地元の神社へ初詣、2日は商売繁盛、厄除けの神田明神へ初詣(二回目ですが、初詣と言って良いのでしょうか?)、去年のお札を納めて新しいものを買い、神社近くの蕎麦屋で新そばとお神酒でささやかな食事、帰りに福納豆を買いました。これが、我が家のここ数年の恒例です。東京は概ね晴天で、穏やかな一年のスタートです。昨年のような未曽有の災害などなく、すべてが復興することを願わずには居られません。地震予測によると、近々関東から東南海にかけて大地震が襲う、とのこと。いつぞやの、何とかの大予言、ではありませんが、こんな嫌な予想は外れてほしいですね。でも、備えあれば憂いなし、です。今年の抱負。まず、毎年言っていますが、ブログをもう少し頻繁に更新します。今年こそ・・・。ご意見・ご批判等ありましたら、ぜひお聞かせください。仕事では、集積されてきた検査データを一度整理して、皆さんに提供したいと思います。特に、ご利用の多い造血器系腫瘍のクローナリティ解析やFIPのネココロナ遺伝子検査、等々、少しずつまとめて公開していきます。さらに、細胞免疫療法では、もっと認知度を上げて、提携病院を増やしたいと思います。これも、各大学等々と共同研究にて、症例データを積み上げています。個人的には・・・。時間がある時には、身体を動かしたいのと本を読みたい、です。身体と心の健康維持、ですね。あとは、ななちゃん、元気にこの一年も過ごしてほしいです。毎日のケア、注意深く続けていきます。こんな感じで、平々凡々な豊富ですが、健康第一、良い年になることを期待しています。皆さんも、そして可愛いペットたちにとっても良い一年でありますよう、お祈りいたします。本年も、よろしくお願い申し上げます。まずは、新年のご挨拶まで。
2012.01.03
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一年なんて長いようで短いですね。あっという間に仕事納めです。今年は本当にいろいろあった年でした。年末の報道番組は、今年はじっくり見たいと思っています。ブログの方も、いつもよりサボり気味、皆さんにあまり役立ちそうもない内容ばかりでした。申し訳ございませんでした。来年は、・・・頑張ります!少し早いですが、私の今年の重大ニュース、を考えてみました。何といっても「東日本大震災」、忘れることができない未曽有の大災害でした。放射線被害も含めて、未だ復興の目途すら立っていないところもあるようです。獣医の先生方も、震災後早々とボランティアチームを作って、現地の動物の救護にあたったり、あまり表には出ませんが、大活躍でした。何にかの形で支援していきたいと思っています。実は、私の実家が福島で、ホットスポットのど真ん中に家があります。この先、どうしたら良いのか見えない現状に、住民も疲れている、と言うのが現状ではないです。一方で、被害にたいする政府の対応、見ていて腹立たしいものがありました。現場の状況を全く把握できていない政府や東電幹部、さらに正確な情報が住民へ全く上がってこない、これによる不安の拡大。何を信用していいか、全くわかなくなりました。でも、被災地の方々は、住民皆さんで手を取り合い、助け合いながら、当面の危機を乗り切りました。毎日流されるニュース映像を見て、何もできないもどかしさからため息をつき、被災者の頑張りに涙し、と言う自分が居ました。兎に角、早い復興願います。我が社では、夏から新しい検査を開始しました。皮膚疾患関連の、我が社にとっては新しい分野への挑戦です。「皮膚糸状菌遺伝子検査」「ニキビダニ(毛包虫)遺伝子検査」そして「ブドウ球菌同定検査、ブドウ球菌のメチシリン耐性(mecA)遺伝子検査、薬剤感受性試験」の3つの検査です。皮膚の病気は、一見すると似たような症状で、その原因を正確につかむことで最適な治療ができます。また、抗菌剤や抗生剤も原因菌によって効果が違ってきます。さらに、抗生剤に対する耐性菌も存在し、これは耐性遺伝子(mecA)を検査することで確認できます。いま、ヒトの医療現場では、「コンパニオン診断薬」という概念が確立しつつあります。「コンパニオン」とは、仲間、連携、を意味します。つまり、医薬品の有効性と副作をあらかじめ検査し、患者さんにとって最適な治療薬を選択すること、その検査・診断を言います。我が社で実施している、肥満細胞腫のc-kit遺伝子検査、これはイマチニブの有効性をあらかじめ判定します。MDR1遺伝子検査、これは駆虫薬であるイベルメクチンなどの副作用を予測します。そして、ブドウ球菌の薬剤耐性遺伝子mecA遺伝子検査、最適な抗生剤の選択に役立ちます。あらかじめ、薬剤の有効性や副作用を予測することで、無駄な治療を回避でき、ひいては治療費の軽減にも繋がります。獣医療も、今や経験だけではなく、科学的データをもとに診断治療する時代になってきているといえますね。来年は、この分野がもっと進むと思います。で、私事で恐縮ですが、子供二人が無事独立、私の手を離れました。一人は中学校の先生(2年間臨時教員で、やっと正式採用)で一人は看護師、一人前に教育論やら医学の話など、青臭いなりに熱い話をしています。この先、世間に染まることがあっても、少しは青臭い情熱を忘れないで欲しいです。さて、最後に我が家のナナちゃん、クッシング症候群はゆっくり、でも確実に進行しています。特に、この秋以降薬を増量しても一向に飲水量が減らず、腹がぷっくり垂れてきて、脱毛も進行してきています。年明けには、再度薬の増量を主治医に相談してみようと思っています。何とか、来年も元気で過ごしてほしいです。とまあ、こんな1年間でした。年末年始と家族が集まってゆっくりする時間が多いと思います。私も然りですが、テレビを見てお節と餅を鱈腹食べて、という毎日でしょうが、今年の家族の重大ニュウースを話しのネタにして、会話を増やすのも良いのではないでしょうか。さて、最近、大変興味深いブログを見つけました。癌治療と免疫療法に関する、ある臨床医の考えを綴っているものです。特に癌治療の場合、「エビデンス」や「根拠」をいった難しい言葉が飛び交いますが、必ずしもそれに当てはまらない病状や治療法も存在します。これを読んでいて思うのは、獣医療の場合もよくあてはまるのではないか、と。人医療は患者は本人ですが、獣医療の場合は、患者はものを言いませんので、獣医師と飼い主がよく話し合い、獣医師は患者に最適な治療法を提示し、飼い主は患者の代わりによく話を聞いて治療法を選択する、と言う具合に、異なります。また、飼い主の多くは、不治の病になった場合は、可愛いペットが最後まで元気で過ごせる治療を選択すると思います。いわゆる、QOL改善の効果ですね。患者は一頭ずつ皆違いますから、癌に対する治療ではなく、癌を持った患者に対する治療、これを目指してほしいです。このブログは、癌治療現場において、エビデンスやセカンドオピニオンの考え方にも言及しています。大変興味深いブログです。年末年始、時間があればぜひ読んでみてください。http://umezawa.blog44.fc2.com/(掲載については、著者の梅沢先生のご許可を頂いております)そうこうしている内に、ぼちぼち仕事納めの時間が近づいてきました。皆さんも良い正月をお迎えください。来年も、ぜひお立ち寄りください。来年は、もっと書き込みますので・・・。良いお年を!!!!
2011.12.25
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本当に寒くなりましたね。今月もあと一週間で終わり、もうすぐ師走です。「師も走るくらい忙しい月」という意味だそうです。(合ってますか?)そうこうしている内に来年、何か一年がだんだん早くなっていくような気がします。歳のせい?そう言わないでください。さて、先週末、大阪で動物臨床医学会なる学会が開催され、一部参加してきました。情報収集、と行きたかったのですが、今回はあまり時間が無く、その中で興味のある講演を聞いて来ました。その中の一つ、「一般臨床家におけるサイトカイン療法」。「サイトカイン療法」というと、とかく基礎研究的な難しい内容が多いのですが、この講演は一般の開業獣医師が講師で、どんな疾患にどんなサイトカインが使われてるか、臨床現場の話をされていました。(私が言うのも烏滸がましいですが)現場の先生方も、すごく良く勉強されています。まず、「サイトカイン」とは。体の細胞が分泌する様々な機能を有する液性物質、のことです。少し難しいですが、ここはネットで調べて下さい。サイトカインでとくに有名なのは、インターフェロン、ですね。この名称は、一度は皆さん聞いた事があると思います。「サイトカイン療法」とは、これらを使って治療する方法のことです。さて、今回紹介されたサイトカインは、以下の4つ。*ヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)*ヒトエリスロポイエチン(hEPO)*イヌインターフェロン-γ(cIFN-γ)*ネコインターフェロン-ω(fIFN-ω)(上の二つがなぜヒト用か、と言えば、単純にイヌやネコ用が無いから)簡単に、働きを紹介しますと・・・*G-CSFは、幹細胞から、感染症や炎症反応の初期防御に働く顆粒球を誘導します。特に、癌の化学療法や放射線療法、ある種のウィルス感染、免疫不全なんどで好中球が減少すると、細菌やウィルスに感染しやすくなり、難治性となります。*EPOは、骨髄中の赤血球前駆細胞に働いて、赤血球を誘導します。腎性貧血や再生不良性貧血など、強度の貧血の治療に用いられます。*IFN-γは、血液中のリンパ球が産生し、抗腫瘍効果、抗ウィルス効果、免疫亢進作用、などがあります。効果の通り、癌の治療、ウィルス感染症の治療、免疫機能を亢進させる目的の治療、に使われます。また、イヌのアトピー性皮膚炎の治療にも使われます。*IFN-ωは、機能的にはIFN-γとほぼ同じですが、特に抗ウィルス効果を期待して、ネコカリシウィルス、ヘルペスウィルス感染症、イヌパルボウィルス感染症、ネコ白血病ウィルス(FeLV)感染、ネコ慢性口内炎、FIP、など、さらに悪性腫瘍の治療と、幅広く使われています。今回の講演では、それぞれのサイトカインが上に書いたような疾患に対して使った時の効果や問題点が、広く紹介されました。症例によっては、劇的な効果が認められます。私が興味を持ったのは、IFN-γのアトピー性皮膚炎治療、ネコIFN-ωのカリシ、ヘルペス、FeLVなのどウィルス感染症治療、です。これらは、実施した症例も多く、それなりに有効性を示すデータ、と理解しました。問題点は、まずG-CSFとEPOは、ヒトのサイトカインであること。イヌやネコにとっては異種動物の物質なので、数回投与すると抗体ができて効果が無くなってきます。そうなると、生体内で自然に産生されるサイトカインも抑止される可能性があります。また、サイトカインは、もともと生体内で産生されている物質で、体内では微量で効果を発現しています。治療の場合、それより相当多量に投与しますので、一方では副作用として現れることがあります。たくさん投与したからといって、それに比例して良く効くわけではない、というのがサイトカイン療法の難しいことろです。で、ここでよく話題にするFIPに対するIFN-ωの効果ですが、症例が少ないのもありますが、効果は???でした(あくまで、私の感想です)。どんな検査でFIPと診断したかが不明なことと、2年以上生存した著効例はすべて高齢猫(6-16歳)であったこと、を考えると、FIPではなかった(FCoV陰性)可能性もあるかな、と思ったりもしました。サイトカインは、免疫機能を高めることを目的によく使われます。ストレス、免疫、と言う言葉は良く聞きますよね。病気の原因が良くわからず、これと言った治療法も無い時に、サイトカインなどが良く使われることがあります。一方で、もともと生体に存在する物質ですので、効果はマイルド、長期にわたって使うケースも多いです。獣医さんの知識が重要です!同時に、飼い主さんも勉強しましょう!今回は、残念ながらあまり聴講できなかったのですが、いろいろ勉強にはなりました。ある先生方の立ち話に聞き耳を立ててみたところ、「来年は内分泌がブームだね!」、だそうです。内分泌、そうホルモン分泌の異常で起こる病気ですね。これらの検査や治療が、話題になりそうです。ホルモン分泌の異常、そう、我が家のななちゃんのクッシング症候群がまさにその病気です。そう言えば、最近の学会ではよくクッシング症候群が話題になってます。そのななちゃん、ここ2週間くらいで一気に飲水量が増えて(通常多くても400mlくらいが、常時600ml以上になりました)、ACTH刺激試験の検査値が高く朝の薬の量を増量、1週間くらい経過しましたが、あまり効果は見られません(飲水量が減りません)。腹も太鼓腹のように張ってきているし、毛も所々抜けたり薄くなったり、病状は確実に進行しているようです。見ていて可愛そうですが、飼い主としては一方で覚悟も必要なのかもしれません。いま、デッキで日向ぼっこをしています。いつまでも元気でいてほしいです・・・。
2011.11.23
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またまた、1か月以上のご無沙汰でした。朝晩はだいぶ涼しくなりましたね。それでも、平年よりまだ暖かいようで、日中日差しが強い時には、汗ばむこともあります。体調管理には気を付けましょう。さて、少し前になりますが、今年のノーベル医学生理学賞で、樹状細胞の研究者が受賞しましたね。樹状細胞は、免疫機能を重要な役割を担っており、癌や感染症などで、その情報を「異物」として免疫細胞に伝達し、免疫機能を発揮させます。つまり、司令塔ですね。「癌の樹状細胞療法」という治療法を聞いた事がある方も多いともいます。患者さんの樹状細胞を分離して、患者さんの癌の情報を試験管内で樹状細胞に教え込ませ、再び患者さんの体内に送り込むことで、癌を覚えこんだ樹状細胞が免疫細胞に攻撃の指令を出し、癌をやっつける、という方法です。今回ノーベル賞を受賞したこの研究者は、自身が膵臓癌(?)で長く闘病していて、受賞の数日前に亡くなった、ということでしたが、自身で樹状細胞療法を継続して延命していた、と言う話しも聞きました。樹状細胞療法も、広い意味では当社で技術提供している活性化リンパ球療法などの免疫細胞療法の一つ、劇的な効果はありませんが、使い方によってはQOL改善や延命効果など、発揮できるものと思います。既に、イヌでも実施している動物病院もあります。さてさて、時を同じくして、再生医療で動物を再生する、と言う話題がありました。再生医療と言うと、ES細胞やiPS細胞があります。(詳しくは調べ見てください。)なぜ、動物を再生?と思われる方もいるかと思います。難しいことはさておいて・・・。ES細胞やiPS細胞は、1個の細胞から同じ遺伝情報を持った臓器や個体を作ることができる、世界的に注目される技術分野です。特に、医学的に大いに貢献できる、と考えられています。その記事の中で注目したのは、iPS細胞による再生。ES細胞による再生の場合は、受精卵の一部を使って行うため、倫理上の問題がありました。それに対してiPS細胞は、皮膚の様な細胞から誘導することができ、したがって全く同じ遺伝情報を持った個体(クローン)が再生できる、と言うものです。iPS細胞を作るには、まず皮膚などの細胞(皮膚に分化した細胞)をいろいろな操作で未分化な細胞に戻します。未分化な細胞とは、これから先いろいろな細胞に分化する機能を持った細胞、という事で、受精卵をイメージして頂ければいいですね。受精卵は最初は1個の細胞ですが、これが2個、4個、8個と分化していき、それぞれの細胞が違った機能を持ち始め、臓器や骨や脳になっていきます。これらは、もともとは1個の受精卵から始まっていますから。未分化状態の細胞(iPS細胞)に戻した後は、それぞれの細胞に様々な刺激を加えることで、臓器になったり、骨なったり、と誘導できます。これが再生ですね。つまり、皮膚などの細胞から、iPS細胞を作ることで、自分と同じ遺伝子をもったものを作れる、と言うことです。今の技術ですと、患者自身の臓器などを再生して移植に使おう、と言うのが大きな目的です。自分の組織ですから、拒絶反応は起こらない、という利点があります。さらにさらにその記事の中で、iPS細胞は基本的にはいろいろな細胞に分化でき、卵子や精子も誘導できる、ということです。という事はつまり、単純な再生だけではなく、再生させた卵子と精子で受精することができ、一個の生体として誕生させることができる、というのです。ここまで来たら、SFの世界のようですが、現実的にも理論的にも可能な技術なのです。全てが自分と同じ遺伝子情報を持った人が何人も生まれてくる、可能性がある訳です。で、これをペットに応用することは可能か?といえば、同じ哺乳動物ですから可能です。たとえば、愛犬の皮膚細胞を採ってiPS細胞を誘導し、精子と卵子に分化させて、それ同士を受精させて・・・、全く同じイヌが生まれてきて、また子犬から育てることができる、ということです。こんなことができたら、一生同じ愛犬と暮らせるわけ?という事が出来てしまうのです。言い過ぎかもしれませんが、理論的にも技術的にも可能な時代になってきています。命をそこまで操作していいのか、という倫理上の意見もあれば、飼い主にとってずっと同じ可愛いペットと一緒に暮らせる、この上ない幸せを享受できる、これも真理ですよね。私も可愛いナナちゃんと暮らしていて、病気もあって年齢的なことを考えると、再生・・・、などと想像しまう事もあります。一方で、生死は自然の摂理、逆らわずに生きることも大事かと・・・。難しい問題ですね。既に人類は、命を操作する技術を手に入れてしまった、というのは現実のようです。皆さん、どう思いますか?我が家のナナちゃん、クッシングの病状がやや進行してきたようで気になっています。薬も大分増量したし、この先どう治療するか、検査も含めて考えて行かなくては、と思います。でも、食欲は旺盛ですよ。「食欲の秋」はペットも一緒、でしょうか・・・。
2011.11.04
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大型の台風が過ぎたと思ったら、一気に秋らしい陽気に変わってしまいましたね。 皆さん、台風の被害はなかったですか? 私は、ちょうど獣医学会で大阪に居て、帰りに直撃をくらい、一日延泊でした。 それにしても、今年は大震災に始まって、猛暑、大型台風、大雨、水害、等々、「大」や「猛」が付く自然災害が多かった年でした。まだ、今年は残り3か月以上ありますが、この後は何事もなく無事に経過してほしいものです。 さてさて、ここのところ全く学術的な情報を発信できていませんでしたが、今回久しぶりに学会に参加してきましたので、その中から情報をお送りします。 今回は、FIPに関する情報です。 少しずつですが、確実に進んでいますので、その内容をお知らせします。1)コロナウィルスとFIPウィルスについて これは、研究者の中でも長年のテーマであり、鋭意研究されていますが、一言でいうと未だFIPウィルスは特定されていません。論文もいくつか出ていますが、研究している先生と話しても、未だ難しい、とのことです。苦労されているようです。でも、検査や治療につなげるには、ここが一番肝心なところなのですが・・・。2)FIPの検査について これは、研究している先生との話で。FIPウィルスが特定されてない以上、血液中や胸水・腹水中にいるコロナウィルスを検出することは、現時点でベストであり、FIPを診断するうえで重要。「コロナウィルスの抗体価を測定することはあまり意味が無い」ということが、臨床獣医の間でも少しずつ(やっと)浸透してきた、という事です。「FIPは(変異した)コロナウィルスの感染が起因で発症する」という所謂ウィルス感染症ですので、通常いない血中などでコロナウィルスの存在の有無を調べることは必須、という見解でした。でも、早くFIPウィルスが同定されることを望みます・・・。3)FIPの治療について 結局、FIPウィルスが同定されていない以上、効果的なワクチンが開発されない、という現状があります。根本的な治療法が開発されてこない、大きな理由ですね。 その中で、以下2つの報告がありました。 日獣大・田中先生のグループ。以前、サイクロスポリンAという薬剤がFIPの症状緩和に効果的である、という報告があったという事は、この場でお話ししたと思います。今回も、その研究の延長で、効果とその機序についての報告でした。機序の話は難しいので割愛しますが、効果は、一時的には症状を緩和し、症例によっては腹水が著しく減少したり、食事ができるようになったり、まで回復したこともあったようですが、最終的には全例亡くなってしまったそうです。根治まで持っていくには、プラス何か治療法を加えないと難しいです、とのコメントでした。 北里大・宝達先生のグループ。FIPウィルス(?)がマクロファージに感染すると、TNF-αという物質が産生されることがわかっています。TNF-αが多く産生されることで、発熱や炎症を起こします。今回は試験管内の実験として、FIPウィルス(?)をマクロファージに感染させることで産生されるTNF-αを、TNF-αに対する抗体(抗TNF-α抗体)でブロックできるか、という試験報告でした。結果、抗体の種類によって、マクロファージから産生されるTNF-αをブロック(中和活性、と言います)できることを確認しました。現在、実際にFIPを発症した猫に投与して効果を確認する試験を計画中、とのことでした。ただし、これも発熱や炎症を起こす原因であるTNF-αの作用を抑えることであり、FIPを根本的に治療するまでには至らない、という感じです。 この二つの報告とも、試験結果からFIPの重篤な症状を緩和する効果は予想できますので、猫の苦痛を和らげる効果は一時的には期待できるかもしれません(QOL改善)。 いずれにしても、少しずつ研究は進んでいますので、今後の進展待ち、といったところです。 読んで頂いた皆さんには、「なんだ、この程度か」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、相手は正体不明なウィルス疾患、逆に着実に進んでいます、と申し上げておきます。 次回は、また違った情報をお届けします。 さて、我が家のナナちゃん、何とか猛暑を乗り越えました。 正直、この夏乗り越えられるかな、と思ったこともありましたが、涼しくなったと同時に元気を取り戻してきました。 病気の動物たちには、猛暑は堪えますね。 かく言う私、「夏は大好き!」と言うものの、この夏の暑さは堪えました。 これから夏の疲れがどっと出てくるのでしょうね。 過ごしやすい季節となってきましたが、季節の変わり目、皆さん体調管理には十分気を付けてくださいね。 こればかりは自己管理ですので・・・。
2011.09.24
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約2か月のご無沙汰です。生来の筆不精に加え、何かと忙しく・・・、やっとなんとなく落ち着いたかな、という感じです。しかし、毎日暑いですね!酷暑です!外を歩いているだけで、クラクラします。そうそう、残暑お見舞い申し上げます、でしたね。立秋とは名ばかり、この暑さは何時まで続くのでしょうか。さて、東日本大震災から5か月、被災地では復興もまだまだ追いつかない状況の中、我々の方ではむしろ原発事故や放射線汚染のニュースが幅を利かせています。我が家では、毎年夏になると、三陸の夏牡蠣を仙台の店から送ることにしていました。でも、この震災で牡蠣は壊滅状態、夏牡蠣のみならず、冬の牡蠣も今年は無理でしょう。では、私の実家の福島から夏の果物の代表である桃を送ろうと思って実家に聞いたら、「送るのはできるが、送ってもらった人がどう思うかな。かえって迷惑になるんじゃないの?」と言われました。これまで気にはしていましたが、我々が思っている以上に現地は深刻なようです。でも、福島の桃は美味しいですから、我が家分は送ってもらいました。一昨日届きましたが、箱の中には次に様なメッセージが入っていました。「・・・・、東日本大震災と原発事故により福島の農業は困難に直面し、厳しい状況が続いておりますが、農家が一丸となって困難に立ち向かい、今年も美味しい果物を全国にお届けするよう懸命の努力を続けております。 このような中、送り主様が福島の果物を贈答品として選び購入して頂きました。 安心、安全な農産物を皆様にお届けするため、精一杯の努力を続けております。福島の農家が丹精込めて栽培した農作物をご賞味いただき、福島を正しくご理解いただいて、機会がございましたら福島県産品をご購入いただくことで、福島に復興・再生の勇気をいただけれた幸いと存じます。・・・・。福島県では、出荷前から放射性物質の緊急時モニタリング検査を、定期的に継続して行っており、暫定規制値を下回っておりことを確認しております。・・・」読んでいると、何とも言えない悲しい気持ちになってきました。桃は、例年以上に甘く、大変おいしい出来栄えです。これが、こんなメッセージを添えないと出荷できないとは、それより出荷しても売れないかもしれません。京都でも、大文字の送り火にに岩手から取り寄せた薪が、放射性物質汚染の不安の声が上がって、薪の使用を取りやめ。良く聞いてみると、この薪は事前の検査で基準値以下立ったことを確認していたとのこと。牛肉も売れない、野菜もだめ、いま東日本の農業は壊滅的状況です。野菜や果物などの農産物は、作っても売れない状況で、検査で基準値以下でも、被災地の生産というだけで、売れない状況です。一方、消費者側からすれば、放射線汚染は目に見えないので、どう気を付けたらいいか分からないのが厄介です。また、内部被爆(体内にたまって被爆してしまう)の問題もあります。結局、国の設定している「問題ない」という基準値が曖昧で、本当に信用していいか、疑わしいのもあります。こうなると、何を信用していいか分からなくなってきます。今、被災地の復興を妨げているのは原発事故による放射能汚染の問題です。でも皆さん、いろいろな噂が飛び交っていますが、風評に惑わされず、冷静になって被災地を応援していただけたら、と思います。この先、復興に何年かかるかはかりしれませんが、必ず復興すると信じています。機会があれば、ぜひ被災地産のの産物を賞味してみてください。特に旬の果物、大変美味しいです。我が家のナナちゃん、この酷暑でやられています。食事時以外は、ほとんど伸びきっています。見ていて可愛そうなくらいです。ナナも、ビールと同じくらい桃は大好きですよ。9月に入ると、秋の学会シーズンが始まります。また、新しい情報を皆さんにお届けしたいと思います。皆さん、無事にこの夏を乗り切ってくださいね。可愛いペットたちも一緒に・・・。
2011.08.13
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毎日蒸し暑いですね。梅雨だから、とは言うものの、耐え難いものがあります。でも、エアコンのスイッチを押そうか押すまいか、一瞬考えてしまいます。もう少し我慢できるかな???と思いながらも、スイッチを押してしまう自分が居ます。沖縄は例年にない早い梅雨開け、西日本では大雨、なんかおかしいですね。一昨日、名古屋でセミナーを開催しました。鹿児島大学の桃井先生に講師をお願いし、検査の使い方について講演していただきました。なるほど、と思う話がたくさんありました。・・・ので、次回以降で紹介します。今日はまたまたテレビから。夜9時からの「ブタがいた教室」という映画をご覧になりましたか?小学生がブタを飼う事になり、卒業と同時に大きくなったブタをどうするか、彼らが悩んだ末出した結論は・・・。食肉でした。命の尊さを、子供たちに問いかける、なかなか良い映画でした。この映画を観ながら、ふとあることを思い出しました。給食の前に、全員で「いた~だき~ます!」という挨拶は、皆さん経験がありますよね。こんな話がありました。在る小学校で、給食の前に全員で「いただきます」と合唱した時に、言わない生徒が居たそうです。先生は、ちゃんと言いなさい、と諭したそうですが、その子が家に帰って親にその事を話したそうです。翌日、両親が学校に来て、先生に対して言った言葉、「ちゃんと給食費を払っているんだから、給食を食べさせてもらうのは当たり前。なぜ、いただきます、なんていわなくちゃいけないのか」だそうです。この話題は、車の運転中にラジオで聞いていました。実は、食事を食べる前に「いただきます」と言うのは当たり前のことだと思っていて、よく考えるとその意味など考えた事が無かった、と思いました。パーソナリティは永禄輔さん、ご存じない方も多いでしょうか?永さんは言いました。『お金を払おうと払うまいと、食事を作ってくれた方に感謝の気持ちを持つことは当たり前のこと。でも、「いただきます」はそれよりももっと深い意味がある。肉も野菜も、人間と同じ様にもともとは命があって生きていたもの。それを、人間が生きる為に彼らを犠牲にしている。つまり、人間は彼らの命をいただいている。「いただきます」とは、命をくれた彼らに対する感謝の言葉だ。」と。よく事故を起こさす走っていたなと思うくらい、聞き入ってしまいました。今日の映画は、まさにその事を子供たちに教えようとしていた、と感じました。翻って、いま私がしている仕事、これはイヌやネコなど身近な動物たちの命を助けようとする仕事です。役に立つ検査をして、獣医さんたちはいい治療をして、少しでも元気で長生きしてもらおうと、日々頑張っています。飼い主さんたちも、病気にならないよう、毎日注意を払ってかわいがっている事でしょう。でも一方で、ウシやブタのように、同じ動物でありながら、われわれの生きる糧として犠牲になる命もあること、たぶん意識している方は少ないのではないか、と思います。考えてみれば、私もそうですね。イヌやネコを小動物というのに対して、ウシやブタなどを大動物または産業動物、と言います。大動物にも、専門の獣医さんは居ます。病気が出ないように、日々頑張っています。大動物の場合は、むしろ病気が出ないように「予防」する事が大きな仕事です。安全な食肉を、私たちの食卓に届けてくれる、その第一線で活躍してくれる獣医さんたちです。「いただきます」この言葉、無意識で毎日つかっている言葉ですが、もう一度その意味を考えて、心から言いたいですね。われわれのために命を犠牲にしてくれる生き物に感謝、食の安全のために頑張ってくれている獣医さんや飼育関係者の努力に感謝、そして美味しい料理を作ってくれる方々に感謝、です。「いた~だき~ます!(合掌)」ナナちゃん、足元に居ましたが、いつの間にやら居なくなりました。自分の寝床で、既に熟睡です。動物たちにも、耐え難い暑い季節が来るんですね。では、また。
2011.06.17
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もう初夏の様な陽気ですね。我が家にはネズミの額ほどの庭があるのですが、木々が一気に芽吹いてきました。雑草はそれ以上、雑草魂、強いですね。湿度も高くなり、もうすぐ梅雨入り、といった感じでしょうか。愛犬の散歩もなかなか辛い時期になりますね。ところで、皆さん、昨日「仁」を見ましたか?なかなか考えさせられる内容でした。鉛中毒の歌舞伎役者を治療している仁、彼は少しでも延命しようと尽くします。でも、歌舞伎役者は、息子に最後の歌舞伎を演じている姿を見せたい。その一瞬を演じ切るための治療を望む。仁は悩みました。そこに女形が言いました。「命を延ばすことではなく、生きている時間を悔いの無いように過ごすことせることが大事じゃないか?」(正確にはどんな言葉か忘れました)究極の言葉ですね。現代の医学は、延命を求めています。たとえば癌。手術、抗がん剤、放射線、まずは癌を治療することから始まります。でも、それらで手に負えなくなった患者はどうなるか・・・。皆さん、「がん難民」という言葉を聞いた事がありますかその名の通り、様々な治療でも手に負えず、その後治療が無く彷徨う患者さんたち、のことです。考えただけで辛いですね。でも、医療は命を見捨ててはいけません。手に負えずとも、患者さんの残りの時間を充実した形で過ごさせてあげること、これこそ医療ではありませんか?では、獣医療はどうでしょう。人は、ものを言いますので、どうしてほしいか直接理解できます。でも、動物たちは何を言いたいのか、(私は)理解できません。たとえば癌になった時、本当に抗がん剤や放射線療法を望んでいるか。所詮、飼い主の判断で治療を選択するわけですが、それが本当に動物たちのためになっているか、私はいつも悩みます。動物は、言葉を話さない分正直だと思います。人間は、少しぐらい痛くても我慢します。でも動物は正直、体調が悪ければ元気がなくなるし、散歩も嫌がるし、食欲も落ちます。でも、体調が良くなれな、昨日までとは一気に変わって、散歩もするし餌も食べるし、となります。こう考えると、動物たちへの医療とは何が良いか、当然飼い主の判断が最優先でしょうが、私は、少しでも元気に毎日が過ごせるようにしてあげる、これを望みます。我が家のナナちゃんのことを考えれば、いざというときには少しでも苦痛を与えずに最後まで過ごさせてあげたいい、そう思っています。これは、ヒトの医療も同じ、賛否両論があります。いつの時代でも、医療においては究極の命題だと思います。私も、検査や免疫療法などにかかわっていると、いつも考えています。自分ならどうか・・・。我が家のナナちゃんならどうか・・・。皆さんはどうでしょう。愛犬や愛猫がいざというときになったら、どういう治療を選択しますか?もちろん病気の種類や治療法の有無によると思いますが・・・。我が家のナナちゃん、もうすぐ9歳。クッシングのせいもあってか、だんだんと動きも鈍くなり、散歩も嫌いになり、散歩と食事の時間以外はほとんど寝ているし。基本的に対症療法で薬を与えるしかないのですが、これとて病状が進行すれば投与量をあげてい行かなければなりません。でも、この治療方法が現状最良で、苦痛を和らげて元気に暮らせて行けるなら、私は納得して選択します。それにしても「仁」、面白いですね。この先どうなるか、龍馬や勝海舟との関係は?仁は戻れるのか?さきさんは?実は、他局で同じ時間に、喋る犬のドラマをやっているようですね。こっちも見たい・・・。
2011.05.16
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今日は暖かいですね、暑いくらいです。GW最後の休み、皆さんどうお過ごしおですか?疲れたお父さんたちも多いことでしょう。明日から、気分も新たに頑張ってください。かく言う私、いま仕事中です。さて、今までにない最速の書き込み、どうしたんだろう、と思わないでくださいね。実は、先回の細胞免疫療法の書き込みを見た知人から、質問を受けました。「飼い犬ががんの手術を受けたが、しばらく様子見ということで、何もしないのも不安。いろいろ調べたら、活性化リンパ球療法に再発予防の効果があるとあったが、どうなの?」で、その知人曰く、インターネットで動物の活性化リンパ球療法を調べたら、思ったより多くの動物病院で実施していることにまず驚き、一方で情報の曖昧さに不安になり、何を基準に病院を選べばいいかわからない、ということで、相談を受けました。確かに、調べると全国の一般開業の動物病院でも、活性化リンパ球療法を実施してるところはたくさんあります。樹状細胞療法や、再生医療をやっているところもあり、本当に驚きです。獣医学の進歩の速さと先生方の日々の努力に敬服するところです。さて、私は知人に対して、「その病院での具体的な培養方法や治療に対する考え方がわからないので、具体的にどこが良いとは言えないが、実施している先生に最低ここを聞いて、きちんと答えられれば信頼していいのでは?」と、いくつかアドバイスしました。ただし、これはあくまで私の個人的な考えですので、皆さんは参考まで、としてください。知人が具体的に曖昧(不安)に思ったのは、以下の点だそうです。それに対し私は、あくまで私どもの培養技術や共同研究先の医療機関を基準に答えました。(上にも書きましたが、他の動物病院の内容が全くわかりませんので、今回の回答が、他の動物病院の評価や批判をしているわけではないことを、ご理解いただいた上で読み進めてください。)では、会話形式で。知人をAとします。A「2週間の培養で1,000倍に増えるって、本当?」私「まず、1,000倍の考え方ね。20ml採血すると、分離できる細胞の数は、だいたい1,000万個、その内リンパ球の数を解析すると、その内約10~20%、ということは10%として100万個。それを2週間培養して1,000倍ということは、10億個、という計算だね。計算、あってるよね。」A「なるほど。でも、本当にそんなに増えるの?」私「我々の技術では可能だし、実際治療に使うリンパ球の数の目標値を10億個にしている」A「なぜ、10億個なの?」私「この数字は、正直根拠は薄い。一応根拠は、免疫療法自体大きながんの塊を駆逐する効果は弱いのだが、1個のがん細胞を破壊するには1,000個以上の免疫細胞が必要だと言われている。たとえば、1cm位のがんの塊は約100万個のがん細胞で出来ていてるので、その1,000倍、つまり10億個、というのを一つの基準にしているね。」A「1cm以上のがんはどうなの?」私「これは、手術や抗がん剤などで、まずはがんを小さくするのが先決。免疫療法自体効果はマイルドなので。手術後の再発予防は、一番良い使い方だと思うよ」A「ということは、1,000倍に増やしている、というより、実際に治療で投与する細胞数を確認したほうが良い、ということかな?」私「そう思うね。実際、投与する細胞数は必ず計測しているはずだから。薬の量をわからず投与することなんてないでしょう?それと一緒。ただ、患者の状態やほかの治療を一緒にやっている場合は、細胞の増えが悪いことはよくあること。たとえば末期で免疫状態が悪い時。免疫機能を抑えるような抗がん剤やステロイド剤を投与しているとき、また放射線治療も免疫機能を抑えるから、増えが悪いこともある。」A「そういう時は、どうするの?治療できないの?」私「培養開始前に解析するので、その時点である程度予測できるし、3,4日培養して増えが悪い場合は、いろいろ増えるように工夫する。でも、どうしても増えが悪い場合、その時は先生と相談だね。」A「なるほどね、わかった。ところで、あなたの会社のHPを見ると、今は犬しかできない、と書いてあるが、猫でもやっているところもあるようだが?」私「それは良くわからない。私のところとは違う培養方法なのかもしれないし。もし、猫でも犬と同じようにリンパ球が1,000倍も増えるなら、ぜひその技術を知りたいくらい。HPを見てもらえればわかるけど、培養には抗CD3抗体とIL-2(インターロイキン2)という特別な試薬を使う。猫の場合、いい試薬がないので、犬のように1,000倍には増やせない。あっ、あくまで私のところの技術ではね(苦笑)」A「ということは、猫に活性化リンパ球療法をやる時も、そのあたりを具体的に確認したほうが良いんだね?」私「新しい治療法だから、聞けば丁寧にわかりやすく教えてくれると思うよ」A「で、これは切実な話なんだが、治療費が高いよね。何であんなに高いの?」私「確かに、そういう話はよく聞くね。でもね、実際に培養している側からすると、必ずしもそうは思わない。まず、培養に使う試薬、これは医薬品に準ずるものだったり特殊なものだったり、試薬自体の値段が高い。また培養する間に、使う容器など消耗品。また、治療に使うので、安全性を検査しないといけない。培養中の雑菌の混入が一番怖いからね。あとは、施設によって違うかもしれないが、どんなリンパ球が増えているか解析する。これらに使う検査試薬や手間。あとは、2週間培養にかかる人件費や施設費、等々。そこに多少の利益。動物病院だってボランティアじゃないんだから、利益を上げないといけないわけ。これはよくわかるよね。こう考えたら、決して高い費用じゃないと思う。」A「なるほどね・・・」私「難しいのは、1回で終わる治療じゃないからね。何回かやって効果が出てくる治療法なので、1クール〇回治療する、と書いてあるところがよくあるでしょう。治療費は治療回数も関係してくるからね。そのあたりも、治療する先生の考え方をよく聞いたほうがいね」A「そうか・・・。その他、何か聞いたほうが良いことはある?」私「とにかく、事前によく調べて、自分が納得することだね。どんな治療でもそうだけど、やってから後悔しないように。いずれにしても、活性化リンパ球療法は新しい治療法なので、まだまだ研究段階の部分も多いし、先生方もよく勉強して研究している。聞けば、必ずわかりやすく答えてくれると思うよ」A「なるほど、そうだね」私「あとは、治療に使う活性化リンパ球は医薬品と同様であること、つまり最低限の安全性は確認されていることかな。事故が起こってからでは遅いからね」A「事故?そんなこともあるの?」私「少ないが、昔は人でもあったよ。原因は、培養中に雑菌が混入して、それを確認しないで投与した、という事例がほとんど。人の現場では、今は安全性の確認も含めて培養方法が標準化しているので、まったくと言っていいほどないと思う。そう、今世間を騒がせている生肉ユッケ騒動。あれの根本的な原因は、コストカットするために、実施すべき細菌の検査をしなかったり、肉の表面を削らなかったり、ということでしょう。テレビであるコメンテーター言っていたけど、最低限の安全性を保証する検査などを確実に実施したら、ある程度商品が高いのは仕方がない、と。一理あると思うけどね」と、まあ長時間話し込みました。彼、わかってくれたかどうかわかりませんが、いずれにしてもわからない事は、どんな些細なことでも質問して、納得して治療を受けることです。まして、新しい治療法ですから。どうですか、少しは参考になったでしょうか?では、GW最終日の午後、明日からのためにゆっくりしてください、特にお父さん・・・。
2011.05.08
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皆さん、GWは如何お過ごしですか?今日はGWも中盤、このあたりは天気も最高、川縁ではバーベキューを楽しむ姿を見かけます。やはり、青空のもと楽しむのは、心身ともに最高ですよね。私はここのところ何やら忙しく、久しぶりに書いています。大震災からはや2ヶ月が過ぎようとしていますが、復興に向けて自粛ムードも少しすづ解禁してきた、そんな感じでしょうか。でも、まだまだ被災地は大変なのでしょう。今回は、「細胞免疫療法」について少し紹介します。細胞免疫療法、聞いたことのある皆さんもいると思いますが、細胞を活性化(強化)して体に注射し、免疫機能を強化する、治療法です。私どもで技術支援している「活性化リンパ球療法」などがこれです。この治療法は、人医療では既に30年以上も前から実施されており、一時期「がんの第四の治療法」などと、もてはやされました。ちなみに、がんの治療法は、手術、抗がん剤、放射線療法、を三大療法と言ってます。免疫療法とは、もともと生体にある免疫力を強化してがん細胞を駆逐しよう、という発想から生まれました。がん細胞は、正常細胞が何かしらの原因で変異し発生しています。がん細胞は毎日体の中では発生しており、健康な状態であれば、体の免疫監視機能が働いてがん胞を殺している、と言われています。この免疫監視機構を逃れた細胞が、長い時間をかけて増殖し、「癌」という病気を発症させます。つまり、この免疫機能を強化してやれば、がんの治療に使えるのではないか、ということですね。どうやって強化したらいいか、これはいろいろな方法が言われています。たとえば、食事やサプリメントなどもその類ですね。でもこれは、もともと体の免疫機能が弱っていると、摂取しても反応してこないわけで、日常の健康維持には大切ですが、治療には向かないと思います(私見ですよ!)。では、どうするか。体の中に異物が侵入してきたときに排除する免疫機能の中心は、「リンパ球」という細胞です。ウィルスや細菌、または癌細胞など、まず「異物(敵)」として認識し、その情報をリンパ球に伝えて、リンパ球は敵を攻撃します。ごくごく簡単に言うと、こういうことです。というわけで、このリンパ球を強制的に強化してやれば、弱った免疫機能を強くして治療に使えるのではないか、というのが、細胞免疫療法の考え方です。この技術は、人に限らず動物にも応用可能で、既にイヌの活性化自己リンパ球療法は各所の動物病院で実施されています。インターネットで「イヌ、活性化自己リンパ球療法」で検索すると、実施している動物病院がわかります。3年ほど前、ある獣医の学会で細胞免疫療法のシンポジウムが完済されたことがありました。私も縁者の一人でしたが、広い会場は満員で、先生方の関心の高さを感じました。ただ、その時は、新しい治療法として興味が優先していたようにも思いました。その後、技術も普及し大学や大きな動物病院で研究も進み、現在では具体的に実施したいという先生方も増えてきています。大変喜ばしいことです。一方で、自前で培養施設を設置する必要があることや、症例が少ないことで、実施まで踏み切れない先生方もたくさんいます。難しいところですね。これからの課題は、まずは治療法としての情報を積み重ねて、いくことです。各病院ではそれぞれ工夫した培養方法を行っていますが、どの方法がいいのか、どうやったら治療効果が上がるか、症例数を増やして情報を発信していくことが重要です。一方、治療費の問題があります。活性化リンパ球を培養するには、高価で特殊な試薬や医薬品を使いますので、必然的に治療費も高くなります。また、効果がマイルドですので、複数回の治療を実施することになります。(治療に対する考え方や治療費は、実施している病院に直接尋ねてください)我々の使命は、より良い培養技術を開発、改良して提供するとともに、できるだけコストダウンをはかって治療費を安くできる方法を考案すること、これがこの治療法の普及につながると思っています。いま、細胞免疫療法は、活性化リンパ球療法以外にも、樹状細胞療法、γδ(ガンマ・デルタ)T細胞療法、などなど、ヒトと同じ治療法が動物でも試みられています。ここ数年で、そうとう進歩すると思います。すごく楽しみです。また、使い方も、三大療法との併用やQOL(生活の質)の改善、などなど、応用範囲は限りなく広いと思います。免疫機能を強化するわけですからね。私の印象、OQLはかなり良く改善します。残念ながら、培養技術の関係で今はイヌだけが対象ですが、近い将来ネコもできるようになれば良いですね。検討中です!というわけで、もし興味を持っていただいた飼い主さんは、ぜひ調べてみてください。で、実施されている先生の話をよく聞いてみてください。え?我が家のななちゃんががんになったら使うか、って?もちろん、使います!少しでも苦痛を軽くしてあげたいですから(QOLの改善です)。かく言うななちゃん、暖かくなって我が家のベランダに出てきたカナ蛇を一撃必殺(このあとどうなったかは、ご想像にお任せします)。野生の本能が蘇ってくるのでしょうか。では皆さん、楽しいGW後半をお過ごしください。
2011.05.04
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大地震から10日が経ちました。悲喜交々の情報がテレビを介して流れています。地震の災害に加えて、原発事故。特に日本人は「原子力」には敏感な国民、シーベルトやらベクレルやら、様々な数字が毎日公表され、かといってどう理解していいかわからず、一方で野菜や原乳の出荷停止など食生活にも影響が出ており、いろいろな情報に敏感になっている自分がいます。私の知人も親類も東北地方にたくさんいます。まずは、皆さん無事なことは確認できたので、一安心ですが・・・。でも、仕事にには影響が出てきていますね。物資の輸送網が回復していない影響が大きいです。未だにライフラインが回復していない情報を聞くと、いま自分に何ができるか考えてしまいます。義援金や物資の援助、ボランティアでの参加、など様々。そのなかで、自分には何ができるか、少しでも役立つことは何か。そう考えていると、一方で何もできない自分に情けなさを感じる自分もいます。そんなことを毎日考えています。日本人の国民性を考えたときに思うことは、日本人とは何事にも寛容な考え方を持っていると思います。私が大きな災害として現実的に記憶しているのは阪神淡路大震災ですか、過去には関東大震災、戦争、など、必ず復興を成し遂げてきています。思うに、日本人は大災害も受け入れる寛容性をもち、それを糧に一致団結して前向きに復興に突き進む、前向きな国民性を持っていると思います。素晴らしいことですね。たとえば、計画停電。予告があるとはいえ、突然起こる停電にも、被災者への援助だと理解し受け入れています。積極的に節電に努めている自分も家族もいます。常々考えたこともなかったことを、意識して実施している自分がいます。個人主義が蔓延し、自分が良ければ良い、という風潮が叫ばれてだいぶ経ちます。でも、今日本中は被災者にどうしたら役立つか、国民のほとんどが考えています。これが、日本人ですね。改めて感動しています。私も、何ができるか考えていながら、未だにわかりません。でも、節電を意識しコンセントを抜き、コンビニに行っては小銭を募金箱に入れる、そんな自分がいます。道路網や鉄道網も徐々に回復、とにかく早い復興を願っています。頑張れ、被災地の皆さん!
2011.03.21
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前置きなしで・・・。皆さん、地震は大丈夫でしたか?被害あわれた方には、心よりお見舞い申し上げます。これから先、被害状況が徐々にわかってくると思います。皆さんも、協力しあって、頑張ってください。私は、今日午後から横浜で始まる獣医内科学アカデミーの講演を聴講するため移動中でした。途中、川崎駅に着く直前に、車両が横転するかと思う様な激しい揺れがあって、ギリギリホームに入って下車、収まったと思ったらまた強い余震、驚きました。このあたりで、震度5弱、と知り、さらに驚きました。長い横揺れで、船酔いのようで気分が悪くなるような揺れでした。この時点で、こんな大きな被害が出ているとは全く想像もしませんでした・・・。幸いにも宿が取れましたので、部屋で書いています。いま、また余震です。いやな揺れです。ゆっくりとした横揺れです。余震は収まってきたかと思っていましたが、また数回来てます。家族とはメールでのやりとりで、お互い無事を確認したのですが、私の故郷が福島で、全く連絡が取れない状況です。心配ですが、どうしようもないです・・・。明日、電車が動くかどうか、帰宅できるか、仕事場は無事か・・・。とりあえず、休むことにします。皆さんも、十分に気を付けてください。無事をお祈りします。では・・・。
2011.03.11
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今日から3月だというのに、寒いですね。昨日は霙もちらつきました。一方で、花粉症も本格化。すでに25年程度の付き合いの私としては、これから2か月間最悪の毎日が続くと思うと、憂鬱です。「寒さに震えながら鼻をかむの図」、想像したくもないですよね。鼻と目玉を取り出して水でジャブジャブ洗いたい、そんな気持ちになります。皆さんの中にも、花粉症持ちの方、多いんじゃないですか?さて、これからだんだんと暖かくなり、皆さん可愛い愛犬を連れて散歩や旅行に遠出して、と計画されている方も多いんじゃないでしょうか?以前、犬のバベシア感染症、という話をここで紹介したことがあります。ちょうど1年くらい前だったかもしれません。この病気は、バベシアという原虫がマダニなどに媒介されてイヌに感染し、赤血球に寄生して貧血を起こす、というものです。詳しくは調べてみてください。元々は暖かい地方に限定されていた病気で、なぜならバベシア原虫を媒介するダニが、暖かい地方に住む種類のダニだからです。ところが、近年、この範囲がだんだんと北上し、今や関西ではだけではなく関東でも感染が確認されています。原因は、いろいろ言われています。地球温暖化。平均気温が上昇していますから、ダニの生息する環境が北上している。交通網の発達による旅行範囲の拡大、アウトドアブームによるキャンプなどの流行。これはそのまま、ペットを連れて家族全員でキャンプ場で宿泊、イヌはドッグランや広い野原を駆け回り・・・、ということでしょうか。たとえば、関東に住んでいる方々が少し足を延ばして南の方のキャンプ場へ、等というケースは良くありますよね。これで感染するケース。バベシア感染症を疑う場合、旅行歴も大いに参考になるようです。飼い主さん、豆知識ですよ!一方で、全く旅行歴がないにもかかわらず、関東でもバベシア感染が確認されています。つまり、バベシアを媒介する暖かい地方のダニが、北上している、という証拠ですね。野山や草叢、ダニの生息しそうな場所は、要注意です。私どもの検査でも、北は岩手県からの依頼の検体から、バベシアの感染が確認されています。さすがに、この場合はどこかに旅行した時に感染したものだと思いますが、こういうケースも大いにあり得るということです。今回、私どもはバイエル薬品さんと共同で、イヌのバベシア症啓発活動を開始しました。バイエル薬品さんは、ノミやダニの駆虫薬を販売されておりますが、一方でこれだけ感染が北上しているにもかかわらず、未だ具体的な疫学データが無く、また先生方の認知度も低いことから、私どもの解析データを使って共同で啓蒙活動をして行きましょう、ということになりました。バイエル薬品さんのHPには、弊社で検査依頼を受けたデータを日本地図上に示した結果が載っています。これは、あくまで私ども一検査会社のデータですので、イコール疫学データではありませんが、関東やその以北にまで感染が確認できることがわかります。この啓蒙活動は、動物病院の先生方向けのものですが、一般の飼い主さんも、ぜひ意識して頂ければよいかと思います。これからだんだんと暖かくなり、旅行には最適な季節になります。と同時に、ダニなどの活動も活発になってきます。皆さんの注意ひとつで、防げることもあります。また、「おかしいな・・・」と思って動物病院に行ったときには、旅行歴などを書き出して行くと参考になります。詳しくは、以下バイエル薬品さんのHPをご参照ください。http://www.bayer-ah.jp/news/2011/02/2500.htmlhttp://www.cvbd.jp/html/activity/domestic/babesiosis-map.html我が家のななちゃん、歳をとってきたせいか病気のせいか、寝ている時間が多くなったような気がします。でも、考え様によっては、特に室内外ですから、散歩、食事、我々と遊んでいるとき、以外はほとんど寝ているんでしょうね。薬を増量して約1か月、飲水量も並行線です。いつまでも元気でいてくれることを願っています。ではみなさん、花粉症対策、がっちり行きましょう!
2011.03.01
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寒い寒いと背中を丸めて歩いていますが、今日はもう立春なんですね。そういえば、やや暖かいような気がした一日でした。 そして節分、皆さん、豆まきはしましたか?それとも恵方巻き? 私は、「恵方巻き」というのは小さいころは聞いた事も無かったのですが、関西では当たり前だったのでしょうね。ちなみに、東北生まれでその後点々と、ただ関西には住んだことが無かったです。「福は内!鬼は外!」、これで良い春を迎えられそうですね。「鬼は内!・・・」という地方もあるとか無いとか・・・。 十日ほど前、ナナちゃんのクッシングの検査に行ってきました。 一か月ほど前から、やや元気がなく、徐々に飲水量も増え気味で、食欲旺盛で(これは何時も)、そして腹部が少し垂れ気味というか丸くなってきた感じがしていました。 これまでの感じから、たぶんホルモン値が上がってきたかな、という予感はしていました。 病院に行くにあたって、去年5月からの毎日の飲水量のデータをまとめてみました。夜中に眠い目をこすりながら、でしたので、とりあえず手元にあった5月から、にしました・・・。 毎日の記録は、紙に数字を書いていただけでしたが、それをグラフ化すると大変面白いデータになりました。 一番最初クッシングで掛かった時に、担当の獣医さんから、「家では毎日の飲水量を量ってください。これが病気の進行の目安になります」と言われました。確かに、当時は異常に水を飲み、異常にオシッコをしました。半信半疑でしたが、量りはじめました。 そうすると、薬(トリロスタン)を飲み始めてから徐々に飲水量が減ってきました。見事に、です。 それ以来、ほとんど毎日記録しています。 面白いことに、飲水量が徐々に増えて来たときにホルモンを測ると、確かに高い値がでて、薬を増量するとまた飲水量が徐々に減ってきて安定してくる、のがよくわかりました。 今回も、徐々に増えて来たので、高くなってるかな、と思いながら検査したら、案の定高値でした。 可愛いペットたちには、毎日健康で元気でいてほしいですが、毎日獣医さんに診てもらうわけにはいきません。ですから、毎日接している私たちがいかに注意深く観察するか、すごく大事なことだと、改めて感じました。 飼い主は、日常の獣医さんみたいなものですね。 飼い主ができることはたくさんあります。 撫でるときも単に撫でるのではなく「異常はないかな?腫れていないかな?怪我してないかな?・・・」と考えながら。 餌や水をあげるときも、「食欲はどうかな?水の飲み方は?・・・」。 散歩のときも、「歩き方は大丈夫かな?元気はあるかな?」。 ちなみに、ナナちゃん(黒芝、雌)の体重は今約9kg、落ち着いているときの1日の飲水量は100から200ml程度、それが日常的に250mlくらいを超えると???、300mlを超える日が続くようになると、上に書いたような感じになってきます。 私たちも、だいたいわかるようになりました。 今は、先日の検査後薬を増量したので、徐々に飲水量も減ってきています。 この病気は治ることはないので、毎日注意深く観察しながら接してあげることが、飼い主の責任ですね。 そして、元気で長生きしてほしいです。 それが願いです。 皆さんも、可愛い大事な家族を守るため、毎日の獣医さんになってくださいね。 さて、では部屋に散らばっている豆でも、ナナちゃんと拾って歩きますか。 ナナちゃんは、食べまくっていますが・・・。 インフルエンザ、流行っています。 皆さん、気を付けてください。
2011.02.03
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(遅蒔きながら)明けましておめでとうございます。昨年は、拙い文章ながらお付き合いいただき、ありがとうございました。本年も、いろいろな情報を私事を交えながらお伝えしていきたいと思います。引き続きお付き合い頂けますよう、よろしくお願いいたします。明日は春の七草、私は体も頭も未だ正月ボケ気味ですが、皆さんはいかがですか?もう普通に社会復帰してますよね。さて、正月早々ですので、難しい話は置いときまして・・・。昨年の中ごろから、私どもは遺伝子検査や免疫療法のことを先生方に広く知っていただこうと、希望があれば病院に出向いてセミナーや病院勉強会などを開催させていただいております。ほとんどが関東近辺ですが、遠くは滋賀県などにもでかけました。今月も、すでに4件の病院勉強会へのご希望を頂いております。その時の話で・・・。昨年11月に、女性の獣医師が集まった研究会があり、少し時間を頂いて検査の宣伝をさせていただきました。その時に、会を主宰する先生とお話しする機会があり、昔話もお聞かせいただきました(兎に角話が大好きな先生でした)。その昔は、女性獣医師は世間からは「獣医師」としては認めてもらえず、動物病院に来た飼い主からも、「男の先生に代わってくれ」という様なことも言われたことがあるそうです。今では考えられないことですね。今は優秀で優しい女性の先生がたくさんいます。そんなことがあって、女性の獣医師仲間数人が集まって、手弁当の勉強会を作ったそうです。当時は「勉強会」とは言っても名ばかりで、それこそ世間話や夕ご飯の話、はたまた愚痴等々、井戸端会議と似たような感じだったそうで、つまりは先生方のストレス発散の場だったのでしょうね。その後仲間が少しずつ増え、だんだんと研究会らしくなってきた、と仰っていました。今や、勉強熱心な女性の先生の集まりで、(お歳の話をして申し訳ないのですが)創設当時の先生から大学を卒業したばかりの新米先生まで、たくさんの先生方が集まります。女性の獣医師の集まりなので女性ばかりだと思っていたら、男性の先生も参加していました。講演の内容によっては、男性の先生からの参加希望も多くあるそうです。設立当初からは考えられない、そういう時代になったのですね。すでに社会では、女性の活躍が目覚ましく業種によっては男性を凌駕するところも出ています。一方では、どうしても女性に不利な仕事や会社も存在するのも現実だと思います。では、こと獣医師や獣医療はどうか、といえば、全く男女の差は無いと思います。さらに言えば、獣医療は患者である動物たちに加え、飼い主さんにも十分に接しなくてはなりません。ここが、ヒトの医療と一番違うところです。私が思うに、獣医師は人の医師よりもサービス業に徹することが必要な気がします。そういう意味では、むしろ女性の活躍の場であるような気もします。確かに、動物を扱うには体力が要るとか、時間が不規則だとか、きつい部分もあるかと思いますが、やり甲斐のある仕事なのは確かでしょうね。家庭を持っている先生も多く、家族の面倒を見ながら日中は診療、夜の空いた時間でセミナーや勉強会、本当に頑張っています。(男の先生も皆さん頑張っていますよ!!!)女性の先生には、ますます頑張ってほしいです。今日は、女性獣医師の応援でした。さて。我が家のナナちゃん、17日にクッシングのホルモン検査(コルチゾール)をします。今3か月に1回の検査です。これで数値が高ければ、薬(トリロスタン)の増量です。体調は落ち着いているようなので、たぶん大丈夫だとは思いますが・・・。トリロスタンは、今月から内製薬メーカーから動物専用の薬として発売になりましたので、これに代えられるか聞こうと思います。効果は同じはずなので、安ければ代えます。あとは、緑内障の眼圧検査、です。クッシングで可哀相なのは、毛が生えてこなくなる、ことです。今のところ極端な脱毛はないのですが、まず季節ごとの換毛がなくなりました。また、エコー検査のために腹の毛を剃ったのですが、すでに1年以上たってもほとんど生えてきません。さらに、散歩時につける胴輪の跡がくっきりとついてきました。特に黒芝なので、跡が白くなり目立ちます。でも、とりあえず薬でコントロールできる病気ですので、元気で長生きしてほしいです。さてさて、本年もどうぞよろしくお願いします。
2011.01.06
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この一年も早いもので、もう最後の一日になってしまいました。だんだん一年過ぎるのが早くなります。歳のせいだとはよく言いますが、いろんな意味で忙しい一年でした。皆さん、今頃何してますか?紅白?今年を振り返ると、まず一番には、約束を守れなかったことです。ちょうど一年前、「来年は少なくとも週に一回はブログを更新する」と言いましたが、守れませんでした。反省、です。来年こそは・・・、です。検査については、少しずつ遺伝子検査を認知して頂けてきた、という感じです。確かに「遺伝子」というと難しいと思いがちですが、たとえば感染症の場合原因の菌やウィルスの遺伝子の存在を直接検出しますので、従来の検査に比べて精度は格段に高い検査です。そのあたりを、少しずつ理解して頂けたような気がします。活性化リンパ球療法、法律的な縛りが厳しく、なかなか実施して頂ける動物病院が増えませんが、大学病院との共同研究で実績はだんだん積み上がっています。今年は辛抱の一年でした。さて、来年の展望を。遺伝子検査では、さらに新しい検査項目をラインナップしたいと思います。どんな検査を飼い主の皆さんが希望するか、徹底した調査を継続して、希望に答えるようにしたいです。今年は、リンパ腫や白血病の腫瘍関連検査、肥満細胞腫のc-kit遺伝子検査、そしてネココロナウィルス検査、が多くご利用いただきました。肥満細胞腫、来年新しい動物用としての分子標的薬が認可される可能性があります。現在、ヒトのイマチニブを利用していましたが、初めて動物用の薬が認可されれば、さらに使いやすくなると思います。コロナウィルス検査、FIPの検査として利用して頂いておりますが、今のところ治療薬や方法が確立されていません。検査でも、FIPウィルスというものが正確には確認されていませんので、残念ながらコロナウィルスを検出することで検査している段階です。でも、治療薬やFIPウィルスの研究は確実に進んでいます。ここで紹介はできませんが、来年は実を結ぶ年になるかと思っています。FIPを心配されている飼い主さん、少し期待してください。活性化リンパ球療法、来年は学術的な実績が十分積み上がり、先端の治療法として認知される年になると思います。一般の開業の先生方が実施するにはなかなか難しいのが現状ですが、大学病院や二次診療や先端医療に力を入れる病院とうまく連携できる仕組み作りにも力を入れたいと思っています。個人的には、今までの基礎技術や成果を利用して、新しい分野に進出したいと思っています。仕掛けづくりは、今年の内にすこし手を付けました。うまくいくかどうか、大変ですが楽しみです。我が家のナナちゃん、8歳になりました。クッシングは落ち着いています。そういえば、クッシングに使っているトリロスタンという薬、これもヒトの薬の流用でしたが、来年動物用の薬が出るようです。だんだんとペットの認知度が上がり、獣医学も進歩しているようですね。飼い主としてはうれしい限りです。ナナちゃんに戻りますが、クッシングは落ち着いていますが、これも進行性の病気ですので、日々気をつけています。また、緑内障も毎日目薬でケアしていますが、これも進行性ですからね、元気で長生きしてほしいと願っています。あと3時間で今年も終わり、皆さん良いお年をお迎えください。可愛いワンちゃん、ネコちゃん、そして皆さんの来年の幸をお祈りいします。来年も、ぜひよろしくお願いします。来年こそ、週に一回はブログ更新、頑張ります!!!
2010.12.31
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本格的な冬到来、寒くなりましたね。私は冬が苦手なので、この先どう過ごしていいか、悩んでいます。歳をとるごとに、寒さには弱くなってきているような・・・。先日学会の会場で、ペットの保険会社の方と話をする機会がありました。数年前に比べると、保険の内容も多様化し、人でいう生命保険の様なものから、障害保険までいろいろあるようです。さらに、ペットも長生きになってきましたので、健康であれば(健康診断書が必要)16歳ごろでも入れるような保険もあるようです。すごいですね。今ペットの保険を扱う会社は、全部で9社あるそうです。一方で、保険に加入しているペットの数は、全体の2%程度、思っていた以上に低い数字でびっくりしました。確かに、普段健康な内は病気のことなど考えないことが多く、病気になって初めて治療費やらかかる費用に悩む、ということが多いですよ。人も一緒ですね。我が家のナナちゃんも、クッシングの治療で毎日薬を飲んで、緑内障の発症予防に目薬を差して、毎月一回診察に行って、3か月に一回クッシングのホルモンの検査と眼圧の検査、等々、正直負担は少なくないです。でも、少しでも病気の悪化を抑えてあげて元気に過ごしてほしい、というのが飼い主としての気持ちですので、治療を止めるという考えは浮かんできません。こう考えると、特に治療費を保証してくれるような障害保険や医療保険の様なものは、考えても良いんじゃないかと、思うことがあります。全ての保険を比べて、それぞれの特徴とつかんでおくことも大事ですね。一つ、ご注意を。すでに病気になっているペットは保険に入れません、または条件が制限されます。皆さん「何だそんなこと、あたりまえじゃないか」と言われるかもしれませんが、保険屋さんに聞くと、「うちの犬は今〇〇病なんだが、保険に入れるか?」という問い合わせは案外多いそうです。転ばぬ先の何とやら、あまり興味ない飼い主さんも、将来を考えると検討してみるのも良いと思います。ちなみに、我が家のナナちゃん、保険屋さんに聞いたら、「保険に入れないことはないが、クッシングと緑内障の治療、またはそれが引き金で起こった病気で治療した場合、保険は使えません。」とのこと。クッシングはホルモンの異常ですし、緑内障は柴犬に比較的多いとされている眼の病気なので、これから先何か体調が悪くなった時、これらの病気には関係ない、ということを証明するのは難しいな・・、と考えています。飼い主の皆さん、人の方ではインフルエンザやノロウィルスの感染が大流行のようです。外出から戻ったら、手洗いとうがいを励行してください。予防に勝る治療なし、です。
2010.11.26
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めっきり秋らしくなりましたね。朝晩は一枚は羽織らないと、寒く感じる日があります。夏大好きな私にとって、あの暑さが懐かしく感じるこの頃です。皆さん、風邪などひいてませんか?先日の日曜日から、「獣医ドリトル」というTV番組が始まりました。ここをご訪問いただいている皆さんは、たぶんご覧になったかと思います。動物好きの自分半分、仕事柄興味深々で見ている自分半分、とこんな感じで見てました。小栗旬演じるスーパー獣医師鳥取先生(とっとり、とりとり、とりとる、ドリトル、だそうですね)、ネコの脳内血腫やマーモセットの白内障、カメの膀胱結石、はたまた競走馬の骨折、の治療と八面六臂の大活躍。すごいですね。こんな獣医さん、探せばいるのかな・・・。一方、チェーン動物病院を運営する獣医師と、牧場でウシを相手に研究に没頭する獣医師、対照的な二人です。思わず、居る居る、と心の中でうなずきながら・・・。そして、悪徳獣医師を告発する、という女性弁護士。やりすぎだろう、と少し熱くなったり・・・。このドラマの中で、いくつか現実に合わせて考えさせられました。「獣医はビジネス」。ドラマの中ではこの言葉は「悪徳」と位置付けられていますが、はたしてどうなのでしょう。100万円やら3,000万円やらという額はさておいて(現実的な数字かどうかはわかりませんので)、実際に治療には費用が掛かります。人と動物の違いこそあれ、やることはほとんど一緒です。それ以上に、獣医はカメからウマまで診なければなりません。また、治療薬もほとんどが人のもの。こう考えると、治療内容によってはある程度高額(と思われる)治療費がかかります。ドリトルが、治療前に費用を提示することは、見方によっては良心的、と思えなくもないです。皆さん、獣医さんに掛かった時、検査や治療内容の事前の説明はあっても、費用の説明まで受けますか?事前の説明はなくても、最後に費用の内訳の説明だけはほしいですよね。「告発と訴訟」。私は専門家ではないので、詳しい現実は全くわかりません。でも、医療訴訟が増えることで獣医さんが守りに入ってしまう、ドリトルの言っていることは、一部はあたっているような気がします。でも、いざ自分の可愛いペットが同じことになったら、飼い主の気持ちも良くわかります。難しい問題ですね。「できると信じること」。ベランダから転落して脳内出血で意識不明になったネコの飼い主の男の子。ドリトルの言った言葉、「回復の可能性は20%、でもゼロではない。回復すると信じて一生懸命毎日話しかけること」。この子は、この言葉を信じて毎日話しかけ、ネコは見事意識回復、最後に「将来は獣医さんになりたい」と、この時点でウルッ。この言葉は、どんな場面でも通じますね。可能性が低くても攻めるか、守りにはいるか。結果がどう出るかはやってみないとわかりませんが、あれこれ理屈をつけるより、まず可能性を信じること、私は大いに共感しました。TVドラマなので、それぞれの場面の表現は大げさですが、これから先の展開が楽しみです。我が家のナナちゃん、先日目の検査をしてもらったら「緑内障」の気があると。眼科の専門の先生に診てもらったのですが、検査装置は人間並み、驚きました。費用、ある程度は覚悟していましたが、掛かりましたよ。クッシングやら緑内障やら、可愛そうですが、でも飲み薬で維持できているのはまだいいのかもしれません。この話は改めて・・・。だんだん寒くなっていきます。皆さん、ワンちゃん、ネコちゃんともども、体調管理には気を付けましょう。
2010.10.19
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約2か月ご無沙汰していました。 いやはや、暑い夏でしたね。本当に何もする気にならないくらいの熱気でした。 いろいろありまして書き込みをサボっていましたが、急に涼しくなり、やっと重い腰を上げた、という感じでしょうか・・・。 皆さん、体調崩してないですか? ワンちゃん、ネコちゃんは元気ですか? 再開(とは大げさですが)第一弾として、あるセミナーで良い話を聞きましたので、紹介します。 静岡県立がんセンター総長の山口健先生のご講演。 静岡がんセンターは、富士山の裾野、素晴らしい景観のところにあります。 がんセンターですので、最先端の治療はもちろんのこと、終末期医療にも力を入れており、ホスピスのベッド数は日本一だそうです。 その山口先生のお話。 先生のご経歴から静岡がんセンターを立ち上げてから現在までの歴史、そして治療や患者に対する考え方まで、大変興味深く聴きました。 その中で、私が感銘を受けた言葉が、「医学は科学、医療は物語」という言葉でした。 「医学は科学」この言葉は、なんとなく理解できますよね。 医学というのは、難治の病気を治すため、新しい治療法や薬を研究開発、臨床試験で効果を確認し、患者さんを救命するために全力を注ぐことを使命としています(間違っていたらお許しください)。そういう意味では、学問的な意味合いが強く「科学」であるといえます。難しく言うと、人間を客観視して人体を研究していく近代科学的な考え方、です(だそうです)。 では、「医療は物語」という言葉、皆さんはどうとらえますか? これは、故・河合隼雄さん(臨床心理学の第一人者、2007年逝去)が語られた言葉だそうです。 (興味のある方はネットで調べてみてください。大変興味ある記事がたくさんあります) 「科学」は事実だけをとらえます。一方「物語」は、事実を関連付けることで成り立ちます。 病院にいてがん患者さんや家族を見るとき、とくに患者は、がんという事実、その後の病状の進展を受け入れる過程で、自分の人生を振り返り、また残された人生をどう生きていくか、考えを求めらえます。この「物語」は、個人それぞれで違います。個人はその個人の物語の中で生きています。そこに、科学的に正しい事実を言ったところで、すぐに変わるものではない、と仰っています。 「医師や看護師は、正しいことを言えば患者は従うと思うのは大間違いだ」「個人はそれぞれの物語を持っているのだから、正しいことだけではなくて、個人の生き方を尊重すべき」と言っています。 「よく死ぬことは、よく生きること」とよく言われますが、患者さんがそれまでの人生の意味を見出し、「生まれてきてよかった。良いことも悪いこともあったけれども、総じて良い人生だった」と納得し、自らの人生に納得できるよう、患者さんをサポートすることが、患者さんや家族に接する医療従事者の役割だ、と言っています。 感銘しました。 これを獣医療に置き換えて考えてみました。 「獣医学は科学、獣医療は物語」、みなさんどうですか? 獣医療は、今大変なスピードで進歩していると感じています。 この根幹は、医療に追いつけ、だと思います。 私どもが関わっている分野だけでも、遺伝子検査、がんの分子標的薬、再生医療、等々、素晴らしい成果も出ています。さらに、大学病院や高度医療を実践している施設だけではなく、一般の開業動物病院でも利用できるようになってきています。大変な進歩です。先生方も大変研究熱心な勉強家です。 一方、「何が原因であれ、どんな病気であれ、痛いならまず痛みをとる、熱があるならまず熱を下げる。まず、普通の生活ができるように戻してあげることを優先して考える」、という先生もいます。素晴らしい考え方だと思います。 特に獣医療の場合、飼い主さんの気持ちを考えてあげる、ことも重要です。 飼っている動物は、自分の家族や子供以上に、分身の様な存在になっている場合もあります。 こう考えたときに、獣医さんは目の前の治療すべき動物と合わせて、飼い主さんの物語作りも手伝ってあげることができる存在、であるべきなのかもしれません。大変だと思いますが、ぜひ考えていただきたい、私も飼い主の一人として思います。 我々も、獣医療の一端を担う役割を持っていることを自覚し、仕事をしていかなければならない、と改めて考えさせられた講演でした。 ご興味のある方は、以下のサイトを覗いてみてください。 河合隼雄さんや山口総長の話が載っています。http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2409dir/n2409_01.htmhttp://www.ytakashi.net/contents/0.cancer/reports/061021sizuokacenter.pdf#search我が家のメタボナナちゃん、とにかく暑くてのびていましたが、昨日からの涼しさで少し縮みがちになりました(寝るとき丸まっています)。クッシングも今のところ落ち着いています。ビールとチーズは減らしましたが(というより、家族から「与え禁止令」が出されました、トホホ・・・)。*今回書くにあたっては、上記ブログや他の資料を参考にさせていただきました。また一部引用もさせていただきました。
2010.09.24
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毎日暑いですね。 東京地方は、昨日で4日連続の猛暑日(35℃以上)です。 場所によっては、体感温度は40℃近いかもしれません。 皆さん、熱中症には十分に気をつけてくださいね。 特に、気温が体温以上になると身体からの熱の発散が出来なくなって、一気に熱中症の危険度が高まるそうです。そんな時は、家の中で水分をとりながら昼寝、が一番かもしれません。 ところで、一ヶ月以上書き込みをサボっていましたが、その間いろいろなセミナーや講演会に参加してきました。役立つ情報がいろいろありましたので、少しずつ紹介していきます。 今回は、肥満細胞腫の治療薬いつての情報です。 イヌやネコの肥満細胞腫は、悪性腫瘍の中でも多く発生する腫瘍です。 腫瘍の詳細は、皆さんよくご存知ですよね。 肥満とは全く関係ありません・・・(毎度しつこく、申し訳ありません) 肥満細胞腫の中で、KITタンバクという細胞を増殖させるたんぱく質を作るc-kit遺伝子に変異があると、無制限に細胞が増殖します(以前の書き込みを参考にしてください)。 この遺伝子変異は、遺伝子のいろいろな部位で起こることが報告されていますが、今我々のような検査会社で検査できるのは、イヌのエクソン11の変異、ネコのエクソン8または9の変異、です。 肥満細胞は、細胞表面にある受容体ににある決まった物質が結合することで細胞内に刺激が伝わり、「リン酸化」という過程を経てKITタンパクが合成されます。ところが、このKITタンパクを作るためのc-kit遺伝子に変異があると、受容体への刺激が無くても「リン酸化」が起こり、制限無しに細胞の増殖が進行します。これが腫瘍化です。 以前、このようなリン酸化を抑えることで肥満細胞腫に優れた効果を示す「メシル酸イマチニブ(グリベック、ノバルティス社)」という薬を紹介しました。 この薬は、もともとはヒトのある種の白血病などに使われる抗がん剤ですが、イヌやネコの肥満細胞腫でc-kit遺伝子に変異がある場合には、劇的に効きます。副作用も大変弱いので、大変使いやすい薬だと思います。ただし、値段(薬価)が高いので、継続的に使う場合は経済的な負担は大きくなります。 最近、同じような薬で「マシチニブ(マシベット、ABサイエンス社)」と「トラセニブ(パラディア、ファイザー社)」が、発売されました。発売とは言っても、日本国内は未だですが・・・。 この二つの薬は、効くメカニズムはイマチニブとほとんど同様ですので、効果も期待できます。 ただ、この二つの薬は、動物の治療薬として発売されているようで、ここがグリベック大きく違います。マシチニブはヨーロッパで、トラセニブはアメリカで発売になっています。日本でも、もしかすると治験が始まるかもしれませんね。 もう一つ、この二つの薬の価格ですが、イマチニブの3~5分の1くらいになる(かもしれない)、問情報もあります。これは朗報ですね。 肥満細胞腫は、皮膚の悪性腫瘍でも発生頻度が多く、早めに治療することが肝要です。 今回紹介した薬剤は、c-kit遺伝子に変異がある肥満細胞腫に対しては、優れた効果を発揮し、一方で副作用の大変少ない、良い薬です。 これまで、価格が高いのが難点でしたが、この点でも使いやすくなるかもしれません。 飼主にとっては、大変うれしいことですし、飲み薬で効果が期待できれば、動物への負担も相当軽くなりますから、何よりうれしいことですよね。 早く発売されることを期待したいです。 製薬会社、農水省、そして開発に関係している皆様、期待しています! いま、私は涼しい部屋で書いていますが、メタボナナちゃんは相変わらず伸びています。 クッシングの症状は落ち着いていますが、この病気は発毛も抑えられるようです。 つまり、季節ごとの脱毛と発毛(換毛)が上手くいかないようです。 メタボナナちゃんも、綿のような冬毛が抜け切れておらず、ブラッシングやシャンプーでも抜けません。見るからに暑そうで、可愛そうです。でも、たまに外にでて炎天下で伸びているのですから、何を考えているのやら・・・。 再度皆さん、熱中症にはくれぐれも気をつけてください。 では、また。
2010.07.25
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一ヶ月以上のご無沙汰でした。いろいろ忙しく、書き込みが滞っていました(言い訳です・・・)。これじゃブログとは言わないですよね(反省)。そうこうしている内に、梅雨に入り鬱陶しい毎日、特に通勤の電車はいやですね。さらに、サッカーW杯も始まり、やや寝不足気味です。昨日のカメルーン戦、見ましたか?日本人は精神論が好きだ、といわれますが、結局は「気持ち」や「集中力」のような気がしました。さて、先週の金曜日に、とあるクリニックを訪問してきました。私が以前より知っている先生で、2年前に細胞免疫療法専門のクリニックを設立、今回やっとうかがうことが出来ました。このクリニックは、ヒトの医療機関です。細胞免疫療法というのは、身体の中にある免疫を担当する細胞を身体の外に取り出して、刺激を加えて強くし、再び自身の身体に戻して、免疫機能を強化する、というものです。免疫を担当する細胞とは、たとえばリンパ球や樹状細胞といわれる細胞、また広い意味では今話題の幹細胞、なども含まれます。いま、私共が技術提供しているイヌの活性化自己リンパ球療法、というのも、この治療法の一つです。この治療は、主に癌治療が目的ですが、考え方は病院によって様々です。癌の治療は、まず「標準療法」といわれる、手術、抗がん剤、放射線療法から始まります。いろいろな検査をして、癌のステージ(悪性度や進行度、など)を解析、治療法を決めていきます。一通りの治療(1クール、というよな言い方をします)が終了すると、休薬など治療を一旦中断して効果を確認します。このような標準療法はマニュアルがあり、患者さん個々の状態よりも病気を優先した考え方ですので、癌の種類やステージによってある程度治療方針が決まってきます。したがって、患者さんの意見や希望は、あまり組み入れられない、ということです。このクリニックの先生は、標準療法プラス副作用が少なくて効果が期待出来る治療法があればそれを選択して患者さんに提案し、患者さんの希望に出来るだけ沿った形で治療する、ということをコンセプトにしています。現代の医療を考える時に、特にそれが「高度医療」ということになると、患者本位より治療本位になっている傾向があるように思います。医師も学術的なことを言葉に出して説明し、一方患者さんはよく理解できていないのに「分かりました、先生にお任せします・・・」と、返答せざるを得ない、ような。そして、このクリニックで多いのが、大学病院などで「もう治療法はありません」と言われた患者さんが受診するケースだそうです。でも、先生曰く、よく診れば、保険が使えない抗がん剤や、効果が期待できる免疫療法があったりするそうで、一つの治療が終わった後に、次の治療を受けることも可能だそうです。受けることが出来る治療法があれば、患者さんも前向きに治療を受けることが出来る、ということです。つまり、患者さんの立場に立って、効果が期待できる治療法をいろいろな角度から検討して、選択して、提案し、患者さんの希望も聞き入れて、一緒に考え治療を進めていく、という考え方です。このときに、上に書いたような保険適応外の抗がん剤や免疫療法、サプリメント、健康食品、食事指導など、効果が期待できることを取り入れていく、これを「統合医療」といいます。ちなみに、この先生は、標準療法を否定しているのではなく、標準療法で効果が期待できる場合は、標準療法を紹介するそうです。この先生自身がバリバリの外科医ですので、標準療法の効果や限界は良く知っています。この話を聞いた後、これは獣医療にも共通する考え方だな、と強く感じました。近年、獣医療もヒトの医療に続けとばかりに発展しています。特に、新しい治療法や薬が使われてきています。残念なのは、抗がん剤などはほとんどがヒトの薬ですが・・・。たとえば、イヌやネコに癌が見つかったとき、動物病院ではたぶんマニュアルに則った標準的な治療法を提案されるでしょう。でも、それが良いのかどうか、我々には検証する知識も術もありませんので、「先生、お願いします」というしかないのが現状だと思います。まして、動物は言葉を話せません(「わが家の犬は言葉をしゃべる」という飼い主さんが近所にいます・・・)。彼らの希望を聞いて、などというのは悲しいかな不可能です。そう考えたときに、この「統合医療」という考え方は動物医療も取り入れるべきものではないかと思いました。先日、免疫療法を実施されているある獣医さんから、こんな問い合わせがありました。その時の電話でのやり取りです。先生「免疫療法の効果を判定するいい方法は無いでしょうか?」私 「免疫療法だからといって、免疫機能を解析してもなかなか上手くいかない事が多いです。でも、効果としてはQOL(生活の質)をよく改善する、という報告が多いですね」先生「QOLは客観的な評価は難しいですよね」私 「確かに難しいですね。治療ですから病気が直ることが一番ですが、飼い主さんにとっては、可愛いイヌやネコが散歩が出来るようになったり、食欲が戻ったり、などQOLが良くなることも大事じゃないでしょうか。それを数字で表して比較したりすることは凄く難しいですよね。それぞれに違うわけですから。」先生「飼い主さんにとっては確かにそうですね。特に新しい治療や高度医療を行うと、とかく学問的な解析に目が行きがちで、飼い主さんが何を一番希望しているか、あまり考えなくなってしまうことあるかもしれません・・・」この先生は、正直にそう仰っていました。私どもも、獣医療に関わる仕事をしていますので、治療について問い合わせを頂くことが良くあります。我々は治療には関わってはいないので専門的なことは分からないのですが、先生方がどんな考え方で治療しているか、その一端に触れることが良くあります。この「統合医療」という考え方、獣医療にぜひ取り入れるべき、と強く思いながらの訪問でした。我が家のメタボナナちゃん、クッシングも今は薬で治まっていますが、結局は完治の見込めない病気です。いつまでも元気で生活させてあげたい、これは飼い主共通の思いですよね。これが今日のメタボナナちゃん、暴睡中です。
2010.06.15
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ゴールデンウィークは、晴天続きで初夏の陽気でしたね。良い休日でしたでしょうか? でも、一番腹立たしかったのは鳩山首相、沖縄普天間基地問題での発言です。一国の首相であり与党の代表が、自分の意見は党の意見では無い、えっ?、何を言ってるんですか?ですよね。例えば、会社のお客さんに対して社長が言った事は、イコール会社の方針ですよね。 でも、沖縄や徳之島が抱える問題を、改めて勉強できました。これは、やはり日本国民全員で考えるべき問題だと思います。 と、硬いで出だしで始まりましたが、今回はFIP予後調査のアンケート結果について書きます。まとめた文書は、「ニュースレター」としてHPに掲載しましたので、ご興味がある方は覗いて見て下さい。文章は先生方向けに書いていますので、やや難しいかもしれませんが、その点はご了解下さい。 では、掻い摘んでお話しします。 私どもは、FIP診断のための検査としてネココロナウィルス遺伝子検査を開始するに先立ち、2008年夏に臨床研究として血液や胸水、腹水などの検体を提供していただき、FCoVの検査を実施しました。提供頂くに当っての前提条件は、「FIPを疑う臨床症状または検査データがある症例」としました。ただし、その重篤度はまちまちで、あくまで主治医の先生の判断に委ねました。その結果については、これまで何度かご紹介した通り、FCoVの検出率は約25%、FCoV抗体価とは全く相関無し、でした。 その約1年後の2009年9月、ご提供頂いた症例の予後を調査しようと考え、主治医の先生方にアンケート調査を実施しました。検査というのは単発で終わってしまう事が多く、その後どういう経過をたどったかについては、私ども検査会社では、日常の検査業務の中で把握する事は大変難しいのが現状です。 ただ今回は、FIPという進行が早く重篤な疾患である一方で、感染と予後の関係があまり解明されていない現状があり、先生方にご協力頂きそれぞれの症例が1年後どうなっているか、大変興味がありました。 ここから、出来るだけ平易に結果をご紹介します。 まず、繰り返しになりますが、臨床検体を提供いただいた時の条件が、「FIPを疑う臨床症状または検査データがある症例」であったことを念頭において下さい。したがって、健康な症例は含まれて居ません。 今回、アンケートに回答頂き解析可能であった症例は47症例、その内FCoVが検出されたのは16症例、検出されなかったのは31症例でした。 その1年後、FCoVが検出された16症例はすべて死亡(100%)、検出されなかった31症例中10症例が死亡していました。FCoVが検出された症例は、検体は血液、胸水、腹水さまざまで、またウィルス数も数百から数百万と幅があり、検体やウィルス数に関連はありませんでした。これら16症例を見ると、従来のFIP診断基準としての総タンパク(TP)、A/G比、FCoV抗体価が異常値にある症例が多く、また最初に検査に訪れた年齢が約1年を若いこと、また当然ですが最終診断はFIPと確定されていました。 FCoVが検出され死亡した中でもFCoV抗体価は低かった症例も存在し、FIP診断には遺伝子検査が優れている事がいえると考えられます。 一方、FCoVが検出されず死亡した10症例は、FIPを疑うような臨床症状があったものの、最初に検査を受けたのが約10歳と高齢であった事、最終確定診断が腎不全、肝疾患、アミロイドーシスなどで、明らかにFIPとは違った経過をとった症例が多かったようです。F CoVが検出されなかったと言って、必ずしもFCoV感染を否定は出来ません。ただし、一方では、FCoVが検出されなかった場合には、FIPとは違う疾患を疑うべきであるとも言えます。 これらの症例でもTPやA/G比は異常値を示し、TPやA/G比は予後のマーカーとしては有用かも知れませんが、FIPのマーカーとしては特異性は低いような印象でした。その他、発熱、赤血球や白血球、FIVやFeLVの検査値、などとの関連も解析しています。今回の予後のアンケート調査で言えることは、次のようになると思います。1)FIPを疑う症状があって、血液や胸水、腹水からFCoVが検出された場合は、FIPと確定診断でき、予後不良の場合が多い。2)FIPを疑う症状があってもFCoVが検出されない場合は、FIP以外の疾患も考慮すべきである。3)従来のTP、γ-グロブリン値とA/G比、並びに特徴ある臨床症状とFCoV遺伝子検査を組み合わせる事で、より精度の高いFIP診断が可能となる。 今回の結果は興味あるものでしたが、ある意味考えさせられるものでした。 でも逆にいうと、出来るだけ早くFCoV感染を確認する事で、FIP発症を遅らせたりなど早期のケアをしてあげる事が可能になるとも考えられます。 今回の臨床研究では、FIPを疑う症例を対象としましたが、健康なネコは含まれません。これについては、少ないながら私どものデータも載せています。簡単に言うと、健康診断で検査したネコからはFCoVは検出された例は今のところありません。同居ネコがFIPを発症したので検査した、と言うネコからは、少ないですが検出されています。 ざっと簡単にご紹介しましたが、この病気は発症してからでは対処は難しいと言う事です。また、発症年齢が約1年と若いことから、子猫のうちから慎重な観察と十分なケアが必要だといえるでしょう。繰り返しになりますが、「FIPはFCoV感染症である」という考えに基づくと、やはり早い時期にFCoV感染の検査をする意味は大いにあるのではないかと考えます。これは検査の宣伝ではなく、FIP発症の予防としての意義を考えた場合、そう思います。 FIPは根治的な治療法が確立されていません。 だからこそ、予防的な意味での早めの検査や対策が大変重要になってくると思います。 もしご興味があれば、HPに掲載のニューレターをご一読下さい。 ぜひ、ご意見、ご感想をお聞かせください。もちろんご批判でも結構です。 また、こんな検査があったら良いな、等のアイデアも大歓迎です。 我家のメタボナナちゃんのクッシングも落ち着いています。 ステロイドホルモンが過剰分泌される病気ですので、このホルモンの量や刺激される事で分泌さあれる量を測る検査で、確定できます。検査と診断が相関する、良い例ですね。 食事の量を制限しているせいか、体重も少し減ってきました。 でも、まだまだメタボですね。 いつの間にか、ナナちゃんは寝床に移動していました。 週末は、また天気が良さそうですね。 皆さんも愛犬、愛猫ちゃんと共に、良い週末をお過ごし下さい。 では、次回・・・。
2010.05.07
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今日(昨日?)は寒かったですね。冬の服を引っ張り出して着込みました。これでは体調もおかしくなりますよね。こんな時、犬や猫たちはどうなんでしょうか・・・、なんて我家のメタボななちゃんを見ながら考えています。 さて、久しぶりにFIPを話題にします。 ここ最近気になっていることがあります。コロナ遺伝子検査について、「感度」や「特異性」といった言葉でよく質問を受ける事が多くなりました。 実際に、どんな検査でも感度や特異性というのは大事ですが、でも、もう一つ大事なことは絶対的な「精度」だと思います。 実は、ある検査会社のデータで、FIPの遺伝子検査の感度と精度について取り上げられていました。簡単に言うと、「FIPと診断されたネコの血液または腹水、胸水からのコロナウィルス遺伝子検査での検出率」といった内容です。それによると、胸水、腹水からは100%検出されたのに対し、血液からは68%(だったと思います)であり、FIPの診断材料には胸水、腹水の感度が高い、と言うような内容でした。これだけ読むと、血液は検査検体としてはあまり良くない、とも解されてしまいます。 でも、考えてみてください。 私はここではっきり言います。 「FIPはネココロナウィルス感染症」です! これは、FIPを研究している先生方の共通した見解です。 では皆さん、ウィルス感染症を確定診断するにはどんな検査をしますか? 例えば、インフルエンザ流行の時期に風邪を引きました。 「風邪」と言う症状はいろんな原因で起こりますが、「インフルエンザ感染症」と確定するには何をしますか?その通り、インフルエンザウィルスが検出されるか否か、検査しますね。 例えば、エイズ(AIDS)。エイズとはご存知のように「後天性免疫不全症」で、免疫機能がHIV(ヒト免疫不全ウィルス)感染によって著しく低下し、健康な時には発症しないような病気が起こります。でも、免疫機能不全になる原因はいろいろあります。では、エイズだと確定するにはどうすればいいですか?そう、HIVが検出されるか否かです。 こう考えると、あるウィルスが原因で発症すると考えられる病気を確定診断するには、原因となるウィルスが検出されるか否か、を検査することが重要です。 つまり、ネココロナウィルスがFIP発症の原因ウィルスだとすれば、FIPと確定診断するにはネココロナウィルスが検出される事が必須です。 ここで、上に書いた検査会社のデータに戻ります。 「FIPと確定診断したネコの・・・・」とありますが、どのような基準で確定診断したのでしょうか。 ウィルスが直接検出できる方法の無い頃は、臨床症状、生化学検査、コロナウィルス抗体価で診断していました。(コロナウィルス抗体価を見ていたということは、コロナウィルスの関与が重要だ、だと分かっていたと言う事ですね。でも、これらの検査ではコロナウィルスの存在を直接証明できません。) 実はこのデータには、元になる論文が別にあります。 それを読むと、まず「FIPの診断基準」が書かれています。 特徴的な臨床症状のほかに、生化学検査でTP(総タンパク)が8.0以上、A/G比が0.45未満(γ-グロブリンが高い)、コロナ抗体価が640以上、です。 つまり、この条件に当てはまるネコを「FIP」と診断し、胸水、腹水または血液からのコロナウィルス遺伝子検出を行っています。 その結果として、胸水、腹水からは100%コロナウィルスが検出され、血液からは68%検出された、ということです。 この結果を、「FIPはコロナウィルス感染症だ!」と言う視点からみると、興味あることがわかります。 一つは、従来FIP確定診断の基準とされてきた項目は、ある程度信頼性が高い事がわかります。腹水、胸水がたまっている症例から100%ウィルスが検出されたと言う事実は、それを裏付けます。また、血液からの検出率が68%という数字は、大変高い数字です。 われわれが臨床研究で実施した時の検出率、また現在受託している血液からの検出率は25%程度である事を考えると、従来のFIP診断基準の信頼性の高さが見て取れます。 ちなみに、検査の依頼の目的は、FIPの臨床症状がある場合はもちろん、健康診断的な利用や除外診断など、様々です。このような背景では、検出率は25%程度だと考えられます。 では、血液からの検出率が68%、と言う数字は感度が低いから検査する意味が無いのか。 この点について、実はこの論文の著者の先生に直接聞いてみました。 その先生曰く、「そんなことは言っていない。まず、FIPを疑う症状があってコロナウィルスが検出されれば、FIPと鑑定診断できる。一方、検出されなかった場合、どの検査でもそうだが、検出限界があるため、検出されなかったからと言って必ずしもゼロではない。したがって、この残り32%はFIPが完全に否定されたわけではない。ただし、遺伝子検査は従来の検査に比べて絶対的な精度が高いので、検出されなかった症例は、他の疾患の可能性も考えるべきである」ということでした。 われわれが実施した臨床研究でも、従来のFIPの診断基準に当てはまりながらコロナウィルスが検出されなかった症例は存在します。 こうして考えると、FIPの確定診断にコロナウィルの検出は必須であると言えます。 現在、ウィルスを高い精度で直接検出できる方法は「遺伝子検査」です。 従来の診断基準である「臨床症状、生化学検査のTP、γ-グロブリンとA/G比」とコロナウィルス遺伝子検査を組み合わせれば、さらに精度の高い診断が可能になると考えます。 われわれの臨床研究は、約1年前に実施しました。 今回、それらの症例の予後調査を実施しました。コロナウィルスが検出されたネコと検出されなかったネコが、1年後どうしているか主治医にアンケート調査しました。 今回収データを解析していますので、まとまったらHPにアップしますので、見てください。 興味あるデータです。 長々と書きましたが、感度、特異性、精度を語る上で大事なことは、その背景を理解して比較する事が大事であること、相対的な比較も大事ですが、絶対的な優位性も考慮すべきであること、を私の考えを入れて述べました。 最後に、宣伝です。 もう少しお付き合い下さい。 これまで、コロナウィルス遺伝子検査は、従来の定量検査とFCoV・FIV・FeLVセットの定性検査を実施してきました。 さらに今月から、FCoVだけの定性検査を開始しました。 これは、現場の先生方から「まずはとりあえず感染の有無だけでも知りたい」という要望があり、ラインナップしました。従来の検査と精度は全く同じで、検査価格は安価に設定していますので、利用しやすくなっています。 これで、3種類の検査をそろえました。 目的に応じて使い分けていただければ良いと思います。 例えば・・・ *定量検査:臨床症状の変化や治療効果の確認などで、ウィルス数の推移が知りたい場合。 *定性検査:FIPを疑う場合の1次検査(ファーストスクリーニング)や除外診断で。 *3種セット:健康診断や除外診断で。 次回は、アンケートの解析結果をお話できると思います。 いやはや、書き出すと止まらなくなってしまいます。 メタボななちゃんは、大いびきで寝ています。 私も目が閉じそうです。 いつものように、誤字や変な文章があるかもしれませんが、大目に見てください。 ではでは、また次回、お休みなさい・・・。
2010.04.15
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昨日、東京は真冬に逆戻り、積雪数センチ、夜仕事が終わって外に出てみたら一面真っ白でした。今日は高知では桜が開花した、と言うニュースがあり、改めて日本列島の大きさを感じました。 先日の日曜日、学会で仙台に行ってきました。 ある大きな学会の地方大会でしたので、東北地方の先生方を対象としていましたが、若い先生が大変多く、皆さん熱心に聴講していました。 大都市で開催される大きな学会は、地方の先生方はなかなか参加し難く、まして休日開催となると参加したくても出来ないことも多いようです。そういう意味では、このような小さな地方大会は、とても有用なのではないでしょうか。 仙台と言えば余談ですが、15年ほど前私も住んでいたことがあります。城下町らしく落ち着いた町並みと大都市としての機能がうまく調和した街で、大変生活しやすいところでした。機会があれば、また住んでみたい街です。食べ物も美味しいですしね。新鮮な海産物、牛タン、ずんだ餅、長なす漬け、・・・。 本題に入りますが、今回の講演の中で興味ある話がありましたので紹介します。 「イヌのバベシア感染症」に関する講演です。 「バベシア感染症」というのは、あまり耳慣れない皆さんも多いかもしれませんが、バベシアという原虫が赤血球に感染すると溶血性貧血を発症し、重い場合は死亡します。 バベシア感染症は、これまで沖縄県や九州、西日本に多く見られていました。 西日本にある獣医学科のある大学病院では普通に見られるようですが、東から北にある大学病院では、ほとんど症例が無いそうです。 バベシア原虫には2種類(カニス、ギブソニ)存在しますが、それぞれマダニが媒介します。バベシア原虫を媒介するマダニは数種類ありますが、これらは全国的に分布しています。このことは、バベシアに感染したイヌが移送することによって、そこに住むマダニがイヌの血液を吸い、他のイヌに着いて吸血することで感染する、可能性があることを意味しています。 その他、闘犬など噛み傷からの感染、輸血による感染、も直接感染の原因と考えられています。 講演で示されたデータによると、バベシアの抗体検査(ELISA法)と抗原検査(PCR法)で東から北日本のイヌについて検査したところ、数県で感染が確認されたました。その大きな要因は、交通網の発達や高速料金の減額などによって、イヌを連れた移動範囲が拡大したことのようです。 たとえば、関東地方に住む飼い主さんが、西日本への旅行の後、突然元気が無くなったので来院。診察すると、発熱と貧血があるが、そこからバベシア感染症をすぐ連想できるケースは少く、問診の際に旅行歴や発症前の行動などを聞いて、西日本に旅行歴のある場合はバベシア感染症を疑ってかかることになる、そうです。 また、ある関東の症例では、関東圏から出たことが無いのに貧血となり診察を受けたところ、血液検査で赤血球にバベシアの存在が確認され、PCR法でも感染が確認されたそうです。 このイヌは、ある関東圏内のキャンプ場のドッグランで遊ばせてきた、ということで、その時にダニ刺されて感染した可能性が高い、ということです。 このように、居住地域がバベシア感染症の流行地域ではなくても、イヌを連れた旅行などで感染してしまうことはもちろんのこと、今までいないと思っていた地域でもバベシアが存在しているという認識をしておく必要がある、と強調されていました。 そこで、皆さんがたとえばイヌを連れてキャンプ場などに行って散歩やドッグランで遊ばせて来た2~3日後に、どうも元気が無くなった、と言うことで動物病院にいった場合、必ず「旅行歴(どこへ行ったか)」「野山の散歩やドッグランで遊ばせたか」を必ず獣医さんに伝えてください。また、獣医さんが考え込んだら、バベシア感染症の可能性についても聞いてみてください。普段めったに見ない病気ですので、症状や血液検査、飼い主さんからの情報からでも、先生方はバベシア感染症を連想することは少ない、ということも飼い主さんは覚えておくと良いかもしれませんね。 また、輸血の場合、血液を提供してくれるイヌが感染したいた場合には、輸血によって感染が成立します。これは、獣医さんも含めて必ず頭において、事前に検査しておく必要があります。 バベシア感染症の検査は、ごく一般的には血液の塗末標本を作って顕微鏡で調べて、赤血球にバベシア原虫がいるかどうか、調べます。ただし、この標本の作り方が難しいようで、熟練の技(といって良いのでしょうか?)が必要なようです。 抗体検査もあります。生体内では、他の感染症と同様、バベシアが感染すると抗体が出来ます。その抗体を測ることで確認します。ただし、これも抗体検査の欠点ですが、感染の履歴はわかりますが、現在赤血球へ感染しているかどうか、はわかりません。 最近、PCR法によって、バベシアの遺伝子を検出する遺伝子検査方法が出てきました。我々も行っています。この方法は、特異性、感度ともこれまでの検査より優れており、顕微鏡レベルでは観察できなかった微量の感染でも検出できる感度を持っています。 バベシア感染症を疑ったら、まずはPCR法による検査で感染の有無を確かめる、これが現時点で最良の検査ではないでしょうか。 ただ、どの検査でもそうですが、検査には「検出限界」があり、陰性でも「感染していない」ではなく「検出限界以下」ということです。つまり、検出できない程度の感染は成立している可能性は否定できない、ということは理解してください。とはいっても、遺伝子検査が一番感度は優れていると思います。 また、このPCR法は現在の感染の有無を判定しますので、たとえば治療によってバベシア原虫が駆逐された場合は、PCR法での検査では検出されなくなることもあります。つまり、治療効果の判定にも使える、ということです。 一つ付け加えると、貧血には「免疫介在性溶血性貧血」と言う病気があり、症状は良く似ています。ただし、治療方法は全く異なるので、貧血の場合のバベシア感染の検査は、他の病気との鑑別、と言う意味で大変重要です。(少し、遺伝子検査の宣伝をしてしまいました・・・) 最後に、バベシア感染の予防については、「ダニがいる(と思われる)場所へ行ったら、すぐに駆虫する、遅くとも2,3日以内。」「駆虫は、マダニに有効な薬剤を選択すること」と言っていました。 また、輸血が必要になった場合は、供血犬(血液を提供してくれるイヌ)がバベシア感染の検査をしているかどうかを確認することも大切です、とのことでした。 交通網が発達し、人間と犬の移動範囲が拡大し、今まで狭い地域に限定されていた病気も拡大することが当然考えられます。一方、マダニの分布の拡大で、バベシアが全国的に広がる可能性もあります。 飼い主としては、まずはマダニの感染予防を心がけ、診断、治療する獣医さんは、バベシア感染症はもう西日本の病気ではなく、全国的に広がっている、と考える必要があるようです。 まずは予防、これはどんな病気でも共通ですね。 飼い主の皆さん、思い当たる症状があれば、ぜひ気をつけてください。 我が家のメタボナナちゃん、そういう意味では「クッシング症候群」という病気は、予防できるのか(出来たのか)、考えてしまいます。 この病気は、気が付かない内に進行して発症してしまうのかな、と自分を納得させていますが・・・。 *最近の私の文章、遅い時間に書くことが多いので、アップした後で読み返してみると、言い回しが変だったり字が間違っていたり、が気になります。お恥ずかしい限りですが、ご容赦ください。笑って見過ごして頂ければ、うれしいです・・・。
2010.03.10
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ここ数日、寒暖の差が激しい上に花粉症にやられて、体調の維持が難しいこのごろですが、皆さん如何お過ごしですか? 既にご存知の皆さんも多いかと思いますが、ペット保険のアニコムさんが、昨日マザースに上場しましたね。 株価の初値が公募価格の2倍からスタート、上々の滑り出しのようです。 新聞やテレビのニュースでも話題になっていました。 アニコムといえば、日本ではペット保険の草分けのような存在ですが、会社を設立してから上場まで10年かかったとの事、たぶん相当な苦労をされたことだと思います。 ここは素直にお祝いを言いたいですね。 アニコムさん、上場おめでとうございます!!! アニコムさんは、ペット保険としては国内で唯一国の保険業の認可(私も詳しくはわかりませんが、認可があるようですね)を得ている会社だそうです。 今、獣医療は自由診療でヒトの医療のような保険制度がありません。 我が家もイヌを飼っていて、さらに病気を持っているので定期的に病院に通い、毎日薬を与えていますが、正直家計への影響は大きいです。 さらに、動物も長生きになってきていますので、健康を維持してあげるためには毎日の餌や飼育環境も気を使ってあげなくてはなりません。 さらにさらに、新しい効果的な検査や治療法が登場する一方で、これらはどうしても費用が高く、泣く泣く利用をあきらめる、と言った飼い主さんも多いとききます。 私どもが実施している遺伝子検査や、技術支援している活性化リンパ球療法も、これまでの一般的な検査や治療法と比べると、どうしても費用は高くなります。 でも、これらの新しい医療技術は、間違いなく効果的です。 このような最新の医療技術を、多くの動物たち、ひいては飼い主さんたちが享受できるような環境を作っていくのも、保険の重要な役割だと思っています。 ヒトの民間の医療保険では、このような高度医療に対応した保険も存在します。(もし将来このような高度医療にお世話になるときがきた時のために、実は私も入っています) 獣医療の現場も多様化しています。 アニコムさん、上場を機会に、現状に合わせて飼い主さんが利用しやすいような保険を、ぜひ作ってほしいです。 これは、獣医療分野に携わる者として、さらに一人の飼い主として、の切なる願いです。 お願いします、アニコムさん!!!! 上場と言うのは、私どものようなベンチャー企業の夢であり、一つの目標でもあります。 遠~い将来、我々もそうなりたいものです・・・(夢)。
2010.03.04
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早いもので2月も最後、未だに今年の約束が守れず、明日からは3月です。 ここのところ暑かったり寒かったり、そしていよいよ花粉症の季節の到来です。 私は花粉とは20年来の付き合い、これから約2ヶ月我慢しなくてはなりません。憂鬱・・・。 花粉症と言えば「免疫反応」(強引!)。詳しくは調べてくださいね。 要は、本来異物を排除するための機構が、過剰反応いるせいでしょう。 私が小さいころは、回りは杉林だらけの田舎で育ったにもかかわらず、「花粉症」などという言葉は聞いたこともなかったですからね。 それはさておき、私どもでは「活性化自己リンパ球療法」という細胞免疫療法に用いる活性化リンパ球の培養方法を提供しています。 活性化リンパ球療法(またの名をT-LAK療法)は、一時期「癌の第四の治療法」といわれて、期待が大きく、どんな癌にでも効くような印象で語られていた時代がありました。 その後研究が進むにつれて、効く癌と効かない癌があること、抗がん剤や放射線療法のように即効性が無いこと、他の治療法と併用するなど使い方によっては有効性が高いこと、QOL(生活の質)を良く改善すること、副作用は極めて少ないこと、などがわかってきました。 これを参考に、イヌ(現時イヌしか対応できていません)でも研究がすすみ、上記のヒトと同じ効果もわかってきました。 ただし、動物では歴史が浅く、イヌと言っても様々な犬種があり、大きさも人間以上から子猫くらいまで様々、ここがヒトと違って難しいところですね。 これまで、基礎から臨床効果までのデータを蓄積するため、大学と共同研究を進めてきました。その成果として、症例も増え、臨床データも蓄積されてきました。 一言で言うと、イヌもヒトと同様に、使い方によっては有効であること、QOLはよく改善すること、副作用はきわめて少ないこと、が間違いないようです。 一方、一般開業の先生方からも、この治療法を実施したいが・・・、と言う相談を受けるようになりました。 ただし、法律的な問題から、我々企業が活性化リンパ球の培養を引き受けることは出来ませんので、実際にこの治療を実施する場合は、各病院で患者さんのためのリンパ球を培養しなければなりません。ほかの病院に培養することも出来ません。つまり、自分の病院で治療する患者さんのための培養のみ可能、と言うことです。 法律の話をすると難しくなりますので省きますが、そういう事なのです。 今回、自分の病院に培養施設を作って培養から治療まで実施する、と言うことで、開業の先生から相談を受けました。 新しい治療法を積極的に取り入れたいと言う、新進気鋭の先生方です。 私どもでは、これまで蓄積した活性化リンパ球の培養技術や情報を提供して、臨床応用に役立てて頂こうと、共同研究を開始しました。 さらには、提供する培養技術はこれまで大学と共同研究で蓄積したノウハウを生かしていますので、各病院で培養した活性化リンパ球を使った治療は大学病院での治療と同等の効果が期待できます。 また、それぞれの先生には、活性化リンパ球療法の使い方に関してそれぞれのアイデアをお持ちです。共同研究によって、それぞれの情報を出来るだけ共有し、情報の蓄積を図ることも考えています。 治療に対する考え方や、治療費も各病院で異なると思います。 この治療法に興味のある皆さんは、ぜひそれぞれの医療機関に問い合わせてみてください。 また、今回HPで紹介した病院以外にも、開始の準備をしているところもあります。 了解が得られ次第、HPで紹介していきます。 メタボナナちゃん、相変わらずですが、すこーし痩せたかも、です。 でも相変わらず散歩嫌いの内弁慶・・・。 いまさら変わりませんなア、と嘆いている飼い主も、全く変わりません(ビール共有!)。 ナナチャンの主治医の女医さん、今月末で寿退職だそうです。 やさしく勉強熱心な先生だったので、大変残念。 ご主人も獣医さんらしいので、将来はぜひ皆さんに愛される病院を作ってください。 おめでとうございます! さて、またまた眼が痒くなり、鼻水が垂れてきました。 限界です、目薬!鼻薬!!
2010.02.28
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ここ数日寒いです!!! 東京でも2年ぶりの積雪だったとか。今日も立春だというのに、今年一番の寒さ。寒いのが大の苦手な私にとって、朝布団から抜け出すのが毎日一苦労です。 とか言いながら、結局一ヶ月のご無沙汰でした。新年早々約束が守れず、前途多難です・・・。 今回は、昨年末から今月にかけて開始した新しい遺伝子検査を、簡単に紹介したいと思います。HPの更新作業が少し遅れていますので、こちらでの紹介が先になります。 まず、ネコ白血病ウィルス(FeLV)とネコ免疫不全ウィルス(FIV)の遺伝子検査。 この二つは昨年12月から開始しており、既に紹介しています。 リアルタイムPCR法という解析方法で遺伝子を直接検出しウィル数を算出します(定量検査といいます)ので、これまでの抗原検査や抗体検査よりはるかに感度、特異性ともに優れた方法です。特にFIV感染は、感染しているFIVの数と臨床症状が相関している(FIV数が増えると病状が悪化する)といわれていますので、有用な検査ですね。 次に、上の2つの検査に関連した検査です。 上の2つは、それぞれの感染ウィルス数を算出することで、病状との関連を調べるには優れた検査です。しかし、症状によっては何が原因なのかはっきりしない場合が往々にしてあります。そんな時、それぞれの検査を一つずつ行っていては、手間も費用もかかります。 そこで、まずはウィルスが感染しているか否かを調べて、とりあえず原因ウィルスを探りたいが、という要望が多くありました。 そこで今回、ネココロナウィルス検査を含めた「ネココロナ(FCoV)・ネコ白血病(FeLV)・ネコ免疫不全(FIV)セット」の検査を開始しました。この検査が、実は今回紹介する中で一押!です。 この検査は、3つのウィルスを同時に検出します。 検査はリアルタイムPCR法で行いますが、この検査は「定性法」と言って、感染の有無を調べますので、感染しているウィルス数は算出しません。ただし、感度はそれぞれの定量法と同等です。また、セット検査ですので、それぞれ検査する場合より費用的なメリットもあります。 使う目的としては、臨床症状だけからは原因がわからない、健康診断として検査したい、などの最初の検査(ファーストスクリーニング、1次検査)として、たいへん有用です。 この検査で感染が確認されれば、精密検査(2次検査)として、それぞれのウィルスの定量検査を行うことも良いと思います。また、臨床症状から明らかに原因が予想されるのであれば、最初から感染の有無と同時にウィルス量を算定する定量検査を行うことも良いでしょう。 続いて、イヌジステンパーウィルス(CDV)検査。 この検査は、特に下痢症状のときに糞便中での感染の有無を検査します。 それ以外に、老齢犬で脳脊髄液などに入り込むと、神経症状がでてきます。このような時に、CDVの感染の有無を確認することで、適切な治療を選択できることになります。遺伝子検査は高感度ですので、症状の軽いうちにCDVの感染を確認できますので、早期治療が可能になります。この検査法も、リアルタイムPCR法による定性検査です。 最後に、MDR1遺伝子変異検査。 MDRとは「multidrug resistance 1」日本語では「多剤耐性1」とでもいうのでしょうか。 コリー、シェットランドシープドック、オーストラリアンシェパードなどの一部の犬種においては、フィラリア予防薬や毛包虫症などの駆除薬であるイベルメクチンに対して感受性の高い個体が存在することが知られており、神経症状(昏睡、麻痺)やアナフィラキシーショックを起こすケースが報告されています。MDR1遺伝子変異が原因となって、このような反応が起こります。イベルメクチン以外にも、一部の抗癌剤、免疫抑制剤、抗菌薬などにおいて同じような中毒症状を起こすことも報告されています。この遺伝子変異は劣性遺伝ですので、遺伝病とも考えられますね。この変異は、一生に一度の検査で確認できますので、病気の予防や治療でこれらの薬を使う可能性がある場合には、事前に検査することも有用です。 MDR1や遺伝子変異、イベルメクチンなどの情報はたくさんありますので、詳しくは調べてみてください。 と言うような検査を新しく始めました。 病気の予防や有効な治療を受けるための手助けとなれば幸いです。 近々HPも更新しますので、今しばらく時間をください。 またまた長くなりました。 毎度のことながら、読んでいただいている皆様には申し訳ありません。 (ちゃんと頭を下げていますから・・・) 我が家のメタボナナちゃん、クッシングの症状が少し進行したようで、薬の量を約2倍に増やしました。相変わらず散歩は嫌いで、ウンチをすると家の方向を見て座り込み、逆に引っ張っても踏ん張って動かず、家の方向に向いたとたん走り出します。 朝は、ヒーターの前を独り占め、です。 完全に自分は皆と同じだと思ってますね、今始まったことではないですが・・・。 そうそう、今月13,14日と学会があります。 面白い情報があれば紹介します。 では、次回を乞うご期待!(してません、よね・・・)
2010.02.04
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本年もどうぞよろしくお願いします。 今年の目標! 獣医療に役立つ新しい遺伝子検査を提供すること。 活性化リンパ球療法を普及させるために、培養技術を普及させ、情報を発信すること。 研究開発も積極的に行うこと。 そして・・・、 このブログを最低週1回更新すること!(これが一番難しいかも) 動物病院のHPや飼い主の皆さんのブログを検索していると、仕事の参考になることもたくさんあります。 下手な文章ですが、書き込みをさせていただくこともあります。 動物病院の先生方には、直接連絡をさせていただくこともあるかもしれません。 拙い文章ですが、お許しいただければ幸いです。 ご批判、ご意見もどんどんお送りください。 正月もあっという間に3日、早いですね。 東京は穏やかな晴天に恵まれ、少し仕事、ほとんど寝正月、でした。 本日は初詣に神田明神に出かけ、家内安全、商売繁盛、開運、等々、祈願してきました。 あまりにも多くて、神様も音を上げるかもしれません(笑)。 本年の皆様そして愛犬、愛猫のご健康をお祈りいたします。 改めて、本年もどうぞよろしくお願いいたします。 さあ!今年もスタートです!!!
2010.01.03
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先に年末の挨拶を書き込んだのに、その後に検査の紹介では、順番が逆ですね。読んで頂いている方、申し訳ありません。すこし御付き合い下さい。 今月12月より、ネコ白血病ウィルス(FeLV)とネコ免疫不全ウィルス(FIV)の遺伝子検査を開始しました。 先生方やネコの飼主さんであれば、この二つのウィルスについては良くご存知だと思いますので、ウィルスの話は割愛します。 現在、この二つのウィルスの検査は、簡易検査でFeLVは抗原検査、FIVは抗体検査が実施されています。「抗原検査」とは、検体(血液)中のウィルス抗原を検査します。従って、現在ウィルスが存在するかどうか(感染しているか否か)がわかります。「抗体検査」とは、検体中のウィルスに対する抗体を検査します。従って、過去の感染の履歴も検出されますので、現在感染しているかどうかはわかりません。(コロナウィルスの抗体検査、と同じです) これらの検査は簡易検査ですので、短時間で比較的安く検査できます。 今回私どもが始めたのは、コロナウィルス検査と同様、リアルタイムPCR法を使って検体中からウィルス遺伝子を定量的に直接検出します。「定量的」ですので、感染しているウィルスの量もわかります。 上記の簡易検査に比較して感度は格段に良いです。が、検査に時間がかかり、検査費用が高めになります。 使い方としては、最初から遺伝子検査を実施されることはもちろん良いと思いますが、まずは簡易検査で感染の有無または可能性を確認し、抗原または抗体が陽性となれば、遺伝子検査で実際のウィルス量を検査する、という使い方も良いのではないかと思います。つまり簡易検査を「1次検査」とし、遺伝子検査を「2次検査」として正確に状況を把握するために使う、ということです。また、ウィルス量を検査できるということは、治療によってウィルス量がどう変化していくか、という指標にもなります。効果判定にもなりますね。 これらのウィルスに対しては、既にワクチンも開発されていますので、飼主さんの義務としてワクチン接種がなされていればある程度発症は防げるでしょうが、現状、ネコのワクチン接種率は20-30%とも言われています(情報が間違っていたらご指摘下さい)。一方で、ネコの場合自由な外飼いが多いことから、感染率は相当高いのではないかと思います。 また、感染によって免疫機能の低下を招きますので、コロナウィルス感染によるFIPの発症とも関係があるのではないか、という事も言われています。 未だ情報発信が出来ていませんが、ご興味のある先生方、飼主さんは検討してみてください。 これが、今年最後の情報発信となると思います。 お付き合い頂き、ありがとうございました。 我が家のメタボナナちゃん、クッシングは薬によって大分落ち着いています。 メタボ改善に餌の量も減らしています。 そのせいか、我々の食事時になると側によってきて、悲しい声でなきながら涙目で何かを訴えています。あ~、かわいそう、と思いつつ、ここは鬼になって・・・、でも鬼にはなれませんねぇ。これくらいなら、と一つまみ・・・。 来年もよろしくお願いいたします。(二度目の挨拶ですね)
2009.12.27
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あと四日で今年も終わり、いやはや一年過ぎるのが何と早いことか。年をとると年々早くなる、とか言いますが、必ずしもそうではないですよね。片付けも大掃除も何も出来ていないのに、どこから手をつけて良いやらわからず、結局このまま新年を迎える・・・、と言うパターンに今回もなりそうです・・・。 振り返るに、この一年はいくつかの検査項目を開始しましたが、今ひとつ「これだ!」と言うものが出せなかった、と反省しています。 遺伝子検査は、まだまだ新しい技術ですので、まずは先生方や飼主の皆さんに知って認めていただくことから始まるのですが、この点が後回しになってしまった感があります。また、新しい情報が少ないので、自分たちで一から開発しなければならない部分が多く、いわゆる開発に時間がかかった、と言うところもあります。時間の効率化とスピードアップ、来年の課題です。 活性化リンパ球療法について言えば、現在二つの大学と共同研究を行っており、両大学ともそれぞれの動物医療センターで治療を開始しています。着々と臨床効果のデータが出つつあります。来年は、興味深い報告がいくつか出ると思います。 また、一般の開業の先生からも、自分たちの病院で治療を行いたい、との相談を受けました。うち、いくつかの病院と共同研究という形で、我々の培養技術やノウハウを提供していきます。来年には、先に書いた大学病院と同じ方法で培養した活性化リンパ球療法が一般の動物病院でも受けられることになるでしょう。 この治療は先端の細胞療法ですので、臨床研究としてこれから治療効果や効果的な使い方等々のデータをどんどん集めていくことになります。 人の医療分野では、「癌の第4の治療法」として注目を集めていますので、獣医療域でもこれからの新しい治療法です。ぜひ、ご注目下さい。 最近ある雑誌で、ベンチャー企業が大企業と渡り合うにはどうすればよいか、という記事がありました。曰く、「ベンチャー企業は、組織力と資本力では大企業に到底かなわない。ベンチャーが勝てるのは、アイディア力と行動力、すなわち斬新な発想と即実行に移せるスピード、である。」ということでした。共感です。 来年は寅年、「虎穴にいらずんは虎児を得ず」、新しいことに挑戦する勇気も必要ですね。 来年の目標、「斬新な発想力と迅速な行動力、それに挑戦する勇気」、これで行きたいです。我々にとって、この先を占う一年になると思います。 皆さんには、新しい情報、新しい検査、新しい治療、等々、逐次届けてまいります。 本年は、サボりにサボった拙いブログに御付き合い頂き、ありがとうございました。 また、コメントを書き込んでいただいた皆様にも、感謝いたします。 来年は、最低月に2回のアップを目標に、情報を発信したいと思います。 来年もぜひ、よろしくお願いいたします。 では良い年末年始をお迎え下さい。
2009.12.27
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毎度季節の挨拶から始めますが、寒くなりましたね。一気に冬になったような気がします。寒いのが大嫌いな私にとって、これから冬篭りしたくなる季節です。厚着になって、外見メタボ体型、です。さて、先回「ネコ肥満細胞腫c-kit遺伝子変異の最新情報」ということで、論文が発表された話をしましたが、今回はその内容を簡単に紹介します。肥満細胞腫、c-kit遺伝子と変異、メシル酸イマチニブの効果、については、自分で調べて頂くか、過去の日記をご覧下さい。以下論文の概要です。1)ネコの肥満細胞腫62症例について、c-kit遺伝子の変異を解析しました。c-kit遺伝子のエクソン6、8、9、11、13、17及びその他の変異を解析したところ、エクソン8の変異が28例(45.2%)、エクソン9の変異が15例(24.2%)でした。その他の変異は、それぞれ0または1症例でした。つまり、62症例中40症例(64.5%)でc-kit遺伝子エクソン8またはエクソン9の変異が確認された訳です。イヌの場合エクソン11の変異が多いといわれていますが、それでも10-20%程度なので、ネコのこの変異の割合は、大変高率と言えます。*我々の臨床研究の結果でも、エクソン8または9に変異のある割合は4割以上です。2)続いて、このうち10症例にメシル酸イマチニブを投与しました。10症例のうち、c-kit遺伝子エクソン8の変異が5症例、エクソン9の変異が3症例、つまり10症例中8症例で変異が確認されました。10症例全てにメシル酸イマチニブを投与したところ、上記エクソン8又は9に変異のある8症例の内7症例で有効で、変異のない1症例でも有効でした。つまり、c-kit遺伝子エクソン8又はエクソン9に変異の確認された症例の8症例の内7症例(87.5%)でメシル酸イマチニブが有効でした。結局この論文は、次の2つのことを言っています。1)ネコの肥満細胞腫の約半数でc-kit遺伝子エクソン8及び9に変異がある2)エクソン8または9に変異がある場合、メシル酸イマチニブは有効である(その他、学問的には細かいデータがたくさん載っていますが、難しくて私にもわからないところもあります。勉強不足を露呈しています。)我々も、今月からネコ肥満細胞腫c-kit遺伝子変異の検査を始めましたが、この論文を参考にエクソン8と9を解析しています。これまでは「ネコはエクソン8」と言われていましたので、検査の精度が格段に向上した訳ですね。肥満細胞腫の治療法は、手術による摘出が第一選択になると思いますが、手術が適応にならない症例や、手術の後の再発症例などについては、c-kit遺伝子を検査して、変異があればメシル酸イマチニブを使う、と言う選択肢も増えたわけです。もちろん、「手術」と言う負担、苦痛を避けるために、最初からこの検査と治療を選択することも良いのではないでしょうか。まさに、日々進歩です。今、学会シーズン、先週も大阪に行って来ました。面白い話もいくつかありましたので、逐次紹介して行きたいと思います。我が家のメタボナナちゃん、投薬でクッシング症候群の症状が落ち着いたので、一時期薬を中断しました。そしたら4、5日で徐々にまた症状が出だし、ホルモンの検査したところ数値が上がっていました。結局は、薬で治まっていただけで、一生継続なのでしょうね。可哀相ですが、我々飼い主も覚悟を決めてこの先付き合わないといけないな、と思った次第です。でも、相変わらず、ビールとチーズだけは・・・。
2009.11.26
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錦秋とはよく言ったもので、街中でも少しずつ木々の葉が色づき始め、秋の色を感じるようになりました。朝晩はさすがに冷え込んできましたね。食欲の秋、先日遅まきなが新米を頂きました。炊き上がりの色艶と良い、香りも味も最高、いや美味しかったです。 一方で、新型インフルエンザも衰え知らず、ぼちぼち季節性のインフルも流行る時期、地道に手洗いウガイの励行を心がけましょう。 「ネコ肥満細胞腫でのc-kit遺伝子変異とメシル酸イマチニブの効果」について、待ちに待った論文が発表されました。(日本獣医生命科学大学、盆子原誠先生のグループ。我々も微力ながら協力しました。) 本題の前に、少し解説します。 肥満細胞腫は肥満とは関係ありません!(常套句)このあたりは調べてください。 細胞の表面には、細胞の増殖因子(カギ、としましょう)を受け取る受容体(カギ穴、としましょう)があります。増殖因子(カギ)が受容体(カギ穴)に結合すると、細胞増殖のスイッチがはじめて入ります(ドアが開く、ということですね)。ここで言う受容体はKITタンパクといわれ、タンパクを作っている遺伝子をc-kitと言います。通常は、増殖因子がKITタンパクに結合して初めて細胞増殖のスイッチが入るわけです。 ところが、c-kit遺伝子に異常のあるKITタンパクには、増殖因子が結合しなくても勝手にスイッチを入れてしまう異常なものがあります。カギがなくても、勝手にドアが開いてしまうわけですね。 肥満細胞腫は、肥満細胞がいろいろな原因で癌化し異常に増殖しますが、その原因の一つとして、このようなc-kit遺伝子の変異もあるわけです。 では、メシル酸イマチニブと言う抗癌剤はどのように効くか、というと、c-kit遺伝子に異常があるKITタンパクが勝手に入れた増殖のスイッチを切ってしまう、と言う訳です。 これまで、イヌの肥満細胞腫でc-kitという遺伝子に変異があった場合、メシル酸イマチニブが良く効く事が報告されていました。実際に、大学病院やいくつかの動物病院では、イヌの肥満細胞腫でc-kit遺伝子の変異を遺伝子検査で確認し、変異が陽性の場合メシル酸イマチニブを使って治療を行っています。やはり良く効くようです。 ネコはどうか、というと、イヌに比べて肥満細胞腫の患者さんが少ないようで、なかなか研究が進んでいなかったようです。 今回の論文報告では、ネコの肥満細胞腫でもイヌと同じようにc-kit遺伝子が変異している場合が存在すること(変異の場所はイヌと違うようです)、メシル酸イマチニブが良く効くこと、が報告されています。なんと、c-kit遺伝子に変異があった8頭のネコにメシル酸イマチニブを投与したところ、7頭で良く効いた、と言う報告です。多分、ネコでは初めての報告ではないでしょうか。 この数字は、本当に凄いです。 このような薬剤を「分子標的薬」と呼びます。 聞いたことがある方も多いと思います。 つまり、異常のある遺伝子など小さい分子をを標的にしてピンポイントで効果を上げる、という薬剤です。 人の抗癌剤だと、肺癌の治療薬「イレッサ」、慢性骨髄性白血病の治療薬「グリベック」、乳がんの治療薬「ハーセプチン」、B細胞性白血病の治療薬「リツキサン」など、他にも多種多様な薬があります。また、現在も研究が続けられています。 現在、抗癌剤の開発ではもっともホットな分野です。 詳しくは、これも調べてみてください。わかりやすい説明がたくさんあります。 話を戻しますが、ネコの肥満細胞腫でもc-kit遺伝子の変異とメシル酸イマチニブの効果の関連が証明されたと言うことは、新しい治療の選択が出来るようになった、と言うことです。 ネコにも飼主さんにも朗報ですよね。 ネックは薬の値段が多少高いと言うことでしょうか。 では、実際に肥満細胞腫を疑った場合、どうすればよいか。 日ごろ、良く身体を触ってあげることが早期発見の第一歩、です(受け売り)。 何かおかしいイボを見つけたら、迷わず掛かり付けの獣医さんを尋ねる。 いろいろ原因は考えられるでしょうが、肥満細胞腫の可能性を疑ったら、少し組織を採って細胞診断や病理診断、これでわかります。 肥満細胞腫と診断されたら、この先の治療法は獣医さんと相談です。 選択肢の一つとして、c-kit遺伝子の変異を遺伝子検査で調べます。 もし、遺伝子に変異があった(陽性)場合は、メシル酸イマチニブを使う価値は大いにあり、と言うことになります(私だったら迷わず使います)。 これらの検査や治療は最先端の方法ですので、まだまだ情報が行渡っていないのも実情です。 ですから、逆に飼主さんからの獣医さんへの情報提供も大切です。 飼主さんは、自分の可愛い動物たちのことなので、皆さん良く調べて勉強していますね。私も教えられることが多々あります。 先生方も、それを真摯に受け止めて、治療に生かして欲しいです。 いつものように、話が脱線しまくってしまいました。 文章が長くなるので、最初に書いたことがだんだん忘れてしまうのでしょうか。 健忘?気をつけなくては・・・。 我が家のメタボナナちゃん、クッシングの治療薬が1クール分なくなったので、今日検査してきました。結果が良好であれば、暫く薬を中断してみましょう、と言う話になっていますが、そうなることを期待しています。結果は1週間後くらいです。 どんな病気もそうですが、この検査結果待ちの時間と言うのは、本当に嫌ですね。何もわからない、どうしていいかもわからない、不安ばかりです。 こんな飼主の気持ちを知ってか知らずか、相変わらずビールをせがみます。 可哀相なので、隠れて飲むしかないですかね。 それか、焼酎は嫌いなようなので季節柄お湯割にでもするか、です。(飲まない、という選択肢はありません)
2009.10.27
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めっきり秋らしくなって、天高く・・・・、ですね。食欲、運動、何にもよい季節になってきましたが、私は睡眠欲が勝ってきました。気持ちよく寝れます。さて、先月末鳥取での獣医学会に参加してきました。我々も一つ演題を発表してきましたが、詳しくはHP学術発表をご覧ください。蛇足ながら、学会や論文などの学術発表も仕事の一つ。学術的に評価されるデータを出すことで、信頼性のアップに繋がると考えています。任された若い職員は大変ですが、これも訓練ですからね。「生みの苦しみ、がんばれ!」と、はっぱをかけます。ところで、先回紹介したFIPの治療薬に関してですが、田中先生のグループから発表がありました。公の学会での発表でしたから公表しても問題ないと思いますので・・・。一般名「サイクロスポリンA」という薬で、免疫抑制剤として認可されている薬です。発表された内容は、先回お話した内容とほぼ同じでした。この免疫抑制剤がなぜFIPに効くのか、メカニズムは私にも良くわかりませんが、実験データからすると、ウィルスの増殖を抑えることでFIPの進展を抑制するようです。ただ、試験管のなかのデータが主で、実際の臨床効果のデータが少ないので、本当に効果があるのかどうかは今後の研究に期待したいところです。FIPは、免疫機能が低下することも発症の一つの原因とされていますので、治療に免疫抑制剤を使うことは、メカニズムがはっきりしない限り、なかなか使いにくいかな、と言うのが私の印象です。でも、薬と言うのは主作用と副作用と言う二面性があって、時として副作用が思っても見なかったような病気に効く場合もあります。いづれにしても、今後の研究成果に期待です。私も、サーチを続けたいと思います。この先も学会がいろいろあります。私の興味の範疇になりますが、最新の情報を届けます。期待してください。ところで、我が家のメタボナナちゃん、クッシングの症状は全く落ち着きました。餌の量も制限していますので体重もやや減少、良いことです。ただ、空腹なんでしょうね、我々の食卓にへばり付いて、悲しそうな眼で見つめてきます。悲しそうな声で鳴きます。そんなときは・・・、です。飼主の悲しき性・・・、と自分に言い訳しています。
2009.10.04
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昨日の台風は丁度通勤時間帯で、大変混乱しました。そうかと思ったら、今日は蒸し暑い夏に逆戻り、身体が追いつきません。動物たちも辛いんでしょうね。先週の土曜日に、「予防動物医学研究会」が開催されました。この会のことは、以前設立した際に紹介したと思います。一言で言えば、病気になる前に早期に診断するための検査や、早期の治療に関しての研究推進が目的です。(興味のある方は、検索してHPを見てください)今回の演題の中で私が注目したのは、「リアルタイムPCR法による抗FIPV薬の薬効評価について」と題した発表です(共同研究者である日獣大田中先生が発表者)。リアルタイムPCR法とは、我々が実施している検査方法と同じ方法で、血液や胸水、腹水などからウィルスの遺伝子を検出する精度、感度とも極めて高い技術です。この方法を使って、「抗FPIV薬」つまりFIPVに効果を示すような薬の効果が評価できるかどうか、という内容です。ちなみに田中先生は、通常存在し得ない血液や胸水、腹水に存在し、FIP発症の起因となるコロナウィルスを「FIPV」と呼んでいます。繰り返しになりますが、未だ遺伝子レベルではコロナウィルスもFIPVも区別は出来ていません。検査では、我々と同じように(というか、我々は田中先生の技術を導入していますので、同じな訳です)正確にはコロナウィルスを検出していますが、この発表では「FIPV」と使っていましたので、以降FIPVと表記します。まず、試験管内での実験結果です。強い毒性を持ったFIPウィルス株(多分、重篤なFIPを発症したネコから分離したウィルスを株化したものだと思います)をネコのある種の細胞に混ぜると、感染細胞は死んで形が変わることから、明らかに感染していることがわかります。そこに、ある種の薬剤を入れると、感染を阻害することがわかりました。つまり、感染して細胞が死ぬのを抑えたわけです。ただし、これだけでは体内に投与して本当に効くのかどうかはわかりません。その後は、現在研究を継続している段階のようですが、一症例だけ報告がありました。腹水が溜まり臨床的には既に重篤なウェットタイプのFIPを発症、リアルタイムPCR法で測定したウィルス値は100万個以上、既に治療方法も無いということで、飼主さんの同意を得てこの薬を試してみたそうです。投与後数日で食欲は回復、腹水も減り、徐々に元気を回復したそうです。そのときのウィルス値も徐々に減少していました(ゼロにはならず)。この症例は、ある時一気にウィルス値が上昇し、残念ながら亡くなったそうです。このあたりの原因は、薬の効果と合わせて解明すべき課題ですね。この研究は未だ始まったばかりですが、いろいろなことを教えてくれました。1)この薬剤または類似の薬剤が、FIPの治療薬として期待できる可能性がある。2)薬を投与した後元気が回復してFIPV(コロナ)の値が下がった、ということは、「FIP発症とFIPV(コロナウィルス)感染」は関連している。3)リアルタイムPCR法で感染している「ウィルス値」まで検出することは、臨床症状の把握と薬の効果を評価する方法として優れている。1)は、まさにその通りですね。いい結果が得られることを大いに期待したいと思います。2)と3)は、我々の検査の有用性を裏付けてくれていると思います。我々の臨床研究の結果でも、FIPを疑う臨床症状がある場合でも、血液または胸水、腹水からコロナウィルスが検出されるのは約25%、つまり残り75%は他の原因によるものだと考えられます。「臨床症状は明らかにFIPなのにコロナウィルスが検出されない場合はFIPでは無いの?」という疑問の声も多く聞かれます。2)の結果、つまり臨床症状が治まりコロナウィルスの値も低下してきた、ということは、明らかに「コロナウィルス感染とFIP発症」には関連性があることを示すと考えます。さらに言うなら、FIPを疑う臨床症状があってもコロナウィルス感染が無ければ、それはあくまで「FIPに類似した臨床症状」であるといえるのではないかと思います。技術的なことですが、リアルタイムPCR法には「定性的(感染が陽性か陰性か判断)な方法」と「定量的(感染しているウィルスの量を数値化する)な方法」の2つがあります。我々は、田中先生と検査開発当初から「定量的」なリアルタイムPCR法を応用してきました。つまり、感染しているウィルス量を正確に検出することで、臨床症状の重篤度や予後の判断に役立つであろうと考えてきた訳です。今回の3)の結果は、まさにウィルス量と臨床症状の関連性を表している結果だと考えられ、感染しているウィルス量を正確に把握し、継続的にモニターすることで、病状の把握や予後の推測に大いに役立つと考えています。今回の講演は、今後検査を進めていく上で、我々にとって大いなる味方を得た、というような内容でした。オーバーかもしれませんが、聞いていてそう思いました・・・。FIPは大変複雑な病気ですが、鋭意研究している先生方がたくさん居ます。FIP発症とコロナウィルス感染の関連性は間違いの無いことだと思いますが、この先コロナウィルスが変異したとされる「FIPV」の正体解明、感染や発症のメカニズム解析、ワクチンや治療薬の開発など、日進月歩で進んでいくと思います。大いに期待したいです。秋は学会シーズン、今月末の獣医学会を始めこれからいろいろな集まりが各地で開催されます。また、新しい情報がありましたら提供していきます。日が落ちるのが早くなりましたね。日中暑くても、日が落ちると涼しくなりました。日中は蝉の最後の大合唱でしたが、今の時間は秋の虫が鳴いています。まさに季節の変わり目ですね。皆さん、体調管理には気をつけてくださいね。かく言う私も、夏の暴飲暴食が祟ってか、やや胃袋が疲れ気味。ここ数日、胃薬の御世話になってます。メタボナナちゃんのクッシングは、薬のおかげか今のところ落ち着いています。相変わらず、食欲旺盛、散歩大嫌い、ですが・・・。本当に病気か?と聞きたいくらいなのです。なんと答えるやら・・・。
2009.09.01
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引越しもやっと落ち着いて、何とか仕事も動き出しました。環境が変わるとなれるのに時間がかかりますが、でも気分も一新、スタートです。FIP(伝染性腹膜炎)とコロナウィルスの関係、またコロナウィルスの遺伝子検査の意義などについて、引き続きいろいろなお問い合わせやご意見を頂きます。ウィルスの変異やFIPとの関係など、学術的にもわからないところが多い中で、実際に治療される臨床現場の先生方の中にも、遺伝子検査の意義や有用性をどう理解したらよいか、今ひとつ疑問視されている先生方も確かにいらっしゃいます。我々も、検査の現場でいろいろな角度からデータの解析を行っていますので、少しでも臨床現場に役立つよう逐次情報を提供していきたいと考えております。FIPについていろいろな先生と話をする中で、なるほど、と思える話を伺いました。ここで、二つ紹介します。読み流して頂いても結構です。一つ目は、FIPについて研究されている先生のお考え。「FIPとコロナウィルスの関係について、簡単にどう考えたらよいか?」という私からの質問に対して、「あくまで私の考えですが・・・」と言う前置きで、次のように説明してくれました。「コロナウィルスとFIP」の関係は、一言で言えば、HIV(ヒトエイズウィルス)とAIDS(エイズ)、FIV(ネコエイズウィルス)とネコエイズ、の関係に似ているのでは、と言うことです。ご存知のように、HIVやFIVはウィルスのことで、エイズは病名です。HIVやFIVが感染することによって極度に免疫機能が低下し、それが原因で日和見感染している他のウィルスや細菌が原因の肺炎や肉腫を発症し、重篤な場合死に至ります。このような症状(病状)のことを、エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)と呼びます。ただし、HIV(以下、HIVで話を進めます)が感染したからといって、かならずエイズが発症する訳ではありません。ニュース等でも、「HIV感染者は○人」と「エイズ発症者または死亡者は○人」という表現を使って別けていますね。つまり、HIVに感染した場合はあくまで「HIV感染」です。そして、HIV感染が原因で発症する様々な臨床症状の総称を「エイズ」、このことは間違いありません。忘れてならないのは、「エイズ」と同じような症状はHIV感染以外でも起こりうる可能性がある、と言うことです。発症原因は極度の免疫機能の低下、ですから、何かの原因で免疫機能が低下すれば、同様の症状が起こる可能性は大いにあります。その時に「エイズ」か「エイズに似た症状」かを判定するのが「HIV感染」の有無、つまりHIV感染陽性なら「エイズ」、陰性ならエイズを否定、と言うことです。こう考えたときに、「コロナウィルスとFIP」の関係は、と考えてみましょう。「コロナウィルス」はウィルスのことで、「FIP」は病名(臨床症状)です。「腸コロナウィルス」は多数のネコで感染しているといわれていますが、血液中には存在しないと考えられています。それが何かの原因(ウィルスの変異?免疫機能の低下?その他?)でマクロファージに感染、増殖し、血液中で悪さをしてFIPを発症するといわれています。では、FIPを発症していないネコで血液中からコロナウィルスが検出されるかどうか。我々の解析でも、健常(FIPを発症していない)ネコの検査依頼は少ないですが、稀に僅かな量のウィルスが検出されることがあります。この場合、発症するリスクは高いと考えられます。学術的には、健常ネコでも10%程度でコロナウィルスが検出される、という報告もあるようです。そう考えると、血液中から検出される「コロナウィルス感染」は、ほんの僅か、または現在の検査技術では検出できないレベル(検出限界以下)の感染、が起こっている可能性はあると考えられます。つまり、これらの症例は、「コロナウィルス感染症」ですが、FIPは発症していない、というケースと理解できます。一方、何度か御話していますが、FIPを疑う症状があった場合でも、血液や腹水胸水からコロナウィルスが検出される確率(陽性率)は約25%です。他の75%は、コロナウィルス感染ではない、他の原因で発症したと考えられます。これは、「FIPに似た症状」ということになるでしょうか。この先生曰く、「私の考えでは」という前置きで、「FIPはコロナウィルス感染が起因である。血液中への感染は少なからず起こっている可能性が考えられ、現在の検査技術レベルで検出されないような量かもしれない。何かしらの原因でウィルスが爆発的に増殖することが原因でFIPを発症するのではないか。」ということでした。この話を聞いたときに、コロナウィルス感染とFIPとの関係についての考えかた、が少しわかった様な気がしました。少し霧が晴れた、というような感じです。次に、二つ目。動物病院を開業されている臨床現場の最前線に立つ先生の話です。「臨床現場では、FIPとコロナウィルス感染について、どう考えますか?」と質問しました。帰ってきた答え、なるほどな、と思いました。「臨床現場では、目の前に居るネコちゃんの治療が最優先。極端な話、コロナウィルスが感染していようがいまいが、FIPであろうが無かろうが、まずは苦痛を取り除いてあげることを考える。腹水、胸水が溜まって苦しそうなら抜いてあげる、痛みがあるようなら軽くしてあげる・・・。その後に、症例にあった治療を選択する。」ということでした。この話を聞いたときに、我々の無力さを感じました。FIPに対する治療法が無い現状で、臨床現場にとって感染を明らかにすることがどれほどの有用性があるのだろうか、と考えてしまいました。一方で、先の話で「HIVとエイズ」の関係を考えたときに、この先画期的なコロナウィルス感染治療薬やFIP治療薬が出てきたときの検査の有用性や、出来るだけ早期発見で対処的な早期治療を進められる健康診断的な位置づけの検査としての重要性、は間違いないかな、とも思っています。FIPとコロナウィルス感染の関係は、わからないところが多いのも事実です。でも、「FIP発症はコロナウィルス感染(FIPV?)が起因」という考え方は確かにあります。そう考えたときに、血液や腹水胸水中からコロナウィルス感染を検出することは、FIP確定診断やこの先の発症リスクを推測上で、大変重要であると、考えています。そう考えて(確信して)、検査しています。何やら、またまたわからない話をずらずらと書いてしまいました。悪い癖で、話し出したら止まらない、というやつです。あくまで、私の考えや、御話くださった先生方の個人的なお考えを紹介しました。読んで下さる方は、その旨了解して下さい。我が家のメタボナナちゃん、「クッシング症候群」と診断されて約1ヶ月、薬を飲み続けていますが、症状や検査結果は大分落ち着いてきました。というか、落ち着き過ぎ、というような印象もあります。このまま落ち着いているようなら、一度薬をやめてみましょうか、と主治医の先生。それで再発するなら明らかな「クッシング」だし、そのまま正常なら何が原因だったのか????一過性のクッシング様症状????病気と原因、わからないことが多いですね。
2009.08.19
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すっきりとした夏空を早く拝みたい毎日ですね。この天候で野菜も大幅に値上がり、また米の収穫も激減が予想されています。家計に大打撃、これも地球温暖化のせいでしょうか。さて、先週先々週と我が社は引越しでした。検査室をやや広いところに移し、一緒に本社も移転しました。詳しくはHPをご覧下さい。落ち着きましたら、皆様への情報発信を頻繁にしたいと思います。生来の筆不精ですが、今後ともよろしくお願いいたします。我が家のメタボナナちゃん、診断結果は「クッシング症候群」でした。現在内服薬で治療中です。この先、病気とは長い付き合いになりそうですが、飼主として出来る限りのことをしてあげたいと思っています。
2009.08.03
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7月に入り、気温と湿度が高く不快な毎日が続いています。毎朝仕事場に着くまでにぐったりです。これが満員電車だったりしたら、もう我慢できずに途中下車してしまうかも。でも、もう2週間くらいで梅雨明けでしょうか。我が家のメタボナナちゃん、ここ一ヶ月くらい元気が無く、散歩もあまり歩かなくなり、ちょっと心配で病院に連れて行きました。とりあえず、7歳にもなったことだし、いい機会なので健康診断もかねての診察です。もともとメタボなので腹は張っていたのですが、水を多く飲むようになり、オシッコの量も多くなり、かといって食欲は旺盛で、でもぐったりした感じで、と言うような、飼主が感じた症状でした。半日預けて、血液検査、レントゲン、腹部エコーを実施、夕方迎えに行き検査結果を聞きました。特に大きな異常はないものの、血液ではGPTとALPが基準値より若干高め、エコーとレントゲンでは胆泥の可能性と、やや肝肥大、との指摘。とは言っても、すぐにどうこうする状態ではないので、とりあえず肝機能改善薬を飲んで様子を見ましょう、と言うことになりました。まあ、とりあえずよかった、と家に戻ってきたのですが、ふと思ったのが、「何か元気がなくなったのは、餌を変えてからかなぁ」。銘柄は全く変えていないのですが、新しい袋をあけて与えた時期と、なんとなく一致します。家内と・・・、「では、ちょっと食べてみようか」となり、家内は古い餌と新しい餌をパクリ、カリカリ。「思ったより塩辛いね。」私も躊躇しましたがパクリ、カリカリ。「本当だ、しょっぱいね。こんなの食べているんだね。人間なら高血圧食だな。」別に塩分が異常に多いわけではないのでしょうが、嗜好性を高めるための成分配合なのでしょう。初めての経験でしたが、皆さんはどうでしょうか?愛犬や愛猫の餌を食べたことがありますか?手作りの方は当然かもしれませんが、ペットフード、特にドライフードを上げている場合は、なかなか口にはしないと思うのですが、そう思うのは私だけでしょうか。「飼主なら当然!」と、怒られそうですね。でも、新発見でした。メタボナナちゃんは、今経過観察中です。飼主から見て、他に少し疑わしいところもあるので、他の検査をしてもらおうと考えています。ヒトと一緒、早めは早めの検査は大事ですね。思わず自分の胴回りを見てしまいました・・・。
2009.07.10
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「いや~、今日も暑いですね!」が朝の挨拶になってきました。この先3ヶ月予報では、夏の暑さは平年並み、とのことですが、それはあくまで相対的なもの、絶対的に「暑いものは暑い!」ですよね。さて、10日ほど前になるでしょうか、「イヌの肥満細胞腫に対する抗がん剤がアメリカFDAで認可された」という記事が新聞に掲載されました。もう皆さんご存知ですよね。医薬品名は「パレイディア(Palladia)」、ファイザー・アニマル・ヘルス社の製造です。記事では、がん細胞を殺す効果と共に、がん細胞に栄養を運ぶ血管の新生を抑制する効果もある、と書かれていました。血管新生抑制効果、つまりがん細胞の増殖に必要な栄養を枯渇させて殺してしまう効果です。兵糧攻めみたいなものでしょうか(余計わからない?)。新聞情報では、イヌの肥満細胞種の60%程度に効果があったとありました。すばらしい成績ですね。で、どんな薬かなと調べると、一般名が「リン酸トセラニブ(Toceranib Phosphate)」と出ていました。あれ?トセラニブ?なんかイマチニブに似た名前だなぁ(少し強引)、と思いながら、引き続き調べました。で、わかったことは、このトセラニブはイマチニブと同じように、c-kit遺伝子異常で起こるチロシンキナーゼの異常な活性化を抑える作用を持つ分子標的薬だったのです。それ以外に、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)や血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)の異常で起こるチロシンキナーゼの異常な活性化を抑えることで異常な血管の増殖を抑える効果があるようです。すこし難しいですが、詳しくは調べてみてください。(「異常」の繰り返しですが、結局がんは異常が重なって発生するものなのでしょうね)つまり、パレイディアは今流行の分子標的薬であり、c-kit、VEGFR2、PDGFRβの異常に関連するチロシンキナーゼ活性を阻害することから、「マルチキナーゼ阻害剤」とも呼ばれています。引き続き調査。すると同じファイザー社の薬で「スーテント(Sutent)」というヒト用の抗がん剤がありました。化学構造は、なんとパレイディアとほんの一部が異なるだけで、マルチキナーゼ阻害剤です。多分ファイザー社は、スーテントを基本にパレイディアを開発(誘導体)したのでしょう。次に、スーテントを調べてみました。(ファイザー社HP情報から抜粋)製品名:スーテント(Sutent)一般名:スニチニブ リンゴ酸(Sunitinib Malate)効果効能:イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍(GIST) 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌既に日欧米で承認されており、昨年6月に発売されています。ということでした。注目は効果効能の「イマチニブ抵抗性の・・・」と言うところです。GISTはイヌの肥満細胞腫と同じように、c-kit遺伝子変異によってチロシンキナーゼ活性が高まる事が、発症の一つの原因とされており、臨床現場ではイマチニブ(グリベック)が使われています。c-kit遺伝子変異があった症例では、イマチニブが良く効くことが確認されていますが、耐性の問題も出てきています。つまり、再発の場合などにはイマチニブが効きにくくなります。このような時にスーテントを使うのですね。分子標的薬の効果の発現は、鍵と鍵穴のような関係をイメージしてください。例えば、分子標的薬Aが「鍵」、それに対応するチロシンキナーゼが「鍵穴」だとします。Aがジャストフィットする鍵穴にはまると扉が開きます(効果が発揮されます)。ところが、その鍵穴が何かの原因で無くなったり、形が変わったり、するとAははまらなくなり扉が開かなくなるのです。「耐性」です。ただ、扉を開けるには(チロシンキナーゼ活性を抑えるには)他の鍵穴もあるので、その鍵穴にはまる鍵Bをうまく作ってあげれば、また開ける事が出来ます。つまり、Aがイマチニブ、Bがスーテント、と言うわけです。(説明が長い!)ここまで長々と話してきて思ったことは、これってイヌの肥満細胞腫に応用できないの?、つまり、グリベックを使って、再発で効かなくなったらスーテントを試してみる。どうなんでしょうか、臨床現場の獣医の先生方。(ど素人の浅はかな考えでしたら、どうそご批判をください)でも、パレイディアは来年秋ごろには発売されるでしょうから、最初からパレイディアを使うほうが賢明でしょうか。でもでも、パレイディアの認可はアメリカのFDAの話。まだ農水省認可の情報が無いですから、ということは日本での発売はまだまだ後でしょうね。残念・・・。ヒトの抗がん剤も、効果の高い分子標的薬がたくさん出てきています。これらの良い所は、効果も高いのですが、副作用がこれまでの抗がん剤と比較すると弱いことです。また、例えば「c-kit遺伝子変異があるとイマチニブが良く効く」ように、遺伝子変異を検査することによって薬の効果が予測できる、つまり無駄な治療を回避できるので、病気の治療の面でも経済的な面でもメリットは多いにあります。「遺伝子検査と分子標的治療の一体化」、これからの方向性を如実に物語っている例だと思います。検査の位置づけも大変重要になってきます!動物医療もここに来て急速に進歩しています。可愛い動物たちのために、我々も飼主さんも、情報収集しましょう!それより、農水省さん、ファイザーさん、パレイディアが早く日本で認可されて使えるようになるよう、お願いします。今仕事場で書いていますので、可愛いメタボナナちゃんは傍らには居ません。毎日暑いせいか、家では魚の開きのように腹ばいになって伸びています。これからつらい季節なのでしょうね。こんなときは水浴びでもさせてやろうかと親切心で思うのですが、実はシャンプーが大嫌い。「風呂・・・」と言うと、逃げていきます。梅雨もあと一ヶ月くらいでしょうか。風呂上りにベランダで、冷たいビールと枝豆、ラジオからはプロ野球中継・・・、夏の風物詩ですよね。って、時代が違います?(今回の情報は、ファイザー社のHPをはじめ、いろいろなサイトから使用させていただきました。ありがとうございました)
2009.06.26
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今年も早いもので前半の最後の月、年を取ると時間経過が早いといいますが、あっという間です。そうこうしている内に紅白・・・なんていうのは早すぎますね。梅雨の毎日、蒸し暑い毎日が続き憂鬱になります。さて、今回は「肥満細胞腫」について書いてみます。まずはお決まりのフレーズ、「太っているのとは関係ありませんよ~!」。失礼しました・・・。「肥満細胞腫」に関しては、ネットで検索して頂ければ沢山の情報が出てきますので、調べてみてください。以下のようなサイトも参考になります。http://www5a.biglobe.ne.jp/~wantail/gan/gan05.htmlhttp://www.p-well.com/health/clinic/dog/dog-himansaibou.html今回は「最新情報」ということで、遺伝子検査と分子標的薬について御話します。イヌが中心の話ですが、概要はネコにも当てはまると思います。獣医さん向けの雑誌に掲載された内容を、できるだけかみ砕いて話をしたいと思います。(J-VET、2009年4月号、日本獣医生命科学大学盆子原誠先生)現在、標準的な治療法は化学療法ですが、決して効果が高いとは言えません。近年、イヌの肥満細胞種にメシル酸イマチニブという薬が良く効いた、という報告があり、新しい治療薬として注目されています。イマチニブというのは、本来はヒトの慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍の治療薬として認可されています。この薬の特徴は、「チロシンキナーゼ」という、簡単に言うと「細胞増殖を活性化する酵素」ですが、この酵素の異常な活性化を抑えるところにあります。つまり、健康な状態で酵素が働いている分には問題ないのですが、異常に働き出すと、細胞が無限に増殖しだして、細胞の塊が急激に大きくなります。これが腫瘍化です。この「チロシンキナーゼの異常な活性化」も肥満細胞腫の発症原因の一つです。では、酵素のこのような異常な働きを見つけ出す方法はないか、あります!それが遺伝子検査です。肥満細胞の表面には、「KIT(キット)蛋白」と呼ばれる分子が存在します。細胞表面のKIT蛋白にSCFと呼ばれる別の物質が結合すると、KIT蛋白を通して結合の信号が細胞の中に伝えられ、続いてチロシンキナーゼが活性化されて細胞の増殖が始まります。ところが、このKIT蛋白を作っているc-KIT(シー・キット)遺伝子に異常があると、SCFがKIT蛋白に結合しなくてもチロシンキナーゼが異常に活性化し、細胞の異常な増殖(腫瘍性増殖)が起こります。c-kit遺伝子の異常でチロシンキナーゼが暴走した、そんな感じでしょうか。つまりつまり、前置きが長くなりましたが、このc-kit遺伝子に異常が無いかどうか調べて、異常があればチロシンキナーゼの暴走が原因で肥満細胞腫が発症した可能性が高い、ということがいえます。さらにつまり、この検査でチロシンキナーゼの暴走がわかれば、イマチニブという薬が良く効くことが予想されます。難しいのは、c-kit遺伝子の異常といってもいろいろなパターンがありますが、イヌではエクソン11という遺伝子の一部分の変異を見ます。これは、今までの研究で、イヌの肥満細胞腫ではこのエクソン11の変異が多いことがわかっているからです。ここまで来ると難しいですね。あくまで参考として、余裕があれば頭の隅に入れといてください。さて、ここからが本題です。記事から抜粋します。肥満細胞腫のイヌ21頭でc-kit遺伝子変異を解析したところ、5頭でエクソン11に変異が確認されました。変異の頻度は23.8%です。他の約3/4は他の要因で発症しているということですね。また、グレード(悪性度)が高くなるほどこの異常の頻度は高くなる傾向にあるようです。この全21頭にイマチニブを投与したところ、c-kit遺伝子の変異があった5頭では肥満細胞腫が退縮、つまり100%!良く効きました。一方、遺伝子の変異が無かった16頭で見ると、それでも5頭で同じように退縮効果が認められました。31.3%です。効いた例では、イマチニブを投与して1~2週間で著しく退縮したようです。また、イマチニブはチロシンキナーゼの活性化をピンポイントで抑えますので、副作用も大変軽くすみます。これまでの化学療法剤は、細胞の増殖そのものを抑えるので、癌細胞だけではなく正常な細胞までも殺していました。副作用は大変強いです。このように、イヌの肥満細胞腫のうち明らかにc-kit遺伝子に変異があった場合には、イマチニブという薬が大変良く効く、ということが明らかです。つまり、これまでの「腫瘍には何でも化学療法」から一歩進んで、まず遺伝子検査で異常を確認し、異常があれば特効薬を使う、という「検査と治療が体系化された新しい考えの治療」が確立された良い例だと思います。これなら、無駄な治療を回避し、高い効果を期待できる治療を選択できるメリットがあります。画期的なことですね!でも、問題が・・・。まず、薬の価格が高いです。効果と価格の相談になります。また、一度効果があって退縮後再発した場合、2度目は効かない場合があります。「耐性」と言いますが、腫瘍細胞も戦っているのですね。まとめます。イマチニブは、肥満細胞腫に対する治癒の効果が明確にわかれます。非常に効くか、全く効かないか、です。これは、チロシンキナーゼの異常があるかどうかで決まります。つまり、効果を期待して闇雲にイマチニブを使用しても期待はずれになる可能性があります。また、薬の価格が高いため、安易に使うことは難しいですね。これを避けるために、まずチロシンキナーゼの異常の目安としてc-kit遺伝子の変異を検査し、異常が認められればイマチニブに効果が期待できる、ということがいえます。一方で、c-kit遺伝子エクソン11に変異が無くても効果がある例もありますので、その場合は試験的に薬を使っているかどうか、先生と良く相談してみることになります。ここまでイヌの話を指摘ましたが、ネコではどうか。ネコも同様にc-kit遺伝子の変異が報告されています。ただしイヌとは違うエクソン8という部分です。残念ながら、ネコの場合症例が少ないので、イヌのようにc-kit遺伝子変異とイマチニブの効果の関係がはっきりわかっていません。効いたと言う報告もありますが、まとまった報告ではないので、現時点ではなんともいえません。可能性はあると思いますが・・・。研究されている先生も沢山いますので、成果を大いに期待しましょう。これを読んで下さった専門の先生方、私の解釈に間違いなどあれば、ぜひご指摘下さい。またまた難しい話になってしまいました。ご勘弁下さい。でも、検査と治療が一体化すること、つまり「単純に病気かどうかわかる検査ではなく、一歩進んで薬が効くかどうかまでわかる検査」、画期的ですよね。動物医療も日々進んでいます。ヒトの医療のように保険が無いのが難点ですが、いろいろな良い検査法や治療法が出てきています。愛する動物たちに少しでも身体への負担が少なく、精度の高い検査と効果の高い治療を受けさせてあげたいですよね。我々も微力ながら、精進したいと思っています。いやはや深夜になってしまいました。メタボナナちゃんもさっきまで足元にいたのですが、さすがに自分の寝床に戻って行きました。さて、最後の一口ビールを飲み干して、私も床に入ります。では、また・・・・。ZZZZ
2009.06.18
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新型インフルエンザで始まった5月も、後数日で終わり。衣替え、入梅、と徐々に夏本番に向かってますね。何となく新型インフルエンザも収束に向かっている感がありますが、とかく日本人は熱しやすく冷めやすいようで、大騒ぎしたと思ったら、あの騒ぎは何だったんだろう、という今日この頃、です。でも、毎日の手洗い、ウガイの励行は続けましょう。いろいろな予防に役立ちます。 さて、またまたまた、三度FIPについて書きたいと思います。 2月と4月に、FIPとFIPV、さらにはコロナウィルスについて書きました。 FIP(ネコ伝染性腹膜炎)という症状を起こす原因となるコロナウィルスが慣例的にFIPウィルス(FIPV)と呼ばれていること、ただし学術的にはネココロナウィルスとFIPVの遺伝子レベルでの区別が正確には出来ていないこと、血液や胸水、腹水から検出されることで、FIPVとネコ腸コロナウィルスが鑑別されること、などを話しました。 御読み頂いた方々には、コロナウィルス、FIP、FIPVの関係について整理してもらえたと思います。 ところで、今回改めてFIPについて書こうと思ったのは、「ネココロナウィルス遺伝子検査はFIPの確定診断に使えるのですか?」という質問をいくつか頂いたからです。 前の2回では、検査自体についての説明が少し足りなかったのかもしれないな、と思った次第です。 まず、再度繰り返しになりますが、この検査の考え方です。 「腸コロナウィルスとFIPV(FIP発症の起因となるコロナウィルス)の鑑別のポイントは、血液、胸水、腹水などマクロファージを含む検体からウィルス遺伝子が検出されることです。」 FIPVの遺伝子配列が明らかになっていれば「FIPV」として検出することは可能ですが、現在FIPVはコロナウィルスが変異したのもであろう、というレベルで遺伝子上識別できません。従って、逆にコロナウィルス遺伝子を正確に検出する事によって、感染の有無を明らかにすること、がこの遺伝子検査の考え方です。(それで、検査の名称を変更しました) では、検体から「ネココロナウィルス遺伝子が検出されたら、FIPと確定できるか」ということですが、いくつか条件があります。 簡単に分けて考えたいと思います。1)FIPを疑う臨床症状があり、コロナウィルス陽性:FIPと確定して間違いない!(弊社HPに掲載の臨床研究データでは、FIPを疑う症例のうちコロナウィルス陽性は約25%)2)FIPを疑う臨床症状があり、コロナウィルス陰性:ウィルス感染以外の要因で発症している可能性が高い。(FIPを疑う症例のうちコロナウィルス陰性は約75%、つまり、多くはこのタイプ)3)FIPを疑う臨床症状が無く、コロナウィルス陽性:FIPとはあくまで症状の名称ですので、コロナウィルスが陽性でも「FIP」とは言えないと思います。ただし、ウィルスが感染していることは間違いのない事実ですので、将来FIPが発症する可能性を考えて注意深く経過を観察する必要があるでしょう。4)FIPを疑う臨床症状が無く、コロナウィルス陰性:とりあえず安心! 一番解釈が難しく、逆に一番知りたいところが3)でしょう。「感染がわかっても確定できないのなら、コロナ抗体価と同じじゃないか、」と言われるかも知れません。 でも、FIPに関心のある皆さんなら、「抗体検査」と「ウィルス遺伝子検査」の明らかな違いはお分かりだと思います。 「抗体検査」はあくまで感染の履歴(現在感染しているかどうかは不明)を示すものです。 一方「遺伝子検査」は、現在の感染しているか否か、がはっきりします。 つまり、「コロナウィルス遺伝子検査」は、検体を採取した時点でコロナウィルスが感染しているか否かを確定できます。 ウィルスが陽性だった場合、検体を採取した時点でFIPを「疑う」症状があればFIPと「確定」できるでしょう。一方、FIPを疑う症状が無くても「ウィルス感染」という事実は明確ですので、将来FIPを発症する可能性がある、と考えて経過を注意深く観察することになるでしょう。 臨床的に健常のネコたちについてこの検査を集中的に実施したことが無いので、正確なことはいえませんが、少ないながら健常(と思われる)ネコでもウィルスが検出された例があります。ただしその場合はウィルス数は大変低い値に出るのがほとんどです。 このような症例で、この先FIPが発症するのか、また身体の抵抗力(免疫力など)でウィルスが大暴れしないように押さえ込まれてしまうのか、それはわかりません。 でも、再三繰り返しになりますが、「コロナウィルスが血液中に存在する」ことは事実です。 また、難しい話になって申し訳ありません。 余計にわからなくなった、という方もいるでしょうか。 でも、ここまで理解して頂ければ、この「コロナウィルス遺伝子検査」の有用性がわかっていただけるかと思います。 整理します。*FIPを疑う症状があって血液、胸水、腹水からコロナウィルスが検出されたら、FIP!*健常でコロナウィルスが検出されたら、「ウィルス感染」は事実!将来FIP発症のリスクが高い!要経過観察!定期的な検査をお勧めします。 でも、健常ネコでウィルスが検出されてたとしても、「早期発見できた」と考え早めに対処してあげることができれば、可愛いネコたちも一緒に元気に暮らせるのではないでしょうか。 このように考えて頂ければ、この検査の有用性も理解して頂けるのではないでしょうか。 と、勝手に考えていますが、皆さん如何でしょうか。 ぜひ、率直なご意見をお寄せ下さい。 また、これをご覧頂いている獣医師の先生方、これはあくまで私個人の考えとして延々と書いております。 本来、一検査会社の者が診断まで口を出すことはご法度、というのは重々承知しています。 ただ、検査をして何がわかるか、ということは常々考えています。 機械的に「ウィルスが検出された、されない」では、仕事は簡単ですが、その結果をどう解釈するか考えなければ、進歩も無いし、獣医療に貢献できないと思っています。 すいません、そんな偉そうな事をいえる輩ではないのですが・・・。 先生方からのご批判お叱りは、私個人に御願いします。 なんか、またまた長い文章になってしまいました。 読んでいただく方も疲れてしまいますよね。 でも書き出すと止まらない、性分です、ご理解下さい。 我が家のメタボナナちゃん、今月26日で満7歳になりました(先に8歳と書きましたが、間違いでした)。暑いせいか、メタボのせいか、はたまた年のせいか、ここのところ一気に落ち着いてしまったようで、やや心配、やや寂しい・・・。一度健康診断でもしてみようかな、と考えたりしています。 でも、イヌの健康診断ってどうなんでしょう。人間だってやっても意味が無いという項目もあるし、難しいですよね。結局は飼主がよく勉強しないといけないということでしょうね。 さて、今日もビールとチーズを分け合って・・・。
2009.05.28
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連休も中日を過ぎました。皆さん楽しんでますか?交通機関は大渋滞、行楽地は大混雑、お父さんもお母さんも既にお疲れですか?私は家でのんびり、ななちゃんと遊んでいます。(と言っても適当に仕事に出ていますが・・・)相変わらずビールも分け合ってます。と言うわけで、我が家のななちゃんを初公開します。と言うより、画像の掲載が初めてなので、練習を兼ねました。ななちゃん自己紹介。黒柴、メス、もうすぐ8歳、熟女???ややメタボ。体重約10kgあります(柴犬にしては小型なので、標準は7.5kgくらいらしいのですが)。如何ですか?我々は日々相当癒されています。とくとご覧下さい。(写真が今ひとつピントがずれていますが、腕が悪いと言うことで、ご容赦)
2009.05.05
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皆さん、ご無沙汰しています。 もうすぐゴールデンウィークですね。 巷では、最長16連休などという会社もあるようです。 私にしてみればうらやましい限りなのですが、半ば強制的に休まされるというのは、当事者にとっては辛いものなのでしょうね。私も昔は大企業に居た事もありますが、不況のときはノー残業デー、休日出勤ゼロ、長い夏季冬期休暇、等々経験しています。 でも、リフレッシュと割り切ってゆっくり休むのも良いのではないでしょうか。 さて、今回は「FIPとFIPV」について、再度書きたいと思います。 前回、2月ごろでしょうか、「FIPVというのはFIPという症状を起こすウィルスのことで、実態はコロナウィルスです」と言うことを書きました。 ここ最近、FIPV遺伝子検査に関して同じような指摘を頂く機会がありました。 「FIPV遺伝子検査とあるが、正確にはコロナウィルス遺伝子検査でしょう?正しく明記しなさい」という指摘です。 これはもっともな指摘で、検査を仕事とする我々にしてはこの辺りを曖昧にしておいたのが悪かった、と反省しています。 2月の繰り返しになりますが、再度簡単に説明します。少し長くなりますが、興味があれば最後まで読んでみてください(私の文章は長い!といつも言われています・・・)。 コロナウィルスとFIPウィルス、FIPとの関係について、「通常、腸上皮細胞で増殖するコロナウィルスが、何かの原因で変異して腹腔マクロファージで増えるようになり、全身的に広がり、致死性の病気を発症させます。この病気のことを伝染性腹膜炎(FIP)、FIPを発症させる原因ウィルスをFIPウィルス(FIPV)、と言います。」という考え方があります。 しかし現在においても、学術的にはコロナウィルスとFIPVとの遺伝子レベルで違い(変異)があるかどうかは、はっきりとわかっていません。(変異についての報告はいくつかあります)。 一方、臨床的にみると、FIPを発症したネコの血液や腹水、胸水からは、高頻度でコロナウィルスが検出されます。また、FIPを発症したネコから分離されたコロナウィルスは、腸コロナウィルスよりもマクロファージへの感染力やマクロファージ内での増殖性が高い、という実験データもあります。 これらの事実は、マクロファージで増殖するようになったコロナウィルスが全身的に広がりFIPという病気をおこす可能性が高いことを示すものと考えられます。 さらに、外見的には健常なFIPを疑う症状を呈していないネコでも、血中からコロナウィルスが検出されるケースがあります。ウィルス数は低値ですが、今後FIPを発症する可能性が高いと考えられますので、十分な経過観察が必要です。 理解して頂けましたか?簡単にまとめると、次のようになります。1)FIPをおこすウィルスがFIPVであって、正体はネコ・コロナウィルスである!2)でも、FIPを発症したネコの血液、腹水、胸水から分離したコロナウィルスは、腸コロナウィルスよりマクロファージに感染して増えやすい!3)そして、FIPを発症したネコの血液、腹水、胸水からは、高い確率でネココロナウィルスが検出される!4)つまり、腸コロナウィルスとは性質の違うFIPを発症するコロナウィルスが存在する可能性が高い(遺伝子レベルでの違いは明らかではありませんので、可能性とまでしか言えません)! というわけで、「ネコ伝染性腹膜炎ウィルス遺伝子検査」と称してきた検査を、正確性を期して「ネココロナウィルス遺伝子検査」と名前を変えました。検査の内容や精度は同じです。 でもこれで、FIPとコロナウィルスの関係がよく整理できたのではないでしょうか? 暖かくなって、ネコやイヌの動きも活発になってきましたね。 でも、この時期になると検査を依頼される件数も少しずつ多くなります。 飼主さん、日ごろの観察、大切ですよ。 飼主さんが、イヌやネコたちの一番目のホームドクターです! かく言う我が家のメタボナナちゃん、暖かくなってきたというのに、相変わらず散歩嫌い。 自分の行きたい方にしか歩かない、無理やり引っ張ろうとするとこちらにお尻を向けて座り込み、徹底抗戦。「じゃ、帰ろうか」と言う間に、我が家の方向に一目散、このときは早いです。賢いのやらずるいのやらわかりません。 では皆さん、よい休みを過ごしてくださいね。また次回。
2009.04.25
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生来の筆不精と年度末の忙しさに感けて、久しぶりに書き込みました。先週に比べて、一転寒くなりましたね。でも、桜の咲いている期間も延長するようで、寒いのも少しは許せるかな、と言う感じです(寒いのが大の苦手なもので・・・)しばらく前の話ですが、15日に獣医皮膚科学会に参加してきました。初めての参加なのでどんなものかと思っていましたが・・・。わかった事、獣医療での皮膚科は「かゆみ」が大前提であること。主題は大きく二つで、「アレルギー」の関連するものとダニなどの「感染症」でした。結局はどちらも症状としては「かゆみ」ですよね。今回、「円形細胞腫瘍の診断結果は何を語るのか」と題するシンポジウムがありました。「円形細胞腫瘍」とは、こういう名前の腫瘍があるのではなく、皮膚表面に出来た腫瘍を一括りにした呼び名のようです。例えばリンパ腫であったり、肥満細胞腫であったり・・・。内容は、これらの腫瘍をどう検査して、どう治療するか、というものです。遺伝子関連検査の話もありましたので、興味深く聞きました。が・・・・。このシンポジウムと同じ時間に、他の会場でアレルギーなどの講演も開催されていました。比べると、聴いている人の数は、アレルギーの会場のほうがはるかに多かったですね。やはり興味の対象は、かゆみなのですね。興味と言うよりは、獣医療の現場では「かゆみ」が圧倒的に問題になっているのでしょう。痛感しました。でも、一方では皮膚に出来る腫瘍多いことは確かです。精度のいい検査方法もいろいろ出てきています。もっと啓蒙しないといけないな、と改めて感じさせられました。そういう意味でも有意義な学会参加でしたね。さて、近々ネコの肥満細胞腫の遺伝子検査受託を開始する予定です。臨床研究を約1年半実施し、各動物病院の先生方の協力を得てデータを集めました。現在解析中です。改めて紹介したいと思います。最近風の強い日が多いですが、我が家のメタボナナちゃんは、どうも強風の風の音が苦手なようです。室内飼いですので、ベランダと室内を自由に行き来できるようにパタンパタンと開閉するドア(正式になんという名前かわかりません)をつけているのですが、風の強い日は顔だけ外に出してしばらく外の様子を伺って、顔を引っ込めて戻ってきます。そのしぐさが可愛いやら情けないやら・・・。でも、雷、花火、サイレン、などなどには全く反応しないです。あっ、あとは洗濯機と台所に置いてあった(もう撤去したので過去形です)生ごみ乾燥機の音も警戒してますね。そんなメタボナナちゃんの近況でした。相変わらずビールとチーズは大好きです。
2009.03.25
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昨日の大雪にはびっくりしました。先週は5日間連続で日照時間がゼロ、これは2月の観測史上最長だそうです。何か天気の変化が激しいですよね。インフルエンザの流行はピークを過ぎたようですが、体調管理にはまだまだ注意が必要です。ところで、先週24日にコジマ動物病院の病院内勉強会で講演してきました。この病院は全部で4つの病院を持ち、さらにペットショップも併せ持つ、大型経営を行っています。今回は亀戸駅近くの病院に伺いましたが、病院の隣がペットショップでした。帰りに少し覗きましたが、明るく清潔感あふれ、動物たちも落ち着いていて、店の環境はさすがすばらしいです。勉強会は毎月第4火曜日に定期的に実施されているようで、関連病院の先生方含めて30人程度が参加。今回は、遺伝子検査の基礎から、さらに特に要望のあった「ネコ伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)遺伝子検査」と「リンパ腫のクローナリティ解析」を解説しました。ベテランから若い先生まで、活発な質問を頂き、最新情報を積極的に吸収し現場にフィードバックさせようとする姿勢が良く伝わってきましたね。さらに、ペットショップをあわせて持っているので、販売するペットに対する責任感もそうとう高いと感じました。普通は、飼主と獣医さんの関係での付き合いしかありませんが、講演会等では先生方の違った側面、普段見られない姿を垣間見れることも貴重な経験です。私が思うのは、勉強会や講習会などに積極的に参加して常に新しい情報や技術を得る努力をしている先生方は、接していてもすごく真摯です。多分飼主さんに対しても同じ目線で対応してくれるのではないでしょうか。ここ何回か勉強会でや学会での講演が続きましたが、そう感じました。ちなみに我が家のメタボナナちゃんは、インターネットで調べて直接ブリーダーさん宅まで行って、買いました。ペットショップはいろいろな犬種を比較できて良いのかもしれませんが、私は親犬もみたかったのと、兄弟の仲でじゃれ付く姿も見てみたかったので、わざわざ車で片道2時間かけて・・・、でした。もともと「黒芝の雌」と決めていたので。なにか雑記になってしまいました。ここのところなかなか忙しく、頭の中が整理できていません。写真なんかも掲載したいと思ったりしていますが、生来の面倒くさがりで・・・。先生方で「勉強会に来てほしい」とか、飼主さんで「こんな話を書いてほしい」などあったら、ぜひ聞かせてください。そう、あしたはWBC開幕、「原侍ジャパン」の船出、応援しましょう!(侍ジャパン、と聞くと、昔「侍ジャイアンツ」という漫画があったのを思い出します・・・、関係なかったですね、失礼しました)
2009.03.04
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約2週間ぶりです。学会の準備などで慌しく(言い訳が多すぎる!)、気楽に書けばいい、と言われても、なかなか・・・・、です。昨日、講演のご依頼を頂き、広島まで行って来ました。会場は三原市内、広島空港から車で40分程度の瀬戸内海と山に挟まれた静かな町、と言う印象でした。伺った先は尾道地方獣医師会開業部会、定期会合の中でセミナーの時間として弊社の遺伝子検査について話をする機会を頂きました。参加されたのは、ベテランから若手の先生方まで15人ほど。こじんまりした会でしたが、逆に大きな講演会等には無いざっくばらんな雰囲気で、先生方皆さん真剣に聞いて頂き、質問も多数頂きました。遺伝子検査の原理については、ご理解いただくのもなかなか難しいところですが、臨床の現場でどのように役立つか、と言うことではご理解いただけたと思っています。「話す」というのは難しいですね。独り言ではないので、相手にわかってもらう話し方をしないといけないのですが、わかっていてもこれが難しい。「話す=理解してもらう」この意識が重要だと、毎回講演していて思うところです。そういう意味では、我々も勉強させて頂いています。これまでいくつかの動物病院から、病院内の勉強会で講演して欲しい、との依頼を受けたことがありますが、広島は一番遠方でしたね。今回は仕事の都合で(残念ながら!)日帰りでしたが、帰りの待ち時間に空港内のお好み焼き屋で牡蠣いりお好み焼きとビールを堪能しました。これをご覧頂いている先生方で、「自分の病院でも・・・」とのご希望があれば、いつでもご相談下さい。どこへでも(これはオーバーですが)飛んでいきます。実は、明日の夕方も都内の動物病院でセミナーに呼んでいただいています。その話は、また後日・・・。
2009.02.23
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