イヌやネコの検査や治療に関する最新情報(社長の独り言)

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2010.07.25
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カテゴリ: 肥満細胞腫
 毎日暑いですね。

 場所によっては、体感温度は40℃近いかもしれません。
 皆さん、熱中症には十分に気をつけてくださいね。
 特に、気温が体温以上になると身体からの熱の発散が出来なくなって、一気に熱中症の危険度が高まるそうです。そんな時は、家の中で水分をとりながら昼寝、が一番かもしれません。

 ところで、一ヶ月以上書き込みをサボっていましたが、その間いろいろなセミナーや講演会に参加してきました。役立つ情報がいろいろありましたので、少しずつ紹介していきます。

 今回は、肥満細胞腫の治療薬いつての情報です。
 イヌやネコの肥満細胞腫は、悪性腫瘍の中でも多く発生する腫瘍です。
 腫瘍の詳細は、皆さんよくご存知ですよね。


 肥満細胞腫の中で、KITタンバクという細胞を増殖させるたんぱく質を作るc-kit遺伝子に変異があると、無制限に細胞が増殖します(以前の書き込みを参考にしてください)。
 この遺伝子変異は、遺伝子のいろいろな部位で起こることが報告されていますが、今我々のような検査会社で検査できるのは、イヌのエクソン11の変異、ネコのエクソン8または9の変異、です。

 肥満細胞は、細胞表面にある受容体ににある決まった物質が結合することで細胞内に刺激が伝わり、「リン酸化」という過程を経てKITタンパクが合成されます。ところが、このKITタンパクを作るためのc-kit遺伝子に変異があると、受容体への刺激が無くても「リン酸化」が起こり、制限無しに細胞の増殖が進行します。これが腫瘍化です。

 以前、このようなリン酸化を抑えることで肥満細胞腫に優れた効果を示す「メシル酸イマチニブ(グリベック、ノバルティス社)」という薬を紹介しました。
 この薬は、もともとはヒトのある種の白血病などに使われる抗がん剤ですが、イヌやネコの肥満細胞腫でc-kit遺伝子に変異がある場合には、劇的に効きます。副作用も大変弱いので、大変使いやすい薬だと思います。ただし、値段(薬価)が高いので、継続的に使う場合は経済的な負担は大きくなります。

 最近、同じような薬で「マシチニブ(マシベット、ABサイエンス社)」と「トラセニブ(パラディア、ファイザー社)」が、発売されました。発売とは言っても、日本国内は未だですが・・・。

 この二つの薬は、効くメカニズムはイマチニブとほとんど同様ですので、効果も期待できます。
 ただ、この二つの薬は、動物の治療薬として発売されているようで、ここがグリベック大きく違います。マシチニブはヨーロッパで、トラセニブはアメリカで発売になっています。日本でも、もしかすると治験が始まるかもしれませんね。

 もう一つ、この二つの薬の価格ですが、イマチニブの3~5分の1くらいになる(かもしれない)、問情報もあります。これは朗報ですね。

 肥満細胞腫は、皮膚の悪性腫瘍でも発生頻度が多く、早めに治療することが肝要です。
 今回紹介した薬剤は、c-kit遺伝子に変異がある肥満細胞腫に対しては、優れた効果を発揮し、一方で副作用の大変少ない、良い薬です。


 飼主にとっては、大変うれしいことですし、飲み薬で効果が期待できれば、動物への負担も相当軽くなりますから、何よりうれしいことですよね。
 早く発売されることを期待したいです。
 製薬会社、農水省、そして開発に関係している皆様、期待しています!

 いま、私は涼しい部屋で書いていますが、メタボナナちゃんは相変わらず伸びています。

 つまり、季節ごとの脱毛と発毛(換毛)が上手くいかないようです。
 メタボナナちゃんも、綿のような冬毛が抜け切れておらず、ブラッシングやシャンプーでも抜けません。見るからに暑そうで、可愛そうです。でも、たまに外にでて炎天下で伸びているのですから、何を考えているのやら・・・。

 再度皆さん、熱中症にはくれぐれも気をつけてください。

 では、また。







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Last updated  2010.07.25 13:20:56
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