イヌやネコの検査や治療に関する最新情報(社長の独り言)

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2011.05.08
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カテゴリ: 免疫療法
今日は暖かいですね、暑いくらいです。
GW最後の休み、皆さんどうお過ごしおですか?
疲れたお父さんたちも多いことでしょう。
明日から、気分も新たに頑張ってください。
かく言う私、いま仕事中です。

さて、今までにない最速の書き込み、どうしたんだろう、と思わないでくださいね。

実は、先回の細胞免疫療法の書き込みを見た知人から、質問を受けました。
「飼い犬ががんの手術を受けたが、しばらく様子見ということで、何もしないのも不安。いろいろ調べたら、活性化リンパ球療法に再発予防の効果があるとあったが、どうなの?」

で、その知人曰く、インターネットで動物の活性化リンパ球療法を調べたら、思ったより多くの動物病院で実施していることにまず驚き、一方で情報の曖昧さに不安になり、何を基準に病院を選べばいいかわからない、ということで、相談を受けました。



さて、私は知人に対して、「その病院での具体的な培養方法や治療に対する考え方がわからないので、具体的にどこが良いとは言えないが、実施している先生に最低ここを聞いて、きちんと答えられれば信頼していいのでは?」と、いくつかアドバイスしました。ただし、これはあくまで私の個人的な考えですので、皆さんは参考まで、としてください。

知人が具体的に曖昧(不安)に思ったのは、以下の点だそうです。
それに対し私は、あくまで私どもの培養技術や共同研究先の医療機関を基準に答えました。(上にも書きましたが、他の動物病院の内容が全くわかりませんので、今回の回答が、他の動物病院の評価や批判をしているわけではないことを、ご理解いただいた上で読み進めてください。)
では、会話形式で。知人をAとします。

A「2週間の培養で1,000倍に増えるって、本当?」
私「まず、1,000倍の考え方ね。20ml採血すると、分離できる細胞の数は、だいたい1,000万個、その内リンパ球の数を解析すると、その内約10~20%、ということは10%として100万個。それを2週間培養して1,000倍ということは、10億個、という計算だね。計算、あってるよね。」

A「なるほど。でも、本当にそんなに増えるの?」
私「我々の技術では可能だし、実際治療に使うリンパ球の数の目標値を10億個にしている」

A「なぜ、10億個なの?」
私「この数字は、正直根拠は薄い。一応根拠は、免疫療法自体大きながんの塊を駆逐する効果は弱いのだが、1個のがん細胞を破壊するには1,000個以上の免疫細胞が必要だと言われている。たとえば、1cm位のがんの塊は約100万個のがん細胞で出来ていてるので、その1,000倍、つまり10億個、というのを一つの基準にしているね。」

A「1cm以上のがんはどうなの?」


A「ということは、1,000倍に増やしている、というより、実際に治療で投与する細胞数を確認したほうが良い、ということかな?」
私「そう思うね。実際、投与する細胞数は必ず計測しているはずだから。薬の量をわからず投与することなんてないでしょう?それと一緒。ただ、患者の状態やほかの治療を一緒にやっている場合は、細胞の増えが悪いことはよくあること。たとえば末期で免疫状態が悪い時。免疫機能を抑えるような抗がん剤やステロイド剤を投与しているとき、また放射線治療も免疫機能を抑えるから、増えが悪いこともある。」

A「そういう時は、どうするの?治療できないの?」
私「培養開始前に解析するので、その時点である程度予測できるし、3,4日培養して増えが悪い場合は、いろいろ増えるように工夫する。でも、どうしても増えが悪い場合、その時は先生と相談だね。」

A「なるほどね、わかった。ところで、あなたの会社のHPを見ると、今は犬しかできない、と書いてあるが、猫でもやっているところもあるようだが?」


A「ということは、猫に活性化リンパ球療法をやる時も、そのあたりを具体的に確認したほうが良いんだね?」
私「新しい治療法だから、聞けば丁寧にわかりやすく教えてくれると思うよ」

A「で、これは切実な話なんだが、治療費が高いよね。何であんなに高いの?」
私「確かに、そういう話はよく聞くね。でもね、実際に培養している側からすると、必ずしもそうは思わない。まず、培養に使う試薬、これは医薬品に準ずるものだったり特殊なものだったり、試薬自体の値段が高い。また培養する間に、使う容器など消耗品。また、治療に使うので、安全性を検査しないといけない。培養中の雑菌の混入が一番怖いからね。あとは、施設によって違うかもしれないが、どんなリンパ球が増えているか解析する。これらに使う検査試薬や手間。あとは、2週間培養にかかる人件費や施設費、等々。そこに多少の利益。動物病院だってボランティアじゃないんだから、利益を上げないといけないわけ。これはよくわかるよね。こう考えたら、決して高い費用じゃないと思う。」

A「なるほどね・・・」
私「難しいのは、1回で終わる治療じゃないからね。何回かやって効果が出てくる治療法なので、1クール〇回治療する、と書いてあるところがよくあるでしょう。治療費は治療回数も関係してくるからね。そのあたりも、治療する先生の考え方をよく聞いたほうがいね」

A「そうか・・・。その他、何か聞いたほうが良いことはある?」
私「とにかく、事前によく調べて、自分が納得することだね。どんな治療でもそうだけど、やってから後悔しないように。いずれにしても、活性化リンパ球療法は新しい治療法なので、まだまだ研究段階の部分も多いし、先生方もよく勉強して研究している。聞けば、必ずわかりやすく答えてくれると思うよ」

A「なるほど、そうだね」
私「あとは、治療に使う活性化リンパ球は医薬品と同様であること、つまり最低限の安全性は確認されていることかな。事故が起こってからでは遅いからね」

A「事故?そんなこともあるの?」
私「少ないが、昔は人でもあったよ。原因は、培養中に雑菌が混入して、それを確認しないで投与した、という事例がほとんど。人の現場では、今は安全性の確認も含めて培養方法が標準化しているので、まったくと言っていいほどないと思う。そう、今世間を騒がせている生肉ユッケ騒動。あれの根本的な原因は、コストカットするために、実施すべき細菌の検査をしなかったり、肉の表面を削らなかったり、ということでしょう。テレビであるコメンテーター言っていたけど、最低限の安全性を保証する検査などを確実に実施したら、ある程度商品が高いのは仕方がない、と。一理あると思うけどね」

と、まあ長時間話し込みました。
彼、わかってくれたかどうかわかりませんが、いずれにしてもわからない事は、どんな些細なことでも質問して、納得して治療を受けることです。まして、新しい治療法ですから。

どうですか、少しは参考になったでしょうか?

では、GW最終日の午後、明日からのためにゆっくりしてください、特にお父さん・・・。





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Last updated  2011.05.08 13:18:43
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