イヌやネコの検査や治療に関する最新情報(社長の独り言)

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2012.02.26
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カテゴリ: FIP
何となく少しずつ暖かくなってきているように感じます。
皆さん、少しずつ春の虫が疼きだしているんじゃないでしょうか?
そうなると、今度は花粉、厄介です。
今年はトータルの飛散量は少ないと言われますが、短期間で一気に飛ぶらしく、花粉症の人には辛いかもしれません。

ところで、久しぶりにFIPについて書きます。

FIP診断のためのコロナウィルス遺伝子検査も、少しずつ認知されてきています。
リピートしてくださる先生方が増えてきています。

実は、先日一般の飼い主様から、以下の様な問い合わせを頂きました。
「購入したばかりの5か月の子猫、軽い下痢があったので獣医さんで検査してもらったら、検査値が1600倍と言われた。私も忙しくて、数字だけを聞いて帰ってきたが、いろいろ調べると、400倍から陽性だとか、検査会社によって値が違うから、というよな情報があった。1600倍とは、FIPなのでしょうか?」


「1600倍」と言う値、これはコロナウィルス抗体検査の数値ですね。
まず、抗体検査について説明しましたが、「抗体」を理解できていないようでした。

さらに、ネコやFIPのブログを見ると「PCR検査」と言う検査が出てくるが・・・、ということでしたので、根本的に抗体検査とは違う事、これを当社で実施していること、主治医を通して依頼した欲しいこと、を説明しました。

でも、やはり主治医がもっとよく説明すべきです。
何やら数値だけが独り歩きして、FIPの恐怖感だけが膨らんできてしまうようなことは避けなければなりません。
多分理解して頂けたと思いますが・・・。

一方、獣医さんからも、抗体検査との違い、抗体価が高いが遺伝子検査をやるべきか、どんな時に調べたらいいか、陽性だったらFIPと確定していいのか、等々、未だに多くの質問を頂きます。

そんな時には、こう答えます。
まず、FIPとコロナウィルスの関係。腸コロナウィルスは、ネコの60-80%に感染しているといわれています。ただ、症状は軽い下痢や一過性の発熱などで終わることが多いといわれています。このウィルスが、何んらかの原因で変異して血中に移行し、マクロファージと言う細胞で爆発的に増えてFIPという症状を起こす、と言われています。
つまり、FIP(臨床症状の名称)は変異したコロナウィルスが起因で起こるウィルス感染症で、という事が言えます。健常な状態では、この腸コロナウィルスは血液中には存在しないと言われています。残念ながら、「FIPウィルス」が現時点で特定されていませんので、この理論に基づいて血液中のコロナウィルスを検査しています。

抗体検査との違い、です。抗体は、感染したウィルスに対して免疫の防御反応で作られるタンパクです。したがって、単純には「抗体は感染の履歴」を表しており、腸コロナウィルス感染でも抗体は産生されます。抗体を測定しても、現在血液中にコロナウィルスが居るかどうかはわかりません。遺伝子検査は、いわゆるウィルス抗原を直接検出する検査ですので、現時点で血液や腹水・胸水等の検体中にウィルスが居るか否かがわかります。



一方、経験の豊富な先生の中には、FIPを臨床症状で診断する先生もいます。
ただ、FIPと言うのは臨床症状の名称ですので、同じような症状を示す病気はたくさんあります。
例えば、風邪の症状があった時に、通常言われる「風邪症候群」なのか「インフルエンザ感染症」なのか、どう区別しますか?そう、インフルエンザウィルス検査をして陽性なら「インフルエンザ感染症」、陰性なら「風邪ですね。」と言われますよね。
考え方は同じ。FIPを疑う臨床症状を「FIP」と確定するには、原因となるコロナウィルスが感染しているか否かをはっきりさせれば良い、という事です。
つまり、FIPを疑う臨床症状があった時、FIPと確定したい場合にPCR検査を利用して頂ければよいと思います。


難しいですが、「FIPを疑う臨床症状がある場合、血液(または腹水・胸水)中からコロナウィルスが検出されれば、確定」しても良いと思います。一方、症状が無くウィルスが検出された場合、病気としてはFIPは発症していませんが、原因ウィルスであるコロナウィルスが血液中から検出されたという事はウィルス感染は成立している訳ですので、この後FIP発症のリスクは高い、という事になります。
ただ、これまで「同居猫がFIPで亡くなった」「多頭飼育なので健康診断で」と言うケースで、まれに少数のウィルスが検出される場合があります。
これらの例では、以降無症状で定期的に検査をして陰転を確認した例、一方数週間でFIPの症状が出て、ウィルス量も一気に高くなり、亡くなった例、とあります。
したがって、無症状で血液中からウィルスが検出された場合はFIP発症のリスクは高い、と考えて、以降定期的に検査をする、また予防策としての治療を早めに開始する、など対策をとるべきと考えます。
根本的な治療方法が無いのが残念ですが、早めに確定することで対症療法で何とか進行を遅らせることもできるのではないでしょうか。

リピートして検査をご依頼いただく先生や病院も増えてきていますが、その中には抗体検査は実施せずPCR検査で、と言う先生も増えてきています。

「遺伝子検査」と言うと、とかく難しく考える方々もまだまだ多くいらっしゃいますが(かく言う私も、苦手です)、単純にウィルスを高感度で検出できる検査、FIPを確定するために有用な検査、とお考え頂ければよいのではないでしょうか。

最後に、もう一度言います。
「FIPは変異したネココロナウィルス感染が原因となるウィルス感染症です!」
つまり、FIPを疑う場合には、ウィルス感染の有無を確定することが重要です!

我が家のナナちゃん、薬を増量しましたが、飲水量が一向に落ちません。
最近、体力もだいぶ落ちてきたように思います。
これ以上薬を増やして良いものかどうか、主治医と相談です・・・。






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Last updated  2012.02.26 17:43:31
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