ちほの転び屋さん日記

ちほの転び屋さん日記

2009年04月23日
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・ある程度勉強の進んでいる人が、刑事法の歴史や基本原理の説明が手薄な教科書を補うために使う感じでしょうか。「さしあたっての」実益はなさそうですが、徐々に効いてくるといううことになるでしょうか。少なくとも、これを入門書とするのは難しいと思います。

・原理原則から説き起こすというのは、非常にいいと思うんですが、それが個々の解釈論にどうつながってくるかを十分に例示してくれていないので、抽象的な理解に止まってしまいます。

・「憲法」に基礎をおいた刑事法学ということが書かれています。でも、たとえば、刑事訴訟法において、被害者の人権を被告人の人権よりも強調する立場も、その逆の立場も、それぞれ主観的には憲法に基づいた主張をしているつもりなわけで、憲法を基礎においたとしても、かなり大きな幅があるということです。

そもそも、憲法学自体においても、「比較考量論」という判断手法があったりするわけで、憲法を持ち出しても一定の立場が導かれるわけではありません。なので、憲法に基礎をおくというだけでなく、具体的に、憲法を用いるとどういう解釈論が展開されるのかを、例示して欲しかったということです。

・テキストという位置づけのせいで、どうしても制度の概説が続いてしまうわけですが、原理原則や歴史の部分、あるいは平川先生自身の見解をもっと深くから論じてくれれば、読み応えのある本になったのに、と残念な気がします。

刑事法に限らず法学全体について論じた本ですが、その好例として存在するのが、平川先生の師匠である団藤重光先生の 『法学の基礎』 なわけです。「の基礎」つながりということで、平川先生のこの本にも同じような期待をしてしまったわけですが、さすがに今の時代、学生のニーズには逆らえないんでしょうか。





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最終更新日  2009年04月30日 23時07分22秒
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