CHI-AKIの部屋

CHI-AKIの部屋

2006.03.25
XML
カテゴリ: ものがたり
散華



 そこはこの世であって、この世ではない、夢幻の世界。
 山の中、海の底、鳥の羽ばたく大空――と、実はいろいろな場所につながっている。
 人はただ、その世界への入り口を――その世界へ入る術を知らないだけである……。


 〔来訪者 1〕


 幽玄郷は、常に色鮮やかな花が咲き誇る常春の世界である。
 東に清明(セイメイ)、西に紅葉(コウヨウ)、南に青嵐(セイラン)、北に樹氷(ジュヒョウ)と名付けられた里があり、中央部には中黄(ナカキ)の里があった。
 中黄の里の中心部には咲耶山(サクヤヤマ)と呼ばれる小高い山があり、様々な色と種類の桜が何千本も植えられていた。
 その、咲耶山のてっぺんにあたる中心部には、他の桜よりもさらに大きな桜の木が大地に根付いていた。
 薄く緑のかかった黄色の花を咲かせる桜の木は、幽玄郷のご神木といわれる鬱金桜で、月光華(ゲッコウカ)という名が付いていた。
 ご神木といわれるだけあって、大地から天空に向かってのびるその姿は荘厳だった。
 しかし、そのご神木といわれる桜の木の大振りの枝に「よいしょ」と腰掛ける影がひとつあった。
 見識のある者に見つかれば、「罰当たり」と言われかねない行為ではあったが、その者にとっては『そんなことお構いなし』であった。
 若草色の肌、レモン色のくちばし、つぶらで大きな瞳。
 頭にはギザギザがついたお皿を乗せている。
 その者は背中にしょっていたリュックを下ろし、その中に無造作に詰め込まれていた細長い緑色の物体を取り出すと、にぱっと嬉しそうに顔をほころばせた。
 その者は、それにかぶりつこうとしたが、あることを思い出して手と口を止めた。
「今日も『命の恵み』をありがとう☆ ――いただきます」
 そう言って、両手を合わせながら食べ物に感謝をささげると、かぶりついた。 
「う~ん、今日もジューシーでカッパ感激☆」
 持参してきた食べ物を味わうようにして食べていた者――カッパ・ガブリ・エールは、しばらくぱりぽりと好物のキュウリを食べていたが、花見をすることも忘れていなかった。
 雲ひとつない青い空の下、山頂から麓へ放射線状に広がる紅・白・緑・紫の桜のコントラスト。
「今日もいい眺めだなぁ」
 思わずそうつぶやいてしまうくらい、山のてっぺんから見下ろす景色は絶景だった。

 やさしい日差しの、ゆったりとした昼下がりのひと時。
 好物のキュウリでお腹を満たしたカッパは、あまりの心地よさで眠くなってしまった。
 小さなあくびをして、カッパはこのまま寝てしまおうかなと思ったのだが、同時に空で輝く太陽の光が先ほどより少し強くなってきたなと感じた。
 次の瞬間、咲いたまま時を止めていた桜が少しずつ散っていくのが見えた。
 それは、カッパが腰掛けているご神木も例外ではなく、萌黄色の花びらが雪が降るように空から降ってきた。
 山全体に、桜吹雪が舞い起こる。
「そういえば、今日は『食』の日だったっけ」
 カッパの言う『食』の日と言うのは、新月あるいは満月の日に当たるのだが、24節に当たる日も『食』であり、その日は冬至だった。
 常春の世界である幽玄郷では、『食』の日に四季が一気に駆け巡り、気候がめまぐるしく変化する。
 常に桜が咲き誇っている世界は一変して、真夏に咲く睡蓮が目覚めるように咲き、緑色の紅葉が紅く染まる。
 常緑樹を除いた様々な植物はやがて落葉し、幽玄郷は銀世界になる。
 それは日付が変わる頃には通常の状態に戻るのだが、うかうかしていると風邪でもひきかねない。
「そうなると、ゆっくりお昼寝できないな……」
 カッパはリュックの口を閉め、再びそれをしょって木から下りる。
 地面に着地する頃には、地表には桜の花びらの絨毯ができていた。
「もしかして、ちょっとやばい?」
 思わずつぶやいたとき、周りの桜は花びらをすべて落とし、ゆっくりではあったがその枝に緑色の葉を生やしていた。
 カッパは慌てて自分の住まいがある清明の里のある方向へ走った。
 そして下り坂になる地点へ着くと、カッパはごろんと地面に横たわり――、そして坂に向かって勢いよく転がった。
 走って駆け下りるより、転がって下りた方が早いと思ったのだろう。
「きゃははは、一回やってみたかったんだよね~」
 花びらを巻き起こしながら、猛スピードでカッパは麓を目指して転がり落ちていく……。


              〔来訪者 2〕へ続く……






 まだ出だしなので、ここでは書けないこともありますが、感想などありましたらよろしくお願いします(^o^)丿


アルファポリス  アルファポリスに参加しています。よろしければ1クリック、ご協力お願いします。


ご協力、お願いしま~す(^o^)丿






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006.03.26 10:03:32


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: